遠い昔
3.(交合)
この話には成人向け表現、特に同性愛の要素が強く含まれています。
僕はまだ、この時ここがどういう世界なのか、いまいちよく分かっていなかった。
ここが、はけ口の無い場所で閉じ込められた人たちが、
一体どういう行動に出るかということに。 知らない世界があることは知っていた。 後々、降りかかることは知らなかった。
一部を除いて、基地内はとても静かだった。 それはそうだ。 一日中歩いたんだから、そんなもの疲れるに決まってる。 オレだってすぐ寝たい。 しかし、これを月一で書くのが日課だから…。 こうして机に向かって、慣れもしない手紙なんぞを書いているわけで。 そんな時だった。 ノックが鳴ったかと思いきや、普通に扉を開けてやってくるヤツ。 そういう族は一人しかいない。
「さーくやっ♪
遊びに来たよ〜。」
「遊びに来たって、お前は…。
任務の最中だろうがぁ。」
「だってー、みんな寝ちゃってるか、
しちゃってるかのどっちかなんだもん…。」
「………はぁ…。
遠征一日目にしてこの状況とは、いやはや雄ってすげぇもんだなぁ。
しかも今回の団には、見事に女がいない。
そうなると、まぁ当然男同士でやることになるわな。
そんな状況にももう慣れっこだけどさ。
つーか元気あるなら訓練しろ訓練。」
「慣れっこかー、そだね〜。
咲夜、いつもアンアン嬉しそうだもんね〜♪」
「う、うるさいな!
そういうことで慣れっこって言ってるわけじゃねぇよ!
それにしても、まだ一日目だぞー?
一体どうなってることやら。」
「今日は満月だよ〜。
それでサカリが来ちゃってる人も多いみたい。
生理現象だからしょうがないよね〜。」
「しょうがないよね〜、って一体何だ。
よねって何だ。」
「僕も何とかして欲しいなぁと思って〜。」
「はぁ?!
お前…昨日行く前だからっていっぱいやっただろ?!
忘れたのか?!」
「えへへ…。
今日は出発記念〜。」
「お前の性欲は一体どこから来るんだ。
一時間やるからスピーチしてみろ。
聞いてやらんから。」
「だーかーらーぁ、今日は満月だし〜。
ね?
じゃないと僕、無理矢理咲夜犯しちゃうぞー♪ ま、仮に無理矢理襲ったところで、咲夜は嫌がらないもんね♪」
「ば、ばかっ!
べ、別にやりたくないとは…言ってない、だろ。」
やっぱり、この笑顔には勝てない。 昔からそうだ、こいつはいつもいつも、 こんなに可愛い笑顔しやがる。 それを可愛いと思い、愛おしいと思うようになったのはいつ頃だったか…。 えへへーなんて言いながら、入り口の扉を閉めて鍵をかけると、 てこてこというような効果音が付きそうな歩き方で寄ってきて、 こいつは鼻先にちょんとキスしてくれた。 うん、我ながらバカだ。 こんな動作一つで、性欲かき立てられるんだもんな。
「シャワー浴びたぁ?」
「いや、さっきまで手紙書いてたからまだだ。」
「手紙?」
「あぁ、ちょっとな。」
「ラブレター? 誰に誰に??」
「何で勝手に面白がってるんだよお前は。 兄ちゃんだよ、兄ちゃん。」
「兄ちゃんかぁ…。 元気にしてるかなぁ?」
「さぁ、どうだかなー。 こんな戦乱の世に、自由気ままに旅行できるようなやつだからな。 いつ死んでもおかしくはないだろ。」
「そんなこと言ったら可哀想だよ〜。 今はどこにいるのかなぁ…。」
「さぁな。 明日にはジョシュアにでも頼んで、てきとーに飛ばしてもらうつもりだ。」
「ジョシュアさんならきっと届けてくれるよね〜。 あの人、すごいもん。」
「あぁ、そうだな。 下半身はだらしないが。」
「さ、ほらほら! シャワー浴びよ、シャワー浴びよ♪」
「わわわぁ!」
オレよりも力の強い海那は、軽くひょいっとオレをお姫様抱っこして、 ずんずんとシャワー室へ向かっていく。 というか恥ずかしい! 誰も見ていないとは言え恥ずかしい! どんだけやりたい盛りなんだお前は!
