6畳程の部屋で、男が1人、参考書を片手に、小さな丸テーブルに向かって座っている。
男は熱心に参考書を読み、時折ペンで何かを書き込む。
「……ふぅ」
しばらくして、男は小さく息を吐き、ふと横にある大きな窓から外を眺めた。
窓の外では、雨がシトシトと降っている。
「雨か…………ふぁあ〜……」
男は呟くと、大きなあくびを1つした。
男の口が上下に大きく開く。
開かれた男の口は、人のそれとは違った。
それは鋭い牙を連ねた、犬の口。
口だけではない。
鼻も、そして耳も、男の顔を作るパーツは、どれも人のものとは異なっていた。
唯一、目だけが人に酷似しているのみ。
男の名前は大船戸。
人の体に犬の頭を持つ、いわゆる獣人という存在だった。
あくびを終え、大船戸は壁に掛かった時計に目をやる。
時計の針は、正午を示していた。
「お昼か。 何か食べ物あったかな?」
言って大船戸は、手にしていた参考書を丸テーブルの上に置き、キッチンに向かった。
キッチンの隅に置かれた冷蔵庫のドアを開け、中を覗くが、そこには申し訳程度の飲み物が入っているだけ。
冷蔵庫のドアを閉め、ぐるりとキッチンを見渡すも、カップラーメンの1つも見当たらない。
「はぁ〜……なんにもない」
大きな溜め息をつくと共に、グゥ〜と大船戸の腹が鳴った。
「仕方ない、出前でも取るかな」
そう言ってリビングに戻り、電話に手をかけたその時、不意にインターホンのベルが鳴った。
「あっ、はーい」
ベルに応えて、大船戸は早足に玄関に近付き、ドアノブに手をかける。
「どちら様……あっ」
ドアを開け、外にいる人物を一目見て、大船戸は小さく驚きの声を上げた。
玄関の外に立っていたのは、小学校高学年くらいの少年と同程度の背丈をした、ずぶ濡れの男。
手にはなぜか、出前で使われるおかもちを持っている。
「よう」
男は、ぶっきらぼう、というよりも少々不機嫌な様子で挨拶した。
「小淵沢……君?」
大船戸は驚いた表情を浮かべ、小淵沢と呼んだ男をあっけにとられたように見ている。
大船戸の見つめる小淵沢もまた、人ではなかった。
大船戸同様、獣人、それも猫の頭を持つ獣人だった。
「なんで、ここに?」
大船戸が面食らった様子で尋ねる。
それに対して小淵沢は、またも不機嫌そうに答えた。
「出前……っつーか、この間の誕生パーティすっぽかした罰。
パーティの時、オレがいなくてお前がえらくガッカリしてたからって、『コレ持って、顔見せてこい』って佐橋に言われて来た」
そう言って、手にしたおかもちを持ち上げる小淵沢。
「誕生……ああ」
そう言われて大船渡は思い出していた。
3日前、2人は研究所を抜け出してから始めての誕生日を迎えていた。
誕生日といっても正確な意味での誕生日ではなく、生まれた日を知らない2人に対して、大船戸の友人の女性が、それでは不憫だからと、2人が研究所を抜け出した日を勝手に誕生日にしただけなのだが。
そんなわけで、2人が研究所を抜け出してから1年が経った3日前の夜、2人の友人が寄り集まって2人を祝うパーティが行われた。
しかし、そこに主役の1人である小淵沢は姿を見せなかった。
「じゃあ、わざわざ僕のために来てくれたの?」
「ったく、オレ1人がいないくらいでいちいちガッカリしてんじゃねーよ」
「ごめん……」
「ちっ、あやまんなよ」
悪態をつく小淵沢に、とっさに大船渡が謝るが、それに対しても小淵沢は腹を立てた様子で、悪態をつく。
「それより、さっさと中に入れてくんねー?
コレ、ずっと持ってるのかったりーんだけど」
そう言って、小淵沢は再びおかもちを持ち上げる。
「あ、ごめん、入って。
ところで、その中、何が入ってるの?」
「ラーメンとチャーハンとギョウザが2人前ずつ」
「え? 2人前?
