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堀越耕平『逢魔ヶ刻動物園 3』(2011)感想

 パッと見、表紙が弱くなった? と、書店で平積みされた本を見て改めて思いました。あ、白バックで背景がないんだ。そのほうが映えると判断したのか、あるいは省略したのか。描きこみが少ないように見えるのは、1巻・2巻に比べてキャラ数が少ないせいでもありますね。ちなみに、ブラよろの佐藤秀峰さんによると、コミック単行本の表紙はノーギャラ。

 こないだ友人と水族館編について話したときに、「シシドとサカマタの勝負の行方がまったく思い出せない」と言われたのだけれど、正直たしかにバトルの印象が薄い。
 オーマガのバトルはつまるところ異能モノに属していて、気力・体力というよりも特殊能力&機転で敵を倒す類だと思われます。私の少ないマンガ知識によると「聖闘士星矢」「リングにかけろ」の車田正美さんがジャンプ誌で確立したんじゃなかったでしたっけ(うろ覚え、幽白の謎本に書いてあったような)。
 だけどどうにも異能モノとは括れない。主人公の椎名は、ラビットピースで殴るという正攻法ばかりで、伊佐奈戦のラスト技「ラビット・ミリオンピース」も傍目から見れば滅多打ちでしかなく、特殊能力的な描写はとくにないんだよなぁ。ただ、実際には魔力云々を用いて身体能力を向上させているので、純粋な肉体系バトルではないのだけれど。ホントに身体ひとつで戦っている感があります。
 んで。
 シシド・サカマタのバトルの決着は、「ライオンが溺れて窒息負け」という、あっけないもの。シシドは水がダメ、っていう言及は第10話冒頭にもあり、この敗因には伏線が張られていたのだけれど、水生生物が陸上生物を水に突っ込んで勝利、っていうのはヒネリも何もないわけで、このせいで印象が薄くなってます。ただそれはあくまでラストシーンが単調だっただけで、その前にシシドがサカマタに対し劣勢から優勢になるという、“戦いの中で学習”というベタネタを用いてのバトル展開があり、評価されるべきシーンのはずなのに、それでも記憶に残らず「ライオンハート」だけしか覚えてない^^;(元ネタは獅子心王リチャード1世か、あるいは2000年のSMAPの楽曲か)。割れたガラスが元通り、っていう、動物園のオリと同じく実は壊れても直っちゃうんですねー、とのネタバレがここで初出(のはず)ってのもなぁ、鉄火マキ戦のときにすごく違和感のあった私はどこに腰を据えればいいのか。
 ゴリコン・カイゾウ戦も、椎名・伊佐奈戦も、総じて印象がない。読み終えたあとに誰と誰が争ったのか即座に出てこないレベル。
 フカが抜けた自歯を椎名のマフラーに仕込んだ結果、伊佐奈が椎名を喰おうとしたときに歯茎に刺さる、っていうギミックは現実味がないよなぁ、ネタとしてはすごくいいと思うんですけどコレ。

◇第17話の表紙、シシドがいないなぁと探していたら上に見切れてミサイルになってます。シシドミサイル。宍戸留美の新曲タイトルみたいですね(謎)。
◇伊佐奈さんはたんなる悪者、という一貫した描写がなされていました。椎名に好意を抱いているとかそんな展開はホントに皆無、深読みもできないくらい。
◇次週、サカマタたんによる伊佐奈調教プレイ編(と茶化して書いてますけど、この伊佐奈の末路はかなり好きなエンドですね。犯罪者には粛清よりも矯正が必要なのかもしれません)。
◇2巻でのイッカクの態度はまったき発狂にしか読めなかったんだけど、3巻の口上でフォローされ、巧みに着地した感じがあります……うーん、と誉めていいのかな、むしろ2巻が説明不足だったんじゃないか。
◇要するに堀越耕平さんは、訴えたい内容に対して提示すべきコンテンツが足りてないんじゃないだろうか。各キャラクターの思惑を、テキストなりイラストなりでもう一回り書き込んでもらえるとわかりやすいと思う……あ、ページ足りなくなっちゃうのか。むしろマンガ以外のメディアってのも手かもしれない。
◇相対的に見て、小ゴマの情報量がやけに多いんだよなぁ。加えて大ゴマの描写があんまりうまくない。その結果テンポがもたつく。
◇タカヒロの翼がデカくて萌える。鳥人で飛行スキル持ちで、こんなに羽が長いキャラは珍しくないか?
◇逢魔ヶ刻動物園の入園料は、牛見親子の投げ銭から推測するに、大人1人小人1人合わせて1000円。
◇「接客モード」(P.184)ってのはゲイバー・ウリセン用語ですよね☆ あと「本気モード」「小手先モード」とかあります。

 以上、本屋に辿り着くまで「シシドきゅんケッコンしよう」と呟き続けていた私のオーマガ3巻感想でした。

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