暖かなベッドの中で彼は目覚めた。

普段なら目覚めたあとはしばらくベッドの中でまどろんでいる彼だが、今日の目覚めはまどろむとは縁遠いものだった。

彼は体にかかっている毛布を跳ね除けるようにどけると、部屋の照明をつけ、はいているズボンと下着の前を押し開いて中をのぞき見る。

「……クソッ!」

中を確認し悪態をつく彼。

下着の中は、彼の想像通りの有り様だった。

下着の前面は彼自身の放った精によって汚れ、半分乾いたそれからは独特の臭気が漂っていた。

彼はズボンと下着から手を離すと、枕元の時計に目をやる。

デジタル時計の数字は朝の4時半を表示していた。

今度は窓の外に目をやる。

が、しかし、窓の外は暗闇で、瞬く星々以外に見えるものは何もない。

彼が乗っている宇宙船『グレートフォックス』は、現在惑星間を航行中なので、それも当然のことだった。

彼は再び時計を睨み、しばし考える。

そして考えが決まるや否や、ベッドから飛び降りるとタンスを乱暴に開け、中から着替えを持ち出して、すぐさま自室を飛び出し廊下に出た。

グレートフォックスの廊下は、天井の照明が消され、光源が足元の常夜灯だけなために薄暗い。

しかし、それでも歩くのに不自由な明るさではなかったし、歩きなれた通路でもあるので、彼は足早に目的の場所、シャワールームへと向かった。

まだ夜も明けきらないこの時間帯ならシャワールームには誰もいないだろうから、安心して下半身の汚れを洗い流せる。

そう判断し、シャワールームに向かって歩く彼の足音だけが、静かな廊下に響く。

自らの足音が反響する廊下を歩きながら、彼は今朝見た夢のことを思い出していた。

裸になった自分と、同じく裸になったチームの中の1人が抱き合い、淫らにお互いを貪る夢。

現実ではありもしないはずのその夢に、彼は眠りながらにして興奮を覚え、知らず知らずのうちに精を迸らせてしまっていた。

(クソッタレ!)

彼は内心舌打ちし、夢の中での自らの行いを恥じた。

と、同時に、ある種の疑念も覚えた。

夢の中とはいえ、ありえないはずのシチュエーションで行われたその行為は、彼を興奮させ夢精に至らせたし、現実でも、行為をしていた相手に対しては友情以上のものを感じていたからだ。

その2つの事実は、すなわち彼自身がその相手に対して背徳的な好意を持っているという疑念を、彼に突きつけることになる。

(そんなバカな! ありえねぇだろ、そんなこと……)

疑念を払拭しようと、頭を振り、心の中で否定する彼。

(きっとここんところ抜いてなかったから溜まってたんだ。

 あんな夢見たのはただ疲れてたからだ。

 そうだ、そうに違いねぇ)

夢精と夢での行為の原因を導き出すと、彼は自分に言い聞かせるように心の中で呟き、まるで疑念を振り払うかのように、幾分足早にシャワールームへと歩を進めた。

彼としては、早いところこの股間の違和感と疑念をシャワーで洗い流してしまいたかった。

それからしばらくして、彼は目的のシャワールームへと着いた。

シャワールームのドアの前で溜め息をつくと、彼はドアの脇にあるスイッチを押してドアを開く。

と、ドアが開くと同時に、予想もしなかった事態が彼を襲った。

「ファルコ?」

シャワールームの中から彼に声がかけられたのだ。

この時間なら誰もいないと思っていた彼、ファルコは、この予想外の出来事に一瞬ひるんだ。

そして、思わず自身の名を呼んだ者の名を口にする。

「フォックス……」

ファルコが名を呼んだ者、フォックスは上半身裸で、シャワールームの入口に立つファルコを驚いた表情で見ていた。

「お前、なんでこんなところに……」

ファルコが尋ねる。

「いや、なんか変な夢見て寝汗かいちゃったから、シャワーでも浴びてスッキリしようかなと思って。

 そういうファルコは?」

「オレ……も、変な夢見たからシャワー浴びようかと思ってよ」

フォックスの質問に、言いよどみながらもファルコは答えた。

答えた瞬間、ファルコの脳裏に夢のことがよぎった。

夢の中で自分が裸で抱き合っていた相手、それはまぎれもなく今、目の前にいるフォックスその人だった。

「へぇ〜、お前もか」

それだけ言うと、フォックスはズボンを脱ぎ始めた。

「!!」

ファルコは思わず息を飲んだ。

こうして同じ宇宙船内で生活している以上、お互いの裸を見ることなどさほど珍しいことじゃない。

現に今までなんどもフォックスの裸を見たことがあるし、フォックスに自分の裸を見られたこともある。

その時は特に恥ずかしいとも気まずいとも感じたことはなかったが、ファルコにとって、今は別だった。

今朝の夢のせいで、フォックスの裸がまともに見られない。

反射的にうつむくファルコ。

と、そこへ、

「何やってんだ? シャワー浴びるんだろ?