さすがに僕、そこまで食べきれないけど……」
「オレの分も入ってんだよ。
佐橋が『一緒に食ってこい』って言って、勝手に作りやがった。
んじゃ、ま、おじゃま。
……今の、シャレじゃねーぞ?」
「え? 何が?」
「……いや、なんでもねー……」
などと、やり取りをしつつ、2人は部屋の中へと入っていく。
と、小淵沢が玄関を上がったところで、大船戸が言った。
「小淵沢君、ビショビショだね。
傘、差して来なかったの?」
「バイク乗ってきたからな。
傘なんか差せねーよ」
「でも、そのままじゃ風邪引くよ?
シャワーでも浴びる?」
「いい。 タオル貸してくれ。」
そう言われ、大船戸はバスタオルを風呂場から持ってきて、手渡す。
「はい」
「サンキュ」
おかもちを床に置き、手渡されたバスタオルで顔や体を拭き始める小淵沢。
その様子を見ながら、大船戸がポツリと呟く。
「でも、服がビショビショだから、体だけ拭いても意味ないんじゃ……」
「…………」
大船戸の呟きを聞いた小淵沢の手が止まる。
「服、洗濯しようか?」
「洗濯して、オレが帰るまでに乾くのかよ?」
「いやー、それはさすがに……ウチ、乾燥機ないし」
「じゃ、オレに裸でバイクに乗って帰れってのか?」
「いや、そういう訳じゃ……でも、そのままビショビショの服でいるわけにも……
僕の服じゃ大きい……よね?」
チラリと小淵沢を見て呟く大船戸。
それを聞いた小淵沢がジロリと大船戸を睨み、
「その言い方、なんかムカつくな」
「あっ、ごめん」
慌てて大船戸が謝る。
「ん〜、でもどうしようか?
ん〜…………あっ、そうだ」
何か思いついたのか、大船戸がポンッと手を打つ。
「小淵沢君、この後、っていうか、明日まで暇かな?」
「あ? ……別に用はねーけど」
「じゃあさ、いっそのことウチに泊まっていかない?」
「はぁ!?」
大船戸の突然の提案に、小淵沢が素っ頓狂な声を上げる。
「僕も明日バイト休みだし、小淵沢君も用がないなら丁度いいでしょ?
そうすれば、服を洗濯しても明日までには乾くし」
「なんでそうなるんだよ……」
「嫌? でも、明日は用事ないんでしょ?」
「ねーけど……」
「じゃあ、泊まっていきなよ」
「…………」
「ねっ?」
「……仕方ねーな」
「決まりだね」
「……そこそこいい暮らししてるみてーじゃねーか」
小淵沢が部屋を見回して呟く。
部屋にはベッド・テーブル・本棚・タンス・テレビが置かれ、キッチンには冷蔵庫や電子レンジ、洗面所には洗濯機もある。
1人暮らしをするには十分な生活用品は整っていた。
「うん。 でもほとんど貰い物なんだけどね。
渚さんと澪さんが買ってくれたんだ」
キッチンで2人分の洗い物をしている大船戸が答える。
「小淵沢君は、玲さんの所で一緒に暮らしてるんだよね?」
「ん? ああ。
いつまでも居候で世話になりっぱなしじゃわりーから、3ヶ月くらい前から佐橋んとこでバイト始めたけどな」
勝手にテレビをつけてチャンネルを変えまくってる小淵沢が言う。
それに対し、洗い物を終えた大船戸が、湯飲みにお茶を入れながら返す。
「そうなんだ。 偉いねー」
「……なんかムカつくな、そのガキを褒めるみたいな言い方」
「あ〜、ゴメン」
お茶の入った湯飲みを2つ手にした大船戸が、謝りながら部屋に入ってくる。
大船戸はお茶をテーブルに置くと、ごそごそとタンスをあさり始めた。
それを見た小淵沢が尋ねる。
「何してんだ?」
大船戸はタンスをあさりながら答える。
「いや、何か小淵沢君が着る物をと思って。
裸のままじゃ寒いでしょ?」
大船戸の言うとおり、小淵沢は今、下着1つ身に付けていない裸の状態だった。
それまで着ていた服は、洗濯機に放り込まれて洗われている。
「別に、オレはこのままでも構わねーけど」
そう言って、小淵沢はお茶をひとすすり。
「そういうわけにはいかないでしょ?
