夜の仕事 前編坂本龍馬作
 今日も博史はネットサーフィンをしていた。博史は地方の大学に通うために、わざわざ東京から引っ越してきたのだ。新しいパソコンを買ってからは、大学やバイトがない日は朝から晩までほとんど家から一歩も出ずにパソコンとにらめっこという日々が続いた。自分の好きなゲームや裏技などを調べることもあったが、もっぱら妖しげなサイトを転々としていることが多かった。
 一人暮らしなので、誰にも見られずに思う存分ネットサーフィンに没頭していた。博史には友達がいるが、昔から一人でいる方が好きなので、一緒に遊ぶということはあまりしなかった。
「あ〜あ、今のバイトも何か面白くないんだよな〜。何か新鮮な毎日が送れればなぁ〜。」
そんなことを思いながら、今日もパソコンの画面に向かっていた。
「おっ、何だこれは・・・?」
博史は気になるサイトを見つけた。それは獣人とセックスができるという店のサイトだった。
「本当にこんなもんあるのかよ・・・?」
 初めは疑ったが、獣人ということが気になったのでとりあえずそのサイトを覗いてみた。そこには絵に描いたような理想的な体型の獣人ばかりだった。またそこには"あなたのお好みの娘を必ずご提供します!!"とデカデカと書かれていた。
「おおっ!?これは・・・!いや、でもどうせ合成か何かだろう。」
博史はかなり興奮したが、すぐに疑り深い性格のおかげで冷静に考え出した。博史は前から獣人には興味があり獣人の絵のサイトを転々と見てきたが、獣人が実在するとなるとやはり気味悪くなった。しかし、心のどこか奥底でウズウズしていた。
「でも不安なんだよなぁ。カウンタあんまり回ってないし。何か信用できないなぁ。」
どうやら新設したばかりらしく、実際カウンターは1000番代だった。
 しかし掲示板を見て驚いた。かなりの書き込みがあり、ほとんどが"かなりよかった"とか"また行きたい"とかいうものばかりだった。
「本当かよ〜。どうせ自作自演なんだろう。」
博史の猜疑心が再び膨らんだ。
「ちゃんとした店なら場所が紹介されているはずだ。」
 そう思った博史は店の場所が紹介されているページを探した。『店の場所について』というリンクがあったので、早速クリックした。すると、自分の住所を入力しろという指示があり、その下には都道府県を入力する欄があった。番地などまでは入力する必要がないらしい。
「ふ〜ん、まぁとりあえずやってみますか。」
 意外と店がありそうなので、博史は関心しながら自分が今いる県を入力した。すると、数件ヒットした。どうやら自宅の近くにもあるようだ。
「へぇ〜、こんな所にあるんだ。」
博史は内心少しうれしかった。結局、面白半分でバイトがない来週に行くことにした。

 一週間後、そろそろ深夜に差し掛かるころにアパートを出発した。店は電車で20分くらいでいける隣町の繁華街にあるらしい。博史は興奮と不安を胸に電車に乗った。駅に着くと、博史は少し早足で店に向かって大通りを歩いた。しばらく大通りを歩いて、そこから一つ裏の路地へと足を進めた。ほとんど人通りがない裏路地をさらにそこから数分歩き、ようやく店を見つけた。その店は雑居ビルの地下にあった。
「ここか・・・。」
 いざその場所に来て本当に実在しているとわかると、博史は少し驚いた。博史は少し恥ずかしがりながら雑居ビルの階段を下りていった。博史は扉の前でしばらく立ち止まったが、意を決して扉を開け中に入っていった。博史は店の中に入って驚いた。そこには人が一人もいなかったのだ。
「なんだこの店、まだやってないのか・・・?」
博史は少し戸惑ったが、部屋の中央にパネルがあるのを見つけた。
『ようこそ、獣の館へ!まずは年齢と性別を入力してください。』
パネルにはそう表示されていた。博史は言われた通りに自分の年齢と性別を入力した。入力し終わると『次に、自分の好みの獣とその性別を入力して下さい。』と表示された。
「う〜ん、どうしようか・・・。じゃあ、とりあえずメスウサギにしてみるか。」
