第44章 闇に浮ぶ船
「う〜にゅ・・・・」
俺は辺りを見回した。イカリを降ろしてとりあえず、流されないようにしている
ここは海の上、ってあたり前だけど、数日前から霧がかかっていてどうにも船が進まない状態だった。
このままじゃ食料がなくなって………
っと、でも、十数日くらいの食べ物はあるから大丈夫だと思うけど
いくらなんでも異常としかいいようがない……
「どう思います?師匠」
「う〜ん、そうですねぇ・・・」
隣には青い狼のウォルト、俺の師匠がいる
ひょんなことから海の上でであって今は一緒に、、ってまぁ、別れようがないし…
師匠は微笑しながら考える
「わかりません」
にこっと笑いながらそう言った。あぁ、やっぱり、、、
「レン君は大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁ多分大丈夫。早く治してやりたいんだけどね……」
そう言って俺は船内に入っていった。
一番近くの扉のノブに手をかけ、開ける
「レン?大丈夫か?」
部屋の中は暖房設備で暖かくしていた。その奥のベットでレンは目を閉じて寝ていた。
扉の一番近くには本があり、色々な本が有った。今まで集めてきたものだろうと思う
しかし、、、
「いったいどこにしまってたんだろうな・・・・?」
そう言って、一つの本を手にとってパラパラと見る
そして、ちょっと気になる単語が載っていた。
「幽霊船ねぇ……」
良くサーガとかに歌ってそうな単語だ。
ま、本当に歌ってるかは謎だけど、決まってありがちな登場をする幽霊船
「霧が現れるとしばらくすれば現れる、ま、ありきたりな幽霊船はそうだろうね……」
俺も過去に何度か幽霊船には出くわしたことがあるんだが結局のところ何が未練で
何で彷徨っているのか全然分からなかったのだ。
つまり、見つけると厄介な船ってことだ。
俺は本を閉じて元の場所に戻す
レンの方へ歩みよく寝ているレンを見た。
「ワーウルフ化か、、、早く治さないとな……でも、どこへ行けば…」
どうにか、しないとな、、そんな事を心の中でつぶやいて
俺はレンの額にキスして、その部屋を出た。
「って、結構熱いもんだな、中は……」
そんな事をつぶやきながら俺は甲板に出た。
舵とっていたエルは暇そうに辺りの様子をみながら酒を飲んでいた。
テットはと言うと……あれ?
「お〜い、テットは?」
「後尾の方にいるよ、さっきコウとトキノと一緒に走ってたから」
「こんな時でものんきなんだな……ま、いいけど、、」
俺は後尾の方に向かって歩いた。
ぎしぎしと床がきしむ音しか聞こえない、無気味だ……
「あれ?テット?」
後尾にテット達の姿は見えなかった。
俺は前の方に戻ったと思い、俺も前に戻ろうとしたが、、
「クレス……」
ん? 俺は声のするほうを振り向いた。
そこにはテットがいたが、何か様子が違う……
テットの明るさがない、今は笑ながら俺を呼んでいるが何かが違う
「クレス……クレス……」
「その名を呼んでいいのは俺が認めた奴と仲間と依頼人だけだ。お前は誰だ!」
俺は構えることもなく腕を組んでそう言った。
そして、テット(らしい奴)はいきなり声も無く笑い始めた。
「あはは、何言ってるの?僕はテットだよ、クレスが良く知ってるテット……」
「……………」
俺は無言でそいつが笑いながら話してる言葉を聞いた。
「テットじゃないな、確実に……」
「ばれちゃったか、、、」
「コウやトキノはどうした?」
「コウ?トキノ?あぁ、あの竜か……」
テットの体がだんだん薄くなってきた。やっぱりというか予想通りというか……
「あの虎と一緒に居るよ、僕の友達、、帰さないよ、、あははははははは!!」
「霊なら笑うなーーー!!アストラルブレス!!」
青白い光の閃光が俺の手から放たれた。その光はテットを貫いた。
少し苦しそうな声を上げたがそのまま消えていった。滅んだわけじゃないか……
「ただの霊じゃないようだね……」
俺はそう呟いた。そして踵を返して師匠たちのところへ行く
そこにはもう自体を分かっている感じの師匠とまだ酒を飲んでるエルがいた。
「師匠、、テットが、、、」
ようやく自体を察したのかエルの顔が驚愕の顔になった。
「分かっています。貴方がさっき精神系の攻撃魔法を放った時ぐらいに……」
「………やっぱり、予想としては幽霊船だと思うけど…」
とゆーと現れるのがすごいところでもある、
いや、実際そうつぶやいたら現れたのだ。幽霊船が…
「まぁ、好都合といっちゃ好都合だけど……テットはやっぱりあの中へ?」
この霧の中では遠くの景色なんて見えないくらいだ。だが、幽霊船だけは霧の遠くから現れた。
物体じゃないからたぶん遠くまで見えるんだと思うけど、完全に幽霊船だと言う事がわかった。
「あの中にテット君が居るようですね……」
「でもよう、なんでこの霧の中あんな遠くまで見えるんだ?」
「幽霊船って言うのは物体じゃないの、霊の力、つまり精神の力で動かしてるみたいなものなの
だから、どんなに物体を見えなくするこんな濃い霧でも精神である幽霊船は見えるってわけ」
