【梅雨のアジサイ】

男の子は梅雨の雨が嫌いでした。でも、一緒にいる犬の女の子は梅雨の雨の日がなぜか大好きみたいです。
雨でその綺麗な尻尾が濡れたって女の子はそんな事気にも留めません。どうして犬の女の子は梅雨の雨の日が大好きかというと・・・

「あ! あった!」

女の子が見つけたもの、それは梅雨の時期に綺麗に咲くアジサイでした。
犬の女の子はアジサイがとっても大好きで、アジサイを見つけたらそのアジサイに眼を奪われてしまうほどです。

「本当に好きだな、アジサイ」

「うん! だって雨でもっともっと綺麗にお化粧するんだもん!」

「そのせいでまたずぶ濡れになるぞ」

「いいもん、そんなこと」

「・・・」

そう言い張る犬の女の子に男の子は複雑な気持ちでした。
雨のせいで女の子がずぶ濡れになって風邪でも引いてしまったらそれこそ男の子は心配で心配でたまりません・・・

「なぁ・・・何色のアジサイが大好きなんだ?」

「え? う〜んと・・・やっぱり、可愛いピンク色のアジサイが好きかな」

「わかった」

「・・・?」

犬の女の子は何が何だかわかりませんでした・・・





翌日、男の子は絵を描いてました・・・

「できた・・・」

指や鼻に絵の具が付きながらも男の子はある一枚の絵を完成させていました。

(こんなのじゃダメなのかもしれないけど・・・でも、やっぱりアイツに風邪を引かせたくないからな・・・)

そうして男の子は一生懸命描いた絵を女の子にプレゼントしました・・・女の子はその絵を本当に・・・本当に嬉しそうに受け取りました・・・

その綺麗なピンク色のアジサイの絵を・・・




梅雨の聖花アジサイ・・・その花は短い時にしか咲かない花です。
でも・・・その短いときに起こる物語はどんなものよりも、もっと大きいものだと梅雨のアジサイは知っていました。

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