TSハザート 第五話 新生活へ TSハザートkyouske作

 第五話 新生活へ

   唯の精神状態は男性部分が残っている事が分り性同一障害に近い状態に陥る可能性があり、彼女を収容している市民病院は日本でこの手に強い多摩医療大学病院に協力を要請した。この病院は日本で始めて外科手術で性転換を実施し性同一障害の患者が日本各地から押し寄せている。唯のケースは無論始めてであり何処まで対応できるか分らなかったが厚生労働省からの要請もあってかすんなりと協力をする事になり、数日後カウンセラーが唯の病室に尋ねていた。
「なるほどね……足元がスースーするからあんまりスカートは着てないのね」
 典型的な少女の体に少年の精神があるとケースだ。女性カウンセラーは優しく、丁寧に言う……。
「でも……中学になったらどうしても制服でスカート着ないとだめですよね」
 唯はやや不安がっていた。風呂場で改めて分る少女の体に彼女に残っている少年の精神が過敏に反応する訳だ。
「外科的手術で完全に元に戻せる事は不可能だし、あんまり進められないのよ。私もそんな患者を見て来ているからね………家族との絶縁した人いるし」
「女性にならないといけないんですか?僕は?」
 女性カウンセラーは分かっていた。思春期だと大変デリケートな問題なのだ。

 唯の体は異常無しと言う事で退院も決まった。その日は夏休みも中盤にかかり宿題も殆ど終えていた………唯はあれから考えていた…そして決意した、体が戻れないなら精神を変えるしかない。結論に達したがいざ洋服に着替えるとなると躊躇してしまう。
 ブラジャーは使いやすいようにとフロントホックタイプにしてもらっているがワンピースに着替えるとなると体が止まった……やっぱあキャロットにシャツにしようとしたが前に進めない。意を決し着た……スカートのヒラヒラ感にやけに違和感を感じた。
「いや〜〜ん可愛い〜〜〜」
 母親の可愛らしい声に唯は薄ら笑いする……紺色のスニーカーに若草色のワンピースにノースリーブベストで何処から見ても”夏のお嬢様(死語)”である。長崎さんも綺麗と褒めてくれたがどうも落ち着かない……女装少年ってこんな感じなんだろうなと思っていた……。
「このヘアバンドを付けて頂くと助かりますが」
 自宅に戻り長崎さんは鞄から唯に手渡した…片方にアンテナがある…そして片方にはマッチ箱大の器具があった。
「悪く言うなら洗脳装置です装着者の脳を”女性”と思わせる用にしております。まあアンテナは位置特定の為で警備をサポートするためです」
「こんな物まであるんですか?」
 長崎さんは薄ら笑いする。
「俳諧老人対策を応用したんですが要人警備にも有効なんですよ。ヘアバンドは完全に防水!衝撃にも耐えられるようにしております。あっバッテリーはインパクト(電動ドリル)の充電器を流用してますので家庭用コンセントも可能です」
 技術立国の意地と言う奴である。自分の部屋に戻ればタンスが増えていて通販で買った服や親戚のお姉さんのお下がりがズラリっと並んでいた。一族も今回の件は流石に驚いたが女性が一人増えただけなので受け入れられた。

「唯ちゃん!」
 従姉の茜ちゃんが息を切らして尋ねてきた……隣町に住む伯父さん夫婦の娘さんで来年は大学受験を控えている。どうやら合宿から帰ったらしくスポーツバックを担いだまま来たらしい。
「茜お姉ちゃん……?」
 その瞬間唯は危機を感じた、貞操の危機……何と無く分かる……そして茜は背後から抱きしめてきたのだ。
「カワッイイいいっ!私もこんな妹がよかった〜〜〜〜」
 まるで某女学校で繰り広げられるレズ行為寸前に将一は側にあったタウンペーパーを丸めて茜の頭を叩いた。
「将兄!馬鹿になったらどうするのよ!」
 硬直している唯をしっかりと抱きしめる茜が叫ぶ。
「母さん、やっぱあ女子高だけは避けたほうがいいな」
 父親がボソっと言う。

 翌日、将一は女三人の買い物に付き合う事になる……メインは唯の水着にリボンなど小物関連だ。茜は受験生だがガス抜きと言う事で付き合う事になる。助手席に茜が乗り後部座席に唯と母親が乗る……中心街にあるデパードに入る。何処から見ても家族で買い物って言った感じだが警備する内閣調査室二部の方々は大変である……そのため鶫も変装して唯らを尾行している。
「まさかチャーリーエンゼルスの様な仕事するとは………」
 まあ派遣社員もいいかもしれないがこっちの方が実入りが良いのだ。茜と母親は水着を数点唯に手渡す……何れも競泳タイプとは違いビキニだった……唯は無難にも競泳タイプに近い物を選んでいた。
 数分後……唯は顔を赤らめながら水着を試着して二人に見せる……茜なんてきっと理性を抑えていたのだろうが怪しげな表情をしていた。将一が合流するとげっそりした唯を見て大体の事が分った……多分色々と服着せられたんだろう……。
 唯は体力面で多少落ちているが取り戻せると言う事で家族で通っているスポーツクラブにあるプールに行く事になる……其処には一条 レオナと陸奥 朱実に鶫がいた……三人とも競泳用水着にパレオをつけている……。更衣室に入った途端に裸体を曝すお姉さんに同年代の少女に幼女……唯の現在の精神状態にとっては耐え難い状態だったが慣れないといけないのだ……。
「唯ちゃんって意外と大人しい物選ぶね」
 朱実は言う。唯の目には朱実の発育途上の胸が飛び込んでくる……小高い肌色の山に唾を飲む……。
「そっそう!」
「でも、私の他にも巨乳がいてよかったです」
 レオナの胸を見ると唯と同じ位の大きさだった。
「………お姉さんから聞いてます……できる限り助けますので…」
 唯はレオナとは話した事がない……しかし彼女の姉は兄の将一とは友達であるから面識が無いとはいえなかった。シャワーを浴びてプールサイドに出るとクラスメートの男子が気が付く……唯もしっている男友達だ…。
「レオナに朱実か…あれ?この子は?」
「あっ、二学期からこっちの学校に転入する子……橘君の従妹になるのかな?」
「橘 唯です」
「ア……えっと6−3の遠藤 太一…」
 顔を赤らめる太一、無理も無い……こんな美少女を見た事が無いのだ。唯は彼の事は知っていたが知らぬフリをしていた。

「また、告って撃沈されないでね」
 朱実が言うとレオナはクスっと笑う。彼女も彼から告白されたがあっさりと断っている……その時はまだ少年だった唯が慰めていたのだ。
「俺達のクラスかな?」
 側にいた男友達が言う。
「そうだな……唯があんな形で転校したし……」
 唯にとっては複雑だった。
 TSハザート 第五話 新生活へ 終
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