【ぬいぐるみ同士】
ぬいぐるみは可愛い。それってたぶんどんなヒトにも当てはまりそうな思い。
悪ぶっている青少年だって、顔の怖くて刺青入れたヤクザさんだってそう思っちゃうんだなって感じる。
だけどこのぬいぐるみだけはあげないな。だって、こんなに抱いたら気持ちがいいんだよ。こんなに頬擦りしたらモフモフって感触がたまらないんだよ。
「えぇ〜い、やめろ! 暑苦しい!」
こんな風に言ったって私はやめないもん。
え? 何でぬいぐるみなのに喋るのかって? そりゃ答えは簡単、私にとってぬいぐるみ=狼の彼ってことだからよ。
「良いではないか、良いではないか。減るものではないでしょ?」
「どこぞの有名時代劇のセリフを言わないでくれ気色悪い…」
「じゃあもうちょっと伸長伸ばしなさいよ。そうすれば私からこんな扱い受けないはずでしょ?」
この言葉から勘のいい人は気付くでしょうね。私達って言わばノミの夫婦? まあ、私達夫婦じゃないからこの場はノミカップルって命名しちゃいましょうかね。
「そんな風に成長を軽く決められたら苦労はしね〜よ」
「そうよねぇ〜いくら私が『これでアナタも伸長グングン伸び確実術』を実践してもその効果が表れないからね〜」
「ネーミングセンス疑いまくりだ…しかし、そこまで考えてくれるもの嬉しいな」
嬉しいかぁ〜…正直、この慎重差はお互いにコンプレックスになってたりと思って実践してみたんだけど私自身乗り気じゃないの。この狼の身長伸びちゃったら『ぬいぐるみ』だなんて呼べないじゃない。
「う、うん…そう、ね…」
強がり返事もなんか嫌。ずっとこのままでいてくれないかな〜この狼君は。
狼族の中じゃ確実に小さな俺がいる。だから彼女が・・・といっても人間のなんだけどな。そんな彼女が出来たっていつもいつも俺はぬいぐるみ扱い。毎度毎度抱きついてきて、頬擦りしてきて…こいつは飽きという言葉を知らないのか?
「えぇ〜い、やめろ! 暑苦しい!」
畜生、こいつこんなに言ってもやめないんだよな・・・こんな俺のどこが気持ち良いのかわかりゃしねぇ。・・・
「良いではないか、良いではないか。減るものではないでしょ?」
「どこぞの有名時代劇のセリフを言わないでくれ気色悪い…」
「じゃあもうちょっと伸長伸ばしなさいよ。そうすれば私からこんな扱い受けないはずでしょ?」
憎たらしいのはこの伸長差だな。彼女は俺よりも20cmは上なんだぜ? こんな伸長差虚しいかもな。
「そんな風に成長を軽く決められたら苦労はしね〜よ」
「そうよねぇ〜いくら私が『これでアナタも伸長グングン伸び確実術』を実践してもその効果が表れないからね〜」
「ネーミングセンス疑いまくりだ…しかし、そこまで考えてくれるもの嬉しいな」
願っても見ないことだ。でも、その効果が本当になかったことは素で残念の方が大きいかな。
「う、うん…そう、ね…」
俺の残念な気持ちが伝わったのかな? 何か歯切れ悪い返事だな…?
アンタは大きくなったらどうしたいの?
そりゃもちろんお前を守りたいかな
そんなB級恋愛物のセリフ言ってどうすんのよ
B級も何も本当に願ってるんだけどな
嬉しい事言うわね。でも、そう思ってんなら今のまんまがいいんじゃない?
なぜだ?
んと、そうねぇ〜…心の支えだから?
何じゃそりゃ
わかんないなら気付け。中も外もお子様狼君
ムッとした気持ちになったけど狼君のその気持ちが頬にきた唇の感触で緩和されちゃうなんて良き事かも知れませんね。
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