博史は思いつきでパネルに"ウサギ"と入力した。性別はとりあえず自分は男なので女性と入力した。
『最後に獣の特徴を入力して下さい。』
パネルはそう表示されていた。特徴はバスト、ヒップ、ウエストや毛の色、さらには服装などまで指定できるようだ。
「かなり細かいな・・・。とりあえずこれと、これと、これっと。」
 そう思いながら心の底ではかなり期待していた。決定のパネルをタッチして、しばらくするとパネルの向こうにある扉に入るように指示された。博史は言われるがままにその扉へと入っていった。

 中に入って扉を閉めると"5番の部屋へどうぞ。"というアナウンスが聞こえた。見てみると、そこは廊下になっていて両端にはかなり向こうまで扉が並んでいた。
「うわ〜、こんなになっているとは・・・。」
さすがにこの光景に博史は驚いた。とりあえずアナウンスの指示通りに扉に"5"と書かれている部屋の前まで来た。
"本当にいるのかよ・・・。でもなんかここまでやるとさすがにドッキリとかじゃなさそうだ。"
 まだ疑っていたところはあったが、期待を胸にドアノブに手をかけ、そしてゆっくりと扉を開けた。部屋はスイートルームを思わせる雰囲気の部屋だった。広さは40畳近くあり、ソファーの向こうには大きなベットがあった。
「ようこそ、獣の館へ。私はミルクよ、よろしくね。」
 ソファーに優雅に座っているウサギ獣人が言った。子供の様な可愛い顔だったが大人っぽいムードを醸し出していた。博史はその光景が信じられなかった。そこには自分がさっきのパネルで入力した通りの、赤いバニー服を着た豊潤な胸の白毛のウサギ獣人だったからだ。
「え、あ、は、はい、よろしく・・・。」
博史は理想のウサギ獣人にぎこちなく返事をした。
「あなた、名前は?」
ミルクが言った。
「あぁ、博史って言います。」
博史はまだ少し動揺していた。
「あなた、ここははじめてなの?」
子供っぽさがのこるかわいい声だ。
「え、は、はい。インターネットでテキトーに見てたらたまたまここのサイトを見つけて・・・。」
博史は少し気が動転しているようだった。
「ふぅん、じゃぁ、こういうのはまだ未経験なわけね・・・?」
「ええ、まぁそんなところです・・・。」
 博史は今まで妖しげなサイトで一人で興奮を味わっていたが、あまり女性と深い関係を持ったことがなく、実際やるとなると不安がこみ上げてきた。
「それじゃぁ、そろそろ行きましょうか?」
「え!?も、もう、ですか!?」
「心配しないで、私もあなたにできるだけのことはしてあげるわ。」
「は、はい。」
"なんてやさしい声なんだろう。"
博史の思考回路はショート寸前だった。
「うふ、もう、かわいい顔しちゃって。」
ミルクのふわふわした細くて綺麗な指が博史の鼻先に触れた。博史はその後しばらくはボーっとしていた。

「ちょっと、何ボーっとしちゃってるの?こっちに来て。」
 博史はミルクに誘われてベットに向かった。ベットはかなり広く、大人が4人いても寝ることができそうなくらい広かった。
「うわぁ、す、すごい・・・。」
博史は今までこんなに広いベットを見たことがなかった。
「さぁ、服を脱いで・・・。」
ミルクは甘い声で脱衣を促した。博史は急いで自分の服を脱いだ。ミルクはゆっくりとバニー服を半分だけ脱いだ。プルンとした弾力のある胸があらわになった。
"うをっ、こっ、これは!!"  博史はそれに釘付けになり、鼻血が出そうになった。ミルクは博史の顔を見てニコッと笑うと、またゆっくりと服を脱ぎだした。服を完全に脱ぎ終えると、そこにはまだあどけなさが残っているけれども清楚なウサギ獣人が立っていた。
「さぁ、早く私のところに来て。」
ベットにのぼって博史を誘った。博史は素直にベットにのぼってきた。
「あら、もうこんなに。」
ミルクは博史の臨戦態勢のペニスを見ながら言った。博史の顔が少し赤くなった。
「そんなになってるなら大丈夫そうだけど、はじめてだから一応ウォーミングアップをしましょう。」
