そんな入学式

体育館で、立ち続けること早30分。
俺の足元にはパイプ椅子があるにも関わらず、立ちっぱなしだ。
なぜならば、校長の話が延々と続いているからである。
「…という伝統があるのです。君達も今日という日を境に、新しいことにチャレンジしていってもらいたいと思います。高校生とは希望と可能性に溢れた期間であり、何事にも対応できるとも言われていますし、物事を吸収するのにとても良い期間です。何か未知のものがあっても、恐れずにチャレンジしてください。そして…であるからして…、そもそも…」
…長いぜ校長。
新しいことにチャレンジねぇ。
ふむ、凄いたまたま頭に入ったフレーズだったけど、いいこと思いついたかも。
今日は入学式だ。まぁ前から寮に入っている俺としては今更という気もする。
そして、こういった式としては定番の、校長の話というやつが、もう30分続いている。
言っていることはそれなりに為になることを言っているっぽいが、非常に回りくどい。
であるからして、なんて今どき使うやついないってのに。
あのハゲチャビンめ。校長が絶好調とかいう古めかしいギャグを思いつくくらい長話しやがって。
そろそろ止めないと誰か倒れるぞ。
春とは言っても、締め切られた体育館は空気も悪いし、なにより人が多いから暑い。
しかも式典だから、襟元までキチンとしめてるんだ。そんな格好で長時間立たされたら…
「きゃっ!!」
女子の小さな悲鳴と共に、椅子が倒れる凄まじい音がした。
あーあ、どこかの女子がとうとう倒れたか…可愛そうに。
音のしたほうに目をやると、倒れている椅子の間で、ぐったりしている白い毛の塊が目に入った。
あれってもしかして…いや、もしかしなくても…!
「…カイ!!」
俺は式の途中なのも忘れて駆け寄っていた。


   そんな入学式


俺は犬里陸(いぬざとりく)。犬獣人だ。
今年からっていうか今日から高校生になる。そして今は
「ごめんね…リク…」
「いいから。ちゃんと寝てろって」
自分の部屋でルームメイトの看病中。
予想通りというかなんというか。案の定、倒れていたのは俺のルームメイトの白熊だった。
大分平均体重をオーバーした、むくむくもこもこなお腹がトレードマーク(?)なこいつは隈井田海(くまいだかい)。
俺のルームメイトで、親友。まだなったばかりだけど。
カイの症状、俺は貧血のようなものだと思っていたんだけど、保険の先生の診察で風邪であることがわかった。
保健室で計ったとき、熱は38.6度。けっこうな高熱だ。
今朝も一緒にいたってのに、気付かないなんて…情けない。
ルームメイトとしても、親友としても、そして…としても最悪だ。
「でもよかった。大したことなくて」
「心配かけてごめんね?ボーっとするなぁって思ってたら、急に真っ白になっちゃって…」
「そういう時は、倒れる前に言えよ!っていうかやっぱり朝から体調悪かったんだろ!?」
「う…まぁ」
カイはぽりぽりと鼻の頭をかいた。
「今度からは…ちゃんと言ってくれ」
「だって…心配掛けたくなかったから…」
「倒れられる方が嫌だっての!それに、お前がああやって倒れると他の人にも迷惑がかかるんだぞ!?」
「うん。ごめん…」
「ホントに分ってるか?」
実際、大変だったのだ。
カイが倒れたことで、隣の女子が巻き込まれる形になって、手首を捻挫した。
女子は可哀そうだったけど、それは事故だから、まぁいいとして。(俺としては顔も知らない女子なんかよりカイの方が心配だ)
一番大変だったのは、倒れたカイを保健室に運ぶとき。
カイは白熊で、しかもかなりのボリューム。男の先生三人がかりでも、相当苦労していた。
そしてそのあと、寮の部屋で寝かせた方がいいってことで、再び移動。
今度は担架(鉄製。耐加重量300キロ。6人でもてる取っ手付き)を使ってたけど、それでも先生達はひーひー言っていた。
カイはそれを聞くと、本当に申し訳なさそうにシュンとしてしまった。
「だからって訳じゃないけど…今度は本当にちゃんと言って欲しい」
「うん…」
「じゃないと、なんか…寂しいし、辛い」
大好きな人の異変に気付けない自分が。
大好きな人に頼って貰えない自分が。
言い忘れてたけど、俺とカイはルームメイトで親友で、そして…恋人だ。
