禁忌の間

〜撫子の間〜

 

 

「なぁ…。
 こんな時に聞いて良いか?」

「何?」

「今朝、どうやって部屋に戻ったんだ?
 気が付いたら、夜慧いなかったし。」

「そ、それは…。
 あの…ほら…よく分かんないけど…。」

「そんなもじもじしてたら分かんないー。
 それに、こんな近くでもじもじされたらくすぐったい…!」

「む…。
 あ、あれはお兄ちゃんだって悪いんだから!
 私、あんなこと一度もしたことなかったのに!」

「な…!
 何で僕のせいにするんだよ〜。
 元はと言えば、夜慧が…。
 の前に、僕が素っ裸でいたんだっけか。」

「そうだよー?
 それで私…お酒の勢いで…つい…。
 あんまり覚えてないけど。」

「そっか、それは何か…悪いことし…てないよな。
 どっちも悪くないじゃないか、この場合。
 それに、論点がずれてるぞ!
 今僕は夜慧が、あんな体でどうやって戻ってったかってことで。」

「〜…!
 だって…起きたら…。
 体には…夕君の体液がついてるし、私の方も…。
 それに気が付いて、静かに布団を抜け出して、慌ててお風呂に入りに行ったんだから!
 分かる?!
 誰かに見つかったらどうしよう、って考えながら頑張ったんだから!」

「あ、はいはい…。
 分かった、分かったから落ち着いてくれ…。」

 

夜慧の目は、すごく真剣だった。
それはもう、本当に彼女にとっては死活問題だった、と語っていた。
しかし、そんな夜慧を見て、夕は可愛いと思った。
自然と、言葉にしていた。

 

「…可愛いなぁ、夜慧は。」

「…夕君、そんなこと言っても許さないよ?」

「いや、今のは本心だぞー?」

「じゃ、じゃあ…。
 私、今度はちゃんと…したい。」

「ん?
 何を?」

「お、女の子から言わせるの…?
 もう、分かってよ…。」

 

勿論、夕は夜慧の言わんとすることが分かっていた。
それでも分からない振りをする。
単純に、妹を何となくいじめてみたい、そう思って。
ところが、夕は次展開を予想だにしていなかった。
そっと触れられたことで、それに気が付いた。

 

「?!」

「ほら…、お兄ちゃん、もう硬いじゃない…。」

「ど、どこ触ってるの?!」

「お兄ちゃんの…。」

「しかも何でお兄ちゃん…?!」

「ほら、硬いよ?」

「ふぁぁ…。」

 

ゆっくりと、華奢な手の平で撫でられる。
それは鈍く鋭い、静かな快感。
それだけで夕は果ててしまうような気がした。

 

「ま、待って!
 そんな風に触られたら、もう出ちゃう気がする!」

「ふふ…。
 夕君、意外に早いのね。
 昨日の夜は、そこまででもなかったけど。」

「って、やっぱり覚えてるんじゃないか!」

「何だろう…。
 今は…昨晩と同じような気分なの。
 体が熱くて、恋しくて…。
 夕君の匂いを近くに感じるだけで、酔ってるような気分になっちゃう…。」

「…僕のせい?」

「分からない。
 でも、こんな気分もたまには良いと思う。
 いつもこんなだと、普通に過ごせなくなっちゃうけどね。
 夕君…しよ?」

 

ひどく妖艶に思える夜慧。
月明かりが照らすこの空間が、より一層夜慧の淫靡さを引き立たせる。
ただそれを見て呆然としている夕を見兼ね、
仕方が無いので夜慧から攻めることにした。

 

「もう…。
 夕君、そういうことで頭がいっぱいのくせに、
 今は頭が働かないのかな?」

「い、いや、別にそういうことじゃ…。」

「じゃあ、私から脱いであげる。」

 

単に、夕は何して良いのか分からなかったのである。
どこからも性交渉の知識など得られない。
だから何をして良いのか分からない。
ただ、性器と性器を繋ぐ、ということしか。

無音でゆっくりと立つ夜慧は、この上も無く色っぽく、
そして何より大人の美しさというものを持っているような気がした。
昨日のように、するりと着流しを脱いでいく。
月の下にさらされたのは、一人の少女。
成人したとは言え、未だ発展を続ける裸体。
月の光により、きらりと輝くものが夜慧の内大腿を伝う。
それが夜慧の興奮を示すものだった。

 

「ほら…ね?
 私、おかしいの。
 昨日から。」

 

昨晩が全ての始まりだった。
常に禁忌に置かれていた二人。
夜慧。
そんな性質は無かった。
昨晩の情事、夕の精液。
出来事と匂いが、夜慧の中から何かを呼び覚ました。
それがこの結果。
夜慧は、ある一定条件下で、今のような淫らな猫になるようになってしまったのである。

