ランプの明りだけが灯る妖しげな雰囲気の部屋。

目の前の人族の男は薄笑いを浮かべていた。

歳は40代後半と思われ、体型は肥満気味、頭髪はやや後退している。

いかにも好色そうな顔付きをしていたが、浮かべた薄笑いはさらにそれを強調していた。

男はソファに腰掛けたまま、オレの全身を上から下まで舐めるように見回している。

ひとしきりオレの体を見回したあと、

「こちらに来なさい」

男はオレを手招きしてそう言った。

オレは依頼主である男の命に逆らうことができず、渋々ながら男の前に立った。

すると、男はすかさずオレの太ももに片手を添え、撫で回し始める。

いやらしいその動きに、オレは背筋に寒気が走るのを感じた。

「多過ぎず少な過ぎず……いい筋肉の付き方だ……実に私好みの……」

うっとりとした口調で言う男に、オレは実に不快な気持ちになった。

しばらくそうして服の上からオレの体を堪能したのち、男がやや興奮気味に言う。

「さあ、脱ぎなさい。 すべてですよ」

言われたオレは、仕方なく男の前でストリップを始めた。

動きやすいように作られた黒衣は着易く脱ぎ易い。

ほんのわずかな挙動でオレは黒衣を脱ぐと、下着一枚の姿を男の前に晒した。

「さ、それも脱ぎなさい」

オレの下着姿に興奮が高まったのか、上擦り気味の声で命じる男。

オレは言われるがまま、下着を脱ぎ下ろした。

つるりとした下腹部が外気に晒される。

「いい……実にいい……」

よだれすら垂らしかねない勢いで、男が呆けた顔を貼り付けて言う。

そして若干震えた手がオレの下腹部に伸び、同じく震えた指先がオレの下腹部にあるスリット、ペニスが収められた生殖孔の表面をなぞった。

今度は寒気こそ感じなかったものの、えもいわれぬ嫌悪感を感じた。

男は血走った目でオレの生殖孔を凝視し、表面をなぞっていた指を生殖孔の中に突き入れた。

「――!」

違和感を生殖孔内部に感じると共に、男の指先がペニスの先端に触れたのを感じた。

男はペニスに触れたことに気付いたのか、生殖孔の中で指を動かして、オレのペニスの表面を刺激し始めた。

嫌悪感を感じたとはいえ、ペニスを刺激されていることには変わりなく、オレの無意識はペニスに血液を集め始めてしまう。

徐々に肥大していくペニスの動きを楽しむように、男は指先を動かし続けた。

やがてオレのペニスの肥大は、生殖孔の許容量を超え、男の指先ごと体外に露出してしまった。

体外に露出したペニスは、男の眼前でなおも肥大を続け、間もなく完全に勃起を果たす。

「大き過ぎず小さ過ぎず……何から何まで私好みですね……」

夢見心地の様相で男は言い、勃起したオレのペニスに手を添える。

ひんやりとした男の手が、熱くなったオレのペニスに触れた瞬間、オレのペニスが冷たさにピクリと反応してしまった。

それを見止めた男は、何を勘違いしたのか、

「ふふふ……触られただけで反応してしまうとは、あなたも中々の好き者のようだ」

と、淫猥な笑みを浮かべた。

オレのペニスに手を添えたまま男が続ける。

「私はこの収納されたペニスが、特に竜人のペニスが大好きでしてね。

 我々のモノとは異なったこの形がたまらなく好きなんですよ。

 しかも、竜人は陰毛も毛皮も羽毛もまったくないというところが実にいい」

興奮した口調で言いながら、男はオレのペニスに頬ずりを始めた。

自分のペニスに頬ずりをする、いやらしい顔付きをした人族の中年というのは、実に嫌悪感を誘い、ペニスの萎えるシチュエーションではあるのだが、いかんせんペニスそのものが男の手と頬によって刺激されている為、反射として萎えることができずにいた。

