「あ…あぁ…あぁぁ…」
肌を震わせているうちに良美の肌に少しずつ変化が起きる。
なめらかだった肌が少しずつ何かに覆われてゆく。ごわごわと、それでいてふさふさとしたそれ―獣毛である。薄かった人の産毛に色が宿り、じわじわと伸び上がりながら良美の体を覆ってゆく。
「いあっ!」
再び良美の口から苦痛の混じった嬌声が上がる。
先ほど股間の突起を噛みつかれた時とは違い体の中から走る苦痛。それは全身の骨がきしむ音だった。
全身の関節と言う間接、骨と言う骨がきしみながら萎縮してゆく感覚、そしてそれを包み込むような筋肉の収縮は良美にこれ以上はない苦痛と快感をもたらす。
「いいっ、あいっ、ううっ、ひぃっ、ふぉっ…」
なかば人とも獣ともつかない声を上げながら良美の変化は進む。
すらりとした脚はどんどん委縮して股上やふくらはぎとひざ下や腿の境界があいまいになっていく。
それに対して足は細長くなり、まるで飛び込み台の板のようなしなやかさを持ってゆく。お尻のラインも変化に合わせて足に埋もれてゆき、小さな塊がそれに応じて盛り上がると何かの形を作ってゆく。
今までの行為の要でもあった股間を覆うものも濡れ細っているのはそのままで黒い茂みから白い草原へと入れ替わっている。
そこそこの形だった腰のくびれや胸のふくらみも胴体の中に埋もれ、複数対の小さな突起がそれに代わって腹のあたりに生えてゆく。
壁や金網から離れた手の中では指がどんどん掌の中に埋もれながら足の様に伸びてゆき、両腕もまた肩から肘・肘から掌までのラインをあいまいにしながら縮んでゆき、鎖骨やろっ骨が変化するのに応じて幅を狭めてゆく。
「ううっ、ううっ、うぶっ、ぶっ…」
もちろん顔もまた人のものから変化してゆく。顔中を獣毛が覆うのと入れ替わりに髪と人毛が消え落ち、耳が震えながら後頭部に細長く伸びてゆく。
首は既に胴体と一つになり、鼻も縮みながら伸びてゆく口元と一つになる。
「ぶ、ぶっ、ぶぅ、ぶうっ…」
前歯が伸びてゆき、口が変わり人の声が出なくなっても良美の口からは嬌声が漏れる。
全身を獣毛が覆い、手足は小さく駆けまわる様な形に変化し、胴体も四足動物のそれに代わった。お尻にはボンボンの様なかわいらしい尻尾が震え、人の目には無表情に見える顔も目は潤み、ピンと伸びた耳も震える。そして、良美は前後の足を地に着き、おのれの肉体の変化の完了を告げる鳴き声を挙げる。
「ぶう〜っ!」
絶頂と変化の完了の余韻の中で良美は自分が本当にウサギに変化した事を改めて感じる。理由はわからない。まさかさっきウサギに突起を噛まれたからか。それとも何か別の意志が自分の願いをかなえてくれたのか。
そんな事はわからないし、このまま自分がウサギになったら仕事はどうなるのか、その他色々…。そう考えていた良美の体に先ほどのウサギが身をすりつける。そう、彼女を今の姿に導いたウサギが。
「ぶぅ〜」
「ようこそ」とウサギは声を上げ、再度良美に身をすりつける。
その瞬間、良美の後ろ足の間から何かが漏れる。それと同時に頭の中で何かがとろけ出し、良美はそのままウサギに身をすりつけ返す。いや、既に良美と言う存在はいない。人間としての良美は既に彼女の中からとろけ落ちていったのだから。
しばし身を寄せ合っていた白ウサギとクロウサギはそのまま他のウサギ達の中に混じり、身をすりつけ合う。夜の帳に包まれた飼育小屋の中でウサギ達は夜行性の本能のまま狭い小屋の中を駆け回ったり、寝そべったり。人間の都合でそこにコンクリートが敷かれているとは言えそこまで地面を掘ってみたり、それ用に作られた噛み場に噛み付いて気持ちを発散させたり。
まさにウサギ達の社交場がそこにあり、今夜入ったばかりの白ウサギもまたまるで昔からそうだったように他のウサギ達と戯れている。そして、ウサギ達の戯れはいつの間にかマウンティング―と言うより疑似的な交尾へと動いている。どちらが上とか下とかではなく、皆それぞれに上になり下になっているように見える。まさに獣の流れに従った上での発情と交尾がそこにあった。
そんな中、白ウサギは黒ウサギの体重を全身に預けて声を上げている。互いを貫くものこそないものの二匹はまさに「愛し合う」様に体を預けている。
「ぶっ、ぶうっ、ぶぅ、ぶぶっ…」