「そうか、、俺は残ってるよ」
「初めからそうしてくれると嬉しいよ、レンも寝たままだからね……」
「おう!」
エルがそう言って頷いた。
「それじゃあ、それじゃあ師匠行きましょう、ウィング!」
そう言って俺と師匠は飛行呪文を唱え幽霊船に向かって飛んだ。
後ろを振り返るとすでに船が見えなくなった。だが、幽霊船だけははっきりと見えた。
そして、俺は幽霊船の甲板に降りた。
「不気味だな、、まぁ、幽霊船だし、、」
帆は散りじりに破れて、床やあらゆるところの木はもろくなっていて到底、この状態で船が浮んでいるなんて考えられない
そして、俺のあとに師匠が船の上に降りた。
「不気味ですね、幽霊船というものは……」
そう言って俺と師匠は幽霊船の中へ向かった。
幽霊船の中は静まり返っていて俺達の進む足跡しか聞こえない
ある一つのドアを開けてみるとドアが壊れた。
「なんて言うか、やっぱりもろくなってる……」
「足元に注意した方が良いですね…」
そして、俺と師匠が部屋の中へ足を入れた瞬間
木で出来た床が崩れてそのまま俺たちは落ちていった。
「って!言ってるそばから落ちてるしーーーー!!!」
幽霊船全体に響くかのような声を上げながら俺達は落ちていった。


「う〜ん……」
俺は自分の上に重いものを感じ、目を覚ました。
「クレス♪起きて起きて♪」
「しぎゃ〜♪」
「ん、、テット、もう少し寝かせて……」
「クレス寝ぼけてる〜♪」
そう言ってテットとコウがもう起きている師匠の近くに行った。
「ふぅ、たったこれだけの高さから受身できないとは、私の修行で何を学んだのやら…」
うるさいなぁ、、一発ファイヤーボールを食らわそうとしたが、俺は途中でやめた
「って!?テット!!」
「やほ♪」
「やほじゃないだろ!?あれ?でもなんでこんなところに?」
俺はどうにか身を起こして立ち上がった。
師匠は微笑しながら
「つまり、テット君のいた場所に落ちたってことですよ、なんとも運が良いのか悪いのか」
「まぁ、別に良いや、とりあえずテット帰るぞ!」
「え、、ちょっとクレス待ってよ〜!」
俺が踵を返して帰ろうと思ったときテットが俺の服の裾を持って引き止めた。
「なんだよ、、テット、、」
俺は床に突っ伏しながら言った。
一応、テットは大人の数十倍の力を持っている
だから、予想してる奴はしてるだろうが、テットは俺より力が強いんだ。
「私が言いましょうか、つまり、テット君は誰かに連れ去られたんじゃなくて頼まれてここまで来たんですよ」
「うん、このお船、助けて〜助けて〜って言ってるから…」
「しぎゃぎゃ〜ぎゃ〜!」



「つまりだ・・・・・・」
俺達は円を囲むようにあぐらをかいて座った。
「それが助けを呼んできたと・・・・?」
テットが抱えているものを指差して言った。
「うん♪」
テットは元気よく頷いた。
そいつは頭が丸かった。そいつは赤かった。そいつは足が8本あった。
「どこをどう見てもタコにしか見えないんだけど・・・?」
「うん♪タコだよ♪」
テットが元気良く言った。
タコはテットの中でくねくね動いている
そのテットに抱えられているタコを見ながらコウはタコに恨めしそうな目をしている
テットを取られたと思ってるんだろうけど、たぶんそれはないと思うぞ
師匠は、この部屋にある棚を見ていた。骨董品なんかが並んでるみたいだ・・・
「でも、タコは喋れないだろ?」
「喋れないけど、、何となくそう言ってるように聞こえたの〜」
くねくねくねくねくねくねくね
「いや、言ってるって言う自体間違ってるから、喋れないんだろ?」
くねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくね
「喋れないけど〜・・・」
くねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくねくね
流石にここまで来ると鬱陶しくなってきた。
「くねくねくねくねするなーーー!このタコがーーー!」
俺はテットからタコを引っぺがして床にたたきつけた。
「あ、駄目だよクレス〜、タコさんが可愛そう〜」
「とりあえず、なんて助けを求めてたの?」
「助けてって」
「そのまんまか!?」
俺は床にくねくねくねくねと鬱陶しくなるほどくねくねしているタコを見て溜息を吐いた。
「クレス、とりあえず助けてみてはどうですか?」
「と言っても師匠、何を助けて欲しいんだか全然分からないんだけど?」
師匠は棚の一つの壺を手にとりながら言った。
「詮索も必要ですよ、とりあえず船の中を見回ってみたらどうでしょう?」
ちなみに言っておくけどここは幽霊船の一番奥の部屋、もちろん光りなんて通らない
ここを探せって言うのはある意味無理があるような・・・?
「しょうがないか・・・」
「ありがとう〜♪クレス♪」
テットが嬉しそうに言った。
俺はテットを見てそれからくねくねしているタコを見た。
「やっぱり食っちゃった方が良いよな・・・」
もちろん、テットに止められたけど・・・