男同士のホモカップル。もちろん周りには秘密。
「優しいもんね…リクは…」
カイが布団から手を出して、ベット脇の床に直接座っていた俺の頬を、そっと撫でた。
「あほ」
「えへへ、ごめんね」
「もっと謝ってもらおうか。本気で心配したんだからな」
カイが倒れたときのことを思い出したら、また涙が出てきてしまった。
一瞬だけ、カイが居なくなるかも知れないと思ったら止まらなくなったのだ。
「なぁ…キスしていいか?」
不意に、カイの存在を確かめたくなった。手っ取り早くて、愛すらも確かめる方法っていったらこれしかないだろ。
なんか…自分で言ってて恥ずかしいなこれ。
「ええ!?うつっちゃうよ!」
「していいのか、だめなのか?」
「え、それは…もち、ん!」
答えを聞く前に俺は口を重ねた。
どう言われようと初めからするつもりだった
カイがちゃんとそこにいるんだと、自分に納得させるために。
口を離すと、カイが恨めしそうな目で俺を見ていた。
「もう。風邪がうつるから駄目だって言ったのに」
「別にお前からうつるならいいけどな。看病はしてくれるんだろ?」
「…ばか」
「阿呆に言われたくないな」
言いながら、俺はカイの手を握った。
「寝ろよ。看ててやるから」
「え、でもリク学校…」
「先生にも許可は貰った。今日は式だけだから別に何も重要なことはないってよ」
「そうなんだ…ごめんね迷惑ばっかりかけ」
「そんなんどうでもいいから、ちゃっちゃと治せ」
俺はカイの言葉を遮って言った。迷惑だとか思ってないし。
俺が何かしてカイの熱が下がるなら、俺はなんでもするだろう。
まだ付き合って…っていうか知り合って二週間程度だけど、それくらいの覚悟で俺はカイの事が好きだ。
「うん。ありがと」
「おう」
カイは、キュッと俺の手を握り返してきた。
やはり疲れてたんだろう。そっと目を瞑るとすぐに寝息が聞こえてきた。
カイはこの巨体の割に、静かだ。起きてる時も、寝てる時も。
普通、こんだけ太っ…ボリュームがあったらいびきとか煩そうなもんだけど。カイらしいっちゃカイらしいか。
静かな寝息を立てながらも、カイは俺の手を離さなかった。
俺も離す気はさらさらないけど。おやすみ、カイ。ゆっくり休めよ。


目を覚ましたら、電気のついていない部屋はもう暗くなっていた。
しまった!カイの看病しててそのまま寝ちまった!
といっても、あの後もやることはやった訳だが。
とりあえずカイが寝て、しばらくするまで手を握ってた。
俺が満足したところで、カイが起きたら腹減ったっていうだろうと思って、消化のいいもの食べさせてやろうと、お粥を作って冷蔵庫に鍋ごと入れておいた。
こうしとけば、あとで暖めるだけで食べられる。
でもって、さっき着替えさせたときに脱いだままになっていた制服をハンガーにかけてやる。
最後にカイの頭に氷を乗せてやった。
そこまでやって、もう一度カイの手を握って顔を眺めていたら、何時の間にか、うとうとして…。
「ってあれ?」
頭が覚醒してきたことで、自分がどういう体勢なのか気付いた。
カイに思いっきり抱きしめられてる。
でも俺の下半身はベットの外にあるので、簡単に言うと上体だけベットに乗り上げて首で抱きしめられているわけだ。
すごい…腰が痛い。
そっとカイの腕を外そうと思ったんだけど、寝てるにも関わらず凄い力だ…!
全然外れない。ちょ…どうしよう。
「むにゃ…りく……」
寝言で人の名前を呼ぶなああ!しかも耳元で!心臓に悪い!!
夢の中でまで俺のことを思ってくれるのは嬉しいけど、そんな不意打ちすぎる。
くそう…このままだと俺の心臓にも良くないし、そろそろ起こすか。飯と薬も飲まさないといけないし。
「おい、カイ。起きろ…」
起きる気配なし。むしろ腕の力が強まった。
「起きろって!起きたらキスしてやるぞ!」
反応なし。でもちょっと笑ったか?
「特製霜降りステーキ、ホワイトアスパラガスと寒天豆腐のカルパッチョ風デミグラスソース添え…」
我ながら訳のわからない、でも凄そうな感じの料理名。多分。
それを呟くと、カイはがばっと起き上った。俺を抱きしめたまま。
ちくしょう!俺のキスは、こんな訳のわからない長ったらしい料理の名前ごときに負けるのか!!
