「あっ! はぁ……! も、もう我慢できませんっ! ダ、ダイアルフ…様……!」

「構わん、出せ、クーガ」

陽光の下、小さな森の中を流れる小川のせせらぎに、まだ少年と言えるほどの高さの声と、大人の低さを持つ声が交じる。

声の発生源は、小川の岸に腰掛けている、全身から水を滴らせた2人のフューリーロア。

一方は、クーガと呼ばれたピューマに酷似したフューリーロアの少年。

もう一方は、ダイアルフと呼ばれたオオカミに酷似したフューリーロアの青年。

2人は足を伸ばし、ダイアルフがクーガを後ろから抱え込む形で座っていた。

ダイアルフの左手はクーガの上体を支えるように胸の前に回され、右手はクーガの股間にそそり立つ男根を握りしめている。

さらに男根を握る右手は激しく上下に動き、その表面は水か、クーガの男根から分泌された粘液か、あるいはその両方かによって光り煌めいていた。

ダイアルフに急所を責められているクーガは、目を堅くつむり、大口を開けて空を仰いでいた。

開かれた口からは、荒い吐息と、変声期の少年特有の少ししゃがれた声が漏れ続けている。

少し聞くだけでは悲鳴のように聞こえてしまうその声も、よくよく聞けば快楽からくる嬌声だということが分かる。

ダイアルフの責めによって、クーガは快楽の限界まで追い詰められていた。

そして、数呼吸の荒々しい呼吸ののち、クーガの快楽の限界が訪れる。

「うわあぁぁぁぁぁ!!!」

空に向かって咆哮し、クーガは限界を迎えた。

ダイアルフの手の中で膨れ上がった男根の先端から、直上に向って精液が数度放たれる。

重力に従い落下したそれは、クーガの琥珀色の体に白い斑点を描いていった。

「さすがに多いな」

クーガの男根を握りしめたまま、感嘆したようにダイアルフが呟いた。

そして、徐々に萎えていくクーガの男根から手を離すと、クーガの体同様に白く染まった自らの右手を見る。

少しの間眺めたのち、おもむろに右手を口に運ぶと、ダイアルフは舌を出して右手に付いたクーガの精液を舐め取った。

「……ふむ。 初めての射精だけあって、精液が濃いな」

クーガの精液を飲み下し、呟くダイアルフ。

その言葉を聞き、ようやく息の整い始めたクーガが、体のいたる所に付着している自らの精液を指ですくい、しげしげと見つめる。

「これが……精液……」

呟き、半ば放心したようにクーガは精液を眺め続けていた。

己の体内で作られ、初めて外に放った精液を。

 

 

時は少し前にさかのぼる。

 

 

