兄妹 3話 不安と集団脱出 ドラゴンソウル作
 巨大企業「大天下」の本社ビルは地上80階、地下15階で構成された超巨大ビルで、本社ビルのあるレンディメイタルから遠く離れても良く見える。
 更に夜になると東西南北のスポットライトが本社ビル付近を照らすため、夜でも良く見えるのである。

「・・・。」
 そんな建物の地下5階に「生物保管室」と言うフロアが存在する。
 それはこの会社の手で実験体となった者達を保管(監禁と言った方が早い)しておく場所である。

「今日も脱出するチャンスは無し・・・か。」
 フゥ、と溜め息をつく元人間の竜人、アキラはそう言った。
 この牢獄とも言える鉄格子付きの部屋に入れられてから4日が経っていた。

「外からの明りも差さないし、隣や手前や奥の牢獄からは喘ぎ声を嫌と言うほど聞くし・・・ハァ。」
 再び溜め息をついたアキラは後ろにいる妹のユリを見た。
 さっきから牢獄の中央に座り込み、自分の陰部を両手で隠すように当てて、アキラをたまに見てモジモジしている。

 アキラとユリの兄妹が閉じ込められているこの部屋からは、
恐らく彼等よりも先に同じような実験を受けて、性欲に溺れ異性や同性同士で抜き合ってる者が大勢いる。
 そのためここは妙に甘い匂いが充満しているのである
ここに捕らわれた者達の共通点はこの企業の実験によって人ならざる者、
すなわち獣人や鳥人といった亜人種にその身を変えられた者達である。
 更に四六時中、喘ぎ声や絶頂に達した叫び声が響く。

「ユリ・・・。」
 アキラは心配そうな顔をしてユリの近くに歩み寄る。
「ユリ、どうしたんだ?」
「なんでもないよ。うん・・・なんでもない・・・。」
「・・・・・・ごめんな。」
「えっ!?」
 突然アキラが謝るのでユリは驚いた。
「あの時だよ。お互いに精液を互いの体に噴射した時。本当にゴメンよ。あの時興奮していたとは言え、お前には嫌な事をさせちまったなって・・・。」
「そんな事無いよ!だって・・・。」
「だって?」
「私・・・、1度でも良いからやってみたかったの!どんな気分なのかな・・・って。」
「そっか・・・。・・・・・・ん?ちょっと待て。何でお前は「イっちゃう」とか「抜く」とか知ってるんだ?それに何で俺の・・・ペニスを見て動揺したりしなかったんだ?」
「えっとね・・・。」
 ユリは一瞬戸惑ったが、やがて話し出した。
「私ね・・・そう言うテのweb小説とイラストを見たことがあってさ・・・。私自身も何見てんだろって思いながら、その小説とイラストを見てたんだ・・・。」
「へぇ。」
「それでね、今回の任務前にお兄ちゃんが寝ている所を見計らって、その小説とイラストを見たんだ。」
「うんうん。」
「その中で1番刺激の強いのを見て、私の中にあったモヤモヤしたものが一気に弾け飛んで・・・。」
「自分もやりたくなったと。」
「うん・・・。」
「成る程な。・・・んで、さっきからモジモジしている理由は・・・。」
「・・・お兄ちゃん、もう一回やってくれる?」
「・・・・・・ははは、やっぱりか。お前がそう言うならば、もう一回やって、・・・・・・?」

