その先にあるもの。
Story6 変わった僕2
この話の中には獣八禁的要素が含まれています。
私は、あの時もしかしたら嫌われたんじゃないかって思った。
振り向きざまにミーちゃんにキスしたりなんかして…。
その次の日、ミーちゃんが学校を休んだ時は本当に後悔の念でいっぱいだった。
私があんなことしたから…。
だから休んだんじゃないかって。
体調が悪くて休んでるって聞いたから、私は何度もお見舞いに行こうか悩んだ。
でも、何て言っていいか分からなかったから…。
それはやめておくことにした。
さらに次の日、ミーちゃんが学校に来てくれて嬉しかった。
話しかけても、普通に返答してくれたし…。
何も無かったかのように感じられた。
私もできるだけあの時の話題は避けた。
本当に、何て言っていいか分からなかったから…。
その感情に気が付いたのは、この間の社会見学の時だった。
彼は…ミーちゃんは…。
私の世界を全部まるっと変えてくれた、私を助けてくれた人。
いつの間にか、俗に言う恋心が芽生え始めていた。
恋愛経験の無い私は、それがどんな感情なのか分からなかった。
はっきりミーちゃんが好きだって思ったのは、ミーちゃんが真剣に私の話を聞いてくれた時。
この子はこんな私の話を真剣に聞いてくれている。
私の世界の救い主は、いつしか私の一番大好きな人に移り変わっていたのだった。
そして、極めつけはあの時。
ミーちゃんと別れる際に、私の中で何かがはじけた。
振り向いたミーちゃんに、気が付いたらキスをしていた。
それが、私にとっての初めてのキスだった。
本当はずっとしていたかったけれど、
ミーちゃんの驚く顔に私も驚いてしまい、照れ隠ししながら帰った。
でも…。
それは私の片思い。
私だけの恋心。
そう思っていたのに……。
さっきは、ミーちゃんからキスをしてくれた。
とても嬉しくて、嬉しくて…。
不意に涙が流れてしまった。
ミーちゃんが私のことをどう思っているのかは分からないけれど…。
ただ、今度はミーちゃんから私にキスしてくれたっていうことがすごく嬉しかった。
ミーちゃんには…悪いことしちゃったかな…。
そう思うけれど、あとからこみ上げてくる嬉しさで、私の目からは止め処なく涙が零れた。
本当に…ありがとう…。
………。
今度は僕は何をしてしまった?
僕からキスをしてしまった…。
誰に?
レナに…。
何故?
分からない。
ただ、これだけは言える。
僕の中で渦巻いていた曖昧な感情は、気が付かないうちにこんなにも大きくなっていた。
レナのことを考えるたびに…。
胸が苦しくなって、切なくなって、それでも何だか会いたくて…。
涙が出そうだけど出ないこの感じ。
僕には今まで存在しない感情だった。
分からない。
この感情が何なのか分からない!
誰か…助けてよ…!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆少し前◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あいつら、一体何分寮の前で話してるんだよ…。」
「かれこれ10分は経つわね…。」
「……はぁ。
結局進展無しか……。
俺、もう帰るよ……。」
「そう…。
気を付けてね…って近いか。」
「まぁ気を付けるような距離じゃないな!」
「そうね。
ハハハハ!
…!!!」
笑っていたエマが急に固まった。
どうしたの?って声をかける前に、エマはひたすらある方向を指差した。
何があるんだ?
ゆっくりとその先を見た。
な……。
キス、してるよ………。
えぇ?!
「ちょ、今どっちから行った?!」
「すごいのよ!
ミックから!!!」
「えぇー?!
あのミックが?!」
「うん…。」
ミックからキスしにいったって…。
今、どうなってるんだ?
何でミックからキスしたんだ?
やっぱりミックはレナが好きなんじゃないか!
俺たちは唖然としてそれを見ていた。
…いつまでキスしてるつもりだろう。
「あいつら、いつまでキスしてるつもりなんだよ…。」
「………。」
「エマ?」
「私も…。」
「へ?」
次の瞬間、その影響を受けたのか俺たちもキスをしていた。
エマとは初めてキスした。
唇が震えているのがこっちにも伝わってくる。
唇を離すと、俺はエマを強く抱きしめた。
もう友達意識から抜け出せたらしい。
素直にエマが好きだと感じた。
気が付いたらミックとレナは、既にそこには居なかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆そして現在◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
僕はジョアンの部屋の前で、彼が帰ってくるのを待っていた。
ただ助けて欲しいという衝動に駆られて、僕はジョアンにすがろうとしていた。
この感情は何?