その姿で、もう一度布団に入り込み、
今度は夕を抱く形となる。

 

「こんな…ふしだらな妹はいや…?」

「そんなわけないだろ♪
 僕は夜慧の全部が好きだからね。」

「…ありがとう。」

 

夕の言葉に笑顔し、一時の安堵を感じる。
それが確認の言葉だったかのように、
夜慧は夕の手を自らの陰部へと誘った。
悟ったように、夕は潤う部分から汁を掬い取るようにして撫でる。

 

「ん…ぁ…。」

「温かいな。
 夜慧って感じがする。」

「どんな…ぁっ…感じなの…?」

「その通りだよ、うん。」

「…ぅ…。」

 

何かの苦しみに耐えるように、それでも笑顔を維持する。
その顔は、夕にはとても淫らな姿に思えた。
先程から硬くなっていた夕自身も、さらに力を得るように硬さが増す。
それに気が付いたのか、夜慧もまた手を伸ばし、
もう一度さするように、撫でるように夕の陰部に触れる。
着流しの間をすりぬけ、下着を掻き分けるようにして。
ついに、そこへ辿り着く。

 

「あは♪
 昨日より硬い…。」

「ふぅぁ…。
 そう握られると…力が出なく…なるなぁ…。」

「それに、もうぬるぬるしてる…。
 元気一杯なのね、昨日も出したのに。」

「そ、それは…。
 それが男というか、何と言うか!」

「そんな、卑猥なお兄ちゃんも好きだよ、夕君。」

「あはは…。
 嬉しいような、複雑だなぁ…。」

 

話をしている間にも、夜慧は巧みに夕の下着を剥ぎ取る。
いつの間にか、着流しの帯も解かれていた。
残ったのは、はだけた着流しと起立している雄そのものだけ。
夜慧はかけ布団をのけ、それをじっと見つめる。

 

「そ、そんなに見るなよ…、恥ずかしい…。」

 

これが今まで見てきた兄の、初めて見た男を象徴するもの。
皮はめくれ、大きく律動し、先端は溢れ出した性欲が形となって輝かせている。
時々露が溢れては、ゆっくりと兄の腹部へと落ちていく。
そしてまた、露ができる。
まるで、壊れた水道管のように、それは繰り返されていた。
ぽたり、ぽたり。
それは酷く淫靡で、狂おしいほどに愛しいと夜慧は思った。

 

「夕君、こんなに硬くして…。」

「あ、あんまり見るなよぉ…。
 見られるだけで、何か興奮しちゃうんだから。」

「それだけで興奮しちゃうの?
 なら、このまま見てようかなぁ。
 私も、夕君のを見てるだけで…ほら。
 もうべとべとになっちゃう。」

 

見ると、確かにその通りだった。
夜慧の内股を伝う液体が、先程よりさらに増えている。
のんびりとした小川を連想させるそれは、
次から次に溢れていくようだった。
そしてそれを見た夕が、さらに興奮を覚え、
自らの猛りからさらなる雫をこぼしていく。
二人の興奮が比例するように、内から湧き出す性欲も膨らんでいった。

 

「あらら…。
 夜慧、僕、もう我慢できそうにないや。
 僕に入れさせてよ…。」

「私も、入れて欲しいかな。」

「でもその前に…。」

「ん…。」

 

深く愛し合うものだけが、舌と舌を交わらせる口付けをする。
それはどこで仕入れた知識なのだろうか。
いつの間にか、彼らはそうしていた。
唾液と共に、自らの感情を交換するように、執拗に唇と唇を。
舌と舌を重ね合わせる。
激しく、優しく。
一体どれくらいの間、その愛撫が続いただろう。
気が付けばお互いの息は切れ切れになり、目は少し虚ろ。
それでも相手を求める心。
二人は、性欲の果てに辿り着いた。
夜慧が上になっていた体勢を崩し、今度は夕が上に来る。
そして見下ろす。
夜慧の目は、既にただ一つの欲望に駆られていた。
それを分かっていながら、敢えて夕は夜慧に問う。

 

「入れて、欲しいか…?」

「入れたいんでしょ?」

 

逆に返される。
しかし夜慧の言う通りだった。
支配権は夕にあるようで、実は夜慧にあったのかもしれない。

 

「…うん。」

「じゃあ、ゆっくり、入ってきて。」

「分かった。
 行くよ…?」

「うん…。」

 