「ぶぅ、ぶうっ、ぶぶう…」
まるで本当の雌雄の様に交尾し合う二匹の姿に当てられるように他のウサギ達も交わり合う。
「ぶぅ〜っ!」
絶頂に達した時、二匹は声をそろえて鳴いた。そして、ともにしばしのまどろみの中に揺らいでいた。ふと白ウサギが顔を上げた時、黒ウサギは白ウサギに尻を向けていた。
その奥からは白ウサギをひきつける香りを放つ蜜壺が潤いを湛えている。その匂いに引きつけられるように白ウサギはクンクンと黒ウサギの尻、その先にある蜜壺に口を添え、蜜を吸い始める。まるで今まで水を取っていないかのように白ウサギは蜜を吸う。そして蜜が尽きてもさら蜜壺をむさぼる。
それに対し黒ウサギは身をよじらせながらも白ウサギが蜜を吸いやすいように姿勢を保ち、その対価としての快感に酔う。
「ぶうぅ…ぶぅぅ…ぶぅ〜!」
勢い余って白ウサギが黒ウサギの蜜壺の上にある突起を噛んだ時、黒ウサギは激しい衝撃とともにのけぞった。その勢いに弾き飛ばされた白ウサギが目にしたもの、それはまるで山の様に大きくなってゆく黒ウサギの姿だった。
「きゅ、きゅ…」
その姿に恐れの声を上げる白ウサギだが、逃げる間もなく黒ウサギだったものが伸ばした前足に体をつかまれ、優しく抱きしめられる。
そのぬくもりと匂いに思わず安らぎを覚える白ウサギだが、不意にその体から引き離されると後ろ足の間―白ウサギ自身の蜜壺のあたりに何かをねじ込まれる。抵抗する間もなく黒ウサギは白ウサギの足の間にねじ込んだそれを優しく食み続け、そしてその根元も優しく口付けしそっと吸う。
その行為に一瞬酔う白ウサギだったが…
「ぶっ!」
黒ウサギの歯が白ウサギの突起に触れた瞬間、白ウサギの全身を激しい衝撃が貫いた。
「ぶっ、ぶぶっ、ぶぶぶぶぶ…」
一瞬の痛みと衝撃、そしてとろける快感の中で白ウサギの全身が震え、きしみだす。宙に浮いていた足が揺れながらどんどん長くなり、太ももとふくらはぎを形成する。その根元では尻尾が獣毛を失いながら体内に飲み込まれてゆき、形のいい尻が生まれる。
複数対あった乳首が腹の中に埋もれてゆくのと入れ替わりに形のいい腰のくびれと柔らかく大きな一対の胸のふくらみと乳首が盛り上がってゆく。鎖骨が再生し、両腕の幅が広がる中で前足も長くなり、肘上と肘下がしなやかに伸び、広げた掌からは細長い指が伸びてゆく。
どんどん大きく、重くなってゆく白ウサギの変化を黒ウサギは動じる事なく見つめ、その体を静かに支えている。そんな中首の根元が細長く伸びる一方で、耳は頭頂部から顔の両端に縮んでゆき、突き出ていた口元が形のいい鼻を残して顔の奥に縮んでゆく。
「ぶぅっ、ううっ、うっ、うあっ、あっ、あっ…」
前歯も小さくなり、大きく開く様になった口元から息と声をもらしながら白ウサギは身を震えさせる。
そして、全身を覆っていた白い獣毛が頭部と足の間の一部を残して消え、瞳の形がウサギから別の生き物の形に変わる。
黒ウサギが静かにその膝を地面につけてあげた時、白ウサギの姿は白い肌をさらした人間の女性の姿へと変貌していた。
「あぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
黒ウサギが手を放し、改めて体を地面にへたり込ませる白ウサギ。
ようやく意識が戻ったのかゆっくりを体を見回し、手を見つめてその手で顔をなでる。
「え…わたし…人間…どうなっているの…?」
その姿が人間のメスになっている事に戸惑う白ウサギ。そこに、
「おかえり、宇崎先生。それとも今は「良美」と言うべきかしら?」
と黒ウサギが声をかける。
その声の先に目を向けた白ウサギ―良美の眼が見開く。
「え…?野崎先生?野崎先生がどうして?」
目の前で黒ウサギがいた場所、そこには自分よりも先に帰宅したはずの玲亜が裸身をさらしてほほ笑んでいる。
「うふふ…まさか良美も同類だったとはね。お互い素っ裸でウサギ小屋に入ってアンアン言っちゃうなんて冷静に見ればヘンな趣味だとは思ってたけど、やっぱりいいものよね。」
少し恍惚とした顔で語る玲亜に良美は驚きを隠せず、
「で、でもどうして野崎先生やわたしが本当にウサギになるの?もしかして何かの呪い?野崎先生って実はウサギ女とか?」
と少し慌てた口調でまくし立てる。