 苦笑しながらアキラが言いかけた時、扉を開く音が部屋中に響いた。
その音に全員が振り向く。
どうやら誰かがやってきたようだ。
その誰かはやはりあの性欲実験で気絶しているのだろうか、声が聞こえない。
牢獄に誰かが放り込まれるような音が響いて、牢獄の鍵を閉める音が響き、それから運んできた者が部屋から出る音が響いた。
「誰だろう?」
「さぁ・・・?」
 誰が入れられたのかが気になる2人。
その牢獄の周りにいる獣人や鳥人達のざわめき具合は只事ではない事を示す。
「おーい、誰が入れられたんだ!?」
 鉄格子越しからアキラはその付近にいる者に聞いた。
「ドラゴンだ!」
「へっ?」
「おーい!聞こえるかー!?君達と同じドラゴンに改造された人だよ!3人いる!」
「えぇっ!?」
 やや遠く離れているが、眼鏡をかけた馬獣人にされた男性が2人にそう答えた。
何と先程牢獄に放り込まれた人は、ドラゴンに改造された人なのだ。しかも3人。
「お兄ちゃん・・・。」
「ドラゴン・・・。おーい!性別は!?」
「メス2人とオス1人よ!年齢は3人とも多分20代くらい!」
 長い髪をはらりとなびかせる鳥人の女性が答えた。 「オス1人にメス2人・・・。」
 何か卑猥な事を一瞬考えたような顔をしたアキラだが、今度は別の獣人がこう言った。
「この3人、今日中に起きそうに無いぞ!相当精液ぶちかましてやがる!」
「という事は、その3人は俺達と同じような事をされたのか。」
「なぁんだ。じゃあその3人が起きたら色々聞こうかな。牢獄越しからね。」
 それから暫くざわめきが続いたが、やがて喘ぎ声が聞こえてきた。
アキラとユリはこの出来事で一度興奮しかけていた気分が冷めてしまっていた。
他にしたい事はなかったので、2人は寝ることにした。
ちなみにその時の時刻は午後11時57分である。



 アキラはどこかを走っていた。
ミニチュア並みの街が広がっていたり、空から森が生えていたりと実に変な世界だが、アキラは回りに目もくれずただ真っ直ぐ走っていた。
やがてアキラはユリが湖の近くで彼に背を向けて座り込んでいるのを見つけた。
アキラはユリに近づいて声をかけた。
「どうしたんだ?」
「あっ!お兄ちゃん・・・!」
「顔色悪いな。どうし・・・!」
 アキラは驚いた。
ユリの腹はやや大きく膨らんでいたのだ。
「どうしたんだ!?」
「えっとね・・・。私ね・・・、・・・・・・妊娠しちゃったんだ。このお腹の中に卵があるみたい・・・。」
 アキラは更に驚いてユリに駆け寄った。
確かにユリの腹は卵が丸々1つ入ってそうに膨らんでいた。
「まさか・・・!」
「嘘じゃないよ!私も少し信じられないけど・・・。」
 と言いつつ、自分の腹をさするユリに、アキラは少し考えてこう言った。
「ユリ、仰向けになってくれ!その卵・・・今産ませる!」
「えぇっ!?」
 ユリに考えさせる暇を与えず、アキラはユリを仰向けにさせて、彼女の肛門に右腕を突っ込ませた!
「きゃん!やめて!やめてよ!い、痛いよ・・・・・・!」
「・・・・・・あった!」
 アキラは右手に何かが触れた。
わずかにざらざらしており少し硬い。
「よーし・・・。」
 更に左腕を肛門に突っ込ませる。
そしてアキラの両腕はユリの肛門に更に入り込む。
「痛い痛い!ホントにやめてよ!」
 しかしユリの声が聞こえてないのか、アキラは自分の両腕をユリの肛門に体をどんどん押し込んでいく。
やがて卵を引き抜こうと、アキラはそれまで押し込んでいた両腕と卵を肛門から引き抜くため、体を後ろに動かした・・・。







