【バレンタイン】

「チョコなんか大キライだ」

狼の男の子のその言葉にその大キライなものを渡そうとした女の子はキョトンとするばかりでした。

「どうして?」

なんで貰ってくれないんだろう・・・なんでチョコが嫌いなんだろう? いくら考えても『なんで』が尽きませんでした。

「そんな甘いものは食べたら気持ち悪くなるんだよ! 溶けたら毛につくし、食べたくないんだよ!!!」

なんと、狼の男の子はそういって女の子が渡そうとしたチョコを叩き落してしまいました。当然女の子は大粒の涙を流してしまいます・・・

「っ!!!」

「あ・・・」

狼の男の子は自分の行ったことに罪悪感を持ちましたがもう遅かったのです・・・

「ヒック・・・ヒック・・・ごめん・・・ね・・・ごめんなさい・・・」

「あ、謝るなよ・・・悪いのは俺なんだから・・・」

「ううん、悪いのは私だもん・・・チョコ・・・キライって・・・知らなかったんだもん・・・」

「そ、それは・・・」

実を言うと・・・狼の男の子はチョコが大好きでした。だけど、女の子の前では強がってキライといってしまったのです・・・チョコの好きな男の子なんて恥ず かしい、そう思ったからでした。

「だって・・・わかんなかったんだよ・・・」

「ヒック・・・何が?」

「うん・・・」

狼の男の子はこの時、初めて勇気という言葉を知ったのでした・・・

「だって・・・大好きなやつから大好きですっていう気持ちを貰っちゃうと・・・俺どうすればいいんだよ・・・」

「え・・・」

そう・・・これが狼の男の子の勇気の答えでした。女の子の勇気はもちろんチョコです。だから、狼の男の子はその勇気を本当は感じ取っていたのでした。

「フン!」

狼の男の子はそうムスッとすると落としたチョコを拾いました。

「チョ、チョコは大っキライだからな! ・・・お前が・・・くれたやつ以外はな・・・」

「うん・・・ありがとう」

そして、狼の男の子はチョコの箱を開け、中のチョコをパクッと食べたのでした・・・その味は、今まで食べたチョコの中でも一段と美味しかったのは言うまで もありませんでした・・・









甘いものを作るのには何が必要ですか?

お砂糖?

愛情?

想う気持ち?

確かにそれらは必要です。でも、一つだけ忘れちゃダメなことがあります・・・

それは・・・

その気持ちを持つこと・・・と、いうことです。

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