 ちょこんと可愛らしく座りながらミルクが言った。博史とミルクが向かい合って座ると、ミルクはまず始めに博史の口に自分のを押しつけるようにして口づけを始めた。二人の舌と舌が絡み合い、唾液が混じり合った。
"甘い・・・。キスってこんなにも・・・。"
 博史は口の中で暴れているものに身を任せた。お互いの口の周りに混じり合った唾液が輝いていた。しばらくして博史の顔が火照りだしたのを感じたので、ミルクは混じった唾液を滴らせながら博史の口から自分のを離した。
「じゃあ、次の段階に行きましょうか。」
 ミルクは静かにそう言うと、今度は博史のペニスに自分の口を近づけ、それを口に含み嘗め回した。ミルクの舌は暖かく、やさしく博史のペニスを包み込み、そしてそのまま顔を動かした。
"ズブッ、ズブッ・・・"
静かな部屋に興奮を促す音が響き渡った。博史はもう何も考えていられなくなっていた。ただ自分のペニスから感じるものをひたすら求めた。
「あぁ、あ、はぁ、はぁはぁ・・・。」
博史の体全体が火照りだし、まさに絶頂寸前だった。ミルクが舌先で博史のペニスの先端をチロチロと嘗めた。
「あああああああぁぁぁ!」
その途端、博史は絶頂に達した。
「きゃっ!」
 いきなり博史が精液を出したことにミルクは驚いたが、精液を少しだけ飲み残りは自分の顔にかけた。
「あなた、結構溜まってたみたいね。いい味だったわ。」
博史の精液でベトベトになったミルクが言った。博史は顔を赤くしたが、すぐににっこりと笑った。
「もう、かわいいんだからっ。」
ミルクもにっこり笑いながら言った。

「そういえば、疑問に思ったんですが・・・。」
 博史が深刻そうに言い出した。
「人間と獣人がセックスしても子供が産まれたりとかしないんでしょうか?」
「そんなことないわよ。確かに人間と獣人は遺伝子構造が似ているけど、別にセックスしたからって子供ができるってことはないわ。」
博史はそれを聞いて少しほっとした。
「生もうと思えば生めるけど、私達は出来ないようになっているわ。」
その事を聞いて博史は不思議に思った。
「私については後でゆっくり話すわ。さぁ、続きをやりましょう。」
博史の精液で顔の毛がゴワゴワになっているミルクが言った。博史は黙ってうなずいた。
「一日に二回も出るかなぁ・・・。やったことないんだよな。」
「やってみましょうよ、何事もチャレンジが大切よ。」
 ミルクは四つんばえになり尻を博史に向けた。
「さぁ、はやくあなたのイチモツを私のかわいいまんこに突っ込んで!」
博史はゆっくりと自分のペニスをミルクのワギナにあてて、ゆっくりと突っ込んだ。
「あ、あ、あああぁぁ・・・。」
二人から同じような声が口からもれた。博史がピストン運動を始めると、それにあわせてミルクが小刻みに喘いだ。
「あん、あん、あん、もっと、もっと私を突いて!!」
 ミルクは博史が思ったより強く自分を突くのに驚いていた。それが相乗効果の原因になり思った以上の快感を味わっていた。しばらく静かな部屋には二人の息づかいの声だけが聞こえていた。博史の手からミルクのふわふわした暖かい感触が伝わった。
"なんて気持ちいいんだろう・・・。"
そんなことを思いながら博史はひたすらピストン運動を繰り返した。
「うをっ、そろそろいくぞ・・・。」
その直後、ミルクの子宮に博史の精液が流れ込んだ。
「ああああああぁぁぁぁん!!」
ミルクも絶頂に達した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
 二人は息を切らしながら余韻を味わっていた。
「や、やったじゃない・・・。」
「ああ・・・。」
博史は満足した顔で答えた。ようやく落ち着いた所で、博史は自分のペニスをミルクのワギナからゆっくりと抜いた。ふたりの混じり合った精液がトロトロとミルクのワギナから流れ出ていた。
「僕、君の事をもっと知りたいんだ。」
しばらくして博史は真面目な顔をして言った。ミルクは少し間を置いて口を開いた。
「実は、私達は薬でこういう姿になっているの。」
博史はそれを聞いて愕然とした。
