【地上に輝く】
夕方の小道、幼い一人の人間の少女と幼い一人の狼の少年が家路についていましたが・・・少女は泣いていました・・・
「泣くなよ」
「ひっく・・・だって・・・アンタは悔しくないのあんなこと言われて?」
「そりゃ悔しいけど・・・なにもオマエが泣く事ないだろ?」
少女が泣いてた理由、それは男の子、しかも狼の獣人とよく遊んでいるから周りの子達からバカにされたことでした。
「悔しいなら・・・悔しいならなんでそんななんともないような顔になってるの? 悔しいならもうちょっと悔しがったらどうなのよ!」
「悔しがったらって言われても・・・だって、オマエと遊ぶの楽しいんだもん。周りのやつがいろいろ言ったってこの気持ちは変わらないから・・・」
「私だってアンタと遊ぶの楽しいもん! ・・・でも・・・でも・・・」
少女はまた泣き出してしまいました。そんな少女を見て狼の少年は困ってしまいます・・・
「オ、オイ! もう泣くなって!」
少女は一向に泣き止みません・・・どうしよう・・・そう狼の少年が考えていたときあることを思いつきました。
(オレが泣いているとき・・・オレはどうしてもらいたいんだろう・・・)
狼の少年はその時はお母さんの腕に抱かれて暖かい胸で泣きたいと思います。だけど、少女と狼の少年の背丈はほぼ同じ、なので狼の少年の胸に少女がかがまな
い限り入ることは有りません・・・
(他にコイツに暖かいものをくれてやったらいいのかな?)
狼の少年はそう思い少女の涙顔を袖で拭いてやり、片方の手を無理やり握りました。
「な、なによ・・・?」
「泣いてるときは何か暖かいものが欲しくなるから・・・だから今オマエに暖かいものをくれてやってるんだよ」
「・・・」
恥ずかしそうに言い放つ狼の少年、しかし少女が暖かいものを欲しかったのは確かでした。
握られた手からは狼の少年の温もりが確かに伝わってきていました。
「一応・・・オマエが悲しくなくなるまでこうしてやるからな・・・」
「うん・・・」
思わずそう少女は返事をしました。でも本当は狼の少年が手を握ってくれたおかげでもう悲しくなんかありませんでした。
でも少女はこの手を離しません・・・この毛で覆われている手、しかし暖かいのはもっと別の理由があるこの手を少女はずっと・・・ずっと感じていたいと思っ
たからです・・・
夕方に輝くヒトツの一番星・・・この一番星が照らすたったヒトツのものは、この地上のこの場所にあるんだよ・・・
地上に輝ける大きな大きな一番星、その輝きは未来がいつ来てもずっと・・・ずっと失われないんだよ・・・この暖かな二人の地上の星みたいに・・・
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