【ぴあの】
「ヒトは嘘吐き・・・これは、一生ものの理論ね」
そう言い放つは人間の少女。悲しき顔でピアノのある部屋の窓から見える空を見つめ、その悲しき少女を見つめるは狼男・・・
「それは悲しい考えだな」
否定する根拠が少なくない為、完全に肯定したい狼だが肯定する己も悲しき存在と化してしまうために少女に賛同と言う形しか取れなかった。
「いくら言葉で『愛してる』や『友達だよ』って言ってもそう言われて嬉しくないヒトも居る・・・そういうヒトが居るだけでその言葉は嘘になる。だから一生
ものの理論ってわけ」
少女が言い放った後にポロンという音色・・・少女はピアノの鍵盤(けんばん)に指を置きヒトツを押したのだ。
なぜか傷ついている鍵盤、それを弾くことによって奏で出る音は少女の悲しみを表すかのよう・・・
「じゃあ、ボクも嘘吐きに入るのかい?」
「うん・・・」
カナシイ?
ツライ?
ナキタイ?
決して届かない狼の彼の心の声、その声は少女にそう質問を嘆いている。
だから、その質問の答えを考え出すのだ・・・
狼はピアノの前に座る・・・
「何を弾くの?」
少女の問いの答えは言葉では返ってこなかった・・・返ってきたのはピアノの音色・・・
狼はその傷だらけの鍵盤を叩く・・・長く弾き続けたせいで己の爪で傷つけてしまった鍵盤、でもその音色に傷は決してない・・・そして奏で出される曲は少女
が一番大好きな恋歌・・・
涼やかな気持ちで聴く少女・・・
少女は気付く・・・この世に嘘が無いとするのなら、それは・・・
大切な狼(ヒト)が自分のために奏で出す音色だということを・・・
アナタにとって嘘無き歌はありますか?
決して淀む心を持つことの無い、綺麗な心になれる歌を・・・
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