 そんな所に立ってないで入れよ」

すでに下着まで脱ぎ終えたフォックスが声をかけてきた。

「あ、ああ」

ファルコは顔を上げたものの、フォックスを正視できずに、うつむき加減でシャワールームの中へと足を踏み入れた。

「?」

そんなファルコに奇妙さを覚えつつも、フォックスはシャワーのある奥の部屋へと進んでいった。

「ふぅ〜……」

フォックスが奥の部屋へ入ったことを確認すると、ファルコは溜め息と共に着替えを棚に置き、着ている物を脱ぎ始めた。

最後に、精液で汚れた下着を脱ぐと、着ていた物をまとめて洗濯機に放り込み、フォックスのいる奥の部屋へと向かった。

ドアを開け、奥の部屋に入ると、ファルコに背を向けシャワーを浴びているフォックスの姿があった。

その後姿を見て、ファルコの脳裏に再び夢のことがよぎる。

長い尻尾を垂らしたフォックスの裸の後姿は何度も見たが、ファルコにとって今日のその姿はいつもと違って見えた。

シャワーを浴び、濡れた毛皮をまとったフォックスの姿がやけに艶かしく見えてしまう。

時折尻尾が左右に動き、その瞬間に見える尻を見て、ファルコは自分が興奮していることに気付いた。

その興奮に反応し、普段は羽毛に埋もれて見えないペニスが充血し、羽毛から顔を出すのを感じる。

(クソッ!)

そんな自分に内心怒るファルコ。

そんなファルコに、フォックスが声をかける。

「どうした? 浴びないのか?」

フォックスにそんな気はないが、今のファルコには意地悪がすぎる言葉だった。

仕方なくファルコはシャワーのある部屋の奥へと進んでいく。

部屋の奥の壁には3基のシャワーが据え付けられており、フォックスはその真ん中でシャワーを浴びていた。

ファルコとしては、なるべくフォックスから離れてシャワーを浴びたいところだったが、フォックスが真ん中でシャワーを浴びているためにそうはいかず、仕方なしにフォックスの左側のシャワーを使うことにした。

シャワーの前に辿り着くまでに、すでにペニスの半分近くが羽毛から顔をのぞかせてしまっているファルコは、できるだけフォックスにそれを悟られないように、体を斜にしてシャワーの前に立ち、シャワーのコックをひねった。

やや熱めのお湯がファルコの全身を濡らしていく。

しかし、シャワーを浴びたところでペニスがいきり立つのが止まるわけでもなく、全身がくまなく濡れる頃には、ファルコのペニスは完全に勃起してしまっていた。

青い羽毛から飛び出した赤いペニスが脈打つのをファルコは感じ、なんとか鎮めようとするが、つい今し方勃起したばかりのペニスがそうそう簡単に鎮まるはずもない。

(クソッ! おさまれよ!)

ファルコが声に出したい気持ちを抑えて、内心叫ぶ。

そんなファルコの姿に、隣でシャワーを浴びているフォックスが気付かないはずもなく、

「どうした? ファルコ」

と、不思議そうに尋ねる。

しかし、ファルコは、

「なんでもねぇよ!」

と、自らに対するイラつきを発散するかのように語気を強めて答えた。

フォックスは多少面食らいながらも、ファルコの短気さはよく知っていたので気にせず、今度は話題を変えてファルコに話しかけた。

「そういえば、今日見た夢、すごい変な夢だったんだよ」

夢、と聞いてファルコの肩がピクンと動いたが、フォックスはそれに気付かずに話を進める。

「なんか、オレが皆とキスする夢なんだ。

 スリッピーやペッピー、ナウスともしたな。

 それから、お前ともしたんだよ。

 変な夢だろ? ははは」

フォックスは気軽な、たわいもない夢を見たというような口ぶりで話していたが、その内容はファルコにとってはかなりきついものだった。

(この野郎、なんてタイミングでなんて夢見てやがるんだ!)