 何処からか爆発音が響き、生物保管室に動揺が走った。
「!?」
 夢の世界から現実に引きずり戻されたアキラは、何事かと辺りを見回した。
爆発が起こったのはこの部屋ではないようだ。
他の獣人や鳥人達も爆発音に目を覚ましたようである。
「何だ!?一体何が・・・。」
 アキラが目を覚ましてから少し間を置いて、ユリが目を覚ました。
「な、何々!?何があったの!?」
 彼女も爆発の音で夢の世界から現実に戻されたようだ。
気が動転してる中、扉が開く音が響く・・・。
「!!」
 扉を開いた音がした瞬間、銃声が響く。
これには全員が驚く。
「ここだな!?」
「ええ!この部屋に改造された人達がいるわ!」
「ってー割にはこの部屋甘ったるくねーか?」
「・・・言われてみれば。」
 アキラとユリはこの声に聞き覚えがあった。
もしかして・・・。
「この声・・・おい!そこにいるのは青狼と黄熊か!?」
「!」
 相手側がにわかに驚く。
コードネームを知っているのか・・・?
「忘れちまったのか!?俺だよ!黒竜のアキラだ!」
「私もいるよ!」
 その声に相手側は再び驚く。
「まさか・・・本当に黒竜と白竜なのか!?」
「そうだよ!」
「生きてたのか!」
「ああ!姿は変えられちまったけどな!それよりも早く此処から出してくれ!」
「分かった!」
「他の人達もね!」
 「ジャッジメント」の「狼」と「熊」が、どうやらこの生物保管室に来ていたようだった。
そして「熊」達が牢獄を開けながら姿を変えられた人達に指示をだす。
「狼」達は急いでアキラとユリの元に駆けつけた。
「!その姿は・・・!」
「あいつらドラゴンじゃなくて「ドラゴンの遺伝子」を手に入れてたんだ!」
「何!?ドラゴンじゃないのか!?」
「それは嘘の情報なの!どこで手に入れたかは知らないけど・・・。」
「おーい、白狼!準備出来たぞ!」
「おーし、一発やってくれ!」
「あいよ!」
 やや大柄な男性が爆弾を設置した壁から離れて起爆スイッチを押した。
爆発音が響き、煙が消えた後の壁にはどこかへ通じる穴が開いていた。
「おお、すげぇ。」
「お前等が気絶した後・・・だったな。ここまで掘り進んだんだ。」
「特別保管室にないならこの普通の保管室にあると思ってな。」
「灯台下暗しって奴かな?」
「そっか。」
「さっ!早いとこ、ここから出るぞ!警備の奴等が来る前にここを離れて穴を塞ぐからな!」
「おお!いくぞユリ!」
「うん!」
 そして穴の中に入って行く。
どうやらこの兄弟が最後だったようだ。
彼等が穴から充分離れると、再び爆弾を起動させ、穴を塞ぐ。
「勿論本部にまで繋がってるよな!」
「ああ、繋がってるぜ!」
 アキラは男と話しつつ穴の奥へ進んでいく。


「博士!」
「ん?どうした?」
 机に置かれた報告書をまとめているあの博士は、慌てて入ってきた部下に顔を向けた。
「保管庫の実験体達が・・・!」
「先程の騒ぎからして・・・逃げ出したか。」
「はっ、はい!」
「そうか。・・・実験体には食事を与える時に、食物に忍ばせておいた発信機は実験体全員に体内に入っているな?」
「そ、それが・・・!」
「・・・まさか、・・・入っていないと?」
「はっ、はい!実験体が排便する際に体から出てしまいました!それも全員!」
「何だと!?それは本当なのか!?」
「そうです!だから自分は慌ててるんですよ!」
「何と言うことだ・・・開発部門め・・・なぜ失敗作をそのまま送ってくる・・・!このままでは社長から大目玉をくらってしまう・・・。」
「どういたしましょう!?」
「探し出せ!一刻も早く全て見つけ出すのだ!」
「はっ、はい!」
 博士の部下が慌てて部屋から出て行った。
博士は親指の爪を軽く噛みつつ呟いた。
「このままでは竜の力を奴等に奪われてしまう。竜の力が無ければあの遺跡の謎が・・・。」
 頭をかきむしり慌てふためく博士は、机に置いてあった遺跡の内部や壁画などの写真とレポートを見ながら呟いた。

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