ネット通販で悪魔っ仔を注文してみた。
最近は好きなカラダの模様をオーダーできるらしい。
とりあえず、お臍の周りにギザギザ模様がついてるヤツにした。
届いた。
百科事典みたいに分厚いのに軽い。本の小口のところにシールが貼ってある。
カップ麺の封をするシールみたいだが、ややこしい呪文が書いてある。「開けて」と読めた。
ぺりい。
シールを剥がしてみた。
端々からもくもくと黒い煙が漏れてきたが、裏表紙の説明書きには無害と書いてあるから大丈夫だろう。
しばらくしても変化がない。
少し経ってから、くぐもった声が聞こえてくる。
「早くっ、本開けっ」
「たくっ、ちゃんと読めよっ」
百科事典サイズの箱には悪魔っ仔と黒い煙が充填されており、
封印シールを剥がしてすぐに本を開くと、もくもくと黒い煙の中に悪魔っ仔が現れ出でて、
あたかも魔方陣から召喚されたように見えるそうだ。
それを怠った僕が、声に催促されて本を開いたときには、
箱形の内部にもう煙はほとんど残っていなかった。
次には、「ちょっと後ろ向いてろっ」と促され、素直に従い、「もういいぞ」と言われて振り向くと、
裸の上半身と白い膝上丈ズボンのコントラストが美しい、ネットの画像通りの悪魔っ仔が出てきた。
それからこうやって怒られている。
「使い魔がご主人に命令するなんて、逆だろ」
「はい」
「最初のイメージがダイジなのに、だいなしにしてくれてさ」
「ごめんなさい」
ふてくされてばかりの悪魔っ仔だ。それでも愛らしい高い声が脳に気持ちいい。
黒地に暗い赤で彩られた模様がベリーソースのチョコレートケーキみたいでおいしそうで、
同じ赤を湛えた大きな瞳で僕を覗き込む仕草もかわいい。
「それで、ご主人はどうしたいのさ」
ひとしきり文句を口にしてから、存在意義を思い出したように身を乗り出す。
「シッポ」
「シッポ?」
僕は思い出したように悪魔っ仔のシッポを指差す。
ピンク色の三角な先端から、体につながる細いラインが伸びており、そこにカード型の紙がひっかかってる。
「ハサミ貸して」
シッポを手に催促されたので、僕は素直に筆立てから鋏を取ってきて渡す。
ぱちん、と輪になったループロックを切り、値札とタグを取り外してまじまじと見つめている。
「……っ」
くわっ、と目を見開くと、顔が真っ赤になってしまった。
尖った耳の先っぽがふるふるしている。
タブン、ソコには「交接用」って書いてあったのだろう。
ちなみに、サイトには他に「愛玩用」「詐称用」「身辺整理用」などあったのを記憶している。
「俺は、ちゃんと俺が納得できるヤツじゃなきゃ、仕えるの嫌だ」
「ちゃんと?」
「そうだ。せめて口付けしてもいいくらいで、んで……んと……」
「口付けと、それ以上?」
「……そうだ。それくらい信用できる奴じゃなきゃ、嫌だ」
僕に向き直ったと思えば、持論を展開し始めた悪魔っ仔。
口付けとそれ以上のことをしていいと思える相手でなくては、仕えるのは嫌とのことだ。
もちろん、ここで「仕える」とは「交接用」的に、という意味なので、
いうなれば性的な行為に至るために性的な信頼を得させてみろ、と催促されているのに等しい。
それじゃ、始めることとしよう。もうひとつの商品の封を切った。
初回注文の特典である、小さな包み。
軸を包むための薄膜、根元を締め付ける輪っか、それから薬。3つのうち1つ選択できたので最後のにした。
「視姦用。フィルム薬を口に含ませると単独自慰に勤しみはじめます。」とのことだ。
薄手のケースの蓋をスライドさせ、中からフィルムを1枚取り出す。
「はい口開けてー」
「何?」