「ふにゃん?」
「おはよう、カイ。とりあえず離してくれ、苦しい」
「え?あ、リク!」
そこでようやく俺を抱いたままだったのに気付いたのか、慌てて腕をひろげた。
「お、おはよう…」
「おはよ。ちゃんと眠れたか?体調どう?」
「ん、大丈夫そう」
と言っても、まだダルさは抜けきってないみたいだ。
見栄は張らないでほしいんだけど。心配だから。
いやまぁ、俺は張りまくりなわけですが。
カイの額に手を当ててみると、熱は結構下がったみたいだ。
一応体温計でも計ってみたら、だいぶ低くなってる。
よかったぁ…。
俺は立ち上がり、隣の部屋に行く。
「どこいくの?」
「汗かいてるだろ?着替え持ってきてやる。ついでに体も拭いとけ、風呂は入れないしさ」
「え、いいよ」
「駄目だ。汗が冷えるのが一番駄目なんだから。ほら、ちゃっちゃと服を脱ぐ!!」
「えええ!?」
「はい、十秒以内!じゅーう、きゅーう…」
「え、ま、待った待った!」
半分冗談のつもりでカウントダウン始めたんだけど、カイの奴慌てて服を脱ぎ始めた。
…そういう可愛い反応はやめていただきたい。切実に。
俺はカイの着替えを用意すると、洗面器に水を入れてタオルを浸す。水って言ってもぬるま湯くらいかな。
「ほら、そっち向いて」
「え、いいよ。自分でやるか…」
「いいからそっち向くー。さん、にー、いち、はい」
タイミング良くカイの肩をポンと叩くと、くるっと俺に背を向けた。
だからそういう…以下略!!
俺の理性だって限界はあるんだからな、わかってるか、カイ?
「相変わらずデカイ背中だよなー」
「太ってて…ごめん…」
「俺はこの背中が好きなんだからいいの。変に痩せようとか考えないこと」
「…う、うん!」
ぎゅっぎゅっと、毛の根元まで綺麗になるようにタオルで擦りながら俺が言うと、カイは嬉しそうに笑った。
前は痩せてる方が好みだたんだけど…カイは別なのかな。
俺はカイが好きだ。でっかい背中が好きで、でっかいお腹も好きで、感情が素直に表れる丸い耳も好きだし、優しい心も好きで、俺を抱き寄せてくれる逞しい腕も好きだ。
そういった所があるから、カイが好きなんじゃない。
カイが好きだから、そういうところが愛おしく感じるんだろうな。
「あの…そんなストレートに言われると…照れるんだけど…」
「へ?」
あ、やべ、声に出てたのか今の?
そう聞いてみると、カイは顔を真っ赤にして頷いた。
まぁ嘘じゃないからいいんだけど。どうせならちゃんと伝えたかった気もするなぁ。
カイの小さなしっぽが、ふりふりと揺れている。
あ、また好きな所発見。
「はい、じゃあ今度は前なー」
「うん。…え?」
俺の言葉にカイは一旦頷いて、そして直ぐに拒否。
「いいって、いいってば!前は自分でやるからぁ!」
「逃がさん」
俺は言い放つと、素早くカイの前面を抑える。
「病人は大人しくしてろっ!」
「うわっと…!…リク、なんか楽しんでない?」
あ、バレてます?