何度となくペニスに頬ずりし、やがて男が顔を離す。

そして、不快極まりない上目遣いでオレを見つめ、

「さぁ……では始めましょうかね」

と、オレのペニスに両手を添え、大口を開けてペニス全体を口内に含んだ。

「ぅっ……!」

ペニスを覆った、生温く、柔らかく、ぬるついた感触に、オレの口から声が漏れる。

男はそのまま慣れた様子で頭を前後に動かし、ペニスと共に生殖孔から飛び出した陰嚢も両手で包み込むように刺激し始めた。

正直なところ、状況としては不快極まりないものの、感触としては非常な快楽を感じていた。

そこでオレは思考を切り替え、男を満足させれば早くこの状況から脱せると判断し、早めに射精し、男を愛撫して満足させることにした。

目を閉じ、感触だけに身をゆだねる。

視界に男の姿さえ入らなければ、少なくとも視覚的に不快感を感じることはない。

どうも男は男との行為には慣れているらしく、的確に急所を突いてくる。

亀頭の先端、雁首、裏筋、睾丸、肛門。

その為、思っていたよりも早く射精することができそうだった。

が、しかし、あと少しで射精というところで、男はオレのペニスへの刺激をやめてしまった。

「ぁ……?」

肩透かしを喰らったオレの口から、無意識に小さな声が漏れる。

男はオレのペニスの先端を指先で弄りながら、またしても不快な上目遣いでオレを見上げ、

「まだまだ出させてあげませんよ?

 時間はあるのですから、ゆっくり楽しみましょう、ふふふ……」

オレの期待とは正反対の言葉を言い放ち、不気味な笑みを浮かべた。

そして、男は立ち上がるとベッドへと向かい、ベッドに辿り着くと、自らも身に付けている衣服を脱ぎすて、オレの前に全裸の姿を晒した。

豊満、と好意的に取れなくもないくらいの肉付きだったが、男の浮かべた淫猥な笑みが好意的な表現をするのを妨げる。

すでに勃起している剥け切ったペニスからは先走りが滴り、ランプの明りをぬらぬらと反射させていた。

大きさはやや小振りだが、そこから垂れ下がった陰嚢は大きく、勃起している竿よりも存在感を示していた。

「あなたもこちらへ来なさい」

ベッドの縁に腰掛け、男が招く。

オレは指示に従い、男の前まで歩み寄った。

「……分かっていますね?」

オレを見上げ、男が言う。

男は両足を開き、オレの前にいきり立ったペニスを見せつけた。

「…………」

オレは無言で床にしゃがみ込むと、意を決して男のペニスに手を添え、口に含んだ。

口内に塩気のある粘液の味が広がる。

決してうまいものではないが、かといって吐き出すほどまずいものでもない。

分泌物の味は見た目や性格とは一致しないらしい。

とはいえ、男を愛撫していることが不快であることには変わりなく、オレはさっさと男を射精に導こうと努力した。

男というのは一度射精してしまうと一気に性欲が減退する。

そうなれば男も前言を撤回するかもしれない、という意図がそこにはあった。

今度こそ期待が打ち砕かれないように祈りつつ、一心不乱に男を愛撫し続ける。

男にされたのと同じように、亀頭の先端の割れ目に沿って舌先を動かし、雁首をなぞるように舌を這わせる。

竿は口の奥深くまで、しかし喉の奥にまでは当たらないように飲み込み、片手で大振りな陰嚢に包まれた、同様に大振りの睾丸を揉みしだく。

残ったもう一方の手は肛門の縁をゆっくりとなぞった。

男は刺激を与えられるたびに鼻息を荒くし、両手でオレの両角をとらえて快感に没頭しているようだった。

だが、緩急を付けて男を愛撫し続けるも、男が射精する素振りがない。

男の鼻息がさらに荒くなることも、ペニスの動きが変化することもなかった。

どのくらいそうして男を愛撫していただろうか。

10分か、あるいは15分か。

口が疲れては手で扱き、手が疲れては口に含み。

そんなことを繰り返していたものの、やがてオレの方が愛撫すること自体に疲れ始めてきてしまっていた。

それを見てとったのか、男が頭上から声を掛けてきた。

「疲れてしまいましたか?