ずっと裸のままでいられると目のやり場に困るしさ」
「オレの裸なんて研究所で見慣れてるだろうが」
「それはまあ、そうなんだけど……」
「それとも、オレの裸を見てると発情しちまうか?」
「まさかっ!」
小淵沢の冗談に、物色を続けている大船戸が力強く反論する。
「まっ、どうでもいいや、好きにしてくれ」
お茶をすすりつつ、心底どうでもよさそうに言って、再び小淵沢は部屋を見回す。
いたって普通の1人暮らしの男の部屋といった感じの室内には、取り立てて興味を引くような物はない。
と、その時、ベッドの下の隙間に、何やら雑誌のような物が置かれている、というよりも、隠されていることを見とめ、小淵沢はそれに多少の興味を引かれた。
こちらに背を向けている大船戸に気付かれないように、そっとベッドの下から雑誌のような物を引っ張り出すと、
(へぇ……)
その表面を見た小淵沢は、心の中で呟いた。
引っ張り出された物は、まぎれもなく雑誌だった。
それも、成人指定されている。
(コイツもこんなもん読むんだな)
そう思いつつ、パラパラと雑誌をめくる。
そこには、ボンテージ衣装に身を包んだ女と、首輪を付けられ、女に踏み台にされている男の姿が写っていた。
別のページには、ペニスバンドを付けた女に、尻の穴を犯されている男の姿が写っている。
(Mか、コイツ。 まっ、確かにSって感じはしねーもんな)
そんなことを思って、ページをめくっていると、ようやく物色を終えたらしい大船戸が声をかけてきた。
「小淵沢君、コレ着てみて」
「…………」
しかし、小淵沢は何も答えず、雑誌を眺めている。
「小淵沢君?」
答えない小淵沢に首をかしげながら、大船戸は服を持って小淵沢に近寄る。
「何見て……あっ!!!」
小淵沢が見ている物を見て、大船戸が声を上げた。
「ちょっ! ダメだよ!!」
手にしていた服を放り出し、大船戸は小淵沢から雑誌を取り上げようとするが、それに気付いた小淵沢は、素早くそれをかわして立ち上がった。
「なかなかいい趣味持ってるじゃねーか、ワン公」
意地の悪さを含んだ口調で言い、大船戸に向かって雑誌を広げてみせる小淵沢。
開かれたページには、ペニスバンドで尻の穴を犯されながらもペニスを勃起させている男の姿が、大きく写されていた。
「こ、これは……その……」
隠していた物を見せ付けられて言い淀む大船戸。
そこに追い討ちをかけるように小淵沢が言う。
「Mだったのかよ、お前。
でけー図体して、似合ってねーな。
こんな風に、ケツにモノ入れられてー願望でもあるのかよ」
「う……」
「その様子じゃ、1人でヤる時は、自分の指でもケツにブッ挿してそうだな」
「…………」
図星を突かれた大船戸は返す言葉もない。
「図星かよ」
意地の悪い笑いと共に言い放ち、小淵沢は雑誌を大船戸に向かって放り投げた。
雑誌は、微動だにできずにその場に立ち尽くしている大船戸に当たって床に落ちる。
小淵沢はそんな大船戸を見て、スッと目を細め、
「……そんなにケツにモノ入れてーならよ、コイツ、入れてやろうか?」
そう言って、自分のペニスに手をやった。
「……え?」
言われた意味が理解できなかったらしい大船戸が聞き返す。
「だから、てめーのケツにオレのをぶち込んでやろうかって言ってんだよ」
「そんな! ダメだよ!
