【タカラモノ】




楽しみを独り占めするのも皆で分け合うのもどっちも幸せの大きさは一緒だけど、感じ方は人それぞれ。
それは、この犬の彼と人間の少女にも言えることです・・・

「『宝』と『国宝』って、どっちが上だと思う?」

不意極まりない質問に犬の彼は戸惑いましたが、その一瞬の戸惑いを拭い、少女の妙な質問に答えるだけの冷静さを取り戻しました。

「それは・・・やっぱ『国宝』の方じゃないのか? 国の宝って言われるくらいだから・・・」

「ふ〜ん・・・平凡脳犬ね・・・アナタ」

「なっ!?」

意味不明な質問に頑張って答えた結果が悪口だと怒りを覚える前に素っ頓狂な気持ちの芽生えがあるわけで、犬の彼が怒りを生むための時間は数秒かかってし まっていた。

「なんでオレが平凡脳になるんだよ!?」

「だって・・・『国宝』だとそれは国の宝になって個人の宝物じゃないもん。逆に『宝』はその人個人のものもあるじゃない? 個人の宝ほど価値があるものっ てないじゃない」

「なるほど・・・」

最初は意味不明であった質問の最新部分をそうやって学習すると、自然と怒りは消えてしまっていた。しかし・・・

「なんでそんなこと聞くんだ?」

「そうね〜・・・アナタが私の『宝』になれるかどうかのテストみたいなものよ」

「ふーん。んで、オレはそのテストに合格したのか?」

「ちょっと不合格かな・・・でも、その可愛くてふわふわな尻尾と身体なら『宝』に認定しちゃうけど」

「そこだけか」

「うん、そこだけ」

二人には自然な笑顔が生まれ出ていた・・・淀んだ気持ちも無く、愛しげな笑顔・・・

「じゃあ、オマエは世界宝・・・世界の宝だな」

犬の彼が不意に発した言葉の意味を解釈すると、普通はそのものは誰の宝とも取れるもの・・・個人の宝ではなく、世界の宝・・・普通は・・・

「何よ・・・そう言われて嬉しいけど、結局は誰かの宝物でもないじゃない・・・」

少女の悲しそうな顔・・・その顔をフワリと包み込むように犬の彼はその温かな体で少女を包み込む・・・ふんわりな毛で覆われた身体に抱かれる心地よさに悲 しみは吸い込まれそうだ・・・そして・・・彼は言ってくれた・・・

「オレが感じる世界の宝・・・それがオマエだ。ダメか?」

抱かれた上で言われた言葉に止まらない嬉しさや喜びを感じ、何かを言い返そうにもうまく言葉は出てこない・・・だから、今の精一杯を振り絞った・・・

「じゃあ・・・アナタは今から私の『世界宝』決定・・・」

そう、強がることしか出来ませんでした・・・








What is your treasure…?
(アナタの『宝物』は何ですか)


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