【朝日の景色】
心無くしたお姫様はずっと眠ったままです。
どうしてお姫様が心を無くしたかは誰もがわかりません・・・
だけど、お姫様が心無くした時は誰もが悲しみを覚えました・・・だた、ヒトリを除いては・・・
「失礼する」
朝日昇る前の時間、お姫様が眠るお部屋に誰かがやってきました。見るとそれはライオンの騎士様。鬣はまるで太陽と例えるに相応しい美しさに神々しい白銀の
鎧を身にまとった騎士様・・・彼はお姫様を守ることを使命としていたお方です。
ライオンの騎士様は皆が心無くした姫を思い嘆き悲しむ中ただヒトリ、悲しまなかったヒトでした・・・
「少々お早いですが、起床なさってみますか? 本日はより一層窓から見える朝日が綺麗にご覧になれる日です」
ライオンの騎士様はお姫様の元により、そう眠るお姫様に声をかけました・・・でも、悲しい事にお姫様は騎士様のお言葉に何にも反応しません・・・
「私と御一緒に朝日をご覧になりましょう・・・姫」
そんなお姫様にライオンの騎士様は愛しそうに微笑みを浮かべるだけでした・・・だけど、もしお姫様の心が健在で起きていたのであればお姫様はこう言ってた
事でしょう・・・『辛そうだね』と・・・
ライオンの騎士様はお姫様の体を優しく抱き上げそのままお部屋のテラスへと足を運びます・・・テラスから見える地上は朝靄(あさもや)で化粧をされた森に
まだ雪残る山々・・・けれども、暗さ残るこのお時間ではそれも闇にしか見えませんでした。
「もうすぐですよ、姫・・・」
その瞬間、地平線の一筋の光・・・太陽が顔を出す時間になったのです。光によって山も森も闇から本来の色を取り戻し、テラスから見える自然を映し出しまし
た・・・
「ほら姫・・・本日も山の雪化粧が綺麗ですよ・・・朝露も良い具合に反射されて輝いております」
でも・・・いくら眼下の景色が綺麗でも、喜びたいヒトが一緒に居ても、お姫様は眠ったままです・・・それでも、ライオンの騎士様は悲しみません・・・
騎士様が悲しまない理由・・・それは・・・
「そうですか、綺麗と御思いですか・・・」
悲しんでしまったら・・・本当にお姫様の心が無くなってしまうからです・・・
お姫様は心無くされる前にこう言いました。
『誰もがもう無いと思ってしまうとその物は存在しません・・・だから、私の心が無くなってもアナタは私を思い悲しまないでください・・・』
だから、ライオンの騎士様はお姫様をずっと想い続け、悲しみませんでした・・・
朝日が強くなります・・・その朝の光で鬣はまるで第二の太陽を思わせ、お姫様の肌もまるで生きてるように照らします・・・ライオンの騎士様はお姫様を抱き
ました。鬣でお姫様を包み込むように・・・そっと・・・
時の流れはずっと流れ続けます
誰かの命が散ったとしても
誰かが悲しい思いをしたとしても
残酷に無性に・・・
だけど、『生きる』ことはできます
紡ぐ事を信じ
投げ出した気持ちを持たない限り
お姫様のように、ずっと『生きる』ことが・・・
アナタもどうか、紡ぐヒト、信じるヒトになるよう
朝日に願いを・・・
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