「ここで働いている人達は変身願望があって、着ぐるみとかじゃ不十分な人達が集まってこの店を経営しているの。私達は獣化を研究している研究所のモニターで、研究所からもらうお金で私達は生活しているの。でも薬は安全が保証されてるし、自分の欲望を満たせるから相互利益になってるわけ。けっこういい収入だし。私達は変身もできてこんな快感を得ることが出来るこの仕事に誇りを持っているわ。他人にはあまりおおっぴらに言えないけど。さっき質問したことだけど、子供が産まれないっていうのはウソ。でも変身してセックスしても元の個体は人間だから生まれるのは人間の子供っていう研究結果が研究所ではでてるわ。」
 博史は感慨深げな表情でミルクの話しを聞いていた。
「じゃぁ、君は普段は普通の人間なんだね?子供産んだりとかしないの?」
興味津々に博史は尋ねた。
「そうよ。ここで働いている人全員は元々人間よ。それにみんなピル飲んでるから妊娠はしないわ。」
しかし、その次にミルクはため息をつき、静かにこう言った。
「・・・でも、あなたは秘密を知ってしまったからにはここで働いてもらわなければいけないの。でも、嫌なら無理にここで働かなくてもいいわ。」
ミルクは悲しいような嬉しいようなよくわからない声だった。
「いいよ。前から獣人には興味あったし。ここなら刺激的な毎日が過ごせそうだし。バイトなんかより何百倍もマシだよ。」
博史はあっさりと承諾した。思ったより決断が早かったので、ミルクは少し驚いていた。
「あらそう、じゃあこれ飲んで。」
 そう言うとミルクは橙色とピンク色の錠剤を1粒づつ博史に渡した。
「これは何に変身する薬なんだい?」
「さぁ、それは飲んでからのお楽しみ。」
ミルクがいたずらっぽく言った。博史は疑り深い性格のせいで、こういう事になると深く考え込んでしまう。
「ねぇ、早くぅ〜。」
ミルクは博史を急かした。
"ポイッ、ゴクン。"
博史はひと思いに薬を飲んだ。
「この薬は入り口にあったパネルと連動していて、獣人が決定すると変身専用部屋にある薬製造機が作動してその獣人になるための薬を作るの。その薬を飲んで獣人になってそれぞれの部屋に行くの。」
ミルクは変身する行程を説明した。
「薬を飲んだら静かに目を閉じて、体の力を抜いて。しばらくすると変身が始まるわ。」
「うぐっ!くっ、くうぅ・・・。」
博史の胸のあたりからいきなり爆発したかのように熱が発生してきた。
"くはぁ、な、何なんだ、この熱さは・・・。"
「力を抜いて!リラックスよ、リラックス!!」
 ミルクが必死に叫んでいた。だが博史にはその声が聞こえず、ただもがき苦しんでいた。そして立っていることも辛くなり、ついには四つんばえになった。決していいとは言えない博史の腹は段々とスッキリとしていき、胸板の薄いだらしない胸は膨らみ、DかEカップくらいのふくよかな胸になっていった。
 それと同時に綺麗な白い毛が腹部に生えてきて、他の部分にはつややかな黄金色の毛が生えだした。手足や耳の先端には茶色っぽくなっていった。熱は尾てい骨あたりにも広がって、そこからは膨らみのある先端が白いしっぽが生えだしていた。耳の位置がだんだんと頭の上の方へ移動していき、三角形になりピンと立った。鼻が小さく黒くなり、口が徐々に前へ突き出て伸びていった。変身はほんの数分で終わった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
 四つんばえになって下を向いてまだ息を切らしている博史がいた。しばらくしてようやく落ち着いた所で、博史は自分の手を見、ゆっくりと頭に手をやった。手には柔らかい肉球があり、指は綺麗で細長かった。頭にはふさふさした柔らかい毛で覆われたしっかりとした耳があった。博史は自分がどうなっているのかがわからず、すぐに鏡の前にたってのぞき込んだ。そこにはスラッとした美しいキツネ獣人が立っていた。
「うおわぁ!お、俺、本当に獣人になってる!!・・・でも、女じゃねーかー!!」
「ウフフ、そうよ、橙色の錠剤はキツネ獣人になる薬、ピンク色のは男性が女性になる薬よ。」
ミルクはクスクス笑いながら言った。
