昔、あるお城に魔女がやってきた・・・魔女の目的は姫の魂を奪う事・・・人は魔女を恐れ、呪いを恐れ、誰も太刀打ちしようとはしなかった。姫君の父である 国王もまた、苦渋の選択で姫を魔女に謙譲してしまった。姫もまた、自分一人の魂で皆が救われるのならとその身を捧げた・・・

魂を魔女に受け渡す姫・・・

その魂が抜かれた身体は地に落ちるはずだった・・・だが、ある一人の男が姫の身体を受け止めた。男は狼の顔を持ちし姫を守る使命を帯びた狼の騎士だ。狼の 騎士は最後まで姫の魂が魔女に捧げられるのを反対してた。だが、姫の意思を尊重したのだが、やはり納得は出来なかった。騎士は片腕で己の守るべき人を抱 き、もう片方の手には自身や大切な人を守るための剣が携えられていた・・・

「姫の魂を返してもらおうか?」

当たり前にそう魔女に話す狼の騎士、だが魔女は・・・

「それはならぬ」

と、ただ一言返してしまう・・・

「なぜ?」

と、狼は問うと魔女は答えた・・・苦渋の表情で・・・

「世界は滅びの道へと歩み始めている。滅びから世界を救うにはこの姫君の魂が必要なのだ・・・」

と・・・

「・・・」

狼の騎士はそのことを知らなかった・・・だから、驚愕の気持ちがあった・・・

「魔女よ・・・そのことは姫もご存知なのか?」

「そうだ。姫も国王も・・・また、国民も全て知っている・・・知らなかったのは狼よ、そなただけだ」

「なぜ・・・私は知らなかった・・・?」

そう自問自答する狼の騎士・・・だが、魔女の言葉は終わりではなかった。

「それはこの姫君の遺志だからだ」

「遺志?」

「そう・・・姫君は言っていた。大切な人が笑ったこの世界が好きだ。大切な人が存在するこの世界を愛してる・・・だから私はその愛する世界と大切な人を守 るためにこの身を捧げる・・・この事は大切な人には言わないで欲しい、言わない事でその人は魔女である私に剣を構えるだろう、だが姫君は残された時間を大 切な人と変わりなく過したい・・・そう言っていた・・・そして、姫の大切な人は今まさに姫を抱いておるそなたじゃ・・・」

「姫・・・」

狼は嬉しかった・・・でも、それ以上に悲しかった・・・何もしてあげられなかった自分、いつものように姫と笑い合い、姫を守ることしか出来なかった自分 に・・・

「狼よわかるか? だから私は姫の魂を渡す事は出来ない・・・それは姫の願いを壊す事になるのだぞ・・・他でもない、大切な人であるそなたが・・・」

「・・・」

その言葉には反論できなかった・・・姫を守ることが自分の使命、その姫の魂はもう今抱いている体には宿ってはいない・・・使命を果たすためには姫の魂をも う一度宿す事・・・しかし、それでは姫の意思を破る事になる・・・

守るべき人を取るか・・・

守るべき人の気持ちを取るか・・・

それが狼の選択肢だった・・・そして、狼は選んだ・・・

「魔女よ・・・」
























時は流れた・・・魔女の子孫である少女がある本を見つけそれを読んでいた。どうやら何代か前の魔女の日記のようである。
そこにはこう書かれていた。世界は滅びの階段を上り始めていた。世界を救うためには姫の魂が必要になる事も・・・そこに狼の騎士が魔女の前に立ちはだかっ た。だが、事情を説明すると狼はこう言った。

魔女よ・・・私は己の使命を果たしたい・・・

と、狼は魔女に望んだ・・・自分の魂もこの身体から分離し、姫の魂を守ると望んだのだ。魔女はその願いを受け入れた。その抜け殻となった狼の騎士は愛しそ うに姫の体を抱きながらそのまま地に落ちていった・・・そして、姫の魂は世界を救うために贄となったという・・・その後、狼の騎士が使命を真っ当出来てる かは不明である・・・

その日記を見て少女は心来るものがあった。
その夜、少女は夢を見た・・・一人の狼の騎士が一人の姫の手を取り、互いに愛しそうに見つめ合い、姫君がその身体を狼に傾け、狼の騎士がその姫の身体を優 しく包み込むように抱くという夢を・・・それが日記にあった狼の騎士と姫かどうかはわからなかった。
そう・・・それは狼の騎士と姫が世代を越えて、大好きな世界を救い・・・二人の絆を永遠に結んだ魔女への感謝の思いと知らずに・・・










〜あとがき〜

このたびは『選択』をごらんいただきまことにありがとうございます!

このお話は以前に狐音さんのサイト『NINGEN ZOO』 で、ボクが「狼騎士と姫」というリクエストしたのですが・・・そのイラストにボクの獣人好き心が一瞬で何かに貫かれちゃったのです!(もうちょいうまいた とえが欲しいですね・・・)

それでは、まだまだ駄作ばかりしか書けない魅凪でした><
狐音さん、本当にありがとうございます。

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