で、そそくさとシャワーを浴びて、まぁ…ベッドの中にいるわけだ。 こいつはこういう時と、真面目な時は本当に仕事が速い。 感心するくらいに。 まぁそんな積極的なところも、オレは好きなんだけどさ。
「さーっくや♪」
「海那…。」
互いの名前をささやきあうだけで、 何か心の奥の穴がすっぽりと埋まっていくような、 深い安心感を得た。 こいつとはずっと一緒で、何をするにも一緒で…。 でもケンカもしたりして…。 それでもとにかく一緒にいたい、いるのが当然。 そんな存在だ。 ふくよかな胸に顔を埋めたり、 大きく出た腹を触ってその存在を強く確かめる。 …うん、暖かい。 上目遣いで海那を見ると、いつものように癒やしを含んだ笑顔だった。
しかし、こういうムードの時は、必ずこいつは眉に少しだけ皺を寄せている。
もう幾度となく行われてきた愛の儀式なのだが、 未だに恥ずかしいと思っているらしい。
何というか、ウブだ。
俺より体がでかいくせに、中身はどこかに幼さを残している。
一方オレは慣れてしまったもので、若干作業化してなくもないような気がする。
いや、まぁ、こいつが気持ちよさそうにしてる顔が、 またさらに性欲をかき立てられるわけだけれども。
でもこんなこと言っても、オレが受け。
結果的に喘がされる立場ってわけだ。
うーん、いつからこんな立場になったんだけな。
なんて考えながら、体は今まで培ってきた技術力を発揮する。
まずは首筋を触れるか触れないか程度で、じわりじわりとなぞっていく。
その際どいところで、次第に海那も興奮度が増し、小さく声を出し始めた。
それがまた可愛い。
声の混じった吐息でさらに興奮したオレは、 手をゆっくりと下に落としていく。
大きめの古い刀傷を通り越し途中にある、 両胸の突起物は周りだけ触ってスルー。
…と見せかけて軽く触れ、柔らかくこねるように指を繊細に動かす。
海那の体は、思わぬ衝撃と快感に驚きびくりと跳ね、 それと同時にほぼ反射的に大きく喘いだ。
少しその反応を楽しみ、ついに手を伸ばして触れる大きな熱の固まり。
いつもこれが自分の中に入っているとは、結構恐ろしいもんだと思う。
既に臨戦態勢に入っていたそれは、触れただけで涎を垂らし始めた。
つん、とつつくだけで、そのたびにぴくんと動き、 とろりと透明な粘液を腹上に垂らす。
海那の顔は恍惚としていて、 だが未だに恥ずかしさが抜け切らない不思議な表情をしていた。
まぁあれだ。
何度も言うが可愛い。
オレ、バカだ。
触れるだけではもうたまらず、ようやく太く大きなそれを軽く握り、 ほんの少し上下に動かしてみた。
カリの部分をすりあげるたびに、海那の弱々しく艶やかな声が吐息混じりに聞こえる。
「あっ…あっ…んふぅ…。」
「気持ちいいのかー? これが良いのかー?」
大きく張れ上がった頭を、潤滑液に任せて直に撫でる。
「ぁあっ! うぅん、気持ちいいっ…!」
何かに耐えるような顔と、扱かれて衝撃に耐えきれず跳ねる体。
胸や腹の柔らかい部分も弾む。
相変わらずの感度だ。
誰とも交わったことがないような、そんな初々しさがあった。
しかし、侮ってはならない。
こいつだって百戦錬磨。
悦びに比例して、こちらへの攻撃が繰り出されるのだ。
「んがっ?!」
「咲夜だけずるいぃ…。 僕もやるぅ!」
あっという間の攻守の逆転。
立ち位置も逆転。
さっきまで嬉しそうに喘いでいたやつが、 今度は完全にオレを攻める体勢へと移行した。
「あとはずーっと僕の番だよ〜。」
「オレはただの火付け役か! たまにはオレだって…むふぅ」
吐きかけの言葉は、海那の唇によって遮られた。
