その先にあるもの。
Story1 入学試験後編
ノールの言う通り、お昼ご飯の弁当を食べながら実技の確認をする。
実技試験ってのは、主に試験官から出題された主題を元に行う。
一番手っ取り早く説明するために過去の実技試験の問題を挙げると…。
『魔法は、この世にいると言われている精霊が生み出したとされる魔粒子というもののおかげで発現できる。
この説を証明するために、以下の物を少なくとも1つ用いて魔粒子の存在を証明しなさい。
使用器具:チョーク、月の雫、ガマの油、魔法のるつぼ、精霊晶』
…って問題がある。
この場合、チョークと月の雫と魔法のるつぼと精霊晶を選んで実験を行えばいい。
まず、チョークで精霊の力を借りるための言葉を書いた魔法陣を描く。
古代語で『精霊よ、我に力を与えたまえ』って意味らしいけどね。
それが描けたら、今度は魔法のるつぼを陣の中央に置く。
魔法のるつぼには精霊晶と月の雫の破片を適当に2対1になるように入れておく。
精霊晶というのは、魔粒子で出来た魔粒子の結晶…とでも言おうか。
月の雫は、一見ただの水だけど、月光の下に置いておくとぼんやりと青く光る水だ。
その準備ができたら、魔法陣の一部に手を触れて魔法の力を込めればいい。
成功すると、魔法のるつぼから色が虹のように変わる炎が出てくる。
この時の問題のレベルは至って簡単なものだ。
精霊晶が魔粒子の結晶ってことを知っていれば、きっと中等学校の1年生でもできる。
え?
魔法の力を込めるってのが分からないって?
その辺は小等学校低学年で最初に習う魔導学の基礎中の基礎だから…。
今じゃ説明しようにも上手くできない。
強いて言うなれば、生えてもないはずの翼に力を込めるような感じ。
……やっぱり難しい。
結局のところ、実技試験ってのは魔法の実験だと思ってくれれば差し支えはない。
「今年は何が出るかな…。」
「そうね…。
今年はちょっと難しい傾向になる気がするわ。
だから…。」
「あれなんてどう?
魔法の反発力の実験。」
「う〜ん…。
流石にそこまでのレベルは出ないと思う。
だってそうでしょう?
魔法の力のコントロールができない人が居たら手も足も出ないもの。」
「でも、できない人がいるのを出すってのもあるんじゃない?」
「そうかしら…。
私の予想だけど、魔法同士の因果関係を示すやつ。」
「…?
悪ぃ、どんなんだったよ?」
「ノール、1週間前に一緒に確認したやつじゃん。
ほら、木は火によって土を生み出し…ってやつ!
昔の言葉では五行って言われてたやつだよ。」
「あ〜ぁ、思い出した!
最終的に一周してくればいいやつだよな!」
「まぁ極端なところはね。」
「あれって確か…精霊晶を使うと変化がはっきり分かるってやつだろ?
どうしてそんなマイナーどころ…。」
「そこから派生させてくるような気がするのよね〜。
それを用いて、錬金術の原理を示せ…とか。」
「えぇ?!
錬金術?!
あんな高度な魔法使えっこないよ〜。」
「原理を示すだけよ。
実際に使えって言われても、この学校の6年生でもできる人なんていないんじゃないかしら。」
余談だが、このコルネリア魔法魔術学院は6年制の学校だ。
僕が卒業する頃には20歳を超えてしまう。
…まだ入ってないけど。
しかし何歳でもこの学校を受験できるから、生徒によってはもう超えてたりもする。
年齢層が幅広いのもこの学校の特徴だ。
幅広いって言っても、20代前半までの人しかいないらしいけど。
「で、原理を示すってどうやって実技でやるのさ?」
「そうね…。
使用器具の指定が入ると思うけど、使うものは精霊晶とただの石と湿度の高い空気、それに何かの種かしら。
まず、何かの容器にいれたその空気の中に精霊晶の欠片と石と種を入れる。
次に魔法の力を込めて、空気を徐々に冷やしていくでしょ?
