第14章 一発勝負!一か八かの大バクチ!
「こいつが・・・ジャルダ!」
俺が構えながらそうつぶやく
黒き竜は一瞬だけにやりと笑った気がする。
『まだ生きていたとはな、やはり人間はしぶといしぶとい、それが獣人であるならさらにしぶとい・・・』
「・・・あの殺気はお前のものだったのか、ジャルダ」
『違うな、私はある奴に頼んだだけだ、まぁそれが失敗をするようなおちになるとはな・・・』
ジャルダが翼を羽ばたかせる、それだけでも耳鳴り、全身に激痛が襲う。
「うぐあっ、、!!」
『ククク、いい声だ・・・我が力となる・・・』
「ちぃ、俺を怒らせたな・・・」
なんとか体制を立ちなおし、ジャルダに向かって指を指す。
「後悔させてやるよ!俺が怒らせたらどうなるかってのをね!!」
「ジャルダ、僕の両親の仇・・・絶対討ってみせる!」
『ククク、我に立ち向かう愚かな者たち・・・見せてみろお前たちの・・・力というものを』
ジャルダの周りに紅蓮の炎が現れる。
「レン、お前は俺についてきて、ディコルは右から、グレンは左からありったけの攻撃、精神魔法をかけて、グロールは真ん中を!そして、フォーメーションを組んで一気に叩く!」
『はいっ!』
『おうっ!』
そして炎が放たれる、5つの炎はそれぞれ俺たちに向かって飛んでくる。
「GOッ!」
その場を全員走り出す、炎はすぅっと通り過ぎ、俺たちがいた場所に落ちる。
「うおぉぉっ!水よ!刃となれ!!」
グロールが刀身に水の刃を宿らせる、次々に飛んでくる炎を全て斬りつける。
横からディコルの水と炎、風と土といったあらゆる属性の攻撃を
グレンは精神形にダメージを与えるものを、
俺とレンはウィングで空を飛び、空中から攻めている。
『無駄な事を・・・』
ジャルダはすぅっと息を吸い込む・・・
「ファイヤーボール!」
――どごおおぉぉんっ、!
俺の作り出した火炎球がジャルダに命中する、しかし、煙が消え去ったそこにはジャルダはゆうゆうと立っていた。
『これでお終いだ・・・―デットオブブレス―』
瘴気にも似たような息が俺たちを包み込む、ウィングの集中が途切れ、俺とレンは地に付く。
「ぐあああっ、、!」
グロールの体に黒い霧が発生し、そして消えていく・・・
「が、、ぐっ、、!」
「うあああっ、、!」
ディコルとレンも・・・そして、いつもまにかグレンの体にもそれは起こっていた。
全員が、その場で倒れた・・・
「レン!ディコル!グロール!グレン!・・・レン・・・」
俺はレンに近寄って、起き上がらせた・・・が、目は瞳孔が開いていた。
人が死ぬ、そんな瞬間だった、体が硬直し始めている・・・
『何故、お前には効かないのか・・・まぁ、それはどうでもいいだろう・・・』
巨大な足音と共にジャルダは俺に歩み寄る、たぶんトドメをさすためだろう・・・
硬直し始めたレンを地面に置き、俺はジャルダの方に向く
『我の僕になれば生きながらせてやろう、しかし逆らえば死だ・・・』
「・・・・・」
『私を倒すすべなどないだろう、お前の魔法は私には効かん』
「たしかに、俺の魔法は効かない・・・だけど!」
俺はジャルダを見上げる、
「すべならまだある!それに全てをかける・・・」
『ククク、どうあがいてもお前の負けだ・・・あがいてみろ・・・』
俺はその呪文の詠唱に入った。

〜自然を生み出す大地よ
  空と大地を駆け抜ける風よ
  業火の炎を呼び寄せる火よ
  美しき冷たきたゆたいし水よ

『何!お前、、その呪文は!』

  人々に幸を与える光よ
  全てを無に帰す闇よ
  時を操る時の竜よ

『やらせん・・・』
ジャルダは紅蓮の炎を吐く・・・が、俺が今はっている魔法障壁でそれは跳ね返される。
今ここで気を抜いたら、俺は死ぬ・・・

 我等が前に立ちふさがりし者を
 滅びと再生を与えよ〜

「これで・・・終わりだ!!『ギガルディーア』!!」

全ての属性を束ねし者、そして天地を作り上げた者・・・
神と呼ばれる者の力を借り、力を放出する魔法・・・
だけど、これには欠点がある・・・
一つは、魔力を制御するのが難しいって事、失敗すれば俺の中にある魔力は全てなくなる
そしてもう一つは、完成したら、自らの命を絶つこと・・・
今の俺には魔力が足りなさすぎる、だから発動した時魔力を全て吸い取り、俺の体には一粒の魔力もない。
しかし、この魔法は運命を変えることが出来る、
自ら望み、それが願いとなる・・・生きる者、死ぬ者、生きたいと思う者、倒したいと思う者。
その願いが俺から放たれた。
俺はどこにいるんだろう?あの後、どうなったんだろう・・・?
暗闇の中、上も下も左も右もわからぬまま俺は意識をもっている。
死、そう頭によぎった、確実な死だ・・・
俺は、この暗闇の中ずっと迷っているのだろうか・・・?何を求めて・・・?
「クレス・・・クレスっ!!」
レンの声が響いた、いないはずのレンの声が、どこに?
探し回った、ただ浮遊感を感じながら辺りを見回した。
そして、突然、ひかりが現れ、俺を強く照らす

「クレスっ!」
俺が目を開き、身を起こすとレンが抱きついてきた。
レンが生きてる・・・?
「まったく、たいした奴だな・・・」
ディコルが微笑しながらそう言った。
グレンもグロールも笑っている。
「一人で、倒すとは思わなかったですよ、クレス」
「本当にな」
荒地であるところに雪が降る、少しづつであるが、積もりつつある。
「俺、助かったんだな・・・」
レンを見て、そして抱き締めた。
―ありがとう・・・

「それじゃあここでお別れだな」
聖都市に帰る途中の街道、グロールがそう言った。
「それじゃあ俺も、グロールさんについていきますか」
「二人して?どこに行くの?」
「俺は故郷の方に帰ってみようかなって思う、俺、家出してきてんだ」
苦笑しながらグロールが笑う、たてがみが風にゆられている。
グレンはそのグロールについていくそうだ、グロールの故郷に何か用があるんだとか・・・その内容は良く知らない、俺とディコル、レンはふたたび歩き始めた。
「ディコル?そう言えばあんたは竜のところへ帰らなくて良いのか?」
「俺はクレスと共についていく事を頼まれたからな、だからずっとついていくつもりだ」
「ふぅ〜ん・・・」
「じゃあ一緒だね♪」
レンがにこっと笑った、邪竜がいなくなった所為か、魔物との出会いは激減だった。
だから帰りはゆっくり帰れた。
「早く、クレスの故郷見てみたい♪」
「聖都市ウィルディか、クレスにはにあわない都市だな」
「ま、故郷に帰ってもまだ俺の旅は終わらないと思うけどね。」
俺は苦笑し、ディコルとレンは首をかしげた。
「ほらほら!早く行きたいんでしょ?レッツGO!」
誰もいない街道、俺たちは走った。
少し後から俺はまた旅立つつもりだ、俺の旅はエンドレスってことで♪続く♪