「はぁっ、はぁっ……」
男は地面にはいつくばったまま悶えていた。狼の面の口から漏れる息も荒い。
幾度となくぶつかり合った激闘の余韻、そして幾度となく息吹を噴出し、それでもなお萎える事のないモノの感触に酔いながら。あれから男は幾度となく獣神とぶつかり合い、組み合い、投げあい、そして扱き合った。男も健闘はしたものの、文字通り先に精尽き果ててしまい遂にダウンしてしまったのだ。
「……」
しかし、男の顔―マスクの中の顔に不思議と負けた事以外の悔しさはない。
人の身でありながら獣神とまさに精の全てをぶつけ合ったのだ。敗北の悔しさ以上に全てを出し切った開放感と達成感が全身に満ちていた。
ビンッ!
「う!」
その時、再び彼のモノが響いた。
ビンッ、ビンッ、ビンッ!
「うっ、うっ、うっ!」
刺激と快感に男の顔がゆがむ。
ムキッ、ムキッ!
「くっ!」
全身の筋肉が突然膨張を始める。それはモノを中心に腰を、足を、腹を、腕を覆い始める。
「ううっ、うううっ……」
ミシッ、メシッ
筋肉が膨張しながら伸縮し、その貧相な体を逞しく覆ってゆく。
メリムリッ!
「ぐっ!」
男は目を見開く。それは尻から盛り上がった肉の塊からであった。塊はゆらゆらとゆれながらその身を剛毛で覆ってゆく。
その剛毛は男の背中と足、腕を覆い隠す。
その姿はまさに狼、いやかの獣神のそれに近かった。
グッ
「うっ?」
ふと口元に違和感を感じる。何かつっかえるような感覚。口だけではない。耳が、それか頭全体がマスクの中で膨らんでいる。
「むぐっ、うぐっ、うううう……」
口をふさがれ声が出なくなる。それにも構わずマスクの中で何かがうごめく。モノから、そして体中から湧き上がるものがマスクの中いっぱいになり……。
ベキッ!バリバリッ!
「ウォォォーン!」
作り物の狼の顔が砕け、中から本物の狼の咆哮が響く。
「ウウ……フゥ……」
獣神同様人狼の姿となった男はそれに気づいているのかいないのか、只興奮によっている。それを示すようにそのモノもまた激しく獣の高ぶりを見せている。
グルル……。
そこに獣神が近づく。
「ウウッ!?」
男は目を見開く。なぜなら獣神は突然その身をかがめ、尻を突き出したのだ。獰猛かつ高貴な獣神ににつかわしくないその行為。しかし、男は導かれる様に立ち上がると、その尻の前に立つ。
グズブッ!
メリメリッ!
ウオッ!
「ウッ!」
そして、その猛々しい獣のモノを獣神に突き刺した。
ズッ、ズッ、ズッ!
グウッ、グオッ、ウォッ!
獣神はまるで行為に浸る雌の様に吼える。その姿は神と言うよりまさに発情する獣の姿であった。男もそれに応える様に腰を、そしてモノを打ち付ける。
ミシッ、ミシミシッ!
ウウッ……ウオッ……。
それに合わせる様に獣神の姿が変わって行く。
裸の胸板から腹にかけて再び獣毛に覆われ、その四肢も狼―獣のものになってゆく。
一方、男の両腕と両脚はさらに逞しい豪腕と脚へと変貌し、その表面も獣毛に覆われる。
何より獣神を犯し続けるうちに男の中でより激しく、荒々しいくらいに熱い高ぶりが湧き上がり、男をさらに獣に変えてゆく。その姿はまさに雄の狼を犯す雄の人狼の姿だった。
ズチュッ、ブチュッ、ビチュッ!
男はさらに荒々しくモノを突きたて、獣神は更に悶える。
そして、男のモノは最大級の放出大勢の臨界を迎えた。
「ウッ、ウオッ、ウオーッ!」
ブシュシューッ!
男のモノから盛大に精が噴出し、獣神の中に注ぎ込まれる。
まさに選ばれた戦士の精が獣神の中に注ぎ込まれた瞬間であった。
アオーンッ!
ウォーンッ!
二匹の獣の咆哮が神殿いっぱいに響く。
ズルリッ
ふと、獣神の体が男から抜け落ちる。
ドスンッ
そのまま力なく倒れたかに見えた獣神だったが、不意に立ち上がると男の精を受けより逞しくなった人狼の姿、そしてよりそそり立つモノを見せる。それを見た男もまたモノを高ぶらせ、再度獣神と激しいぶつかり合いをはじめる。
それはまさに神話の時代をほうふつとさせる激しく、荒々しくも美しい光景であった……。
「……」
夜明けの日差しに目を差され、男は目を覚ました。
「ここは……?」
けだるい体を静かに起こし、辺りを見る。
あの神殿と比べるとはるかに狭い石壁と柱に囲まれた場所。
比較的まともな裸身でぶつかり合う男達の壁画。その奥、狼の面を被ってぶつかり合う男達の絵に囲まれるように立つ狼の像。
足元の感触は固められた地面ではなく石畳が敷かれている。そこは男が最初に立っていた遺跡の中だった。
「こ、これは……」
ふと顔に違和感を感じて触ってみる。紛れもない人間の男の顔。狼どころかマスクすら被っていない。
朝の日差しと少し涼し目の空気の中、男はあの出来事―そう、狼に導かれた先の神殿で狼が転じた獣神とぶつかり合い、さらには自らも獣となって獣神と睦み合った出来事が夢ではないかと感じた。実際、その奥の扉のあるはずの場所は只の石壁だったのだから。
そう思いかけた時、体にふと熱いものを感じた。その肌を振るわせる熱い高ぶりの名残、そして何よりサイズこそ元に戻っていたがそれでも負けじと股間で自らを主張している自分のモノ。
「そうか……そうだな……」
男はそううなずくと、そっと自分のモノをなで、一瞬ぎゅっとつかむ。そして、そのまま両手を広げると、
「うおーっ!」
と狼のように力強い咆哮をあげた。
しばしの後、すっかり身支度を整えた男は朝焼けに見送られながら遺跡を後にし、自身の日常に戻っていった。
しかし、彼の中にはあの獣神と交し合った熱い獣の魂が今も息づいている。それはこれから彼が生尽きるまでその人生を支えていくであろう。人と神が交わりし時代から繰り返されてきた悠久の歴史と儀式。それは人と神が別れて生きる時代になっても途切れる事無く続き、受け継がれてゆくのであった……。