【抱き抱き愛し】
男はデートするときは彼女より早く来て待つものだ。頭原始時代チックな思想なのかもしれないが、男は自然とそういう行動をとってしまう者だ。かく言う俺もその一人だ・・・あぁ、なんか悲しい。
「おっまたせ〜」
などと語尾にピンク色のハートマークを付けそうな勢いの声の主が表れた・・・無論、彼女だ。
ちなみに俺の彼女はイヌ科の獣人。友人、仲間、親兄弟連中からは奇抜この上ないと言われてるがそんなもん知るかボケ!の領域である。え?どこに惚れたかって?それは追々・・・
「お待たせじゃないだろ!こんな寒空のした40分も遅刻とは非常にもほどがあるなぁ〜?」
そう、俺が悲しいといった大きな理由としては・・・もはや気温一桁の寒空の下で待ってたことだ!!!それなのにこいつのこのお気楽極楽な態度は非常に気に食わない・・・皆さんこんな俺は間違っているでしょうか?
「いいじゃん、私こうしてちゃんと来たんだしオッケーにしといてよ」
「事実はそうでも、時間を考えろ!」
「大丈夫大丈夫、現にアンタは死なずにこうやって生きて待ってたじゃん、凍死しないだけマシと思えば儲けもんよ儲けもん」
最悪のハードルは凍死ですか犬娘(ワンコ)さん!もうちょいハードル的に下げて「心細くなって帰った」にして欲しいものです!
「もしそうなったら、死してなお俺はアナタを怨みます」
「もしそうなったら、私はアンタを魂ごと引っかいて噛み付いてやるわ」
そうでしたね、アナタはイヌ科でした。そのことを少しだけ忘れて接した俺が悪かったです。
「魂にまでなって噛み付かれるのはごめんだ」
「なら、私に向かってそんな口きかない」
「ハイハイ、噛み傷少なくするようにお気をつけますよ」
そうやって彼女は俺の上に行って主導権握るんだよな〜・・・本と困っちゃうわけだ。
「ね〜ね〜、今日はどこ行く?」
と、犬の彼女は行ってきた。実を言うと今日は目的無く二人で一緒に街に行こうというようなデートなのだが、こうも計画性の無いといざというときに頼りなくなってしまう。
「とりあえずはどっかで暖めさせてくれ。寒空の下待ってたせいか手の感覚があんまし無い。喫茶店でもいいから」
「え〜!?私すぐにでも遊びたいよ〜どっかでお茶だなんてつまんない!」
アナタは自分の行動に罪の意識を感じないのですか?もとは自分のせいでこうなったことを純度100パーセントに伝えてやりたいが、甘噛み+引っかき攻撃は正直勘弁したいので言葉は胸元の部分で止めている。
「一緒に遊んでたら寒さなんて吹き飛んじゃうって!」
ちょ、待て!そんなに先に行くな・・・そう言いたいと思った気持ちは一瞬で消し飛んだな・・・
「ホラ、いこ!」
不覚・・・そういうべきだなこりゃ。先に行った彼女が後ろ振り向いて笑いながら手を差し伸べるその笑顔。その笑顔はやっぱ可愛いもんで、気持ちが暖かくなる?っというやつを今俺は実感させられてるってわけだ。
「ああ、そうだな・・・っと、その前に」
「ん?なに?」
俺は彼女に近づく。無論、目的は悪戯、寒空のしたで放置したな・・・
「人間を暖める方法知ってるか?」
「え?・・・うわっ!」
俺は肩を無理やり組んで彼女を引き寄せてやった。いきなりのことだから彼女も動揺してるだろうが関係は無いな。
あ、やっぱ暖かいな・・・彼女が心地のよい肌触りの毛並みを放ってるってのもある。だが、急接近でラブで心臓ドッキドキでお熱上昇って気持ちで暖かいってのも悪くは無いな。
「じゃあ、お茶せずに遊んでやる。俺をこのまま暖めてくれたらな」
「何よ・・・それじゃ私抱き枕じゃないのよ。そういう目的なら放してもらいたいものだわ」
「お前の暖かさを感じる癒しの時間を無くすつもりか?」
この言葉は止めみたいだな。彼女はぐうの音も出なくなったようだ。
「じゃあ・・・好きなだけ癒されなよ。私はかまわないから・・・」
「そしたら遊んだ後冷たいものでも食べようか?多分俺抱きすぎて熱くなってきてると思うし」
「な!?ずっと抱いてるつもり!?」
「嫌か?」
「・・・」
態度こそは嫌みたいだな。そう、表面は。もうちょっと素直になってもらいたいものだ・・・尻尾振って喜んでるの隠してるんじゃなくてもっと・・・さ?
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