【二人だけのアジサイ】
またこの時期がやってきます・・・お空は曇り色をし、泣き顔になってしまい、その涙はボク達が踏む地面に落ちてしまう時期・・・そう、梅雨です。
「またアジサイ見るのか?」
男の子は少々ムスッとしてます。そんなことはお構い無しの犬の女の子はやがて咲き乱れるお花を楽しみにその尻尾を大きく振っていました。
「だって、今年も咲くんだよ! うんとイッパイ見なくちゃだもん!」
「風邪引いても知らないぞ・・・それに、去年ボクがあげたアジサイの絵はどうしたんだよ?」
そう、男の子は去年犬の女の子が濡れないように、部屋でもアジサイが見れるように可愛いピンク色のアジサイの絵をプレゼントしたのでした。
「あの絵ならずっと私の部屋に飾ってあるよ」
「じゃあ、それを眺めりゃいいじゃん・・・」
「アレは君のアジサイだよ。私が見たいのは皆のアジサイなんだ・・・」
「なんだよそれ?」
「フフッ・・・内緒」
その人だけの心のアジサイは自分の胸の中に咲き続けるもの・・・だけど、皆のアジサイはその時期にしか咲かない小さなもの・・・
「そうだ、絵のお礼に今度アジサイの苗木あげるね」
「え? いいよ・・・ボク育て方わからないし」
「私が教えてあげる! だから、二人のアジサイ咲かせようよ!」
「あ、あぁ・・・」
普通は苗木をプレゼントして「私のアジサイ、君にあげる」と言えば良いのかも知れません・・・
だけど、それは犬の女の子の願いの想いは叶わなくなってしまうからです・・・
アジサイは花を咲かし、色づく期間は梅雨の時期だけ・・・
それ以降は色をなくし、枯れた花が咲き続くだけの悲しき華
しかし、その華はずっと咲き続くもの・・・
それが故の花言葉・・・
「強き愛情」
ヒトリだけのアジサイではダメ・・・
だから、二人だけのアジサイとして咲かそうと心に誓ったのでした・・・
アジサイ(強き愛情)を一緒に咲かすヒトと・・・
梅雨の聖花アジサイ
その移り変わる色に「移り気」の意味は込められても
変わらぬ形は「強き愛情」を示す・・・
アナタの心のアジサイは誰に手向けますか?
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