「初めてだと急激な変化で失神したりする人とかいるけど、思ったよりあなたは結構体が丈夫なのね。すごいわ。慣れてくると、頭がスーッとしてきて何かに吸い込まれるような感じを受けるようになって、もうその感覚がなくなった時には獣人になってるっていう風になるわ。」
「なんで女なんかにするんだよ。男のままでよかったのに・・・。」
「ちょっと女の人とやりたくなっちゃって・・・。」
ミルクは苦笑いをしながら言った。
"薬についてもっと追求しておくんだった・・・。"
 博史は心の中で少し後悔した。すると博史の体の中から何かみるみる力が湧いてくるような感覚を覚えた。
"でも何だ、この感覚は・・・?何だか今夜はまだまだ行けそうな気がしてきたぞ。"
「じゃぁ、やるならはやくやりましょうよ。」
女性の声で博史は言った。その言葉にミルクは少し驚いたが、にっこりと笑って首を縦に振った。
「私が下になるわ。」
そう言うと、博史は四つんばえになっているミルクの下に入った。博史はミルクのワギナを、ミルクは博史のワギナをお互いに嘗め合った。
「ん〜、今までで最高の味だわ。ほら、どんどん出てくるわ。」
ミルクは満足げに言った。
「あなたのも最高よ。あぁん、もっと、そこ、そこよ〜。」
 博史はミルクの巧みな舌使いに酔いしれていた。博史はミルクのワギナから吹き出る愛液を自分の顔に掛けたり、ミルクは博史のワギナに舌先を入れたり出したりした。こうして二人は閉店間際まで快感を求め合った。

 二日後、博史は退屈なバイトをさっさと辞め、その日から例の雑居ビルに働きに行った。雑居ビルの別の地下への入り口の扉を開けて入り、少し歩いた所にある別の扉を開けるとそこはロッカールームだった。女性が多かったが、なかには男性もいた。そこにいる人全員がバスローブを羽織って準備しているか、いそいそと衣装をもって変身部屋に入っていったりしていた。
「あなた、新人さん?頑張ってね。」
シャワー室から出てきたバスローブを羽織った女性が応援してくれた。どうやら一仕事終えた後のようだった。博史は着ている物全てを脱ぎ終えると、バスローブを羽織って待機していた。
"立川博史、女性用和服を持ち至急変身部屋に行って下さい。"
 アナウンスが流れた。自分は履歴書を提出する時に何の獣人になりたいかと質問されたので、とりあえずキツネと言っておいたからであろう、どうやら僕はキツネ獣人専門になったようだ。
 博史は隣にある衣装部屋から和服を取り出し、ゆっくり深呼吸して扉の向こうに行った。変身部屋は壁一面が鏡になっていて、左側には大きな機械が設置されていた。どうやらこれが変身薬製造マシーンらしい。機械の薬取り出し口には既に橙色とピンク色の錠剤が一粒ずつ置いてあった。博史は衣装を部屋の隅に置き、薬を飲んだ。
"目を閉じて、体の力を抜く・・・。"
博史は薬を飲んだ後、そう思いながらしばらく立っていた。
"うっ!きた・・・!リラックスだ、リラックス・・・。"
 博史は必死に平静を保とうとした。息が荒くなっていくのを抑えていると、だんだんと何かに吸い込まれるような感覚に襲われた。頭の中がスーッとしてきた。しばらくして、だんだんと吸い込まれていく感覚がなくなっていくのがわかった。
「ふーっ、これで変身完了か。」
 変身はほんの数分で終わった。博史は自分が変身し終わったのを確認すると、急いで隅に置いておいた和服を着た。
"12番の部屋に行ってください。"
 アナウンスが流れると、部屋の向こうにある扉が勝手に開いた。そこは薄暗い廊下になっていて、そこを通って12番の部屋に入っていった。その部屋は純和風の部屋で、座敷の真ん中には和風のベッドが置いてあった。博史はベッドに横たわり、胸元を見せるように肘枕をして客が来るのを待った。
「ようこそ、獣の館へ。私はココっていうの。よろしくね。」
 ココになった博史は入ってきた客に大人っぽい声で言った。


 つづく
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