 私はまだ満足していませんが?」

言われて上を見上げると、男は勝ち誇ったような笑みを浮かべてオレを見下ろしていた。

悔しいとかといった気持ちは微塵もなかったが、オレとしても早く男を満足させてこの状況から逃れたいという気持ちはあったので、疲れを振り切り愛撫のペースを早める。

それが功を奏し、それから5分もした頃、男の鼻息が荒く、口からは喘ぎ声が漏れ始めた。

口の中のペニスもびくんびくんと射精の前兆を見せ始めてきた。

そしてそれから1分後。

「ふぅ、ふぅ……口を離して手で扱きなさい……」

男が愛撫の仕方を指示してきた。

言われるがまま、オレは男のペニスから口を離し、手で竿全体を力強く扱いた。

すると男の鼻息と喘ぎがさらに大きくなり、睾丸が上に持ち上がって、竿全体が一回り大きく膨れ上がる。

射精寸前の証しだ。

「ふぅ、亀頭を、自分の顔に、ふぅ、ふぅ、向けなさい……ふぅ、ふぅ……」

男が再度指示を出す。

何をしようとしているのかが即座に理解されて不快な気分が募ったが、口内に出されるよりは幾分ましだろう。

オレはさらに力強く男の竿を扱き、男を絶頂へと導く。

そして、

「ああ! 出る! 出るぞっ!!!」

男が叫び声を上げた。

途端、眼前のペニスから大量の精液が迸った。

放たれた精液はオレの顔面を直撃する。

直撃寸前に目をつぶったので、目への侵入は避けることができたのは幸いだった。

目を閉じた暗闇の中で、男のペニスから吐き出される精液の量に驚いた。

何度となく精液が顔面に叩き付けられ、その量も勢いも衰えることがない。

あの大振りの睾丸は見掛け倒しではなかったようだ。

十数度にもわたって吐き出された精液が、文字通りオレの顔面を白く染め上げているだろうことが、感触から分かる。

目の周りに付着した精液を丁寧にぬぐって目を開くと、男は肩で息をしながらオレを見下ろしていた。

その顔には満足感が漂っている。

やがて男は息が整うと、ベッド脇のサイドテーブルの上に置かれたハンドタオルを手に取り、オレに手渡した。

「我ながら大量に出ましたね。

 そのタオルで顔を拭きなさい」

オレは言われるまでもなく、顔に付着した精液を拭き取る。

その最中、男が独り言を聞かせるように話し掛けてきた。

「ずいぶんと時間が掛かったでしょう?

