【不思議な水の中】
人間の彼と犬獣人の彼女がいるこの場所・・・そこは水の中。水の中といっても息も出来るし物も水中にそのまま下に行く事無く漂うだけで、服も濡れないとい
うものだった。息も出来るなら声も相手に伝わるのも常識である。彼と犬の彼女はその水の中で服を着たまま泳いでいた。
「おーい!」
彼が彼女を呼んだ声である。
「なに?」
「ホラ!」
彼は犬の彼女に向かって何かを投げたようだ。水の中なので投げるスピードは遅く、犬の彼女は難なく彼が投げた物を受け取った・・・
「これって・・・」
それは彼女が前から欲しかったブレスレットである。
「前から欲しかったんだろ? いつでも渡せたんだけど・・・やっぱこういう場所で渡したほうがいいかなって思ってさ・・・」
「・・・」
犬の彼女は嬉しかった・・・確かにこの不思議な水の中、この場所で渡されたらムードはいい方だが、それ以上に自分の事をちゃんと見てくれたことに・・・
「ありがとう・・・」
イッパイ感謝の言葉が言いたかった・・・このたくさんの嬉しさを全て彼に伝えたかった・・・でも、彼女はただただ「ありがとう・・・」その言葉しか言えな
かった・・・でも、そんな犬の彼女の心はちゃんと彼にも伝わっている・・・その確かめる術は無いけど、彼女はそんな気がしてならなかった・・・そう、目の
前に居る愛しい人を見つめながら
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