第47章 イタズラ好きのドッペル
医師免許について、少し話したほうが良いかも知れない。
まぁ、大体の人はわかっているからいちいち説明したくないけど・・・
医師免許にはE、D、C、B、A、S、SSとわかれている。
医師の協会にてそう言った昇格資格試験を受けられる。
俺は全然知らないが・・・といっても全然興味ないんだが・・・
SSの医師はこの世界には居ないといわれてるぐらい難しい試験と言われている。
それを合格した医師、たぶん捜し求めていたいしだと思うけど・・・
「魔道士さん!私の依頼受けてください!!」
ばんっ、と強烈な手が机に叩きつけられた、一人で頭の中で語っていた時、一人の女性が俺が食事しているテーブルにいきなり叩いたのだ。
先のほうで太くなっているような帽子を被り、少し切れ目が入った服を着た女性だ。
「な、なんなの・・・一体・・・」
少し汗をかきながら一口、肉を口の中に入れる。
「とにかく!ご飯食べてないで!!聞いてくださいよぉっ!」
「うっさいっ!メシ時に来るあんたが悪い!」
バリンッ、!
大量の皿がそのうるさい女性の上にたたきつけられた。
あ〜あ、頭から血が流れてる・・・
少し冷や汗をかきながら・・・といっても獣毛で隠れるから誰も分からないだろうけど・・・
でも、みんなこっち見てるし・・・
「ほら!何か用があるんでしょ!とりあえず場所を変えるぞ!」
一通り人芝居をしておいて俺は店を立ち去る。
「わっきゃああぁっ!って、いきなり何するんですかぁ!」
近くの空き地に引っ張って、顔に傷をつけさせながら来た。
ちなみに顔を傷付けながらって言うのはこっちの女性の方。
「いきなりもなにも、こっちのセリフでしょうが・・・、食事時にこっちに来るんだし、しかもあんなにばしばしテーブル叩いたら普通、皿が落ちてくることわかってることでしょうが」
獣毛をかきながら、俺は溜息突きながら言った。
「あっ!じゃあなんでそんなに食べたんですかぁっ!私みたいなのがいるんですからもうちょっと加減してくださいよぉっ!」
「知るか!」
はた迷惑なうえ、自分の性格を主張しながら出来ない事を言う。
「んで、俺に用って何?」
頭を掻きながら俺はそう言った。
「あ、そうでした!何で別の事で話をしてるんですか!大事な用が、ってその手に溜めてるものはどうするつもりですか・・・?」
「ん?いや、なんでもないからだぁ〜いじな用事をさっさと言おうね、こちらとて暇じゃないんだし」
ニッコリ笑いながら俺は手に溜めている魔法球を維持し続ける。
「わぁ、わたしっ、『ハウル=ディハール』といいますぅ。少し遠くの町の、ドラグソウル・タウンとゆーところからきましたぁ」
「ドラゴンの魂とかが集まってきてるって言う名前の街から?」
「変な言い方しないでくださいぃー!」
怒ったような、目つきでこちらを見るハウル、って、ちっとも怒ってるようにも見えないんだが・・・
俺は溜息を一回ついて、
「そんで?なんなの?用事は」
「はい、私たちの街はある変な出来事が起こってるんです。私はその謎を解明しようとしたら、ある魔族がその元凶らしいんですよ」
「ふむふむ、魔族か・・・」
今まで魔族と戦ってきた経験か、それほどたいした魔族じゃないかもしれないと認識する、でもまぁ、見てみないと分からないけどね。
「報酬にもよるけど?魔族相手だと高いぞ?」
「はい、街から報酬が出るようですよ、私は誰か引き受けてくれる人を見つける人ですから、どれくらいもらえるのかわかりませんが・・・」
ほむほむ・・・
「わかった、引き受けてあげる」
その言葉と同時にハウルの顔が光り輝いたように見えた・・・
すぐ近くの町だったので、簡単に問題解決するだろうと思い、レン達は宿屋に滞在してもらった。
今、街道をハウルと一緒に歩いている。
一つ一つの木から小鳥の声が聞こえてくる。
そして、しばらくするとハウルが言っていた町にすぐ着いた・・・
「ここが、私の町ですぅ」
「いたって、普通のように見える気がするんだけど・・・?」
人が活気よく店にお客を呼ぶ声が聞こえる、八百屋、魚屋、雑貨屋、肉屋などなど・・・
「はい、でもしかし、町人は今の状態の3倍くらいはいました・・・」
なんかやっとまともな喋り方になったような気が・・・
ハウルは暗い顔をしながら淡々と理由を語った。
昔は今に比べたらここももっと活気があったようだ、しかし、ある日町の中心の塔のようになっている、水車小屋に魔物が住むようになり、その魔物が頭がいいのか人々にこう言った。
「怪しいものがいる場合、一人一人町人を消していく」と、これは魔物と言うより魔族に近いと予想した町人はなんとか助けを呼びたいが、当然町の人は大きく怪しい動きなんてできない。
そこで、一人だけ違う町へ出かけ、そこで助けてもらう人を探すと言う役をハウルにしてもらったのだ。