 私はどうやら遅漏というやつのようでしてね。

 なかなか出せないのですよ。

 自慰をする時は難儀な性質ですが、こうして誰かと楽しむ分には、長い時間楽しむことができていい性質に変じますね」

実に自分勝手な言い分だと、男の言葉を聞いて思った。

ただ1度の射精の為にこんなに相手を疲れさせてしまっては、自己満足の気の方が強いだろうに。

時間が掛かるなら掛かるなりに、合間合間に相手のことを愛撫したりすることも必要だと思う。

もっとも、そういった類の配慮をこの男ができるとも思えないが。

「とはいえ――」

オレの内心の侮蔑を知らない男は話を続ける。

「年のせいでしょうか。

 最近は1度出しただけで満足してしまうのですよ」

その言葉から、オレはこの状況からの解放を連想した。

が、

「ただし……」

男は顔を拭き終わったオレからタオルを取り上げ、オレの顎に片手を添えて持ち上げる。

「肉体的には、ですけどね。

 最近はどうも精神的充足感が欲しくてたまらないのですよ。

 私の肉体は1度の射精で満足しましたが、心はまだまだ満足していない。

 お分かりですか?」

言って口の端をゆがめる男。

前言撤回するのはどうやらオレの方だったようだ。

男は射精によって性欲が衰えるどころか、ますます増してきているように見える。

「さあ、ではベッドに仰向けになって足を開きなさい」

涎すら垂らしかねないほどの淫猥な表情を浮かべ、男が命じる。

自分の期待の甘さに嘆きつつも、オレは従い、ベッドに仰向けに寝転がり、両足を開いて股間を男の前にさらけ出した。

「ゆっくり楽しみましょう……」

男はうっとりとした口調で言いながら、萎えてしまったオレのペニスを手に取り、舌を這わせた。

陰嚢の裏から亀頭の先端まで、じっくりと時間を掛けて、焦らすように舐め上げる。

くすぐったいような感覚が背筋にむず痒いものを走らせ、思わずオレは身震いをしてしまった。

しかし、構わず男はペニスを舐め続けた。

まるで小さな子供が飴を舐めるのと同じように、何度も何度も味わいながら。

舌での刺激という局所的な刺激は、快感を伴わせることは多くとも、それが絶頂に達するということは少ない。

男もそう思っているのか、先の言葉通りにゆっくりと楽しむ為、舌以外での刺激をしようとはしなかった。

だが、快感を与えられていることは事実で、亀頭の先端からは先走りが溢れ始めてしまっていた。

男は先走りが溢れるたびにそこに吸い付き、その時だけ亀頭全体を口に含む。

時間にしておよそ2秒から3秒。

その時だけが、オレが唯一絶頂に達するであろう強烈な刺激だった。

それは男も気付いているらしく、その瞬間だけはオレの顔を見上げ、オレの反応を堪能するような視線を送ってくる。

そんなことが何度も繰り返され、やがてオレは無意識のうちに腰を浮かせて動かしてしまっていた。

男にはその様子が早く射精させてほしいというように見えているだろう。

事実、頭の中はぼんやりしてきており、射精感も高まってきている。

それを見透かしているだろう男は、それでも同じように舌でのみ舐める刺激を続けた。

そして、しばらく。

もはやオレの射精感は限界に達していた。

ほとんど反射的にペニスがびくんびくんと脈打ち、男の鼻先を叩く。

人や獣人等と違って、射精前に睾丸が体内に引き寄せられるということはほとんどないが、若干睾丸も上に上がってきているのが分かる。

口はきつく食い縛られ、鼻息は荒くなる。

それによって、男はオレの絶頂が近いことを悟ったようだ。

敏感な部分であるペニスの裏筋の辺りを、舌で強く押し、高速で何度も何度も舐め上げた。

男は間違いなく、舌だけでオレを射精させるつもりのようだった。

やがて男の思惑通り、

「んっ! あっ……!!」

男の舌に押し出されるように、オレは男の前で射精を果たした。

すぐ眼前で吐き出される精液を、男はじっと見つめている。

羞恥心がオレを襲うが、それは反射の前では意味をなさなかった。

何度も脈打ち、男ほどの量ではなかったものの、かなりの量の精液を自分の腹にまき散らしてしまった。

一部の精液は顔にまで届いている。

射精が終わる頃には、オレの腹には精液の溜まりができていた。

「たくさん出しましたね」

荒く息をするオレに、男が嬉しそうに話しかけてくる。

「とてもいやらしい光景でしたよ?