別にフォックスが悪いわけではないのだが、夢の話を聞いたファルコの怒りの矛先は、徐々にファルコ自身からフォックスへと向けられていった。

そんなことを知る由もないフォックスは、またも気軽な口調で話を続ける。

「あんな夢見るなんて初めてだよ。

 疲れてるのかな? オレ。

 ところで、ファルコはどんな夢見たんだ?」

その言葉に、ビクンと体を震わせるファルコ。

それはファルコにとっては、今1番されたくない質問だった。

「別に……大した夢じゃねぇよ」

はぐらかそうとするファルコだったが、フォックスはファルコの様子が気になったのか、なおも尋ねる。

「どうしたんだ? さっきからお前変だぞ?」

「なんでもねぇって言ったろうが」

「でも――」

そこまでフォックスが言いかけた時、ファルコがついに怒った。

「しつけぇな! なんでもねぇよ!!!」

フォックスの方に向き直り、ファルコが叫ぶ。

しかし、次の瞬間、

『あ……』

ファルコも、そしてフォックスも固まったまま動かなくなってしまった。

ファルコはフォックスの顔を見たまま固まり、フォックスはファルコの股間を見たまま固まっている。

フォックスの視線の先には、赤く膨張したファルコのペニスが、天井に向かって突き立っていた。

「ファル……コ?」

呆気に取られたように呟くフォックス。

「お前、それ……」

フォックスがファルコの股間を凝視したまま言う。

その声に、ファルコは我に返る。

しかし、そのすぐあと、フォックスの裸体を目にした瞬間、ファルコは再び我を失った。

いきなりフォックスの両肩をつかむと、そのままフォックスを壁に叩き付けるように押し付けた。

そして、

「ファル……何を……ン!?」

言いかけたフォックスの口を自らの口で塞いだ。

クチバシを持つファルコとマズルの長いフォックスでは、軽いキスしかできない。

しかし今、ファルコはクチバシを大きく開き、フォックスの口と交差させるようにして深いキスをしていた。

フォックスの牙が多少クチバシに当たるが、今のファルコにはまったく気にならなかった。

まるで相手の口を喰らうかのようなキスをし、ファルコは強引にフォックスの舌に自らの舌を絡ませる。

ファルコとフォックスの結合部から、透明な液体が糸を引いて床に垂れ、湯に流されていく。

その間、フォックスは壁に押し付けられたまま、抵抗もせずにファルコのされるがままになっていた。

やがて長い一方的なキスが終わると、フォックスは怒った、というよりも驚いた表情でファルコを見つめた。

突然のことに、状況が飲み込めていないという表情だ。

「ファルコ……お前……」

かすれた声で何事か呟くフォックス。

ファルコはフォックスが何かを言いかける前に、フォックスの肩を引き寄せ、今度は強く抱き締めた。

フォックスの濡れた毛皮の感触がファルコに伝わる。

同時に、ファルコの怒張したペニスがフォックスのペニスにぶつかった。

部屋に沈黙とシャワーの音だけが反響する。

しばらくして、ファルコはフォックスの体の変化に気付いた。

怒張した自らのペニスを押しのけるかのように、フォックスのペニスが勃起し始めたのだ。

その変化には、ファルコよりもフォックス自身の方が先に気付き、そして戸惑いを感じていた。

だが、ファルコはそれに気付くと、肩越しにフォックスに囁いた。

「オレが見た夢、聞いてたろ? 教えてやるよ」

「え?」

フォックスの戸惑いを孕んだ声にかまわず、ファルコはフォックスを放し、その場にしゃがみ込んだ。

そして、片手をフォックスの尻に回し、片手で徐々に膨張しつつあるフォックスのペニスをつかむと、それを自らの口に持っていき、口の中に含んだ。

「うあ……!」

フォックスは声を上げ、腰を引こうとしたが、尻をファルコに押さえられているためにそれができない。

ファルコは頭を前後させ、口内でフォックスのペニスを扱くように舐めまわした。

剥けきったフォックスの亀頭を中心に、舌先を使って裏筋、カリをなぞりながら、舌全体で竿を絡める。

ファルコの責めに、口内で完全に勃起させられるフォックス。

その手は無意識のうちにファルコの頭を抑え、腰はもっと快感を得ようとするかのように前後に動いていた。

ファルコは今度は尻に回した手を使い、フォックスの尻尾を押しのけて、そこに隠されたアナルを刺激し始めた。

「あっ!」

普段感じることのない刺激に、思わずフォックスは声を上げる。

それにかまわず、ファルコはフォックスのアナルを刺激し続ける。

指で円を描くようにアナルの周りを刺激しながら、アナルのシワを広げるように押し開き、徐々にその中に指を入れていく。

「つ……ファルコ、い…痛い…!」

フォックスが苦痛を訴えるが、ファルコの耳には届かない。

しかし、口の中でフォックスのペニスが萎え始めると、アナルへの刺激をやめた。

だが、いったんフォックスのペニスから口を離し、口内に溜まった自らの唾液とフォックスの先走りが混ざった液体を手にまぶすと、それをフォックスのアナルに持っていき、再びアナルを刺激し始めた。