「ちっ! 今日はあまり日がよくないな」

クラグバークを経ってから数時間。

思わしくない狩りの成果に、ダイアルフは舌打ちした。

手には縄でまとめて縛られた数匹の小動物。

とてもではないが、彼の納得のいく成果ではない。

そんな彼のいらつきを察し、

「まあ、こんな日もありますよ」

ダイアルフのやや後ろをついていくクーガが、なだめるように言う。

彼の手にもまた、数匹の小動物がまとめて縄で縛れていた。

「ふん……」

面白くもなさそうにダイアルフは鼻息を吹き出す。

しばしダイアルフは無言で歩き続け、やがてぴたりとその歩みを止めた。

つられてクーガも歩みを止める。

ダイアルフはその場で辺りを見回し、聞き耳を立て、鼻をひくつかせる。

そして、もう1度鼻息を荒く吹き出すと、

「大物が獲れんのは面白くないが、仕方あるまい。

 今日はもうやめだ。 帰るぞ、クーガ」

後ろで待つクーガに声を掛けた。

「はい」

声を掛けられたクーガはうなずき返事をする。

踵を返すダイアルフ。

再びそれに従うクーガ。

しばらくの間を歩き、ちょっとした大きさの森が近くに迫った頃、その森に目を向けながら、ふと思い出したかのようにダイアルフが口を開いた。

「そういえば、あの森の中を小川が流れていたな」

「え?」

言われてクーガも森に視線を向ける。

そこはしばらく前に横切った森だった。

その森には、確かにダイアルフが言ったように、小川と呼べるくらいの川が流れていたのをクーガは思い出していた。

「ああ、ありましたね」

「ふむ。 少し水浴びでもしていくか。

 こんな日は、体も気分もきれいさっぱり洗い流したい。

 お前はどうする?」

「お供しますよ」

ダイアルフの問いにクーガは即答。

すぐに2人は進路を森に切り替え、再び歩き始めた。

2人が森に辿り着くと、吹き抜けた風が木々を揺らし、葉の擦れ合う音を奏でた。

その音に交じり、わずかに小川のせせらぎが2人の耳に届く。

2人は木々の合間をぬって歩き、ほどなくして目的の小川に到着した。

小川の幅は5m程度で、深さは深いところで50cmくらいと思われる。

「少し浅いが、水浴び程度にはちょうどよかろう」

言ってダイアルフは手にした獲物を下生えの上に置き、身に付けていた衣服を脱ぎ始めた。

それにならい、クーガもまた獲物を置き、衣服を脱ぎ始める。

全裸になった2人は、さらさらと流れる小川にゆっくりと足を踏み入れた。

そのまま水の流れに垂直に、もっとも深いだろうと思われる小川の中心まで進む。

ダイアルフの言葉通りに川は浅く、深い所でダイアルフの膝下程度までしかなかった。

2人はそれぞれ思い思いに水を浴び、あるいは水に浸り、体の火照りと汚れを洗い流した。

ひとしきり水浴びを楽しんだあと、2人はほぼ同時に岸に上がった。

獲物と衣服を手に、日当たりのよい下生えの上に移動する。

ぽたぽたと垂れる雫を全身を震わせて弾き、2人は並んで岸辺に腰掛けた。

小川の上に遮蔽物はなく、陽光が燦々と2人の上に降り注ぐ。

その恩恵を受けながら、2人はゆったりとした時間を過ごした。

が、ややあって、ダイアルフがクーガに視線を向けた。

そして、さっとその全身を見回し一言。

「お前もなかなかがっしりした体つきになってきたな」

「え?」

突然言われた一言に、クーガは少し驚いた様子だったが、少し考えた素振りを見せ、

「ええ、まあ。 動物の世話をしている時も鍛えてましたからね。

 狩りに出られるようになった今は、それまで以上に鍛えてますよ」

と、笑顔を交えて答えた。

「そうか」

それを聞いたダイアルフは、満足気に口元をほころばせた。

クーガはやや気恥ずかしそうに照れ笑いをし、視線を逸らしてぽつりと呟く。

「……それに、早くダイアルフ様のお役に立ちたかったですからね」

「ん?」

「あ、いえ、なんでもないです!」

慌てて取り繕うクーガ。

その様子を不思議そうに見ていたダイアルフだったが、ふと真剣な表情をして、クーガに尋ねる。

「ところで、お前は今年でいくつになる?」

「今年で13になります」

「13か……そうか……」

クーガの答えを吟味するように瞑目し、呟くダイアルフ。

今度はクーガがその様子を不思議そうに見つめる。

しばしの沈黙ののち、口を開いたのはクーガだった。

「あの、それが何か?」

「ん? いや、そろそろ教えた方がいいかと思ってな」

クーガの問いに、ダイアルフが答え、視線を下ろす。

視線の先はクーガの股間。

そこには亀頭の半ば過ぎまで皮を被った男根が、だらりと垂れ下がっていた。

視線に気付き、クーガは恥ずかしそうに両手で股間を覆う。

その行動を見て、ダイアルフが笑う。

「今さら隠すこともあるまい」

「いや、でも…………それより、なんですか?」