不思議に思いながらも口を開いてしまうのは、使役を使命とする使い魔の性分だろうか。喉に貼り付くと危ないので、舌の上に乗せてやる。
「上顎にくっつかないように食べるんだぞ」
「うー、あう」
舌の上で融けてきたらしい。初めての味覚に途惑いながらも、口をもごもごさせて味わい、こくん、と飲み干したようだ。
「甘辛い。ハーブっていうより、スパイスみたいな、そんな味」
そのあと、主人としての抱き心地を試す、と首に腕を回してきた相手を、しばらくさすってやっていると、さっそく変化があったようだ。帯び始めた熱が触れているところから伝わってくる。ときおりびくっと体を震わすのも良く判る。
「んあう、何っか……ぬくっこいよぅ」
「熱いの?」
頬を火照らせて、浮付いた声を挙げる。気だるい仕草を見せ始めたのも束の間、今度は急に恥ずかしがるような動きに変わる。
「んん、ご主人、ちょっと……」
「んー?」
抱き締める腕を解いてほしいらしい。
「も少し傍に居てよ」
胡坐の姿勢のまま、腰を引き寄せる。膝立ちになっていた相手は倒れ込むように寄り重なってきた。上体ごと項垂れて、右手ではこちらの服の端をきゅっと掴んでいる。
「シャツ伸びちゃうよ」
そっとそこから指を解いてやる。力なくこちらの手を握ってくる相手。荒い呼吸で、どうしようもないといったような瞳で訴える。
「ご、しゅっ、じぃん……駄目ぇっ」
「だいじょぶ?」
「んっ、駄目っ」
きゅっと目を閉じて、衝動に耐えているらしい。そろそろ熟れ頃かな。
「……わぁっ?」
ズボンの前ボタンを外して、ずり下ろしてやる。腰を持ち上げて四つん這いの姿勢になっていて、さらに力が入らなくなっている状態では抵抗も出来なかったらしい。股のところでは白い下着の前の部分が突き上げられて膨らみ、先っぽのところがぐっしょり濡れている。
「やん……」
「発情してるね?」
足を閉じて体を引き、恥ずかしい部分を隠そうとする。その動きで敏感な軸と濡れた布地がこすれ、感じてしまったのかびくんっ、と身震いした。
「隠しちゃ駄目だよ? 使い魔がご主人に隠し事なんて」
両手首を掴んで床に押し付け、それ以上の抵抗を禁ずる。その格好のまま耳にそっと口付けすると、これも感じてしまうらしい、
「あぁんっ、ご主人っ」
甘い声が漏れる。足を動かすと余計に昂奮してしまうのが判ったらしい、下半身を身動きさせずになんとか衝動を押しとどめようとするが、僕は上半身に触れるのをやめない。
「ふわぁっ」
手首の束縛を解き、今度は胸の辺りをいじってやる。すでに固くなっているその突起を指の腹に挟んで、きゅっ、と押し潰す。
「ご主人……もぅっ」
「もう、弄りたくなっちゃった?」
与えられる感覚に自然と潤んでくる瞳を見つめながら、僕は両手を相手の横腹に運ぶ。改めて上体を起こし膝立ちの姿勢を取らせ、目一杯立ち上がってる軸を孕む布地を取り去ってやる。こすれる感触に先端が震え、透明な液をもう一滴垂らし、吸い取るものがなくなった故に筋となって流れていく。ズボンと一緒に脱がせてしまうと、綺麗な下半身が露となる。
「あっ、やぁんっ」
しばらく呆然としていた相手だったが、事の流れに気付いて取り繕おうとする。
「なっ……何っ……これっ……」
硬直し屹立した自身の前を両手で覆って。
「さっきの摂取すると、体のほうから勝手にいやらしくなっちゃうんだってさ」
「はっ……はぁんっ……えっ」
その先端が手の平に触れるとたまらないのか、嬌声を挙げてしまう。伝えられた情報に、混乱する余裕もなく。
「いいよ、そこで自分で弄っても。恥ずかしい仕草、ぜーんぶ見ててあげるからさ」
「やっ、やだっ」
