消えない記憶、変わらない想い



純白に近いドーム上の建物の内部、白く塗られた壁の一部が赤い血で塗られていた。
その床の赤い模様と化した血の上に立っているものは4人、それぞれ深い傷を負い、血が床に伝い赤色を一層濃くさせる。
その中で、傷を負ってない者と白い粒子の光を天へと解き放たれている者が一人、前者は白い毛並みを持つまだ幼い少年の獣人。そして後者が、一番深手を負ったと思われる紅い髪を持つ獣人の青年。
少年は今にも泣きそうな顔で青年に抱きつき、それを見て、その少年の頭をやさしく撫でる。
「じゃあな、レン」
「待って……!待ってクレ……ス…!」
少年の腕の中から温もりが消え、力を入れていた腕は虚空を空しく抱きしめる。
粒子状の光がが消えたことによって、新たに生まれず天へと消えていった。
金属とも似て似つかない音が響く、青年が残していった対となった黒水晶の剣。
青年の血がついた腕で涙をぬぐい、床に落ちた剣を拾い上げる。
「クレス……僕……」
剣を大事そうに抱えて、少年は傷ついた仲間の元へと歩む。
少年を守ろうと必死に戦ってきた仲間は、少年に対して笑みを浮かべて歓迎する。
涙を流しながら、少年はごめん、ごめんと繰り返した。
そして、最後に一言付け加えた。
ありがとう、と。


いつだったか、そんな記憶が時々フラッシュバックしたかのようによみがえる。
自分の一番、心の中に残った一瞬。記憶を失ってて家族を失ってたときにもあった一瞬。
それを忘れさせてくれたのがクレスだった。自分の大切なものとなってくれたのがクレスだった。
頭に思いを巡らせながら、ベッドから身を起こしてレンは窓の外を見る。
自分が今居る場所、飛行艇と呼ばれる鉄の塊の空を飛ぶ乗り物の中。
雲が駆け巡り、隙間から青い空に地平線と水平線が同時に見られる。
服装は何も考えずに出てきてしまって、ある程度必要なものは持ってきたつもりだけど、肝心なものは忘れてきたかもしれない。
いや、一番重要なものは忘れてきてはないと思う。
あの頃には考えられないほど進んだ文明器機、それを使って今レンは大切に思う、想い人を探す旅に出た。
再び再会することを願った、レンにとっては今後最も生きている意味を知るための旅を。
そして、叶わない夢と思う心を片隅に置いて。

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聖魔でのレンとMMJでのレンの交錯する記憶と想い。
人にとって本当に印象残ったり記憶に焼きつくものというのは突然思い出してしまうもの。
それは人によっては違うが、レンもその人物の一人だと思う。辛いと思っても最初から最後まで思い出してしまう。
このシーンを書きたいがゆえに書いてみましたヽ(・ω・)ノ