「うむ。 クーガ。 お前、射精したことはあるか?」

「しゃ……せい?」

聞き慣れない言葉に、クーガが聞き返した。

ダイアルフはうなずき答える。

「うむ。 イチモツから精液を出したことはあるか、ということだ。

 精液というのは白っぽい液体でな。 どうだ?」

「いえ、そんなものは出したことがないです」

「そうか」

答えてダイアルフは再び瞑目する。

そして少し考える間を置き、

「年齢的にも体格的にも、もうお前も一人前の男、そろそろ教えてもよかろう」

と言うと、立ち上がり、クーガの後ろに回り込んで腰を下ろした。

同時に、左手をクーガの胸の前に回り込ませ、抱きかかえる。

「ダイアルフ様? あの……」

「お前はじっとしておればよい」

「あの、でも……って、うわっ! 何をっ!?」

クーガが声を上げる。

原因はダイアルフの伸ばした右手だった。

クーガの脇腹の横から伸びたダイアルフの右手が、だらりと弛緩したクーガの男根をがっちりと握っていたためだ。

いきなり襲ってきたその刺激に、クーガは戸惑う。

しかし、そんなクーガに構うことなく、ダイアルフは行動を続けた。

握ったクーガの男根をゆっくりと揉みしだき、上下に動かす。

半ば過ぎまで包皮に包まれていたクーガの亀頭が、ダイアルフの手の動きに合わせて顔を見せては隠れた。

「ダイアルフ様……あの……?」

戸惑いの声にわずかに高揚の色を混じらせ、クーガが問う。

ダイアルフは手の動きを止めないまま、クーガの方に顎を乗せて答える。

「こうしてイチモツを刺激せねば射精はせん。

 お前は俺の手の動きを見ていろ」

「あの……でも……」

「いいな?」

「…………はい」

有無を言わせぬダイアルフの言葉に、クーガは答え、沈黙した。

ダイアルフの右手は、クーガの男根を上下に、時にぶら下がった袋を、時に剥き出された亀頭を刺激し、クーガの体に快楽の電流を徐々に流していった。

その様子を言われたままに見つめるクーガ。

そうしているうち、クーガの男根が変化を始めた。

ダイアルフの右手の中で徐々に硬さと大きさを増し、上向き始める。

「これが勃起だ」

刺激を続けながらダイアルフは説明する。

「こうなったことは?」

「……朝起きた時とかに……」

ダイアルフの問いに、クーガは正直に答えた。

と、徐々にクーガの息が浅く深くなっていくのに、ダイアルフは気付いた。

「どんな気分だ?」

「……なんだか、不思議な気分です……くすぐったい……気持ち、いい……?」

「そう、気持ちのいいものだ。

 こうしてイチモツを刺激しているうちに、段々と気持ちがよくなっていく。

 そして、それが限界まで達した時、射精は起きる」

「しゃ……せい……」

「そうだ」

やり取りのうちに、ついにクーガの男根は完全な勃起を果たす。

それを見て、ダイアルフは感嘆の言葉を漏らした。

「ふむ、なかなかの大きさだな」

その言葉が聞こえているのかいないのか、

「……はっ……はっ……はっ……」

クーガの息が少しずつ荒くなっていく。

その吐息と小川のせせらぎ、木々の葉の触れ合う音が交じり合い、2人の周りにはある種の異様な雰囲気が漂っていた。

ダイアルフの手によって形を変えた自らの男根を見ながら、クーガは囁くように言う。

「ダイアルフ様は……射精したことが……?」

「無論だ。 俺は4年ほど前に王から教わった。

 ちょうど今の俺とお前のようにな」

答えながら、ダイアルフは淡々とクーガの男根を扱き上げた。

そうして、それからしばらく。

クーガが自らの体に大きな変化が起きたことに気付いた。

男根の付け根の奥の奥、そこに何か熱いモノが集まっていく感覚。

尿意とはまた違う、これまでに味わったことのない感覚。

慣れた者ならばそれが快感であることが理解できるのだが、これが初めてであるクーガには、快感というよりも、どちらかといえば不可思議な感覚としてとらえられた。

「ダイアルフ様……」

「ん? どうした?」

「あの……の奥が、何か…変です……」

「……そろそろ、だな」

「……?」

疑問符を浮かべるクーガをよそに、ダイアルフの手の動きは速まっていく。

「ひっ……ぅあ……」

刺激の速度の上昇に、クーガの口からは無意識のうちに声が漏れ始める。

男根全体が、さらにはその奥がむずむずとし、それ自体が自分そのものであるかのように、今のクーガには感じられた。

全身の感覚が薄れているような気がし、それどころか、意識さえも薄れていくような気もする。

ここにきて、クーガはようやく今自分が味わっている感覚が快感であるということを認識できた。

薄れた意識の中で、快感が本能に火を付ける。

その本能は、クーガの脳に1つの命令を出した。

それは射精をするという命令。

本能から命令を受け取った脳は、即座にその命令を男根に伝えた。

そして――

 

 