僕は今何を考えているの?
それだけが聞きたくて、僕はジョアンを待っていた。
…足音が聞こえる。
「ジョアン……。」
「ミック…。
部屋に戻ってたんじゃないのか……。」
「ジョアン、僕の話……聞いてもらっていいかな…?」
「…あぁ。
じゃあ部屋に入れよ。」
僕は促されるままに部屋に上がった。
ジョアンは僕をイスに座らせると、僕に温かい紅茶を出してくれた。
彼はベッドに座って、同じ紅茶を飲んでいる。
「どうした?」
「うん…。
僕、分からないんだ。」
「何がだよ?」
「この感じ、一体なんだろう…。
ただ胸が苦しくて、切なくて、泣きたくなるの……。
何だと思う?
何かの病気かなぁ。」
「ハハハ。
ついにお前にも来たか。」
「…?
何が?」
「初恋。」
「初恋…?」
「そう。
相手は……レナだろ?」
「分かんない。
でもレナのこと考えると…そうなる。」
「じゃあ間違いないよ。
それが恋ってもんだよ。」
「そうなのかなぁ…。」
「だってミック、自分からキスしてたじゃん。」
「うん、そりゃそうだけど…。
…って何でそんなこと知ってるの?!」
「え?
…あ…。」
「あぁっ?!
もしかして、僕達を尾行してたんでしょ?!
…酷いよ…。」
「だ、だって気になったからしょうがないだろ?
何かあるかな〜って。
俺もエマも心配してるんだぞ?
ほら、お前恋とかしたことないから……。」
「あぁ、…うん。」
「で、どうなんだ?」
「どうって?」
「だからぁ、いつ告白するんだ?」
「えぇ?!
…そ、…そんな気ないよ…。」
「どうして?
絶対うまくいくぞ?」
「違うんだよ。
レナとは…友達以上恋人未満で…。
その後にも先にも…行けないの。」
「でもキスしてたじゃん。
あれは何だよ!
好きなんだろ?」
「…好きっていうのがそういうことなら…好き…だよ?
でも…ダメだよ……。
これ以上近づいたら……何が起こるか分からないもん。」
「そういうもんだって。
そんなのが恋って言うんだろ?
何が起こるのか分からないから、周りが見えなくなるほどのめり込むんだ。」
「……。」
僕はただ不安だった。
今まで恋と言うものを知らなかった僕が触れてしまったもの。
それは余りにも大きくて、温かくて、切なくて…。
そうだけれどよく分からなくて…。
どうなってしまうのかが分からなかった。
僕、どうなってしまうんだろう。
「………。」
「……そうか…。
ならゆっくり考えればいい。
とことん悩んでみろよ。
そういう病気なんだから。
恋の病って…よく言うだろ?」
「…うん。
……何で……。」
「え?」
「何で僕は…レナにキスしたのかなぁって…。」
「好きだからだろ?」
「そうなのかなぁ…。
でも、あの時は何も考えてなかったよ?
体が先に動いたんだ。」
「…あ、そうだ!
ミックのアレっていつだ?」
「アレ?」
「アレって言えばアレしかないだろ!
…ほら、一年に数回ある…。」
「…?
何かあったっけ?」
「へ?
ま、まさかお前……。
体も成長してないのか?!」
「な、何が?」
「だからぁ…。
その…、発情期だよ…。」
「えぇ?!」
余りにも意外な言葉で僕は驚いた。
僕達獣人は、人間が基になっているんだけれど…。
人間とは異なる部分も数あった。
魔法が使えることがその代表だ。
そしてもう一つ…。
僕らには発情期と呼ばれる時期が年に数回訪れる。
何でも、その時期に入るとエッチなことしか考えられなくなるらしい。
でも、人間の部分もあるおかげで理性が働いて、余程の事が無い限り表には出さなくて済むそうだ。
実は僕はそれさえも体験したことがなかった。
小等学校で性教育っていうのはやったけど…。
その殆どが僕には訪れることは無かった。
だから被ったままだし…。
…さすがにそこは…ちょっと悩んでいるけど…。
「…僕、そんな時期ない。」
「はぁ?!