すると石に水がくっつき始めるから、次にその水と種に力を入れて…ってやるの。
そうするといつの間にかぐるぐる周ってくるはずだから、これを繰り返せばできるはずですって。
そんなところよ。」
「へぇ…。
それだけでいいんだ…。」
「うん。
ただ、力を入れるタイミングが難しいの。
ちょっとミスすると相克して消えちゃうし。
だから今でも希少なのよ?賢者の石って。」
そうなんだよね〜。
この錬金術の分野は最近着手され始めたから、成功させられる人が極めて少ない。
得意不得意もあるとかで、僕の父さんは後者に入るらしい。
だからその分野には一切触れてないそうだ。
でも、エマが言ってることは努力すればできないことはない。
錬金術の基礎中の基礎とまで言われている実験法だからだ。
これぐらいなら、ちょっと魔法の扱いに慣れている人なら誰でも何の問題もなくすんなりとこなすだろう。
ある意味、篩い分けにはぴったりの実験だ。
「なるほどね〜。
確かにエマの言うことは説得力あるなぁ。
一応念頭に置いておこうよ。」
「ん。
エマの言ってる事はハズレが少ないからな。
出たらエマに感謝だ。」
「そんな…。
たまたま当たりが多いだけよ…。」
ちょっと照れて俯いてしまうエマは、恋とかそんなのに興味がない僕にも何となくクラっと来るものがあった。
これまた可愛いと綺麗を二つ同時に持っているエマだからだろうけど。
「…そろそろ昼休みも終わりね。
じゃあ実技が終わったらまたここに集合ね。」
「了〜解。」
「分かった。」
「ジョアン、行きましょ?
ふふふ、じゃあまたね。」
やっぱりエマは上気分だった。
あそこまで露骨だと、やはりジョアンにも分かってもいいと思うんだけどなぁ…。
そして、僕の右で悔しそうにしているノールがまた面白かった。
「うぅ…くそぉ…。」
「ノール、大丈夫だって。」
「ミックぅ……。」
「エマと同じクラスになれば、もっと親密になれるかもしれないじゃん?
僕とジョアンはエマと同じクラスだったから…。
まだまだ可能性はあるよ。」
「お前、やっぱりいいヤツだなぁ…。」
「ありがと。
さ、早く行かないと間に合わなくなっちゃうよ?
それじゃ、またあとでね。」
「あぁ、頑張ろうぜ!」
ノールに軽く手を振り、第三練武場に向かった。
受験生が少しずつ増え始めているから、ちょっと窮屈だ。
人を掻き分けて自分の試験時間を確認していると、つい最近聞いた声が耳に伝わってきた。
あぁ、そうそう。
実技試験は全員が同時に受けるのではなく、10人程度が練武場に入って仕切りのある小部屋に入って行う。
もちろんカンニングなんてできないし、しようとすれば即刻退場。
しかもこの先、一切試験を受けられなくなってしまうという厳しい処罰付きだ。
「あぁ、やっぱりミックだ!
元気だったか?」
やっぱり変なことを聞く。
いきなり体調崩す方が珍しい。
「だから元気じゃなかったら試験受けてないよ、ボルト?」
「あぁ、そうか。」
…とことん不思議なやつだ。
本気で言っているのか、それとも冗談で言っているのか…。
それさえも分からない、まったくもって掴み所が不明だよ。
「ミックも第3で受けるのか?」
「うん、そうだけど…。
まさかボルトも…?」
「あぁ、その通り!
良かったぁ…知らないやつばかりだったらどうしようかと思ってたんだ。」
僕も最初は知らないやつの一人だったんだけど…。
その持ち前の外向性で何とかなるんじゃないのか?
人知れずそう思う僕なわけで。
「友達は?
10人もいるなら誰か一人は…。」
「全然。
1と2に見事に分散してる。
これ、何か仕組まれてるんじゃないのか?」
「それは分からないなぁ…。
僕は学院の関係じゃないし。」
「ところでさ、ミックは何番目に受けるんだよ。」
「僕は2番目。
だからちょうど1時間後だね。」
「へぇ〜、偶然!
