【見る先】

彼はコタツに入りながら勉強をしていた。テストが近いってこともあってかその背中から一生懸命さが伝わってくる・・・彼の後ろでコーヒーを作っているのは 犬獣人の彼女である。

「ハイ、コーヒーできたよ」

「ありがとう、そこに置いといて」

「うん」

そう言って犬の彼女はコタツの端にコーヒーを置いたが彼がそのコーヒーをすぐには飲まなかった。その見る先はノート、そして手に持つのはシャープペンシル でそのペンが走る音が静かなこの部屋に大きく聞こえてくる・・・コーヒーの湯気も段々と弱くなってきている。

「ねえ・・・コーヒー私が飲んでもいい?」

「ああ、いいぞ」

「・・・」

視線の先はあいも変わらずノートに釘付けの彼、会話でもその見る先が彼女に行く事は無かった・・・そんな彼に犬の彼女はそっと彼の後ろに回り・・・

「うりゃ!!!」

「!!!」

コタツに座っている彼を後ろに張り倒した。そして、倒れてる彼の顔を上から覗き込んだのだ・・・

「な、なんだよ・・・」

覗き込まれた犬獣人の彼女の真剣な顔に彼は少々威圧に押されていた・・・

「ちゃんと見なさい・・・」

「???」

「ノートだけじゃなくて、私もちゃんと見ろっつーの」

「・・・」

そこで彼はわかったのだ。犬の彼女は淋しがっていることに・・・「ああ・・・悪ぃ・・・」そんなぶっきら棒な謝り方しか出来なかったが犬の彼女はそれで満 足だった見たいで、覗き込んでいた顔を彼の胸元に置いた。

「うん・・・よろしい」

「おいコタツに入れよ、寒いだろ?」

「ハーイ」

犬の彼女はそう返事をして彼の隣に寝るような形でコタツに入った。

「暖か〜い」

「ああ・・・そうだな」

そう言うと犬の彼女は彼の胸に顔をうずめた。彼もまた、犬の彼女を優しく・・・愛しそうにその腕で包み込み、二人はそのままコタツで寝てしまった・・・

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