それ、有り得ないから!
だって生理現象なんだぞ?!」
「う、うん…。
でもそんなの来たことないもん。」
「へぇ〜…。
もしかしたらその時期のせいでキスしちゃったのかと思ったけど…。
違うならお前の本心じゃん。
やっぱりレナが好きなんだよ。」
「……。
あ、あのさ!
ジョアンは…もうその時期とかある?」
「そ、そりゃあるだろ!
犬族って確か普通は夏の中盤から秋にかけて来るもんだぞ?」
「…そうだったんだ…。」
「まさかとは思うけどさ…。」
「ん?」
「出したこと、無いのか?」
「何を?」
「だーーーもぅ!
この流れから来れば分かるだろ!
射精したこと無いのか?って聞いてるんだよ!」
「………。
無いワケじゃ、無いけど…。」
「どういうことだよ。」
「………。」
実は僕、夢精でしか射精した経験がないんだ。
「…夢精しか、したことない。」
「…ぷっ!
ハッハッハッハッハ!」
「わ、笑うなよぉ〜。」
「だってさぁ…ハッハッハッハ!」
「んもぅ!」
「思春期の男が夢精しか経験してないなんてそんな珍しいヤツもいたんだな!」
「珍しいって……。」
「じゃあオナニーとか…しないのか?」
「うん、やったことないから…。
…1回だけやってみたことはあるよ?
全然良くなかったんだもん。
とてもじゃないけど射精なんてできなかったし…。
別にそんなのレナの話と関係ないじゃん!」
「いや、もしかしたら関係あるかもしれないぞ?
そんだけ押しの強いレナならいつ押し倒されるか分からないからな!」
「レ、レナはそんなことしないよ!」
「いやいや。
ああいう手合いほど発情期になって、理性というリミッターがカットされた暁には…。」
「もうやめてよ!
そんな話聞きたくないよ!」
「ゴメンゴメン。
でも、その来るべき日に備えて…なぁ?」
「……どうやって?」
「だからオナニーしてみればいいよ。
俺だってしてるぜ?」
「ジョアンもそういうことするんだね…。」
「あのなぁ、男なんてそんなもんだぞ?
見ろ、ノールを!
前あいつの部屋に入った時にゴミ箱見なかったのか?」
「見なかったけど。」
「ダメだなぁ…。
その辺は常に探りを入れろよ。
いいか、誰でもいいから試しに男友達の部屋に行った時はゴミ箱見てみろよ。
もしかしたら使用済みのティッシュが入ってるかもしれないぞ?」
「そ、そんなの見たくないよぉ〜。」
「いいから!
で、ノールの話だけどな…。
普通友達が来る時ってそういうのは恥ずかしいから隠すだろ?
俺はいつも水に溶けるティッシュ使ってトイレに流してるから関係ないけど…。
ところがあいつ、普通にそのままなんだ。
ゴミ箱からはみ出しそうな量のティッシュがあったよ。」
「…ノールは納得できるよ。」
「まぁな。
で、あいつにそのこと言ってやったんだけど…。
『こんなもん誰だってするだろ!
あ、あれか?
お前これ欲しいのか?』
って言ってくるんだぞ?
そんなもん要るかぁ!」
「ハハハ。
ノールは何か性欲の塊って感じだもん。」
「…そう、その顔だよ。」
「へ?」
「やっぱり笑ってた方がいいよ、ミックは。
じゃあこれやるから…な?」
「ん?」
僕がジョアンから受け取ったのは本だった。
何だろう…これ。
中を開いてみると、漫画や小説が入っていた。
「何これ?」
「官能小説とマンガが一つに入ってんの。
やり方も書いてあるから、ここらで一発、な!」
「ちょ、ちょっとジョアン〜!」
「ほらほら!
キスの思い出に耽りながらやっとけ!
じゃ、またあとでな!