だって僕等、男同士なんだし……」
慌てて拒絶する大船戸に、小淵沢は静かに近付き、
「そんなこと言っても、ココは……」
自分の胸くらいの高さにある大船戸の股間をつかんだ。
「あっ!」
声を上げて腰を引く大船戸。
「しっかりデカくなってんじゃねーか」
小淵沢はニヤリと笑って言った。
その言葉通り、大船戸の股間は不自然に膨らんでおり、ズボンの中でペニスが勃起していることが見てとれた。
「ぶち込まれたいんだろ?
さっきの写真みたいによ」
小淵沢が詰め寄る。
「いや……でも……」
しかし、大船戸は判然としない態度で応えた。
それに業を煮やしたのか、小淵沢は大船戸に聞こえるように大きな舌打ちをし、
「チッ! 相変わらずハッキリしねー野郎だぜ。
てめーで決められねーなら、オレが勝手に決めてやるよ」
強引に大船渡のズボンに手をかけ、ズボンを脱がし始めた。
「うわ! ちょっ、待っ……あっ!」
突然の強襲に、大船戸は慌てて小淵沢の手を振り解こうとするが、慌てていたせいでそのままバランスを崩し、後ろに置かれていたベッドの上に仰向けに倒れ込んでしまった。
小淵沢は倒れた大船戸の腿の上に乗り、ズボンの止め金を素早く外し、チャックを下ろすと、あらわになった大船戸の下着の上に手を置いた。
「やっぱりでけーな」
「ダメだって!!」
感心したように言う小淵沢に、大船戸はなおも抵抗の意を示す。
小淵沢の腕をつかみ、なんとか振り解こうとするが、それより一瞬早く、小淵沢の手が下着の上から大船戸の睾丸を鷲づかみにした。
「いっ!!」
下腹部に走った痛みに、大船戸は呻き声を漏らす。
「ここまできて今更ジタバタすんなよ」
大船戸の睾丸を手の中で揉みしだきながら、小淵沢が囁いた。
「…………」
やがて大船戸は抵抗を諦め、小淵沢のなすがままに従った。
抵抗がないことを確認した小淵沢は、大船戸の睾丸から手を離し、下着に手をかけると、ゆっくりとそれを下にずらし始めた
その際、勃起した大船戸のペニスが引っかかったが、小淵沢は構わずに下着を下げていく。
と、急に抵抗がなくなり、同時に大船戸の勃起したペニスが勢いよく飛び出してきた。
「……そういや、こうしててめーのモノを間近で見るのは初めてだな」
あらわになった大船戸のペニスをまじまじと眺めながら言う小淵沢。
皮の剥けきった、キレイなピンク色の亀頭をした大船戸のペニスを小淵沢が爪で軽く突付くと、
「ん……!」
大船戸は小さく呻いて、ペニスをビクンと震わせた。
「なんだかんだで、しっかりヤる気出してるじゃねーか。
さてと……」
小淵沢は腰を浮かせ、両膝で這うようにして大船戸の胸の上まで移動する。
そして、その場で膝立ちになると、萎えたままの自分のペニスを突き出し、
「男相手じゃ立つモノも立たねー。 咥えろよ」
大船戸にペニスを咥えるように指示した。
「…………」
大船戸は黙ってそれに従い、小淵沢のペニスに舌を伸ばす。
小淵沢のペニスもまた、皮が剥けきっていてピンク色の亀頭をしていたが、大船戸のそれと比べると一回りほど小振りのペニスだった。
「ん……!」
大船戸の舌先が小淵沢のペニスの鈴口を突付くと、小淵沢の口から小さな吐息が漏れ出した。
大船戸は、犬が餌の皿の底を舐めるように、ひたすらに小淵沢のペニスを舐め上げる。
何度も大船戸の舌が往復するたび、小淵沢のペニスは角度を変えていき、やがて完全に天井に向かって屹立するにいたった。
「……まだ全然濡れてねーぞ。
しっかり咥えて濡らさねーと、入れる時に痛いんじゃねーのか?」
自分のペニスを見て小淵沢がそう漏らすと、大船戸は、
「……ベッドの下にローションがあるから……」
