第13章 雪の原に黒き竜現る!
肌寒い、一言で言えば寒い、
極寒の地でもないが、一年中雪が降り続いているといわれているウィレッツ大陸の南
そこに白犬族の村があった、しかしそれも昔の話である。
「ここがレンの故郷があった場所・・・」
毛皮のローブにフードと一応防寒対策はしてある俺達、
「・・・何もない・・・」
ここ数日間、ここを目指して旅をしていたけど、話には聞いたことがあった。
洞窟を出てすぐに白犬族の村が見えると聞かされていたが・・・
そこにあるものは朽ち果てた廃屋・・・それだけだった。
「こりゃあ、酷いな・・・」
「何もかもなくなっている、やっぱり変わりませんか」
グロールとグレンも口々にそう呟いた。
ディコルはその殺風景を見て無言のままうつむいた。
「ちょっと、僕向に行ってきます」
レンがそう言って村があった場所に向かって走っていった。
「もしかしたら、余計傷が深くなったんじゃないか・・・?」
思っていたが言えなかった事をグロールが言った。
たしかに、レンは更に傷が深くなったのかもしれない、この村があった。そんな風景を残したままでいる雪原。
レンの心はもっと深くなってしまったかもしれない。
「とりあえず、クヨクヨしてもしょうがない、邪竜の手がかりがあるかもしれない、少しだけ探してみよう?」
「そう、だな」
「ん?」
検索中、俺は少し凍っているがあまり壊れていない家を見つけた。
「何かあるかな・・・?」
家に入ると、そこには生活の空気がやっぱりなくなっていた。
木で出来た家なのに壊れてないって言うのは不思議だった。
「おや?」
俺は何かを発見した。そこへ近づいてみると一つの写真立てが目に付いた。
その写真を見てすぐにある人物が移っている事に気がついた。
「・・・レン・・・」
レンに、兄だろうか?レンの首に手を回して一緒にピースしている。
その横でたぶん母親だろう、二人の様子に笑顔しているようにも見える。
日常の風景がここにつまっていたのかも知れない。
俺はその写真を懐にしまい、外に出た。
相変わらずあたりは雪が降り続いている。
「手がかりが見つかったかも知れないな、ちょっと戻ってみるか」
仲間が手がかりを見つけた事を祈って俺は仲間のもと、集合場所に戻っていった。
「手がかりはなかった」
全員が口々にそう言った。やっぱりそんなものだろうか、
全員溜息をついた、
俺の予想はもちろんハズレ、また別の場所に行こうと思っていた。
しかしレンがいない、あのときからずっと姿を消したままである。
「ふむ、ちょっとレンを探してくる、見つかったらすぐに出発する」
俺はフードを深く被ってレンの魔力をたどった。
雪道、雪が深いからあまり早く歩けないが、雪の所為でレンの足跡は綺麗になくなっていた。
魔力でたどる以外ないと思ったから魔力をたどりながらレンの居場所を突き止める。
雪がフードの中に入ったりもしたがあんまり気にしない。
「レン、大丈夫だろうか・・・?」
心配しながらも雪道に足を取られ、それでも進んでいく。
しばらくすると一つの神殿の跡らしき建物を見つける。
「なんだここは・・・?レンはここに?」
俺はその中に入った、しかし中は岩で崩れた神殿の跡と床が崩れ下のほうで小さな川が流れているところに出た。
外から見れば大きいから探しにくいと思ったがレンはすぐに目に付いた。
「レン!」
自分の名前を呼ばれてか、それとも大きな声を出したからか。
レンはビクッと反応して俺のほうへ振り返る。
「クレス・・・」
「ここにいたんだな、ここには邪竜の手がかりがなかった・・・レンが準備いいならすぐにでも出発するが・・・?」
俺はレンに近づく、レンはまた川を見つめる。
「ここに何か思い出があったのか?」
レンは黙ったままだ。あんまり無理に話してもらいたくないが話さなければ、ずっとわからないままだ。
「教えてくれ、レン・・・」
「僕は・・・」
レンは口を開いた。
「僕はここで記憶を消された・・・」
「え?レン、覚えているのか?」
「うん・・・だけど、それ以上の事は何も覚えてない・・・」
レンはうつむく、何もできない俺が少し悔しい・・・
川の音だけがその神殿の空間を響かせる。
レンは、どうして記憶をなくしてしまったのか・・・
「なぁ、レン・・・んっ!?」
俺は何かを感じ取り、レンを抱きかかえ床へ伏せる。
「クレス!?」
次の瞬間、上のほうで大きな爆発音が響いた。
神殿の天井が俺達の上に落ちてくる・・・・・・
「やはりそれだけの方だったようですね・・・少し残念です・・・」
雪原の空に一人の魔導師風の男が浮いていた。
雪の所為で顔が見えないが杖を持ち、魔導師の格好、そして犬の顔らしき部分が見えた・・・
「あの方に報告しなければ、僕が怒られますからねぇ」
くすくす笑いながら空間に消えていった。
しかし、誤算だったのかもしれない、俺のバカ力に
「おんどりゃあああぁぁぁっ!!」
ばこっと言う石が砕ける音が響き、そこから俺とレンが出てきた。
「変な殺気を感じて・・・すぐに動けてよかった・・・」
妙な殺気を後ろから感じ取り、とっさにレンを押し倒して爆発の衝撃を逃れた。
崩れた時に体にだいぶダメージを食らったが、今、治療呪文で治している。
「クレス・・・ありがとう・・・」
「あぅ、ごめん、レン、ちょっと痛い・・・」
レンが俺に抱き締めてきて強打したところが痛みをました。
申し訳なさそうにレンは離れ、そしてさっきの顔とは打って変わった笑顔で俺を見た。
降る雪が俺とレンの体を冷たく冷やす、それでもちょっと俺の顔は赤面してたりする。
「さ、さぁ、みんなが待ってるから行こう」
「うん」
崩れた神殿跡から俺とレン、二人は雪原に足跡を残しながら仲間の元へ
グレンとディコル、グロールがあたりが見えなくなるぐらいの雪の中、俺たちを待っていた。
「遅いぞ二人とも」
「ごめんごめん、ちょっといろいろあってね」
グロールが待ちくたびれたような声を出し、俺は苦笑しながら返した。
「それでは・・・違う土地へ行ってみましょうか」
「あぁ」
グレンが先頭にそのあとに俺たちがついていった。
雪と雪がこすれるような音、そんな音が5つ、別の音が聞こえるのは、そう間もなかった。
突如、空が黒く紅く染まり、雲が渦巻く、俺達は空を見上げる。
雲が渦巻き、中心で何かが起こっている。
「すごい・・・魔力だ・・・」
「怖い・・・」
魔力の風が巻き起こり、ディコルとレンが口々に言う。
そして、中心から出てきた、黒く大きなブラックドラゴンさえしのぐ大きさ
なにより、高い魔力がその竜を魔族だと直感で感じさせた。
「クレス・・・こいつが邪竜王・・・」
「ジャルダ・・・っ!」
竜は地に付くとあたり一帯は雪が解けて荒地しか見えなくなる。
竜は羽をばたつかせ、そして完全に地に降りる。