馴らしてもいないのに、そこは既に潤いすぎていた。
夕の陰茎のサイズは決して小さくはない。
大きくも無いのだが。
それでも、処女なら少しは痛がるはずであった。

ぬぷぷ…。
ゆっくりと、夜慧の言う通り、
優しく夕は肉の壁を通り抜けていく。
最初は亀頭。
ぷっくりと太ったそこは、ゆっくりと夜慧の大きな口へと飲み込まれていく。
そして竿。
襞が絡みつく。
まるで、本当に夕自身を愛撫するかのように。
じきに夕の全てを、夜慧は受け入れきった。

 

「何だろう…。
 初めては痛いって聞くのに、全然痛くないや…。」

「…。」

 

夕は返事をしない。
いや、できない。
ただ進入しただけなのに、予想だにしない快感が夕を襲っていた。
今は動かないことしかできない。
気を許せば、電気信号が頭から一気に駆け巡り、一瞬にして果ててしまう状況だった。
快感に耐えるというのは、想像もできないほどの苦痛だった。

 

「ぅ…。」

「夕君?
 大丈夫?
 私が痛くなかったから、夕君が痛くなったの?」

 

真逆である。
性交渉をしたことの無い男子は、
初の性交渉時にあまりの快感で入れてすぐ果ててしまうということがある。
まさに、今それを夕は体験しているわけだ。
夜慧がどう言っても、まさにそれは口と同じ。
夕から精液を吸い取る、淫らな口だった。
そこに入ってしまった夕は、もう既に逃げ出すことはできない。
ゆっくりと全部入れてしまったが故に、引き返せない。
引き返せば、このまますぐ精液を射出してしまうだろう。
今はただ、耐えるしかなかった。

 

「ぅぅ…。
 やばいな…これ…。
 想像以上に…気持ちが良いぞ…。」

「本当?
 そう言ってくれて嬉しいな♪
 私はねー、今心がいっぱいって感じかな。
 今、ようやく夕君と一つになれた気がする。」

 

うまく言葉を紡げない夕を他所に、夜慧は満足感でいっぱいだった。
だからこそ、夕には動いて欲しかった。
が、なかなか動いてくれはしない。
それはさすがの夜慧も、理由くらいはすぐ分かった。

 

「や…ばいな…。
 これ、全然慣れない…。
 もう…我慢の限界かも…。」

 

限界だった。
既に、夕の鈴口からは少しずつ先走りではなく、
白く熱い欲望の種子が零れつつあった。
零れているだけで快感は続く。
それを我慢しているのだから、夕は最初にしては優秀と言えるだろう。

 

「あぁ…!」

 

夜慧が少しずれるだけで、快感が喜びに似た痛みに変わる。
実際には痛みを伴ってなどいない。
しかし、これは確かに痛みであり、苦しみであった。
とくり、とくりと、夕からは既に解き放たれている。

 

「夕君…。
 苦しい?」

「……ぅ…ん…。」

「そっか。
 …ん…。」

 

たった一度の、夜慧からの一運動。
そして我慢の限界に達する。

 

「や、夜慧ぇっ…!」

 

あまりの苦痛に顔が歪んだ。
妹の名を呼ぶと共に、我慢は爆発に切り替わった。
亀頭はこの上もないほど膨れ上がり、陰嚢は萎縮し、
ついにその時を迎える。
我慢しただけ、その勢いは増した。
濃密な白い濁流は、次から次へと夜慧の肉壺に解き放たれていった。
どくん、どくん、どくん、どくん。
止まることを知らないその勢い。
何度も何度も、熱い思いを込めた欲望を、夜慧の内へと叩きつける。
そして、植えつける。
苦しみの顔が安らぎに変わっていく。
つまり、発散を意味していた。

一方夜慧は、中に吐き出される種子の熱さに驚いた。
普通は感じることなどないはずだが、それは思った以上の熱を帯びたものだった。
叩きつけられるたびに分かる、その濃厚さ。
肉壁を跳ね除けるかのように痙攣する肉棒の感覚。
それがとても快感で、夜慧はその快楽に打ち震えていた。
そして、数十秒と続いた射精が、順番に収まっていった。

 

「…ぁっ、はぁっ…。」

「お疲れ様、夕君。」

「ご、ごめんな…。
 僕、いつもはもっと長く持つのに…。
 一人でやるのと、やっぱり勝手が違うね…。」

「大丈夫よ。
 だって一度出したってことは、次まではもうしばらくかかるってことだし。
 楽しめると思うの♪」

「ちょ、ちょっと待て、夜慧!
 お、男の子はある程度休みが無いと、超きつ」

「聞かなーい。
 …んぅ…ん…。」

「ふあぁぁぁぁぅっ!
 ちょっとぉぉぉぉっ!」

 