そう言って恥ずかしそうに視線をそらした。
「ずいぶんと用意がいいじゃねーか。
でも、ここまできたら口で咥えてくれよ」
小淵沢は完全に勃起したペニスを大船戸の鼻先に突き付け、咥えるようにうながした。
「……ん」
大船戸は鼻を鳴らすように短く答え、鋭く尖った牙の並んだ口を大きく開け、小淵沢のペニスをその中に飲み込んでいった。
ヌルリとした感触と暖かい感触が小淵沢のペニスを包み込む。
「う…ふぅ……いいぜ、ワン公。
牙だけは絶対に立てんじゃねーぞ……」
大船戸の口内をペニス全体で味わいながら、小淵沢が言う。
それを聞いた大船戸は、言われた通りに牙に注意しながら、目を閉じ、頭を前後に動かし、小淵沢のペニスを刺激し続けた。
ペニスを咥えたことなどない大船戸は、ぎこちない刺激の仕方をするが、それでも小淵沢には十分な刺激だったようで、やがて小淵沢のペニスの先端からは、快感を示す粘液が少しずつ溢れ出始めた。
塩気を含んだ粘液を口内に感じながら、大船戸は一心不乱に頭を動かす。
「ふ…ふっぅ……もういい、これ以上ヤると出ちまう……!」
小さく息を吐き出し、小淵沢がストップをかけた。
それに従い、大船戸が小淵沢のペニスから口を離すと、大船戸の口と小淵沢のペニスとの間に、粘り気のある粘液が糸になって光った。
「ふぅ……さて、じゃ、そろそろ入れるか。
ローションはベッドの下だったな?」
言って、小淵沢はベッドから降り、ベッドの下を覗き込む。
「あった。 コレだな?」
すぐにローションの入ったボトルを見つけた小淵沢は、ボトルを大船戸に見せる。
「うん……」
大船戸に確認させると、小淵沢はボトルのキャップを開け、中のローションを自らのペニスに垂らし、まんべんなく塗り広げた。
「じゃあ、入れるぜ……」
すっかり態勢を整えた小淵沢は、そのまま大船戸の肛門にペニスを挿入しようとする。
しかし、
「あ、待って」
その挿入を、大船戸が阻んだ。
「? なんだよ?」
「入れるなら、僕のお尻を慣らしてもらわないと……」
「?……ああ、そういうことか」
大船戸の言わんとしたことを理解した小淵沢は、ローションを手に垂らし、
「ケツ出せよ、ワン公」
大船戸に尻を向けるように指示した。
言われるままに四つん這いになり、尻を小淵沢に突き出す大船戸。
小淵沢の眼前に、大船戸の肛門がさらされる。
ピンク色をしたそこは、刺激を待ちわびているかのようにヒクつき、妖しく蠢いていた。
そこへ、小淵沢は手に垂らしたローションを塗り広げる。
「んっ……!」
ひんやりとしたローションと指の感触を肛門に感じ、大船戸が呻く。
と、同時に、股の間で硬くいきり立っていたペニスがビクンと跳ね上がり、その先端から一筋の粘液を滴らせた。
それを見た小淵沢は、
「ケッ、まるっきり変態だな、ワン公。
ケツの穴がそんなに気持ちいいか?」
言葉で責めながら、大船戸の肛門を指の腹で撫で回し続ける。
一方で、空いた手にローションを取り、それをビクつく大船戸のペニスに塗りたくった。
「あっ!!」
大船戸が悲鳴にも似た喘ぎ声を上げ、全身を震わせる。
「ケツ弄られながら前も弄られて気持ちいいのか? え? ワン公」
小淵沢は、執拗に肛門を撫でつつ、大船戸のペニスをローションの付いた手で乱雑にこね回した。
この刺激は強烈だったのか、
「ひっ! あ…! ダ、ダメ…っ!!」
懇願するように腰をくねらせ、大船戸がのたうった。
しかし、小淵沢は責め手を緩めず、むしろ逆に強めていった。
指の先端を肛門の中に入れると同時に、ペニスを乱暴に扱き上げ、肛門の中の指を中で動かし、ペニスの裏筋やカリに爪をそっと立てる。