 何度も何度もペニスを脈打たせて射精する様は」

言って男は、精液を滴らせていたオレの亀頭を舐め、精液を舐め取った。

その敏感な刺激に、オレの体がびくんと震える。

「おや、失礼。

 さすがに射精直後のペニスを刺激するのはきつかったですか?」

からかうような口調の男の言葉に、オレは何も答えなかった。

男は含み笑いをしながら、今度は腹の上にまき散らされた精液を舐め取っていった。

腹を、胸を、そして顔を。

男の舌によってすっかりと精液が消えると、男は次の指示を出した。

「なら、今度は四つん這いになって、尻を向けなさい」

全身に軽い倦怠感を感じながらも、オレは言われた通りに四つん這いになり、尻を男に向かって持ち上げる。

「尻尾を上げなさい」

尾を上げると、男の前に肛門が晒された。

「これはなかなか締まりのよさそうな穴だ」

言いながら、男は肛門の周囲を丁寧に撫で回した。

こそばゆい感覚と共に、男の指が肛門の縁をなぞるたびに、快感にも似た感覚が広がる。

すると、今度は生暖かいぬるついた感覚が肛門周囲を襲った。

首を下げて股ぐらから後ろを見れば、男が顔を肛門に近付けているのが分かる。

そこから、男が舌を使って肛門を愛撫していることが分かった。

男の舌は指と同様、肛門の縁を回すようになぞり、やがて肛門がほぐれてきたのか、肛門内部に男の舌が侵入してきたのを感じた。

何度も突くように侵入してくる男の舌を感じ続けていると、萎えていたオレのペニスに再び血が集まって行く。

男はオレの勃起をうながすように、舌では肛門を刺激し、空いた手で股の間からオレのペニスを掴んで前後に扱き始めた。

「ふっ……ぅ……」

反射的に吐息が漏れる。

男はそのまま刺激を続け、完全にオレのペニスが勃起すると、ペニスから手を離し、肛門からも舌を抜いた。

そして、再び指を肛門に当てる。

「入れますよ?」

一言断るものの、オレの返事など待つ様子すらなく、問答無用でオレの肛門に指を突き入れた。

「ん……!」

痛みというより、違和感に近い感触が直腸を中心に広がった。

次第に男の指がオレの直腸を犯し、ゆっくりと内部に埋没していくのが分かる。

肛門付近に抵抗を感じ、オレは意識的に肛門を押し広げた。

「ふふふ、自分から緩めるとは……そんなにここを責められるのが好きなのですか?」

背後から掛かる男の声。

オレは少しでも自分が楽になるように肛門を広げたにもかかわらず、男はそう勘違いしたらしい。

反論したくもあったが、したところで男の加虐心を助長するだけになりそうなので、オレは無言で耐えた。

しばらくして、男の指がすべて肛門に埋没したらしく、男の拳が尻に当たり、男はそのまま指を動かさずに待つ。

おそらくはオレの肛門が慣れるのを待っているのだろう。

少しして、男が言う。

「あなたはこちらを使っても大丈夫なようですね。

 ……ほら」

男の片手がオレの亀頭に伸びた。

そして、指の腹で亀頭の先端を撫で回す。

快感と共にぬるりとした感触。

覗き込んで見れば、男の指に弄ばれている亀頭からは、ぬらぬらとした先走りが溢れ出していた。

「こちらが使えない方は、指を入れられるだけで萎えてしまいますからね。

 その点、あなたは萎えないどころか先走りまで垂れ流している。

 やはり実にいいですよ、あなたは」

淫猥な笑みを浮かべる男。

言い終えると男は指を動かし、オレの直腸壁を刺激し始めた。

ほぐすように動き回る男の指。

初めはゆっくりと、やがて徐々に激しく動き始め、ある程度ほぐれてくると挿入される指の数が2本、そして3本と増えていった。

3本の指を縦に並べて入れられると肛門に強い抵抗を感じるが、それでもオレのペニスは萎えることなく、男に弄ばれながら先走りを溢れさせ続けていた。

「それではそろそろ……」

呟き、男が肛門から指を引き抜き、ペニスからも手を離した。

しかし、肛門と直腸から抵抗と違和感が消えたと思ったのもつかの間、すぐさま肛門に男のペニスが押し付けられる感触が。

男は片手で尻尾の付け根を押さえ、もう片手で肛門を押し開くように尻をつかむと、

「入れますよ……」

と、一言呟いたあと、ゆっくりとペニスを挿入し始めた。

指3本と同等の抵抗を肛門に感じながらも、男のペニスはオレの肛門を押し広げながら直腸内に侵入。

ペニスの先端が奥まで到達すると、男はオレの肛門を慣らすように静止した。

「ああ……思った通りいい穴だ……」

男が感嘆する。

そうしてしばらく繋がったままでいたあと、男は徐々に腰をスライドし始めた。

男のペニスが引き抜かれるたびに男の雁首が直腸壁をえぐり、男のペニスが押し入られるたびに男の亀頭が直腸壁を割り裂く。

そのたびに、男は気持ちよさそうに吐息を漏らし、オレは息が浅く深くなっていった。

何度も何度も繰り返される進入と脱出に、オレのペニスは先走りの糸を垂らしながら、何度となくびくんびくんとしゃくり上げ始めた。

目ざとくもそれに気付いた男は、器用にも腰を振りながらオレに覆いかぶさり、オレの腰回りから両手を伸ばしてオレの律動するペニスを掴んだ。

「ぅっ……!」

刺激を与えられた反射で、小さな呻き声をあげるオレ。

背後では男が腰を振りながらニヤニヤと笑っているような気がした。

そのことを確信させるように、男は耳元でささやく。

「元気ですね、本当に。

 うらやましい限りですよ。

 ほら、こんなに熱くて硬い。

 そして、こんなに――」

言いながら男が片手をオレの前に移動させ、広げる。

「いやらしく濡れている」

その言葉通り、腰振りの振動で揺れる男の掌は、ランプの明りを受けて妖しく光るおれの先走りでまみれていた。

男は手をペニスに戻し、耳元で続ける。

「さて、私にはここまでの元気はないのでもうしばらく楽しませてもらいますが、あなたはすぐにでも出したいのではないですか?」

「…………」

その問い掛けに、オレは無言で答えない。

すると、男はそれを予想していたかのように続ける。

「どんなにだんまりを決め込んでも、体は黙ることができないようですよ?」

言いながら、男は腰を振る速度を早め、オレのペニスを掴んだ手をゆるゆると動かし始めた。

「あっ……」

刺激の強さが上がったことで、またも声が漏れてしまった。

それを聞いた男はささやき続ける。

「ほら……気持ちいいのでしょう?