んで、この俺の顔を知っていたか、はたまた俺の大陸で言う、魔導師協会にかけつけ、俺の居場所を聞いたのかわからないけど、俺に話し掛けてきた。
ハウルは俺に事情を話しながら自分の家に招く。
「魔族はあの水車小屋から動いてません、できれば早めに対処をお願いしたいんですが・・・」
「あの水車小屋からかぁ・・・」
ちょっとした疑問が浮んだ。
「ねぇ、あの水車小屋からどうやって町の人の怪しい動きなんて見るのかね?魔族っていったら何でもかんでも空間移動ができる魔族っていうのでもないし・・・」
「それは・・・わかりません・・・しかし、水車小屋からは出ていません」
「その根拠はどこから来るの?魔族は上から見下ろしているのかも知れないよ?」
「クレスさんは私を信じてくれないんですかぁ!」
ってぇ、またこの女、あのしゃべり方するし・・・
「わかったわかった・・・とりあえずあの水車小屋に魔族がいるのね?」
「はい、できるだけ早くお願いします!」
こつこつと階段を上がっていく、俺だけしか足音は聞こえない。
水車小屋の入り口はだいぶ昔に自由に行き来する事をなくしたらしいが、入り口はすぐ見つかった。
それを蹴り壊して入った・・・どうやったって開かないんだもん・・・
ちびっと、やりすぎたかもしれないけど・・・まぁ、手段を選んでる暇がないってことで
石壁の冷たさが俺の肌を刺す、でもたいした寒さじゃない・・・
自分の獣毛を掻きながら俺は一番上らしき扉を開ける・・・
ぎぃっ、―――
錆び付いた様な嫌な音を放ちながら扉は開かれた。
「おや、町の人の使いかな?」
魔族、らしき者、額には角、全体的に黒い肌をして、ところどころ空間ができてる・・・その者は午後のゆとりを楽しんで・・・っておい・・・
「まてぃ、何で魔族なんかがそんなゴージャスな生活をしている!」
ちょっとこけそうになりながらも俺は突込みを忘れなかった。
「いやいや、これが魔族の普通の生活ですが?」
うわっ、むかつく
「ふぅ、そんな事言って町の人たちの貢物だったりするんじゃないだろうね?」
「ふ、なんのことやら」
いや、図星かい、平静を装ってるように見せる魔族の額に青すじが流れた。
魔族はティーカップをテーブルに置くとこちらを見て
「狼君がここに来た理由はわかります。私を倒しに来たのでしょう?」
「そうだよ。」
きっぱりと俺はそう言った。
ここで嘘を言ってもどうしようもないからである。と言っても、嘘を言ってちょっとからかうって言うのも面白いが魔族相手にどれだけからかえるか疑問である。
「そうですか、ならば・・・」
魔族がにやりと笑った。俺は背中に嫌な気配を感じ取った、無意識のうちに横に飛ぶ。
シャリンッ――
「!!」
鉄の鎖が音を立てて床に叩き付けられた。横に避ける時、もしもう少し遅ければ、俺のマントと同じ運命をたどっていたかも知れない。マントの方をよく見ると、鎖の円の外側が刃物のように鋭くなっている。
「あんたの仕業?」
キッ、と魔族をにらみつける。
しかし、魔族は平然とした顔でいた。
そこが戦場となった。俺は右に走り、魔族との間合いをつめるが、すぐにまた離れてしまう。
振り向きざまに、俺は移動すると思われる場所に魔法を放った。
しかし、虚しくも壁に焦げ目ができるだけで全然ハズレである。放った魔法の反対側に魔族が現れた。
ふむ、どうしようか・・・
頭の中でつぶやいた、勝ち目がないと言っちゃあ勝ち目がない、だけど勝てないわけじゃない。
ただ、ひっかかってくれるかどうか・・・
俺は魔族の攻撃をかわしながら口の中で詠唱する。
そして、また魔族が消える・・・
「精神剣(アストラル・ソード)!」
精神の塊でできてる魔族にとっては当たれば大きなダメージになるだろう、しかし、当たればの話。
当たらなければ意味がない、しかし、俺はその魔法を適当なところに手を向けて。
「また、ハズレですね・・・」
またまた後ろに現れた魔族、しかし・・・
「なっ!ぐふっ・・・!」
後ろに現れた魔族の声が聞こえた、後ろを振り返ると、肩をおさえている魔族がいる。
上手くいったようである。簡単に言うと、魔族が魔法唱えると放ったところと反対の場所へワープする。
だから、いくら放ったとしても、はずれる当たり前、そんな攻防戦をいつまでもするつもりはないが、
そして、俺が今放った魔法は、俺の背中から放たれた。魔法はなにも手から、術者の前に発動するものではない、集中を変えればこんなこともたやすいのである。魔族は悪あがきなのか、何かの魔法を唱えているようだ。
「さ〜て、覚悟しな・・・」
ちょっと悪党っぽいセリフをはきながら俺は魔法を唱え・・・・しかし、中断された。
その理由は、景色が変わったこと、そしてもう一つは、目の前にもう一人の俺がいること。
「さ〜て、覚悟しな・・・」
同じセリフをそいつは吐いた・・・