1時間後の御飯の時に迎えに行くから!」
部屋を追い出されてしまった。
まぁ…これが恋なのかなって思ったら、大分気分も楽になった。
…僕って単純かも…。
とりあえずそのまま僕は部屋に戻ることにした。
部屋に戻り、僕はそのまま身をベッドに投げた。
何もない天井を眺めながらぼやく。
「…恋、かぁ…。
こんなのなんだ…。」
僕は内に眠る感情の正体が分かり、ちょっと嬉しくなった。
ただ、やはりこの曖昧な感じは何とも言えない不安となる。
このもどかしい感じはあまり良いものとは思えなかった。
何となく、さっきジョアンから受け取った本を広げてみた。
ジョアンがこんなの持ってるなんて、まったく想像していなかった。
確かに、何を読んでも男性というのは性欲には勝てないって…。
何かそういう本能を持っているらしい。
発情期もない僕にはあまり理解できないけど…。
僕が初めて夢精したのは去年の夏のことだった。
その日は変な夢を見たんだ。
何だかよく分からない場所で…。
無理矢理女の人に押し倒されて、エッチなことをされてたんだ。
で、その内に何だか気持ちよくなってきて、気が付いたらおしっこが出たような感覚がして飛び起きた。
この歳になってオネショは恥ずかしいと思って、洗面所でトランクスを洗おうとしたんだけど…。
付いていたのはおしっこではなく、変なネバネバしたものだった。
既に知識として知っていたので、それを容易に精液だということは感じられた。
それ以来、1ヶ月に1度は夢精を体験するようになってしまった。
それでも僕には発情期なんか来なかった。
ジョアンの言っていた通り、犬族は夏の中盤から秋にかけて来るらしいけど…。
そんなの全然感じなかった。
むらむらって感じるなんてことはなかったから…。
そんなことを思いながら本をめくっていると、ちょうどジョアンが言っていたページにたどり着いた。
「…オナニーの仕方…か。
………やって、みようかな………。」
何故だかそんな気分になり、僕は部屋の玄関のカギを閉めた。
勿論、途中で誰かが入ってきたら恥ずかしいから。
とりあえず僕は本をひたすら読むことにした。
「………。」
次々と飛び込んでくるエッチなシーンに、僕の体は少しずつ反応をし始めた。
何か…チンチンの辺りがおかしい。
ズボンの上からそっと触ってみると、何だか硬くなっているようだった。
「ん……。
…勃起してる…。」
何かを決心し、僕はズボンもトランクスも上着も全て脱ぎ捨てた。
未だに皮の剥けきらない勃起したそれの先端から、ほんの少しピンクが見える。
その硬くなったものを触ってみる。
……うん、硬い。
僕は本を読みながら、その本の通りにチンチンを握ってみた。
そして上下にゆっくりと手を動かし始めた。
じ〜んと広がる、電気みたいな感じ。
足が痺れかかってる時の感じに似ている。
「…はぁ……。
ふぁ………。」
自然と声が出てしまう。
何とも言えない感覚が、僕の脳に直接響いた。
キスの時とは違う気持ち良いという感覚がざわめく波のように溢れたり、引いたりする。
僕は右手はチンチンを握りながら、左手でマンガを広げていた。
マンガのシーンは、ちょうど男女がエッチをしているところ。
そのシーンが頭の中で動画になっていく…。
僕は想像の中でそのシーンを楽しんだ。
いつしか僕の右手の中から、くちゅ、くちゅという音が聞こえてきていた。
所謂、先走り液というやつだ。
その音に何故か興奮を覚え、僕はますますその行為にのめり込んだ。
「んあぁ……。
あ……あぁ……。」
いつもの僕では出ないような声が出てくる。
計り知れない快感が幾度となく押し寄せる。
僕は無意識のうちに動かす手を速めていた。
リズミカルに聞こえる卑猥な音。
いつの間にか息を荒げる僕。
夢精の時の感覚が近づいてきていることが分かった。
それでさらに僕の手は速く動いた。
止めようと思っても止められない。
僕にはもう制御することができなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……。
んぁあ……。
あぁ……。」
先程よりも声が大きくなってしまう。
意識もしていないのに出てしまう声を出すたびに、何となく恥ずかしさを感じた。
しかしその恥ずかしさを大いに上回る快感。
僕はもう頭の中が真っ白になっていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……。
うぅぅ…。
出る……。」
そんな気がして、僕はティッシュを探そうとした。
しかし、僕のチンチンはそれを待ってはくれなかった。
「んぁぁ…。
あぁ!
