「ふぅ〜……」
モニターの明かりだけがついた暗い部屋の中で、フォックスは椅子に深く腰掛け、深いため息をついた。
(今月もまた赤字か……)
モニターに映し出された数字を凝視するも、何度見ても最終的にはじき出される数字からマイナスの棒が消えない。
食費や水道光熱費といった生活費から始まり、メンバーの給料、グレートフォックスの維持費、何よりもそのグレートフォックスのローンが重くのしかかる。
どれだけ切り詰めても、限度というものがある。
時折マイナスがプラスに転じることもあったが、そういう時はどこかで争い事が起きた時だ。
それは、どこかで不幸なことが起きたと言い換えることもでき、大きな収入を得るチャンスではあるが、フォックスは手放しには喜べなかった。
(そういう仕事だから仕方ないんだけどな……)
スターフォックスが遊撃隊である以上、争いが飯の種であることは避けられない。
頭では納得していても、なかなか割り切れるものではなかった。
「はぁ……」
色々な問題に頭が痛くなりそうなので、フォックスは一旦それらから逃げるべく、モニターの電源を落とした。
モニターが消えた途端、周囲が暗闇に包まれる。
部屋の一面に据え付けられた大窓から見える外の景色は、無数の星が瞬く宇宙だ。
その景色からはどの宙域を飛んでいるのか分からなかったが、フォックスはしばらく窓の外の星々を眺めていた。
しかし、変わり映えのしない風景にすぐに飽きがきて、今度は暗い部屋の中に目を移す。
掃除がされてはいるが、飾り気のない自室。
(気分転換に部屋の模様替えでもするかな?)
そんなことを思いつつ、フォックスは部屋をぐるりと見回す。
そうして、ベッド横のサイドデスクに目が止まった。
(そういえば)
と、フォックスは椅子のキャスターを転がしてサイドデスクへと向かい、1番下の引き出しを開けた。
中には様々な日用品が雑多に入っていたが、フォックスはそれらには目もくれず、それらに埋もれたある物を手に取った。
それは円筒形をした物体で、シリコンでできていた。
弾性に富んだその物体は、中が空洞で、内部に無数の突起が付いている。
俗に言う、オナホールという物で、以前、『暇な時に使ってみなよ』とスリッピーに手渡された物だ。
その時は『何を考えているんだ』とスリッピーを叱りつけたものだが、何だかんだで捨てることもせず、サイドデスクにしまいっぱなしだったのを、フォックスはふと今思い出した。
そして、このところ仕事探しに忙しくて、下の世話など何もしていなかったことも、同時に思い出した。
「気分転換か……」
呟き、フォックスは再びサイドデスクをあさる。
今度取り出したのはローションだ。
これはスリッピーから渡された物ではなく、自分で通販を利用して購入した物だった。
フォックスはオナホールとローションを見比べると、椅子をモニター前まで戻し、2つをデスクの上に置いて、いそいそとズボンのベルトを外した。
そうしてズボンの前を開け、下着を下ろし、ペニスを取り出す。
これから与えられる快感に期待して、ペニスは血流を増している最中だった。
体積を増していくペニスを見つめながら、フォックスはローションを手に取る。
目見当で必要量を掌に出すと、それをペニスに塗り付けた。
「あ……」
冷たい感覚に、小さく吐息が漏れた。
そのまま扱き上げてしまいたい衝動に駆られたが、それでは意味がないと押しとどめ、次いでオナホールを手に取った。
念の為、オナホールの内部にもローションを垂らす。
そして、恐る恐るオナホールの穴を、ペニスへと被せた。
「んっ!」
これまでに得たことのない感覚がフォックスに走った。
ただ手でしただけでも、ローションを使ったとしても、得られない快感。
内部に仕込まれた突起が、的確にペニスのツボを刺激し、上下に擦り上げるたびに複雑な刺激を与えてくれる。
潤滑剤となっているローションのおかげで、その効果はさらに倍に膨れ上がり、フォックスは快感の虜になっていた。
一連の動作の中で特に快感を感じるポイントは2度あった。
1度目はオナホールを持ち上げる時。
突起によって雁首と裏筋が擦り上げられ、そのたびにオナホールにペニスを持って行かれそうな錯覚を覚える。
特に複数の突起が裏筋の上を這うような感覚は、とろけそうなほどの快感だった。
2度目はオナホールを下げ切った時。
オナホールの奥に亀頭の先端が触れた瞬間、オナホールの奥を突き破らんばかりに腰を突き出したいという衝動に駆られる。
実際、オナホールの円筒状の形が変形する程、フォックスは力強く腰を押し出し、亀頭の先端をオナホールの奥に擦り付けていた。
その2度の快感を得たいが為に、フォックスは何度も何度もオナホールを上下に振るった。
通常のオナニーではありえない、淫らな水音と空気の破裂音を立てながら、フォックスは上りつめていく。
ペニスとオナホールの隙間から溢れ出した、ローションと先走りの入り混じった液体を、オナホールを手にしていないもう片方の手ですくい、毛皮に包まれた陰嚢に塗りつけて揉みしだく。
性器全体をローション塗れにしながら、一心不乱に快感を得ようとするフォックスの姿は、普段の彼からは想像もつかない格好だった。
口をだらしなく開け、目を半開きにして中空を見つめる。
もしもフォックスを知る者が、今の彼の姿を見たならば、彼に対する認識が改まることだろう。
それほどの今のフォックスは乱れていた。
「ふっ、ふっ、うぅ…んん……あっ…あぁ……ああ! うぁ!」
声を殺すことすら忘れ、フォックスはペニスをオナホールと共に扱き続ける。
いつの間にか机から立ち上がり、大股を広げて。
そうして、その時は訪れた。
「あっあっ、で、出る――!!!」
叫び、体を強張らせる。
強く握り締めたペニスの先端から、オナホール内部を満たし、溢れ出る程の精液が放たれた。
ペニスとオナホールの隙間から溢れたローションと先走りと精液の混合液がペニスを伝い、陰嚢を伝い、床へとボトボトと音を立てながら零れ落ちた。
と、その時、ブシュッという音を立てて部屋のドアが開いた。
「おい、フォック――」
「!!!」
音と声に驚き、体を硬直させたままフォックスが戸口を見ると、そこには同じように体を硬直させてフォックスを凝視しているファルコの姿があった。