オレも2番目なんだよ。
すごい偶然だな!」
「ま、まぁね。」
すごく嬉しそうな顔をしてボルトは言う。
ただ純粋に嬉しそうにしていると、逆にこっちも嬉しくなってしまう。
…っていかんいかん。
そんな余裕をかましている暇はない。
僕はカバンの中から参考書を引っ張り出して、錬金術の関連のページを見た。
さっきも言った通り、この分野は着手されて間もないからそんなにも載ってはいない。
それでも、少しだけでも載っているなら読まないよりマシだ。
試験10分前に見たことが偶然出たならラッキーだからね。
「…?
錬金術?」
「うん。
僕の友達にすっごく頭のいい子が居てね…。
その子が言うには、この辺が狙われるかもしれないって…。」
「ふ〜ん…。
でもあれだろ?
その辺って今ある知識が少ないから、適当にやれば何とかなるんじゃねぇ?」
「そう都合良くはいかないよ〜。
じゃあ試しに問題ね。
賢者の石を使ってできることを3つ述べよ。」
「あぁ、そんなの簡単だよ。
まず命を育てることだろ?
それから魔法の力の増幅。
あとは空気の浄化。
あ、あれだぞ?
空気の浄化ってのは毒とかもそうだけど、負の魔粒子を正に置き換えられるんだ。」
…合ってる…。
しかも参考書とほぼ同じこと言ってるし…。
「えぇ?!
すっごーーい!
どうしてそんなにスラスラ言えるの?!」
「だってその辺は以前から言われてたことだろ。
でも、最近になって負の魔粒子を正に置き換えられるってことが判明したらしいけどな。」
「ボルトって…見かけによらず頭がいいんだね…。」
「あのさ、一応オレもこの学校の入学志望者だから。」
「あ、そっか。」
「そっかじゃなくて…。
まぁいいや。
分からないことがあったら教えてやるけど…どうだ?」
「え?
あ、じゃあここかな…。」
「んっと……。
あぁ、これは要するに、何でこの世界の人は魔法が使えるかってことだろ?」
「うん。
一応友達に聞いたけど、なんか腑に落ちなくてね〜。」
「ほら、オレたちの先祖って人間って種族が作り出したって言うじゃん?
人間ってのも魔法が使えたってのは知ってるよな?」
「うんうん。」
「オレらはその人間の体の一部を使ってできたらしくて…。
…てこの辺は書いてあるじゃん。
えっと書いてないのは…なるほどね。
つまり、人間の脳にはあるにはあったけど、魔力ホルモンが出なくてだな。
突然変異で獣人にはシナプスで繋がれてこうホルモンが出るようになったんだよ。
この脳下垂体前葉のこの神経が突然変異を起こしたんだな。
小等学校で使えるようにするには、イメージを膨らませることで意識的にホルモン分泌を促す必要があるんだ。
何で意識的にできるのかってところはまだ研究中だって話だ。
で、この魔力ホルモンってのもいまいちよく分かってない。
とりあえず魔粒子を活性化させるために体から発せられる物ぐらいに定義されてるな、今は。」
「へぇ〜。
参考書にも書いてないこと、よく知ってるね…。」
「実はさ、オレそっちの道に興味があるんだ。
生物学魔法化学科…。
だからそれ系の本を読んでたら、いつの間にか頭に入ってたんだ。」
「じゃあ医者にでもなりたいの?」
「医者…もいいけど、やっぱり研究室にこもって勉強したいと思ってる。
いつかは魔力でワクチンを作れるようにするんだ!」
「すごいね…。
僕なんてその方向は一切考えてなかった…。」
「でもミックはミックでちゃんと目標を持ってるじゃないか。
親父さんを超えたいんだろ?
…しかし、よくよく考えたら…。
親父さんを超えてどうするつもりなんだ?」
「あれ?