訝しげな眼を気にしないようにして、俺はカイの胸や腹をぬぐい始める。
カイは諦めたのか、じっとしていた。
「うん、拭きがいがある体だなまったく。どうだ?」
「き、気持ちいいです…」
恥ずかしいのか、なぜか丁寧語で答えたカイに、俺は思わず笑ってしまう。
そのまま足も拭ってやっていると、あることに気付いた。
「元気だな」
服を脱いでパンツ一丁なカイだが、そのパンツの正面がしっかりテントを作っている。
「う…好きな人に体触られて平気な訳ないよ…」
だああああ!!だからそういう台詞やめてくれってば!理性が…
ちゅっ。
「んぷ、リク?」
「お前が悪い」
俺はそう言うと、カイの唇を再び塞ぐ。舌を侵入させて、カイの口内をまさぐった。
ぴちゃっという水音が、静かな部屋に木霊する。
口を離すと、カイが息を荒げてこっちも見ていた。
カイは感度がいいから、キスだけで結構高揚してしまう。
「駄目だよ……」
「何が駄目なんだ? あ、我慢できない?」
「リクがしてきたんじゃない!」
「お前が俺の理性を壊したのが悪い…でも、嫌なら止める」
これは本心だ。
カイに襲いかかりたいし、理性はこいつが今ぶっ壊してくれた。
でも、カイが嫌だというなら、俺は止めるだろう。俺がしたいのは一方的な行為じゃない。
ただ単に、愛し合いたいだけ。
「嫌じゃ…ない…けど…」
「けど?」
「うつっても知らないよ?」
「お前が看病してくれるなら問題ねーし」
「…はぁ」
カイは諦めたように溜息をつくと、俺の首に腕を回した。
俺たちはもう一度口付を交わす。
さっきよりも長く、深く。
お互いにぎゅっと抱きしめあって、存在を確かめる。
鼻先が擦れて、俺の嗅覚の全てが、カイの匂いで満たされる。
口を離すと、俺はそのままカイの首筋を舐めて、甘く噛む。
左手で胸を揉みしだくと、カイがくぐもった声を上げた。
もう一方の手で脇腹をなでて、そのまま下着の中へ滑り込ませる。
俺の手が急所に触れると、カイの体がピクンと跳ねた。
「ぬれぬれだな」
「リクが…そういう触り方するんじゃないかぁ」
「はいはい。わかってるよ」
もう一度、今度は触れるだけのキスをする。
カイが嬉しそうに目じりを垂らした。丸い耳が、ぴくぴくと反応する。
「んぁっ…!」
逸物を刺激すると、カイが喘いだ。
パンツを脱がせて、睾丸を弄ぶ。
指の腹で裏筋を擦ると、カイが体全体で悦んだ。
「んふぁ…!ん…ふぁ…!」
「おー、今日はいつになく敏感だな」
そういえば、風邪をひいてる時ってこういう刺激に敏感になるって聞いたことあったかな?
そんなことを考えながら、俺はカイのそれを口に含んだ。
「ちょ…いきなり…あん!ふにゃう…ぁん!」
カイの反論は無視して愛撫を続ける。舌を竿にからませ、先端をほじくる。
舌全体で亀頭を舐める。さっきよりも多い先走りが、卑猥な音を大きくする。
最初はカイにされて驚いたけど、今じゃそれなりに手慣れてきたような気がする。
だって練習量半端ないし。
「ぷはっ…」
「ふぇう…!!…はぁ…はぁ…?」
俺が口を離すと、カイが不思議そうな顔をした。
そりゃそうだ。普段はこのまま絶頂まで追い詰めるからな。
でも、今日は試したいことがある。今朝の校長のスピーチ中にこっそり考えていたこと。
カイの体調がわるくなっちゃったから、今日は諦めようと思ってたけど、この際だ!
俺はカイの足を持つと、ぐっと押し上げる。
重っ!持ち上げるのは無理だ、ほどほどにしとこう。
とりあえず膝を立たせとくか。
「リク?まさか…」
「校長も言ってたろ?新しいことにチャレンジするべし!って。なので、チャレンジしてみよう」
「ええ?でも、オイラ良く知らないんだけど…やりかた?とか…」
「大丈夫。俺が知ってる、一応だけど」
カイに告白されてから、男同士の行為ってのがどういうものなのか、密かに調べておいた。
アナルについても、もちろん調べてはある。
「高校生活の幕開けと共に、こっちも新たなステップへ、ってな。嫌か?」
カイはふるふると首を振った。ただその瞳は不安でたまらなそうな光を宿している。
「大丈夫だって。きっと気持ちいいから…」
言いながら、俺は目的のものに顔を近づけて…そして、舌を這わせる。
「ひぅあ!?…ぁ…リク、…はにゃうん!」
俺はカイの肛門を舐め、そして…
「ふぅああ…リクぅ…きたな…ああいうん…!」
舌をねじ込む。
別に汚くなんてない。
確かにちょっと汗臭いけど、別にどうとも思わないぜ?
舌を、穴を広げるように上下左右に動かすその度に、カイは高い声を上げた。
予想通りカイはこっちイケるみたいだな…ちなみに俺は駄目。
カイと恋人になってから自分でやったことあるんけど、痛いし気持ち悪いしで快感どころじゃなかった。
ま、カイのじゃ俺と合体するのは厳しいとは思ってたからいいけど…って何言ってんだ俺。
あ、言っとくけどカイの大きさの話はあいつの前じゃしないでくれよ?