嫌だといいつつも、既にその手の中に熱い軸を包み込んでしまっている。もう一押しすれば自然と自分で欲望を宥め始めることだろう。
「やらしいね、星二つの使い魔ってこんなじゃないだろ? ほら、もっと気高く」
「ぐっ……ぐぅっ」
我慢している。陰部に指を這わせようとするも、思いとどめて腿のところに軽く爪を立てている。迸る欲望に耐えているようだ。
「肌、傷つけちゃうよ」
その手首を持ち上げて、横で刺激を待ちわびている自身に運んでやる。
「はわんっ!」
「ほら、我慢しないで。気持ちよくなりなよ?」
そう言いながら唇を合わせ、啜る。顔を離したときには、下腹部のそれを指に絡めて、ひたすらに悦楽を貪っていた。恥ずかしさに赤くなってはいるが、瞳はやっと手に入れた気持ちよさに、浸っている様子である。
「……ふふっ、素直が一番だよっ、僕がしていいって言ってるんだからさ」
くちゃっ、くちゃっ。粘液と質量の絡む音が、余計に耳につくのは、分泌されている先走りがいつもより、そして僕のそれよりも多く溢れ出ているからだろう。裸のまま自分で慰める姿を、目の前の相手に晒す、赤と黒の悪魔。
「ふっ、ふぅっ、くぅっ……」
「可愛いなぁ」
「薬……なんてっ……狡いよぅっ」
「もしさっきのがたんなる目覚まし用のお菓子でも、その体はいやらしく求めて悶えてたと思うよ」
フィルムが自分を性的に興奮させた原因だと考えているようだが、どちらにせよ、慰めているところを見せつけてしまっている事実はもう変わらない。
「そんなこと考えてないで、もっと好がってよ、ねぇ」
僕の手は黒い臀部を撫でて、それから尻尾を掴む。
「ふわっ! 止めろっ」
「優しくするからさ、任せて」
尻につながっている付け根の辺りを指に挟んで、さわさわともてあそぶ。少し押すようにしてやるのが良いらしい。体は正直だ。感触を求めて腰が余計に動き、前では軸に連なる袋がひくひくと痙攣している。
「腰……動かしてる」
「だっ、だってっ」
「このまま、いっちゃう?」
指の間に絡めてやると、もう堪らないらしい。自分で続けていた先端への愛撫は、すでに軸全体を握り込んでの刺激に変わっている。
「はっあ、ご主人、俺っ、……ぁっ」
根元ばかりに這わせていた指を、すっと尻尾全体に沿わせていく。その長い一筋の感触に相手の腰は浮き、それに伴って自身への貪りも最後の勢いを見せる。ひときわ水音が増して、絶頂を迎えるときが来たようだ。
「ふわっ! ふっ、わぁっんっ!」
尻尾の先に辿り着く前に、使い魔の軸が果てた。どくん、どくんと躍動しながら白い液体を射出する使い魔。いじっていた指はその袋をきゅっと締めつけるのに移り、軟い刺激を愉しんでいるかのようだ。腹に密着するくらいの角度で立ち上がっていたそれは臍の周りのギザギザ模様を白濁で彩り、さらにびくびく動くものだから、こちらの足にも温い体液が届いてしまう。びゅくん、と液体を放出し終えた使い魔は、縋りつくものが欲しくて僕の腰に腕を回してくる。
「……ご主人っ……もぅ、俺の負け……」
「んー、良し良し」
脱力した体を適当なところまで持ち上げて、足の上に座らせてやる。胸に埋める頭を撫でて、しばらくしてから口付けもする。唇の端に残った、飲めなかった唾液を舐め取ってやる。
「口付け、許しちゃったし、出してるとこも見られちゃったし、もう、俺、逆らえないよ」
「気持ち良かったろ?」
「でも、ご主人とも、したかった」
「……にゃはー、それは次のお楽しみにさせてよ」
一人で一頻り味わわせてしまった快楽。今度は一緒に気持ちよくなろうと約束すると、使い魔はひとときの眠りに落ちる。