ぼうっとした表情で自らの精液を眺めるクーガ。

そんなクーガを見て、ダイアルフが声を掛ける。

「すっかり汚れてしまったな。

 洗い流してこい、クーガ」

「あ……はい」

言われて我に返り、立ち上がって小川で体を洗い流す。

毛皮に付着した精液はことのほか落ちにくい。

悪戦苦闘しながらも、しばらくしてクーガはすべての精液を洗い流した。

そして振り向き、戻ろうとする。

その時。

「……ダイアルフ様……」

クーガの目に、ダイアルフの体の一点が飛び込んできた。

それはダイアルフの体の中心でそそり立つ男根。

クーガのそれよりも一回り以上は大きいだろうその男根は、亀頭を完全に露出させ、先端からは明らかに水とは異なる液体を溢れさせていた。

勃起した男根を見られたダイアルフは、

「お前のモノを扱いていたら、つい、な」

やや決まりの悪そうな表情で言った。

「まあ、じきに納まるだろう」

「…………」

ぴくりぴくりとしゃくり上げるダイアルフの男根を見ながら、クーガが岸に上がる。

その表情は、どこか虚ろ、というよりも、高揚していて正常な思考ができずにいる者のそれに見えた。

クーガは水を滴らせたまま、座っているダイアルフの目の前まで歩み寄る。

「? どうした、クーガ?」

「…………」

尋ねるダイアルフに、しかしクーガは答えない。

だが、クーガはやおらその場にしゃがみ込むと、ダイアルフが予期しなかった行動を起こした。

右手でダイアルフの男根を掴んだのだ。

「おい!?」

これにはさすがにダイアルフも驚きの声を上げた。

クーガはダイアルフの驚きの声も意に介さず、たった今自分がされたことと同じことをダイアルフに反し始める。

「クーガ!」

ダイアルフの抗議にも似た声を無視し、クーガはダイアルフの亀頭から溢れた粘液に手をまみれさせ、ダイアルフの男根を上下に激しく扱いた。

「う……ぐ……」

低く呻くダイアルフ。

クーガの手の動きは、初めてであるためと他人にするためもあってややぎこちないが、それでも今のダイアルフにとっては充分過ぎる快感であった。

やがて、ダイアルフは全身の力を抜き、クーガの行うに任せ始めた。

一心不乱に自らの男根を扱くクーガを見下ろし、ダイアルフは無意識のうちにその頭に手を添え、まるで子を褒めるようにクーガの頭を撫で付けた。

そのお返しとばかりに、クーガからの刺激が強まる。

男根を扱く右手に加え、左手は掌で亀頭を円を描くように撫で始める。

おそらく、さきほど自分がされて気持ちの良かったことをそのまま返そうとしているのだろう。

クーガはダイアルフの男根を扱きながら、亀頭を、袋を、先のダイアルフの動きを真似て刺激し続けた。

「ん…ふぅ……ん……」

ダイアルフの息が荒くなっていく。

そのことを察知し、クーアが顔を上げ、ダイアルフを見つめる。

「ダイアルフ様……気持ちいいですか……?」

その問いに、ダイアルフはうなずいて応えた。

それを見て、クーガは嬉しそうな表情を一瞬浮かべる。

そして次の瞬間。

「うおっ!?」

ダイアルフの全身に衝撃が走った。

男根に感じるぬるりとした生暖かい感触。

ぬめついた柔らかな物体が男根全体を包み、蠢く感触。