ふぁぁあぁあぁ!」
その次の瞬間、僕のチンチンからすごい勢いで精液が放出された。
初めて自分で出した液体は、僕のお腹にも顔にも勢いよく飛んできた。
何度も、何度も脈を打って精液を出し続けた。
全てを出し終わると、僕は痺れたように動けなくなった。
ただただ残る、快感の余韻。
よく分からない罪悪感。
チンチンは未だにひくひくしている。
割れ目からは中に残っていたものがどろりと出てきている。
それが糸を引いてお腹についていた。
息が荒いまま、僕はそれを片付けようとティッシュを探した。
…目が動くだけで、体が動かない…。
そしてその目も、いつしか次第に閉じていくのだった。
気が付くと、僕は全裸のままベッドに横たわっていた。
体の毛にパリパリとしたものがついていて不快感を覚える。
あぁ、そうだ。
僕はオナニーをしていたんだっけ。
それで、出し終わって寝ちゃったんだ。
体を起こし、体についた精液をティッシュでふき取った。
…でも時間が経っているせいか、なかなか取れない。
そんな時、呼び鈴が鳴るのが聞こえた。
ま、マズイ!
僕は急いで服を着てドアを開けた。
「よ。
そろそろ晩御飯食べに行こうぜ。」
「う、うん。」
「………。
その前に顔洗った方が良いぜ?」
「どうして?」
「顔、カピカピになってるぞ?
……!」
何かに気付いたのか、やたらニタついた表情になるジョアン。
まさか…。
「どうだった、ミックちゃん。
気持ちよかっただろ?オ・ナ・ニ・ィ♪」
僕は全て見られていたような気がして、急に恥ずかしくなった。
すごい勢いで顔が熱くなるのを感じた。
「………。」
「ハハハハ!
可愛いな〜、ミックは。
待っててやるから顔洗ってきなよ。」
…もぅ!
やっぱり最近ジョアンが意地悪だ。
それはともかく、今は顔を洗うのが先だった。
洗面所で一生懸命ゴシゴシ洗った。
洗顔料までつけて念入りに洗った。
…ふぅ。
それにしても、あんなに気持ちの良いことだとは思っていなかった。
確かに、ジョアンやノールがやっているだけのことはある。
…もう一回、やってもいいかなと思った。
「さ、行こ。」
「ん。
顔も綺麗になったしな。
今度からは予めティッシュで覆っといてから出した方が片付ける時に楽だぞ?」
「…う、うん。
分かった。」
「ミック、本当に変わったなぁ。
あの純粋なミックちゃんは何処に行っちゃったのかな〜?」
「もぅ!ジョアンったら!
お願いだから……内緒にしといてよ?」
「分かってるよ。
ま、男同士なら内緒にしなくても大丈夫だって!
何かあったら先輩のノールに聞くと良いぞ?
あいつは随分前から浸ってるからなぁ〜。」
「そうなの?
…って何でジョアンがそんなこと知ってるの。」
「ん〜。
俺も同じ頃に目覚めたからな〜。
確か小等学校の6年時に。」
「へぇ〜…。
皆早いんだね〜。」
「ミックが遅いんだよ。
今時居ないぞ〜?
15になってオナニーしないやつ。」
「…ここに居たじゃん。」
「まぁミックは特例だろ?
そういうのに全く興味持ってなかったじゃん。
お父さんを超えることで必死だったもんな。
…だがな、ミック。
人生ってのは回り道した分だけ楽しくなるってもんだ。
これくらいの回り道したって損はないぞ?
それは恋においても然り。」
「…うん。
そうだね…。」
そうだ。
僕が間違っていた気がする。
要るものしか要らないって思ってた自分がバカみたいだった。
要るもの、要らないもの、全部知っているから分かるんだ。
本当に必要なものが…。
僕が本当に必要だったのは、ただ父さんに憧れ追い求めることではなく…。
レナと一緒に同じ場所で同じ時間を過ごすことだったんだ。
今日味わった2つの快感を胸に、僕は新たな気持ちで立つことができた。
…そのうち1つは特にやめられそうもないけどね♪