「あぁぁ…ああぁぁぁ!!」
それらの刺激を与えるたび、大船戸は喘ぎ声を上げ、全身で快感を示した。
そして、小淵沢が肛門に入れる指を2本に増やし、亀頭を掌でこね回した瞬間。
「あっダメっ! イ、イっくぅぅ…!!!」
大船戸が全身を強張らせ、小淵沢の手の中に白濁液を吐き出した。
「本当にケツに指入れられてイきやがった……」
手の中に熱いモノを感じた小淵沢は、なかば呆れたように呟いた。
そんな小淵沢の呟きが聞こえたのか聞こえてないのか、大船戸は射精後の脱力感から、ベッドの上に顔から突っ伏し、深く息をしていた。
そんな状態の大船戸を気にとめる様子もなく、小淵沢は次の行動に移る。
「それじゃ、本番、いくぜ」
そう言って、突っ伏したままの大船戸の片足を持ち上げると、ぐるんと大船戸の体を反転させて仰向けにし、十分に緩んだ大船戸の肛門に、いきり立った自らのペニスの先端をあてがった。
大船戸は深く呼吸を繰り返し、小淵沢を見つめる。
小淵沢は大船戸を見返し、
「入れるぞ……」
「うん……」
静かに、ゆっくりと、自らのペニスを大船戸の肛門に挿し込んでいった。
『ん…く……』
2人の呻き声が重なる。
大船戸は肛門に小淵沢のペニスが侵入してくるのを感じ、小淵沢はペニスを大船戸の肛門が締め付けるのを感じた。
程なくして、ペニスで1番太いカリの部分が肛門の中に埋没すると、小淵沢はそのままゆっくりと直腸の奥までペニスを挿し込んだ。
「……全部入ったぜ」
「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」
呟く小淵沢の声が聞こえてないかのように、大船戸は目を閉じ、浅く短い息を繰り返していた。
それを意に止めた様子もなく、小淵沢は静かに腰を動かし始めた。
一定の速度で規則正しく腰を動かし、大船戸の腸壁をえぐっていく。
口内よりも強烈な締め付けをするそこは、ともすればすぐに達してしまいそうなほどの快感を小淵沢に与えた。
また、大船戸も、指よりも太い小淵沢のペニスに貫かれ、快感を味わっていた。
大船戸のペニスは、射精したばかりだというのに、小淵沢に腸壁をえぐられるたび、少しずつ膨張を再開し、しばらくすると、先端がヘソまで着きそうなほどに勃起した。
「…き、気持ち、いいのか? …ワン公」
「う…ん……」
「そ…か……オレも…気持ちい…い…」
2人とも快感の波に呑まれ、言葉静かに会話を交わす。
いつしか、一定のリズムで腰を振っていた小淵沢のペースが変わり、リズミカルに肉と肉がぶつかり合う、パンッパンッパンッという音が、2人の結合部から聞こえ始めた。
そして、それから数十秒後、一心不乱に快楽を貪る獣と化した2人に、絶頂の時が訪れた。
「うあぁぁ…も、限界…だ……! イ、イくぞ…ワン…公!!」
「ぼ、僕も…ま、また…ぅくぅ……!!」
『うあああああ!!!』
2人同時に叫び声を上げ、大船戸は自らの胸と腹の上に白濁液を飛び散らせ、小淵沢は大船戸の腸内に白濁液を吐き出した。
次の日の朝。
「じゃ、オレ帰るわ」
すっかり乾いた服を身に着け、玄関に立った小淵沢が言う。
「うん、それじゃあ、また」
大船戸もまた、玄関に立って答える。
そして、1度咳払いして一言。
「あー、昨日のことは、皆には内緒で……」
「分かってる。 誰にも言わねーよ」
小淵沢はぶっきらぼうにそう答えると、
「じゃ、またな」
そう言って、大船戸の返事を待たずに、さっさと出て行ってしまった。
しばらくして、バイクのエンジンがかかる音が聞こえ、その音が徐々に遠ざかっていく。
やがて音が完全に聞こえなくなると、大船戸は静かに玄関のドアを閉めた。