【その時だけの顔】




お空がぐずり出して泣いてしまうこの季節、泣いてしまう涙を傘で防ぐのは地上にいる私たちです。
ココに、自分の大好きな傘を開くことが出来て喜んでる女の子がいました・・・

「〜♪」

見るからに期限の良さそうな女の子、その綺麗な花柄の傘を咲かせて街角を歩いています。

「あ・・・」

唐突に声を出したのには理由がありました。それは女の子の視線の先にこの降る雨を凌いでいる友達の白トラの男の子がいたからです。白トラの男の子は傘を忘 れたようでした。

「こんにちは!」

「あ、こんにちは・・・」

元気な女の子に対し、白トラの男の子は健気な様子でした。

「傘、忘れたの?」

「うん・・・いきなり降って来ちゃったから」

天気予報では雨は降らないと言っていたので油断したのでしょう。だけど、女の子はお気に入りの傘をさしたい一心でこの時期は毎日持ち歩いていたのです。

「私の傘に入る?」

女の子の申し出に白トラの男の子はなんだか気恥ずかしそうでした。

「え? いいよ・・・それに、その大きさじゃ二人は入れないよ」

白トラの男の子が言ってることは本当でした。男の子の大きさはその花柄の傘では入りきれないくらいの大きさです。そこに女の子が入ることなど少々無理があ りました。

そのとき、雨が弱くなり、次第にポツリポツリと少しのものになっていきました・・・

「雨・・・止んじゃうね・・・」

そう呟いた女の子の顔は残念そうでした。折角のお気に入りの傘をさせない悲しさ・・・白トラの男の子はどう声をかけたら良いのかわかりませんでした・・・ その時です。

「あ、虹・・・」

「え?」

白トラの男の子が指差すほうには雲が割れ、光が差し込み綺麗な虹が空に出来上がっていました。

「わぁ! ねえねえ! 虹だよ虹・・・あ」

はしゃぐ女の子が静かになった理由・・・それは・・・

「光ってる・・・」

白トラの男の子の毛に付いていた水玉が光に反射して光ってるように見えたからです・・・

「あ、ボクこんなに濡れてたんだ・・・気付かなかった」

「でも、凄く綺麗だよ・・・まるで宝石みたい」

「宝石?」

「うん! やっぱり私・・・雨大好き!」

「ボクはやっぱり苦手・・・」

お互い好きなもの、苦手なものを言った後に女の子は傘をたたみ、手を差し伸べていました・・・

「一緒に歩こ! 綺麗な宝石さん!」

「うん・・・いいよ」

水玉付いたその手は差し伸べられた手を掴み、二人は一緒に濡れた道を歩きました・・・
差せなくなった傘の悲しさは、女の子が見つけた綺麗な宝石が拭ってくれたのでした・・・






悲しんだ後には必ず楽しさが訪れます
見上げてください、悲しんで泣いている空の顔を・・・
そして、見てください
悲しんだ後に見る空の笑った日差しを・・・

その時にしかない顔

アナタのその瞳でどうかその顔を見つめていてください・・・




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