第12章 兄の思い裏腹に?
「クレスは?」
レンが廊下の壁にもたれかかっているグロールに聞いた。
グロールは一つの扉を指した。
レンは溜息をついて、グロールのとなりの壁にもたれかかる。
こうしてみると、子供と大人の差があるくらいの背だ。
「マジックアイテムがヒースさんに持ってかれたぐらいで泣くなんて」
「俺はそう言うのはあんまりわからんが、かなり高価だと聞いた事はある」
グロールがそう言った。
マジックアイテム、その一つ一つに魔導師の研究の成果がわかるぐらいの代物。
たいていのマジックアイテムは魔力増幅なんかが多い、まあ、魔力というものはひと誰でも備わっているもので修行することにより能力を上げることが出来る。
その魔力増幅装置の仕組み二通りある、使い捨てタイプと持続タイプ、使い捨てタイプはアイテムに自分の魔力を篭め、特殊な貴金属などを組合せアイテムに魔力を閉じ込めて使用時に発動するものである。
しかし、欠点がある、この類のものはタイプのとおり1回のみしか使えない。
だから使い捨てなのである、一撃が大きいが次が放てないのである。
だけど、それを使いこなせば2人分の力を発動させることが出来る。
そして、持続タイプ、このタイプはややこしいのである。たとえば持続させるにはどうすればいいだろうか?
無限の魔力を生み出す装置を先に作り出さなければならない、しかしそれもどう作るのか分からない、
そう、それが魔導師の研究成果を生かした様々な方法があるのだ。
それを・・・それをっ!!
「わぁ、クレスの部屋から熱気が・・・」
「爆発したら大変だな・・・」
レンとグロールが俺の部屋の扉を見て言った。すこしもやもやとした熱気が立ち込めている。
「爆発する前に止めた方が良いんじゃないか?」
奥から歩いてきたディコル、グロールは俺の部屋の扉を開けた。
「うわっ、熱ッ・・・」
そして、ベットに寝ている俺を見つけ俺の方を持って揺すった。
「あ゛?」
「いや、そこまで怒らなくても・・・」
ん〜みゅ、少し怖い声出したか・・・でも結構イラついているときに来るからいけないのだ。
「クレス、下でご飯食べて落ち着こうよ」
その言葉で、熱気は消え去った。

「たくっ、あの兄ちゃんは!!人がせっかく苦労して集めたマジックアイテムを!!」
食事をはじめてからもう2時間ぐらいは経っている。
俺から熱気は消えたものの、イラつきは消えなかった。
俺の目の前には数百枚のお皿が谷を作っている、もう少し振動したら落ちて割れそうだ。
レンはそのお皿の一番上を見ている、少し割れるのが怖いようだ。
グロールはそれを気にせず俺と同じぐらいのペースで食事している。
グレンとディコルは既に他のテーブルに非難済みである。
「クレス、それより・・・次はどこへ向かうの?」
「ん?ちょっとレンの故郷いってみようかなって・・・」
少しレンがビックリした顔して、
「え、なんで?」
「ん〜、特に根拠はない」
そして、から揚げをパクリと食べた。レンは不思議そうな顔をしている、なんか言わないとずっとそういう顔してそうだ・・・
「俺はもうこの大陸は全てまわったんだよ、だけど白犬族の村だけは行ったことがない、もともと立ち入り禁止区域だったから、俺みたいな魔導師が行ったらダメだったんだよ」
「あ、そうなんだ・・・」
「そう、それに何故白犬族があそこに村を築いたのか分からない、魔力が関係してるんじゃないかと思うんだ。それにレンがいれば、あそこに行けるかもしれない・・・」
「しかし、関係があるからと言っても、そこに邪竜がいるわけないと思いますよ?」
グレンが非難しているテーブルからそう言った。
「邪竜がいるのでしたら、すでにあそこは調べられているわけですよ?」
「でも、邪竜はこの大陸のどこかにいるんだ、たぶんな」
「しかし、それってもう普通は見つかっているんじゃないか?」
食べながらグロールが言う
「たぶんそれだったらもう見つかっているはず、だけど魔族は姿を消せていつでもどこでも姿が現せれるんだよ」
「ふぅん、なら魔族をおびき寄せれば良いんじゃないか?」
「はぁ、どうやっておびき寄せるんだよ・・・」
全員が溜息をついた。

「ねぇ、クレス?」
「ん?なんだレン?」
朝、レンが俺に一冊の本を渡してきた。
古い魔道書、でも形がしっかりいていて原形を保っている。
「これは?」
「ヒースさんが、クレスに渡しておいてだって・・・」
俺はパラパラめくる、そこには知らない魔術の数々、ルーン文字などが載っていた。
「これって、グラン・シアスの魔道書・・・」
「ヒースさんが内緒で渡してくれたんだ、クレスに後で渡しておいてって」
「・・・ありがとう」
たぶん、これは聖都市に保存してあった魔道書のひとつ、兄ちゃんは、その一つを俺に持ってきてくれたんだ。
たぶん、クビを覚悟で・・・
「えと、クレス・・・泣いてるの?」
「!いや!これは違う!」
「これって・・・くすくす」
「あはは・・・」
帰ってくることを待っていてくれる人がいる、俺はその人たちのために打ち勝ちたい・・・
邪竜王を倒す、あまりにも大きいことであるが、それをなしとげたい・・・