「まあまあ、細かい事は気にしない。わたし達は本当にウサギの化身かもしれないし、何かの作用かもしれない。案外実はただアソコを噛まれたショックで夢を見てたかもしれないんだから。」
それに対して玲亜は落ち着いた口調で語る。
「それに…結構すっきりしてるでしょ?体も、心の中も。普段の色々が吹っ切れてすっきりした、って感じで。」
そう言われて良美はそっと胸に手を当てる。獣毛どころか産毛もほとんどない裸のふくらみ。
そこに手を当てると何か体中、そして頭の中にあったもやもやが全て吹っ切れ、そして何か活力が満ちている様な感覚が伝わってくる。ふと周りを見回すとウサギ達が二人に身を擦り寄らせてくる。その光景に良美は不思議な安ど感を覚える。
「はははっ、この子達すっかりわたし達を仲間と認めてるわ。今のわたし達は姿はこうして人間だけど、匂いや思いはあの子達に近いって事。」
「そう…ですね…。」
玲亜の言葉にそっとうなずく良美。その体は静かに玲亜に寄ってゆく。
「夜もだいぶ更けたみたいだけど明日は休みだし、もう少しこのままウサギのままで…」
そう言って長い前足と後ろ足を良美に絡ませる玲亜に対して、
「ええ、もういっそこのまま…」
と自分も体を合わせようとし、藁に倒れこむ二人。
二匹の「ウサギ」達の夜はまだこれからのようだ。
その夜からしばしの時間がたち、二人は共同で部屋を借りる事となった。
「ごめんごめん、仕事が遅くなって…」
慌てながら玄関をくぐり靴を脱いだ玲亜を良美は優しく出迎える。
「いいのよ玲亜、明日は休みだし、ゆっくりできるわよ。」
そう言いながらキッチンを経て部屋の奥に進む。
「そう言えば良美、また子供が生まれたみたいよ?」
そう言いながら玲亜はカバンや上着を脱いでキッチンのテーブルにかける。
「あの人達もともと子だくさんと言うし、しかもいつでもその気があるって言うし。それでなくとも毎日世話をするのってホントに大変だもの。」
良美もそう言いながら上着を脱いでキッチンの椅子にかける。
「でも、家の中はもちろん外で駆けまわっている姿って言うのもなかなか悪くないわね。どう?そろそろわたし達もあの中の誰かと…」
おどけた口調で言いながら玲亜はスカートをはずし、そのまま床に放り投げる。
「そうね…でも、やっぱり抵抗があるわ。一応「できちゃった時」の対応もあるにはあるけど、やっぱりそう簡単には…」
少しまじめな口調で良美はスカートを居間のソファーにかける。
「まあ、あちらは実際にしなくても「できちゃった」事にしちゃえるって言うし、わたし達だけでも気分だけは味わえるからね。おかげで時々すっぱいものを食べたい時があるんだもの」
そう言いながら玲亜はブラジャーをはずし、居間のテーブルに置く
「そう言えば特製のレモン漬けがあるわよ?それに…玲亜の言うとおりそろそろ「女の子の部屋」や運動場だけじゃなくてそろそろ…」
少し顔を赤くしながら良美はブラジャーをテーブルにたたむ。
「まあ、あせらなくてもいいし、今はゆっくり楽しみましょう?」
「…そうね?今夜も長いんだし。」
「どうせご飯もお風呂も準備してないで待ってたんでしょ?清潔と食事は生活の基本よ?」
「はは…ごめん」
そう言いながら二人は共通の寝室の扉をくぐる。お互いの最後の一枚を残して…。金網模様の薄いカーテンから洩れる月明かりの中で二人は生まれたままの姿で向き合い、そっと互いの股間にカット野菜を差し込む。
「良美、またニンジン?もっとほかの野菜にしなさいよ…。」
「玲亜だってハーブとかそんなのばっかり…もっと食べやすい野菜にしてよ」
「いいじゃない、いい匂いなんだから」
「もう…意地悪」
そう言い合いながら二人はそのまま普段のベッドとは違う自作の「寝床」に倒れ込み、互いの股間に生えた野菜をかじり合う。
「ねえ…今度の休みは久しぶりに「家」にいかない?あの子達と一緒の方が萌えちゃうし」
「うん…でもこうして二人きりでするのも好き、かな…?」
そう言い合いながら二人は互いを食み合う。
そして…。
「いっ!」
「あっ!」
互いの突起を優しく噛んだ時、二人の全身を衝撃と電流が走った…。
終わり
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