第10章 最強の敵!それはコピー?
「・・・・・・」
それは無言のむかいあいだった。全身にローブを被った――たぶん、俺と同じ狼の獣人。
しかし、俺に向かって敵意を露わにしている。ほぼ確実に俺に攻撃してくるだろう。
さすがに弱った、俺の手にはさっき手に入れたばっかのお宝がごっそりあるのだ。
そして、宿に帰ろうとしたらこいつの出現・・・・・・
なおも沈黙が続く、そして、沈黙を破ったのは俺だった。
「お前がクレスか・・・・・・」
そう、『俺』の声だった。だが、俺は自分の名前を呼ぶことなんて自己紹介のときだけだ。
ましてや自分で自分の名前を問うことなんてとうていない。と、なると・・・
「そうだ」
俺はそう答えた、たぶん答えなくても答えても一緒だろうし。
「そうか・・・・・・」
シャキっ、こんな音が聞こえた。たぶん剣かなにかを抜いたのであろう・・・・・・
――って!ちょっと待て!こんなところで戦わなくても!
「あんたね!俺がこんな状態で戦うなんてひきょーにもほどがあるぞ!」
「ひきょーでもけっこう、あんたを倒さなければならないんでな」
また『俺』の声だ、大体予想はついているが・・・さすがにお宝を持ちながら戦うのは無理だ。
そして、こいつの正体も予想はできる、たぶん、魔族が作った俺のコピーらしきもの。
身長、そして俺の声があのローブの男から聞こえるって事は、間違いはないだろう。
「ふぅん、とんだ性格をお持ちね」
「あんたの性格なんでな、自分を恨むんだな」
ふぅん、もうここで確信できるね。
しかし、これほど完璧なコピーホモンクルスは初めてみた。やはり魔族がかかわってることも間違いないだろう・・・ってこいつが俺を狙ってきてる時点ですでに魔族がからんでることは間違いなしか。
「んで?コピーさんは俺に何の用?」
「やっぱり気づいたか、まぁ、これで気づかなかったら俺より下回ってるってことになるしなぁ・・・」
「ちょっと気になることもあるんだけどね、なんで髪と瞳が黒いんだ?」
「そこが俺とお前の違いだ・・・」
そう言ってコピーがローブを脱ぎ捨てる。
「どうだ、おれぐんぺっ!?」
ふぅ、見事命中♪
あっさりローブを脱がせるもんですか、こいつがローブで視界が見えなくなったときに石で沈黙させたのである、さすがにコピーでもここまでは見抜けなかったか・・・
「戦いってむなしいものだねぇ・・・」
「ちょ、ちょっと待て・・・・・・」
「ん?まだ生きてるの?ならもう一度♪」
「また石をかまえないでくれ!」
さすがのコピーも俺の石攻撃で撃破かな?
「ちゃんと人の話は最後までって・・・そうだ、こいつの性格はそんなんだったっけ・・・」
「ふふん、わかってるなら話は早い♪それじゃあまた会う日まで♪アースコントロール!」
コピーの立っている地面に魔法陣が浮びそして爆発。
俺はにこにこしていた顔を戻して真剣な顔をしながら宿に戻っていった。
今回、あの後レンたちにも話したが・・・・・・コピーの魔力の高さは俺でははかりきれないほど強かった。
あきらかに魔族が作ったコピー体、そして、魔族との融合体、たぶん俺とちがった髪の色は魔族との融合で黒くなってしまったのだろうと予測できる。
ふぅ、ややこしいことになってきたねぇ、でも、俺たちの戦いが・・・もうすぐ起ころうとしているのは・・・間違いなかった。