今度は潤滑油の影響で、アナルへ指が進入しやすくなり、ファルコが少し力を込めて押すと、ファルコの指はフォックスの中にゆっくりと呑まれていった。

「あ…入った……?」

フォックスはファルコの肩に手をかけ、ファルコのされるがままにアナルを指で犯されている。

やがて、アナルに入る指の数が2本へと増えると、苦痛で萎えていたフォックスのペニスが再び勃起を始めた。

それは明らかに痛みより快感が勝った証拠だった。

ファルコはゆっくりと2本の指でフォックスのアナルをほぐし、中を掻き乱す。

その度にフォックスの口から喘ぎ声が漏れ、ペニスから先走りが溢れて床に垂れた。

しばらくして、フォックスのアナルがほぐれたことを確認すると、ファルコは指を抜き取り、自身はその場に座り込んで、フォックスには尻を向けさせた。

そして尻を向けているフォックスの腰を両手でつかむと、ゆっくりと自らの上へと腰を下ろさせた。

ゆっくりとした動きでしゃがむフォックス。

ファルコはフォックスのアナルに狙いを定め、ゆっくりとフォックスのアナルの位置を自らのペニスの切っ先の上に調整する。

やがてファルコのペニスの切っ先がフォックスのアナルに触れると、ファルコはさらにゆっくりとフォックスの腰を下ろさせた。

「う……!」

「ああ……」

ファルコの呻きとフォックスの呻きが重なる。

ファルコの赤いペニスは徐々にフォックスの中に飲み込まれ、しばらくすると、完全にフォックスの中に埋もれて見えなくなった。

「……動かすぞ」

ファルコがフォックスの耳元で囁き、フォックスは無言でうなずき答える。

なるべくフォックスに負担がかからないように、ファルコはゆっくりと腰を動かし始めた。

といっても、タイル張りの硬い床に尻をつけているファルコは、それほど大きく腰を動かすことはできない。

それを察したフォックスが、自ら腰を浮かせ、ファルコの代わりに上下に動き始めた。

「く…ふぅ…」

「あっ…っぐ!」

2人の喘ぎ声に、グチュグチュという結合部からの音、シャワーの音が混じって部屋に反響する。

ファルコはフォックスの腰を支えていた手を前に回すと、両手でフォックスのペニスと玉を刺激し始めた。

先走りでヌルヌルになった竿を扱き、自らにはない玉の入った袋を揉みしだく。

フォックスは前と後ろを同時に責められ、息を切らしながら体を上下に動かし続ける。

ファルコの手がフォックスの敏感な箇所を責めると、その刺激でフォックスのアナルが締まり、ファルコにも強い快感の波が訪れた。

しばらくそうして快楽を貪ったあと、ファルコはフォックスのペニスへの刺激をやめ、フォックスのアナルからも自身のペニスを抜き放った。

フォックスはその行為に戸惑い、快楽に溺れた虚ろな瞳でファルコを見つめる。

ファルコはフォックスをその場に横に寝かせると、フォックスの片足をつかんで持ち上げ、再びフォックスのアナルへとペニスを挿入させた。

先程までで、十分に快楽を得ることができたファルコが今度は率先して動き、フォックスに激しく腰を打ちつける。

「ぐう…ぅ…!!」

「うあ、ぁぁ、あぁ!!」

その動きは明らかに絶頂に達しようとする者の動きであり、フォックスはそれを悟ると、自らのペニスを激しく扱き、ファルコと共に絶頂に達しようとしていた。

先程まで以上に喘ぎ声と結合部からの音が室内に反響する。

そして再挿入から約1分後、

「だ、出す、ぞ…! フォッ…クス…!!」

「あっ! オ、オレも! もう!!」

ドクン、という体内からの響きを感じ、

「うおぉおおぉぉ!!!」

「うあぁああああぁ!!!」

ほぼ2人同人叫び、体を硬直させ、2人は絶頂に達した。

ファルコはフォックスの中にありったけの精液を流し込み、フォックスは湯で濡れた床に勢いよく精液を迸らせた。

湯に触れた精液が白く固まり、湯に流されて排水溝に流れ込んでいく。

『はぁ、はぁ、はぁ……』

荒く息を吐き出す2人は、結合したまま、力なく床の上に重なるように倒れ伏した。

シャワーに打たれながら、ファルコは下にいるフォックスの耳元で呟く。

「これがオレが今朝見た夢だ」

フォックスはそれを聞き、呆れたように言う。

「お前、なんて夢見てるんだよ」

「うるせぇ、それはお互い様だろ?」

ファルコがクックッと笑いながら言うと、フォックスはつられて笑みを浮かべた。

そんなフォックスを見て、

(あ……なるほどな)

ファルコはなぜ自分があんな夢を見たのかを理解した気がした。