マズルがオレより短いくせして、オレより濃厚に舌を絡ませてくる。
頭は徐々にぼーっとしだし、体に力が入ってくれない。
相変わらずの凄まじいテクニックは、精神的なイニシアチブをも逆転させた。
同時にこいつの手は、オレの敏感な部分を的確に優しく愛撫する。
柔らかい手つきで首筋、脇の下、乳首、横腹、ヘソを移動させ、 感情を高揚させてくる。
「んぅ…っ! あ、ぁん!」
「あはは〜、いつもの咲夜になってきた〜。 やっぱり可愛い可愛いだね〜♪」
「うんん……。 お前は、いつも、それ、ばっかり…。」
「だって可愛い可愛いじゃん♪ でもぉ…、こっちはたくましいよね〜。」
「ふぬぅ?!」
何の前振りもなく、オレの興奮しきったそれに強い刺激を与えられる。 既にこっちも性欲が先走った結果が表れており、 そのしたたる粘液を使って海那が執拗な攻め方で追い詰めようとしている。 しかし繊細なその動きは、やはり海那らしい優しい触り方だった。 それが心地良くて、オレはもう頭の中が真っ白になってしまいそうだった。 自分でも分かる。 目は既に海那さえも見えなくなってきている程に虚ろ。 脳を支配しているのは、純粋な快感という電気刺激。 体はどこを触られても鋭敏に反応するような性感帯の群れ。 海那がオレに触れるたび、声を出して喘いでしまう。 最早自分の体は性欲の塊と化した。 だから、海那が手を離しただけで、もう我慢していられなくなる。
「え…?」
「もっとして欲しいのー?」
「うん…。」
「こういう時だけ素直だね〜。 それが可愛い可愛いだけどぉ。 じゃ、本番いこっか♪」
どこから出したのか、いつもの潤滑液を手に取り、 それを自分の肉棒とオレの後ろの穴に塗りたくる。 とても慣れた手つきで。 いそいそと用意し、さぁ挿入しようとしている姿はまるで子供だった。 お預け食らった子供が、ようやく許されておやつを食べ始めるような…。 そんな感じだ。
「お前…ホントにしたかったんだな…。」
「だーかーらーぁ、今日は満月なのぉ! それに、他の人がしてるって思ったら…ねぇ? ムラムラしてくるじゃん?」
「お前だけな。」
「…むぅ? じゃあこれ以上してあげないもんね〜。」
「ちょっ、今更?!」
「ほら、咲夜もしたいんじゃん♪」
「うっ…、さすがにここまでされたら…誰でもそうだろ…。」
「はははっ♪ 可愛い可愛い♪ よっこいしょっと。」
オレの足を持ち上げ、体制を整える。 そして、右手でしっかりと狙いを定め、 そこへゆっくりと挿入を始めた。 潤滑液の後押しもあり、それにいつも入れられているということもあり、 すんなりとオレは海那を受け入れきった。
「んぁ…。」
「えへへ、もう入っちゃった。 痛くない?」
「痛く…ない。」
「あー、いっつも思うけど暖かくてふにふにで気持ち良いー。 んじゃ動くね〜。」
「うん…。」
それから、ゆっくりと的確に海那はオレの前立腺を刺激し始めた。 最初は柔らかく撫でるように。 慣れてくると、少しずつ強さが加わってくる。 順番に強くなる圧迫感で、オレはさらに狂いの淵に落とされていく。
「あぁっ! ぁぁあ! ううんぁっ!」
「はぁ、はぁっ! 気持、ちいい? よっ、よっ!」
「ああぁ…! ひも、ぢ、いい…!」
「えへ、へ♪」
既にまともな言葉さえ出てこない。 突き上げられるたび、雌のように喘ぎ、悶え、 快楽に意識がかき乱されていく。 海那の洗練されたテクニックは、ただ同じところを同じように突くわけではない。 強弱、スピード、突く位置。 それら全てが融合し、さらにオレを狂わせていくのだ。 オレの赤い肉欲の塊はいつも以上に膨張している。 突かれるたびに、体の奥から噴き出すように白みがかった粘液が飛び、 オレの腹を黒から白へ染め上げていく。 挿入されてから一度として触られていないのに、 何度も何度もその淫液を吐き出し続けるのだった。
