【雨の日】
梅雨のこの時期、行きかう人は皆傘を持ってお外を歩きます。
ほら、またポツリポツリと雨が降ってきたよ。犬の男の子は傘をさします。
「もうちょいで家なのにな・・・」
雨があるから大地は潤います・・・大地にはありがたい雨も犬の男の子にはありがたくありません・・・その証拠に、水玉が男の子の体中に張り付いてあまりい
い気持ちにはなりませんでした。
「あ・・・」
その時犬の男の子は見ました。シャッターの閉じられたお店で雨宿りをしている自分と同じ犬の女の子を・・・
「アイツ・・・」
犬の男の子はその女の子を知っていました。女の子の様子を見る限り傘を忘れたようです。
「梅雨なのに、何でアイツ傘を忘れたんだろう?」
いくら考えてもその答えはわかりません・・・でも、男の子には出来る事がヒトツだけ・・・
(この傘に入れてやろうかな・・・でも、アイツが誰かを待っていたらどうしよう・・・だからといってこの傘をアイツに貸すわけにはいかないし・・・)
犬の男の子は迷いました・・・でも、考えるより先に体は動いていました。
(なるようになれ・・・か)
そして、犬の女の子の目の前には傘を持った犬の男の子がいました・・・
雨の季節・・・水はどんなものにも潤いを与えるものです。
それはヒトの心にも言えること・・・
そう・・・ヒトツの傘を二人で入っているこの犬の男の子と女の子の心のように・・・
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