 出したい、と言ったらどうです?

 もっと気持ちよくなれますよ?」

「っ……く……」

「まだ我慢しますか?」

「くぅ……ぁ……!」

「ふふふ、強情な方だ」

「っあ……!」

男の責めはささやきと共に激しくなり、それにつれてオレの口からはこらえきれずに声が漏れ出した。

そして、いつまでも我慢を続けるオレに、男から最後の一言が掛かった。

「……出したいといいなさい」

声を低くしたその一言の命令に、オレは答えざるをえなかった。

「……出し……たい……」

かろうじて聞き取れるかどうかというオレの答えに、男は応えた。

強烈な刺激が下半身に発生する。

「! あっ…ああああぁぁぁぁ!!!」

ついに耐えきれず、オレは絶叫してしまった。

男のペニスが直腸壁をえぐりながら直腸の奥にぶつかり、何度も発生する直腸壁とペニスとの摩擦は強烈な刺激となってオレの全身を駆け巡る。

同時に行われている男の両手でのペニスへの刺激は、ペニスを扱きながら亀頭を乱暴にこね回すという乱暴なものだったが、先走りで滑りのよくなったオレのペニスには、一瞬意識が薄れるほどの激烈な刺激を与えるのに充分すぎるものだった。

「大の男が大声を上げて、なんと情けない!」

楽しむように、嘲るように、そしてオレを自分の支配下に置いたことを喜ぶかのように男が叫ぶ。

「!! っぐぅぅぅぅぅぅ!!」

とっさに歯を食い縛って声を殺すオレだったが、もはや後の祭りだった。

なおも続く強烈な刺激に、オレの体はすぐに限界に達した。

目の前がくらむほどの衝撃が全身を駆け抜け、一瞬にして意識が遠退いた。

そして、

「っぐっ!!! っ!!! ――っ!!!」

乱暴にこね回す男の手の中に、1度目よりもはるかに強烈な射精を果たした。

と同時に、遠退いた意識はそのまま無意識の闇に落ちていった。

 

 

「おや、目が覚めましたか?」

横から聞こえた声に瞬時に覚醒し、飛び上がって身構えるオレ。

「そう身構えずともいいでしょう?」

声の主を見れば、それは依頼人の男。

ガウンを羽織り、オレに背を向けたまま首をこちらに向けていた。

その口には葉巻が咥えられている。

「オレは……」

呟き、オレは自分の身に何が起きたかを理解しようと頭を働かせる。

しかし、それより早く男が口を開いた。

「まさか失神してしまうとは思いませんでした。

 それほど気持ち良かったですか?」

嘲笑うように、紫煙を吐き出しながら男が言う。

その言葉で、オレは瞬時に自分の身に起きたことを理解した。

男の強烈な責めに、オレは射精と同時に気を失ってしまったのだ。

時計を見れば、行為が始まる直前から1時間半近い時間が過ぎている。

逆算すれば、気を失っていたのは30分程度だろうか。

オレは強烈な羞恥心に襲われた。

男はそんなオレを見ながら、葉巻をふかし続ける。

「一応、汚れた体は拭かせてもらいましたよ。

 もちろん、直腸内の私の精液も、ね」

言って男がニヤリと口の端をゆがめた。

実感はないが、おそらくオレが気を失っている間も男はオレを犯し続け、オレの中で射精を果たしたのだろう。

羞恥心と共に屈辱の思いも浮かび上がってきた。

内心ほぞを噛むオレを見ながら、男はことさら大きく、そして満足気に紫煙を吐き出すと、

「私も久し振りに満足しました。

 心身共に充分にね。

 さて、あとは公式な発表を待つとしましょう」

と言って、葉巻を灰皿に置いた。

その言葉を、オレは帰宅の許可と受け取った。

ソファ周辺に脱ぎ散らされた衣服を回収し、素早く身に付ける。

そして、部屋の入口まで移動したのち、ベッドの縁に腰掛けたままの男を振り返り、

「失礼する」

感情を殺して言った。

男はニヤリと笑い、

「また依頼することがあるかもしれません」

と、淫猥な口調で返す。

その言葉に2つの意味が含まれていることを即座に悟り、強い不快感を感じたが、それを表に出すことなく、オレは部屋を出た。

そして男の屋敷を出たオレは、自分の晒した痴態に歯噛みしながら、暗闇の中を帰路についた。