さっき言わなかった…みたいだね。
魔導と世界の構成の関係について証明したのは確かなんだけど…。
ある仮定を基に考えているんだ。
それはこの世に精霊が住んでるってことね。
今の技術じゃ精霊の存在なんて確かめることはできないから…。
でも古代語とかで、よく精霊の力を借りるのは不思議だよね。
まぁそんなことをやってみたいんだ。
きっと今この世にある知識じゃ解けない問題なんだ。
だから数々の発見を通して、最終的には精霊の存在そのものを証明したい。」
「精霊か……。
確かによく聞く言葉だけど、存在そのものは確認されてないよな。
随分壮大な夢…。」
「でも壮大さで言えば、ボルトの夢も立派さ。」
そうやって互いに将来の夢を語り合っていると、いつの間にか1時間経とうとしていた。
何かに熱中すると、時間の経過が早く感じる。
そして、結局あまり勉強していないことに気付いてしまう僕だった。
外に置いてあるスピーカーからアナウンスが流れ始めた。
「では第2部の方、10分以内に入場して下さい。」
「んじゃ行こうぜ。」
「う、うん。」
扉を開けると、いきなり10個のドアが目の前に現れた。
それを見てビックリしていると、隣に居た試験官が僕たちに呼びかけた。
「すいません、受験票を拝見させてもらいます。」
「あぁ、すみません。」
「…ミック・ファーミットさんですね。
ファーミットさんは一番奥のドアになります。
…ローレンスさんは手前から3番目です。
頑張って下さいね。」
「じゃあボルト。
頑張ろうね!」
「ああ!」
笑顔で手を振りながら、自分の部屋のドアの前まで行った。
……このドア、とっかかりがない……。
どうやって入ればいいんだろう……。
仕方がなく、試験官に聞いてみることにした。
「あの、すみません。
どうやって中に入るんですか?」
「え?
受験票の裏、ちゃんとご覧になられましたか?」
「裏?
…えっと…。
実技試験はカンニング防止のため、ドアにノブやとっかかりがありません。
魔力を込めることでロックが解除され、自動でドアが開きます。
……し、失礼しました!」
あー、恥ずかしい!
そんなの知らなかったよ…。
確か隅々まで読んだはずだったのに…。
目の前の壁に手を当てて、そっと魔力を込めた。
すると、僕は目の前の壁に吸い込まれてしまった。
「ひゃう!
……何、今の……。」
一人悲鳴を上げたことが、ちょっぴり恥ずかしく思えた。
部屋に入ってすぐ、目の前のモニターに試験官の姿が映し出された。
とてもクリアな声でアナウンスが入る。
「ではこれより、コルネリア魔法魔術学院入学試験実技の部を開始します。
カバン等の荷物は全て部屋の外に出してください。
制限時間は30分です。
では問題を読み上げます。
読み上げた後、モニターには問題が映されます。
問題。
任意の魔法陣を使って、月光効果の内容を示しなさい。
実験器具は少なくとも一つは使用することとする。
…始めて下さい。」
問題が読み終わった瞬間に、モニターには問題が映し出された。
それと同時に、いくつかの実験器具が目の前に用意された。
もちろん、これは絶対に使う必要がないだろって物まで丁寧に。
「月光効果か…。
また微妙にマイナーどころを…。
でも簡単で良かったよ…。
えっと、使うものはチョークと月の雫とマンドラゴラの干し草ってところかな。」
僕は目の前にちょっと大きな魔法陣を描き出した。
この魔法陣はちょっと特殊で、結構描くのに時間がかかる。
実験自体はすぐ終わるから、30分ていう時間の長さには魔法陣の描写時間が計算されてるってことだ。
でも、頑張れば10分くらいで終わる。
月光効果っていうのは、平たく言えば魔法の力の増幅効果のこと。
特に癒しとか生命に関するものに作用する。
だからこの世界では、医療の手術は満月の日に最もよく行われる。
……ふぅ。
とりあえず外形だけは描くことができた。
あとは時計の文字のように古代語を刻むだけ。
時計で言う12時から順番に、奇跡を我の前に示せって意味の言葉を刻み込む。
そして、魔法陣の中央にマンドラゴラの干し草を置いて月の雫を魔法陣に軽くかける。
これで下準備は完了。
最後にちょっと呪文を唱えて魔法の力を込めると、
マンドラゴラの干し草が水に浸されたように活き活きとしてくるはず。
「スー…ハー。
Omon Metars le raCo.