驚きに見開いたダイアルフの目に映っているのは、頭を伏せ、ダイアルフの男根を口に含んだクーガの姿だった。

両手でダイアルフの男根の根を押さえ、その男根を咥え込んだまま頭を前後に振る。

そのたびに、ダイアルフの全身に衝撃が走り、えもいわれぬ快感がダイアルフを襲った。

その快感は、ダイアルフから、クーガを咎める言葉も、行動をも奪っていった。

クーガは頭を前後に振りながら、時折男根を口から出して、舌で舐め上げる。

その様子は、まるで動物が自らの男根を舐める様子そのもののようにも見えた。

口に含んでは頭を動かし、時に舐め上げ、扱き、また口に含む。

クーガがそんな行動を繰り返すうち、ダイアルフの限界が近付いてきた。

ダイアルフはクーガと違い、これまで何度となく射精の経験がある。

そのため、クーガのように戸惑いを覚えることもなかったが、それでも射精が間近になると全身と意識が薄れるような錯覚に陥ることは避けられない。

ましてや、その射精が他人によってもたらされるならば。

「クーガ……もう、限界だ……!」

ダイアルフは自らの絶頂を予告し、クーガの頭に手を乗せて引き剥がした。

クーガの口からダイアルフの男根が姿を現すその刹那。

「ぐおぉぉぉぉぉっ!!!」

獣の咆哮を発し、ダイアルフの男根から多量の精液が放たれた。

それはクーガの出した精液量を上回り、飛び出す勢いも強力だった。

しかも、男根は手で押さえられてもいない状態であり、射精によって何度もしゃくりあげられている。

そのため、放たれた精液は方向性を乱し、辺りに広く飛び散った。

当然、すぐ前方にいたクーガには、ダイアルフの精液が容赦なく降り注ぐ。

クーガはダイアルフの精液を避けようともせず、目を閉じて受け止めていた。

「はっ…はっ…はっ――」

ダイアルフの呼吸は乱れ、肩で大きく息をしている。

股間の男根は徐々に硬さと大きさを失い、やがてだらりとその場に垂れ下がった。

しばらくして、射精の余韻もさめ、頭も回転し始める。

「……クーガ」

ダイアルフは目の前でかがんでいるクーガに声を掛けた。

しかし、クーガは肩を上下させ、答えない。

「? どうした?」

ダイアルフが肩に手を掛け、クーガの上体を引き起こすと、クーガもまた、自らの手で男根を扱き、下生えの上に射精を果たしていたところだった。

「ダイアルフ様……すいません、俺……」

射精後で興奮もさめ、冷静になったことで自分のしてしまったことを申し訳なく感じたのか、クーガは申し訳そうにダイアルフの名を呼んだ。

クーガの言葉からそのことを察したのか、ダイアルフは鼻で小さく笑い、クーガを励ます。

「何、気にするな」

しかし、クーガは首を横に振る。

「俺、ダイアルフ様の姿を見たら、頭の中が真っ白になって……それで、つい……」

消え入りそうな小声で言うクーガ。

今度はダイアルフが首を横に振った。

「気にするなと言っている。

 あんな姿を見せてしまった俺にも非はあるのだからな。

 それより……」

言って、そっとクーガの顔に手を添えるダイアルフ。

撫で付けるように指を動かすと、その指をクーガの目の前に指し示す。

その指には、ダイアルフの放った精液が。

「お互い、また水浴びをし直さねばならんようだな」

 

 