一応気にしてるみたいだからさ…可愛くていいって言ってるのになぁ。
俺はカイの股から顔をあげると、指をそこに這わせる。
「痛かったら言えよ?」
「何…いれるつもり?」
「指」
ちょっと冷徹に言い放ってみる。
「だだだ大丈夫なんだよね!?」
カイが不安そうに声を震わせる。
お前…指くらいでビビっててどうすんだよ。
俺が最終的に入れたいものは指の比じゃないんですけど。
「平気だって。でもどうする?止めとくか?」
「う…校長先生の話は全然覚えてないけど…行けるとこまでチャレンジしてみる…」
校長グッジョブ!あんたの長い話も決して無駄じゃなかった!
だが、カイが倒れた原因は絶対的に校長にあるから、許すことはない。
今度担任通して…いや通さなくても抗議してやる。
そんなことより!こっちに集中だな。カイの不安を少しでも軽くしてやらないと。
「じゃあ、いくぞ?」
「うん…」
ヌッ。
舌でほぐしたかいがあったのか、カイの後穴はそれほどの抵抗なく指を受け入れた。
指をぐっと曲げて中を刺激する。
「ひぅいっ…!ふぁぅ…んにぃっ…!」
指を、ぬるっとした感触が包む。粘着質な液体が、隙間から指を伝ってくる。
ぐちゅ、ぬちゅ、という音を立てながら、カイに快感を与えようと俺は指を動かした。
指を腹の方に向かってぐいっと曲げる。他とはちょっと違う感触を捉えた。
「ふひぁあう!」
「お?ここか?」
「にゃん!はう…ひあぅあ!リク…だめぇ…!変に…なっちゃ…い…そう!!」
カイは息を荒げて、快感に目を瞑っている。
相変わらず良い反応!しかもこっちをいじってる方がいい感じだ。
多分いま弄ってるのが前立腺ってやつ。いわゆる快感ポイントだな。
にしても、喘ぎようが凄い。ホントになんて可愛い顔と声で鳴くんだお前は…!
「リク…!だめ…どうにか…なっちゃ…!なん…か…怖ぃ…!」
「大丈夫だって。俺がいるし、今は気持ちいいことしてんだぞ?」
安心させようと、俺はカイの腹を撫でる。
本当はキスしたかったんだけど…指を入れてるこの状態じゃ明らかに届かない。
大好きなカイのこのでかい腹が、こんなところで障害になるなんて!笑えるけど笑えない!
…まぁいいか。
撫でるのは止めないで、俺はカイの腹に顔を乗せた。
とくん、とくん、という鼓動が、直接響いてくる。
「平気そうか?」
「うん。ありがと…リク」
指、もう一本入れてみても平気かな…?結構緩んだっぽいし。
ホントのこと言うと、今朝の想像は本番だったりした。
でも、いきなりは体的にも心的にも無理だろう。
まずはどっちも慣らさないといけないわけで。
でも、なるべく次のステップに行きたいんだなこれが!ああ、もどかしいったらない!
「カイ、もう一本入れるぞ?」
「え、へ…平気かな?」
「大丈夫!チャレンジだチャレンジ」
「う、うん…」
俺はなるべくゆっくり二本目を滑り込ませる。
ぐぐっと締め付けがあるけど、カイが意識してそれを緩める。
二本目も意外とあっさり入った。それでもさっきよりカイは苦しそうな顔をしてる。
この顔を、快感に歪められないかなぁとか考えてしまう。ぐっと曲げてみた。
「ぃっちゅ…いあっ!」
「痛いか?」
「ん…大丈夫そう…あひん!」
二本にしたことで、締め付けがだいぶ凄い。
ぎゅうっと指に吸いついてきて、中がぐちゃぐちゃで暖かい。
「カイー、お前の中ぐっちゃぐちゃだぞ?」
「ふにゃうんっ!そん…なこと…言わな、いぁぅ…で…あゃん!」
なんつー声を上げとるんだこの白熊は!受けにもほどがあるだろ!
媚声とは良く言ったもんだ。俺としちゃ申し分ないわけだけど。
指の動きを止めないまま、俺はカイに聞いた。
「気持ちいいか?」
「わかんな…ぅい!あ…あぅん…でも、多分…きもひ…いいんだと思ぅんにああ!」
再び前立腺を刺激すると、さっきより高い声を上げた。
二本にしたから、快感が強いのかもしれない。ぐぐっと指の腹で押し撫でる。
今回が初めてなのに、後でこんだけ快感を得られるって、逆に凄くないか、カイ?