urnt ayd githn….」
手を魔法陣に置いて唱える。
一瞬の間の後、魔法陣が青く光りだした。
これは成功ということを意味している。
魔法陣全体から出ていた光が、マンドラゴラに集まってさらに強い光を放った。
その強い光がマンドラゴラから徐々に引いていく…。
光が引いていった後に残されたマンドラゴラは、
先ほど抜かれたもののように活き活きとしていた。
「よし、実験終了〜。
…って残り時間はどうすれば…。
ん?」
ふとモニターを見てみると、右下の方に終了って書いてあるのを目にした。
左下にはリタイアなんてのもある。
この終了を押せばいいんだろうか?
終了の部分のモニターに軽く触れてみた。
するとアナウンスが聞こえてきた。
「お疲れ様でした。
実験器具はそのままにして、静かに退出して下さい。」
結構拍子抜けした。
今回のテストは、全体を通して簡単だった。
例年に比べればそれは楽なものだ。
もしかしたら僕たちはラッキーな年に当たったのかもしれない。
時々そんな年度があるらしいから…。
部屋を出て、荷物をつかむとさっさと校門に向かった。
もしかしたら、もうジョアンかエマかノールが来てるかも知れない。
しかし、行ってみるとそこには誰も待っている気配はなかった。
やはり僕が一番乗りみたいだ。
せっかくだから、この時間に校舎を眺めていることにした。
一見真新しいんだけど、実は設立して100年近く経つという校舎。
何でも数年前に校舎の建て替えを行ったらしい。
そりゃまぁ綺麗になるわけで。
校舎から練武場まで全て建て替えるなんて、一体どこから資金が出てくるというのだろうか。
と、そうこう考えているうちにゆっくりとした足取りでジョアンがやってきた。
「ミック、早いなぁ…。
いつ終わったんだ?」
「う〜んどうだろう…。
ジョアンは何番目だった?」
「俺は4番目。
ミックは?」
「え…。
僕、2番目だったんだけど…。
今何時?」
「15時半。」
「えぇ?!
じゃあ僕は……もうここで一時間近くぼんやりしてたことになるじゃん!」
「一時間も前からここに居るのか?!
しかも気付かないってすごいな…。」
「すごくないって。
まぁ、今年の実技試験って簡単だったじゃない?」
「あぁ、確かにな。」
「だからすぐ終わっちゃってさ…。
途中で終了できたからそれで出てきたの。」
「俺もそうだけどさ…。
魔法陣描くのに意外に手間取っちゃったよ。」
会話をしていると、ふとある人物に目が行った。
10人近くのグループの中にいるボルトだ。
もう皆が集まったらしく、皆で集団下校ってところだろう。
僕たちの横を通り過ぎる時に、ボルトと目が合ったから軽く手を振った。
それを不思議そうに見つめるジョアン。
「何?
誰か知り合い?」
「うん、さっき知り合った。」
「さっき?!」
「うん。
筆記の前に話しかけられてね…。
試験前はずっと話してたんだよ。」
「余裕あるなぁお前とそいつ。」
「彼曰く、知り合いを作っておいたほうがリラックスできるからって。」
「へぇ〜。
そいつ、随分変わったやつだな。」
「僕もそう思った。」
そんな話をしていると、さらにエマとノールもやって来た。
嬉しそうな顔をしているノールが何となく可愛く見える。
そしてその後、また同じような会話を繰り広げながら僕たちは自分の町に帰っていった。
デキは普通。
受かってることを祈りつつ、その日は早くにベッドに入った。