「うわぁ、咲夜、べっとべとぉ♪ 淫らな仔だなぁ。」
「ひぃん…。 だって…気持ち良いんだから、しょうが、ないだろ?」
「お尻だけで気持ち良くなっちゃうのか〜。 じゃあ咲夜は気持ちよくなっちゃったからやめようか〜。」
「え…?」
「嘘だよーん。 僕がまだ出してないもんね〜。」
「オレも…まだ完全に出したわけじゃ…。」
「へへへ、淫らな仔だ♪」
小休止も程ほどに、また海那の攻めが始まった。 リズミカルに打ち付ける腰は、全てが快楽に変換されていく。 ヌチャッ、ヌチャッ、という淫らな音が、この空間に満たされていく。 オレは確かに吐精じみたことをしているが、決して絶頂に達しているわけではない。 絶頂近くでずっと足止めを食らっているようなものなのである。 だが、体は反して快感に打ち震え、 当然の如く白濁の液体をどろどろと流し続けている。
「か、かい、なぁ…。」
「うんっ、うんっ…! 一緒に、一緒に…!」
ついに海那の手が、オレの一物へと伸びる。 そして一気に扱き上げ、オレを絶頂へと導く。 海那もそこを目指して、今まで以上の速さで腰を動かした。
「ああぁっ! も、もう、…ぅっ!」
「咲夜ああぁぁ! いくよおおぉぉっ!」
「「あ、ああああぁぁぁあぁっ!!」」
二人が、同時に絶頂を迎えた。 同時に、同じように咆哮。 オレの熱棒からは勢いよく精液が飛び、腹はおろか顔までも白染めにしようとする。 海那は海那で爆発の如き痙攣を起こしながら、オレの中に種を吐き出し続ける。 それは一体何秒の話だったのだろうか。 ただ、確実にそれは秒を越えた分の単位で継続していただろう。 オレの方も止まることを知らず、勢いこそなくなってきたものの、 未だにどくどくと垂れ流し続けた。 海那に至っては、まだ体を震わせていた。 コイツ、どんだけ出すんだ…。
ようやく落ち着き、ゆっくりと海那が硬さを失ったものを引き抜く。 ぬちゅり、という音を立て引き抜かれたと同時に、 それを追うようにして、さらに海那が放った熱い欲望がオレから出ていこうとする。 さすがにそれはオレも感じ、いつも以上に奇妙な感覚を覚えた。 しかし、オレもオレで腹には水溜まりのように精液がべったりとついていた。 なるほど、これが満月効果なのだろうか…。
「…はぁ、お前、出しすぎ。」
「咲夜だって、いっぱい出してるじゃん♪」
「…ふぅ、何か全身の力が持ってかれてしまった。 返せ、1ミリでも良いから。」
「僕だっていっぱい動いて疲れたよ〜。 もう一回する?」
「できるかぁ! オレは今全く動けないの! って言うか、お前も疲れたって言っただろ!」
「疲れたけど、まだまだ頑張れそうだな〜と思って〜。」
「待て、じゃあ休憩したら、休憩したら、な! 今臨戦態勢に入るな! オレが動けないって言ってるだろ?!」
「ちぇー。 んじゃ、またシャワーを浴びようね〜♪」
「だからオレは動けな…うわぁ?!」
「ほら、今日二度目のお姫様抱っこ〜♪」
「…む、むぅ…。」
かくして、また担がれてシャワーを浴びに行くことになったとさ。 というか今日、任務一日目だよな? これから大丈夫なんだろうか…性的な意味で。
笑い話でしかないのだが、実は満月ではなかった。 そういえば昨晩が満月だったなぁ、 なんて気がつくのが余りにも遅かった自分が、 何だかバカらしすぎて恥ずかしかった。
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