問答無用に、夜慧は腰を降り始める。
本当に今はただの苦痛である夕は、一生懸命そこから抜け出すことに専念する。
が、抜けない。
何故か抜けない。
こっちが出し入れするものなのに、
まるでこっちは出し入れさせられているものになっているような感覚。
立っていられなくて、ついに夜慧の体へと崩れ落ちる。

 

「ぅぅ…。
 や…ぁぇぇ…。」

「あぁっ!
 感じる、感じるよぉ…!
 夕君の、丁度良いよぉ…!」

 

悶えている夕。
しかし動く夜慧。
悶えているだけの夕を見かねて、入れたままで体位を変更。
その早業は誰もが感服するであろうものだった。

 

「ほら、これで夕君は動かなくても良いでしょ?
 私に任せてれば、夕君はまた慣れてくると思うの。」

「んなこと…言ったってぇぇ…。」

「じゃあ動くね♪
 ふぅ…あぁ…、この感じ、やっぱり…良い…。
 こんなに…性交が…気持ちの良いものだ、なんてぇ…。」

 

初めての強い快感。
こんな快感、今まで感じたことも無い。
感覚に酔いしれる夜慧は、既に下で悶えている夕のことは気にしていなかった。
一つになれている。
心も体も。
それに加えて、何より至福の快感。
何一つ悪いところは無い。
痛みも無い。
これが性交渉。
それを認識し、さらなる深みへと目指す夜慧だった。

 

「あ…ぁぁっ!
 当たる!
 擦れる!
 すごく良いところに…んんぁっ!
 良いよう、気持ち良いよぅ…!」

「ふぅ…ぁぁ…。
 また気持ち良くなってきたぁ…。」

 

ついに、苦痛を通り越した夕。
それを聞いて嬉しくなり、さらに運動を激しくする夜慧。
今、まさに二人は同じところを目指していた。
慣れてきて、さらに快感を貪ろうと、
夕は下から夜慧の動きに合わせて突き上げる。
それに悦んだ夜慧が、さらに肉襞を締めて夕を悦ばせる。

 

「夕君っ、気持ち良いっ!
 それっ、気持ち良いっ!」

「夜慧っ!
 夜慧ぇっ!
 僕のこと、好きか?!」

「好きだよぉ!
 大好きだよぉ…!」

「じゃ、じゃあ、一緒に…一緒に…!」

「うんっ!
 うんっぁ!
 い、一緒に…!
 夕君っ!
 もう私…!」

「僕も、今…!」

「「あっあああぁぁぁぁっ!!!」」

 

ついに、到達。
夜慧の陰唇からは、大量の涎が零れだし、
さらに夕の陰茎からは、先程と同等の濃度と量の精液が噴き出す。
お互いの体液がぶつかり合い、勢いの果てに零れ落ちる。
夕の肉棒から伝っているのは、愛液でも精液でもない。
それが合わさった一つの愛とでも呼べるものだった。
初めてにしては激しく動いたためか、
二人ともが肩を上下させる程の息切れをしている。
未だ脈動する互いの性器を感じつつ、ようやく虚ろな目ながらも見つめ合う二人。
数刹那、息だけの沈黙が続く。

 

「あは…、夕君、また出しちゃったね…♪」

「夜慧が…強引、だったからだろ…♪」

「そうだね…。
 でも、どうだった?」

「最初は、苦しかったけど…でも、すごく良かった♪
 僕達、繋がってる〜って感じがしたね。
 …本当にごめんな、いきなり出しちゃって。」

「ううん、良いの。
 私も気持ち良くなれたから…。
 でも夕君、これだけは知っておいてね?」

「ん?」

「私たち、昼間は兄妹なんだからね?」

「じゃあ夜は熱い恋人同士だな♪」

「それは否定しない。」

 

落ち着いてきたので、ようやく体を離そうとする。
が、夕がそれを静止する。

 

「このまま寝ちゃ、ダメ?」

「えぇ…。
 だっていつ抜けちゃうか分かんないし、
 それに夕君…苦痛だって言ってたじゃない…。
 まず、どういう体勢で寝れば良いんだか…。」

「こうして…よっと。」

 

側位の向きに変わる。
いつの間に、そんな知恵が生まれたのだろうか、彼は。

 

「ほら、これで楽だろ?」

「そ、そうだけど…。」

「じゃあこのまま寝よう!
 んじゃおやすみなっ♪」

 

軽い口付けを交わすと、その日は兄妹共々、
同じ頃合いで寝息を立て始めた。
次の日の朝には、夜慧の予想通り見事に抜けてしまっていましたとさ。

 

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