それから2人は再び水浴びをし、全身の汚れを落とし、そして再び陽に体を晒した。

岸辺に降り注ぐ陽は暖かく、ダイアルフは下生えの上に横になり、すっかりくつろいでいた。

一方でクーガは座り込んだまま、時折ダイアルフの方をちらちらと見てはもぞもぞと体を動かしている。

その様子はダイアルフの目にも入ったが、彼はあえて何も言わず、気付かないふりを装っていた。

そしてしばらく経った頃、下生えの上に放り出されていたダイアルフの手に、クーガの手が触れた。

指先がぶつかったというようなものではなく、明らかに意識的に触れているのが、ダイアルフにも分かった。

さすがにこれには気付かないふりをするわけにはいかない。

首を動かし、クーガを見、呼び掛ける。

「どうした、クーガ?」

するとクーガは慌てて、

「あ、いえ、その……すいません……」

言って、ダイアルフの手から自分の手を離した。

気になったダイアルフは体を起こし、クーガに尋ねる。

「どうしたのだ、クーガ?

 お前らしくもない。

 何かあるならはっきりと言うがいい」

ダイアルフにしてみれば決して怒っているわけではなかったが、クーガにはそれが怒られたと感じられたようで、すっかり縮こまってしまって、ただ、

「すいません……」

とだけ、謝ることしかできないようだった。

そのことに気付いたダイアルフは語調を和らげ、同じ内容の言葉を掛ける。

「口に出して言わねば分からんぞ? どうした?」

それが功を奏したのか、クーガがおずおずとダイアルフを見て言う。

「……なんか変なんです、俺。

 その……ダイアルフ様のこと……そういうわけじゃないけど……俺……」

言葉に詰まり、再び沈黙するクーガ。

その様子を、ダイアルフは黙って見つめる。

少しして、クーガが再び口を開いた。

「……俺、ダイアルフ様に憧れてます。

 格好良くて、強くて、厳しくて、優しくて……」

「……クーガ」

「でも、違うんです。

 今、俺が感じてるのは、そうじゃなくて…………憧れとは違う、何か…………」

「…………」

「……駄目ですね、俺。

 何言ってるんだろう……ははは……」

自嘲の苦笑いを浮かべるクーガ。

そんなクーガを、ダイアルフはじっと見つめていた。

が、ダイアルフはおもむろにクーガの肩を掴んで、自分の正面を向かせた。

「――っ!」

突然のダイアルフの行動に、クーガの動きが固まる。

正面を向かせたクーガの体で、一番にダイアルフの目に飛び込んできたのは、勃起したクーガの男根だった。

ダイアルフはそれをちらりと見て、クーガの顔を見つめる。

クーガは気まずそうに顔をそらした。

事を察したダイアルフは、クーガの肩を掴んだまま、優しい口調で言った。

「クーガよ。 お前が俺を慕ってくれていること、それは素直に嬉しく思う。

 そして、お前が今、俺に抱いている感情も、俺は理解できるし、嬉しくも思う。

 だが、俺はそれに答えてやるわけにはいかん。

 そのわけは、お前にもいずれ分かる日がくる」

「…………」

「だが……」

クーガの肩から下ろされたダイアルフの右手が、萎えつつあったクーガの男根を握る。

「あっ……」

小さく声を漏らし、クーガがぴくりと体を震わせた。

同時に、ダイアルフの手の中で、クーガの男根が再び膨張を始めた。

クーガは自分を見つめるダイアルフの視線を正面から受け止める。

しばし見つめ合う2人。

そうしている間にも、クーガの男根はすっかり硬さを取り戻し、ダイアルフの手に握られたまま、びくんびくんと震え始めていた。

そして、沈黙を破ったのはダイアルフだった。

「これくらいのことならしてやれる。

 …………いや、こんなことしかしてやれないが、それでもよいか?」

優しさに申し訳なさを混じらせて問うダイアルフ。

問われたクーガは、嬉しさと切なさを混じらせた声で、ただ一言、

「……はい……」

とだけ答えた。

そして、2人のフューリーロアの体は、陽光の下で静かに重なり合った。