「も…だめ!あ…いぁ…イく…!オイラ…お尻で…ひぁん…!イっちゃ…!あ…あああぁあ!!」
カイのチンチンから、凄い量の精液があふれ出た。
いつもと違って、飛び出ることなく、とぷとぷとチンチンを伝って流れていく。
チュポンと指を抜くと、あひんとカイが声を上げた。
お尻だけで…イケるもんなんだな…。
「はぁ…はぁ…ふ…ふぅ…!」
「どうだった?」
「す、凄かった…」
まぁ確かに。あの喘ぎ方は尋常じゃなかったな。
俺もなんだか凄い幸福感でいっぱいだった。カイを独り占めにしてる感覚?
すげぇ贅沢な感じだ!あははは!
んでもって、初めからこんなに感じられるってことは…
「本番は意外と近いかもなぁ…」
「本番?」
「おう、本番」
俺がそう言うと、カイは顔を真っ赤にして俯いた。
今更恥ずかしがる必要もないだろうに。
「大丈夫かなぁ…」
「お前今日そればっかりだな…ちゃんと慣らしていけば平気だよ。平気になるまではやらないし」
「うん…ありがと」
ああもう、しおらしくなっちまって可愛いなこら!
それはそうと、俺の息子もビンビンなんだけど…カイのこの様子じゃこれで終わりにした方がいいかなぁ…
「あ、リク…」
「なんだ?」
「今度はリクの番!」
「またかぁ!?初めての時もこんなじゃなかったか!?」
「そうかもね」
カイはえへへぇ、と緩んだ笑みを浮かべた。
なんだか心の中読まれたみたいで…複雑。
あ、でも考え方変えれば以心伝心みたいなことか!?おお、物は考えようだ!
「リクも、後ろやってみる?」
「あ、俺は駄目だった」
「…試したことあるの?」
「まぁ。一応お前にやる前に確認というか実験というか…でも俺はこっちの性感はないらしい」
「そうなんだ…へへ」
「なんだ?」
俺の言葉になぜか嬉しそうにするカイ。なんか喜ばせるようなこと言ったっけ?
「リクがオイラのために自分で調べてくれたんだなぁって思って」
「ん?あー…そうなるのか、な?」
自覚なかったけど、いきなりカイにやるのは気が引けたのは事実だな。
だからとりあえず自分でやってみたわけだけど。
「そんなに嬉しいか?」
「まぁね!じゃあ…ご奉仕させていただきます。後はなしでね」
カイはがばっと俺に覆いかぶさると、ちゅっとキスをした。
「おい病人…最初、駄目とかって言ってなかったっけ?」
「んもう…今更そんなこと言う?」
「だってお前がやけに嬉しそうだから」
「だって嬉しいんだもん」
本当に嬉しそうに朗らかな、それでいて高揚した笑みを浮かべるカイ。
だからそういう台詞を嬉しそうにいわないでくれよ!
「んん!」
唇を奪われ、端っから興奮しっぱなしだった俺は、簡単に息が跳ねる。
その後、カイの愛撫で俺は簡単に果てた。


「だから止めようって言ったのに」
「最終的にはお前だってノリノリだってじゃ…ゲフッゴフッ!」
「ああ、ちゃんと寝てなきゃ駄目だって!」
次の日、俺は学校を休んだ。
理由は、ご想像にお任せする。
「お前もまだ完全に治ってないんだからな!」
「でもリクより元気だもん。ちゃんと看病してあげるよ」
カイだってまだ全回復じゃない。熱は下がったけど、今日も学校を休んでる。
まぁつまり、この部屋二人ともお休み中な訳だ。
「看病されるのは本望だけど…」
「でしょ?昨日も言ってたもんね。でも入学早々休んじゃうのも、いたたまれないなぁ」
「仕方ないさ」
別にカイは悪くない。
俺に至っては、ほとんど自業自得だし。
「治ったら、二人一緒に学校行こうね」
「もちろん。それまでは看病よろしく」
「早く直してくれなきゃやだよ?」
「キスしてくれたら治るかも」
「ばか」
そう言いつつも、カイは目を瞑って顔を近づけてきてくれる。
どうせ二人とも風邪っぴきだ。うつるうつらないを気にする必要もない。
俺はそっと唇を重ねた。そしてカイの首に腕を回し、抱きしめる。
今この瞬間が、幸せだと自信を持って言える。
カイが抱きしめ返してくれて、幸せが何倍にも膨れ上がった。
頭がくらくらするのを除けば、今俺は世界のだれよりも幸せだ。
「リク」
「ん?」
「大好きだ」
ごめん。
明らかに、さっきより今の方が幸せだわ。


***