良薬はほろ甘く・第三章冬風 狐作 挿絵・協力でぃあす作
 余韻に一頻り浸っている瑞穂・・・そろそろそれからも醒めようかと言う時に、彼女はふとした違和感を感じ下腹部の今尚硬い辺りへと手を回した。回した手にて瑞穂はスウツ越しに違和感を確かめる前に膨らみの感触を味わおうとする。
 もう先程の達した瞬間に、先程香織の言っていた事に加えて、今の今まで咥えていたペニスについてすっかり悟っていた瑞穂は、承知していながらも、どうしても意識的な感覚ではなく物理的な感覚を伴って、それが確たる事実である事を改めて確かめなくては気がすまない心境なのだ。そして、それを難無く叶えて幾度かの小波を自らに味合わせた後、そのままの軽い気持ちでその周辺の硬い感覚へと手を動かす。
 それはただ上から撫で回しただけでは何とも言えなかった、スウツは体に密着し、その輪郭を可能な限り再現してしまうが故に、ただ撫でただけでは仮に異変が生じていても、スウツ自体の表面に異常が起きていなければ何とも言えないからだ。だから次いで瑞穂はそっと軽く摘みあげ動かすと共に、ラバーの薄い皮膜だけが付いて来て、感じられるその違和感の原因は放たれた精液が狭い隙間の中に無数に拡散し固まりつつあるからと説明出来よう。しかし現実はそうはいかなかった、そうなって然るべき結果に動きはしなかったのである。
 そう、何とラバーと皮膚が共に抓まれてしまう、だからその軽い痛みは神経を通じて脳へと伝わってしまうと言う事が起きてしまっていたのだ。だからそれが指し示す事実は唯一・・・ラバーと皮膚の融合、それもラバーはラバーとして皮膚は皮膚として独立したまま接着したのではなく、ラバーと皮膚が融合して皮膚の持ち合わせる全ての機能が表面へと現れてしまた上に神経とも接続してしまっているのが最大の特徴だった。だからその場所からはそっと冷や汗が滲み出ており、初めての興奮の余韻が醒め過ぎた後の冷静さの象徴と見えた。
「もう、可愛いわよ、瑞穂・・・こんなに夢中になってくれて嬉しいなぁ。」
 冷静さの中の混乱と記憶の狭間にいながら目の前にて勃起しているペニスを見つめ、濃い黄色の嘴に幾筋かの白く、そして透明な筋を引かせている瑞穂に、香織はうっとりとした声をかけた。そして、その頭の上に置いた手を離し際にまるで子供の頭を撫でるかのようにしてから、そっと手放した。
「そっ、それは・・・それよりもあのここが・・・。」
 言葉を口にするが上手く言葉として紡がれない、瑞穂は自らが進んで友人である香織に現れたペニスを己が口にした事よりも現在進行形で強まっている下腹部の違和感に衝撃を感じていた。だからそれを伝えようとするのだが言葉にならない事に苛立って咄嗟に自らの指でそこを指し示した。
「あらあら、もう反応が始まってるわ。気にしなくていいよ瑞穂・・・もっと気持ち良くなる為に不可欠な事なんだから、むしろ喜びなさいよ、あなたも私みたいに変化するんだから。」
「変化って・・・何言ってるの? ただスウツを着ているだけ・・・じゃないの?」
「当然よ、と言う前に、あなただって身を以ってそれを味わっているじゃない、私のペニスを口に含んでいたじゃないの・・・ましてそれを全部飲み込むなんてかなりいける口なのね、瑞穂は。」
 矢張りこれは夢ではない・・・分かっていた事だが、改めて思い知らされると共に愕然とせずにはいられない、豊富な想像が頭の中を駆け巡り溢れかえる。
 そう書くと混乱しているとも取れそうだが、実のところは整然とした形で展開されているのであり、混乱と言う混乱は全く見られなかった。だからこれまでとは違ってむしろ瑞穂はすっきりと憑き物が落ちた心地だった、そしてこれからどうなるのかと言う事も、つい今しがたの経験から大体は理解していた。
「じゃあ私も香織みたいに・・・。」
「なるのよ、なるんだから。最後にはこうね。」
 香織はそう言って己のペニスを指したその指で自らを指差したが、そこにはスウツがあるだけ。だから瑞穂には一体何が示されているのか瞬間的に分からなかった。

 それはまさかスウツを改めて指差しているとは思わなかったからなのだが、気付いた香織にもう一度良く見てみるようにと言われて目を凝らし、そして言われるに従って片手をそのスウツへと触れる。すると自らの纏っているスウツ越しの感触とは言え、何やら柔らかい感触が感じられた、それはスウツの中にある体の肉の柔らかさとも相通じる所が多少に見られたが、その多くはやや違う印象であった。
 何と言うかこう柔らかい・・・猫を撫でた時の様な感触がした、猫の毛のふんわりとして大変柔らかいと言う性質に酷似していたのだ。明らかに肉とは違う感触、それから言えるのは唯1つ指の先にあるのは毛なのではないかと言う事だ。そしてそれはもう一度触れる際に平滑なスウツである筈の表面に、明らかで柔らかい影が浮かび上がったからだった、それは白毛・・・狐スウツを身に纏っていたのだから、獣毛とでも言うべきなのだろう。
 だが、俄かにはとても信じるのは難しかった、どうしてスウツが何時の間にやら・・・薄々ペニスが現れたあの時であろうと見当はついていたにしても、ある意味ではペニス以上に信じ難くも感じられた。むしろペニスの時の方が信じ難いだろうとふと見ただけでは思えるかもしれないが、あれほどまでにはっきりと、そして身を以って実感している以上は知らぬ間に気が付かぬ間に現れると言う静かな登場を果たした獣毛こそ信じられなかったのだ。そして或る事と自分の中で結び付けるとそれを言葉として彼女は紡ぐ。
「と言う事は、私のお腹のこれと同じなのね。」
「そうそう、飲み込みが良くなってきたわね・・・その通りよ、今から瑞穂も私と同じになるんだから。人間でなくなれる体を手に入れるの。本当いいわよ、この体は、たまらない位にね、一度味わうと、人間の体で居る時が馬鹿馬鹿しく思える位に素晴らしいのよ・・・うふふ。」
「人間でない体・・・ね、嘘みたいだけど本当の話か・・・。」
「あっ・・・てっもう、つねらないでよっ、痛いじゃない。」
 そう聞いて瑞穂は、再び瑞穂の腹に触れて軽く抓み、己の違和感を生じさせている部位を眺め見て撫でた。そこの違和感は、かつて程の物ではなくなっており、むしろスウツにはない安定感が生じていた。そして拡大しており、その外縁部に引き攣る様な鈍い感覚が相変わらず居座っている。

 但し、それは外縁部の内側の縁のみで、外側にはわずかだがスウツと肌が離れて浮き上がっている感触が感じられつつ、一定のペースで再び密着し、引き攣ると間も無く一体の安定感へと変質していた。そしてやはりそこには同じ色に染まった獣毛がそれをはっきりと証明していた、今変化した下腹部にはやや濃い目の黄の獣毛が輪郭にへばりつくようにわずかの余裕もなしに生えており、主に下半身へ向けて拡大を続けていた。
 一方、胸のやや下の辺りからは全く性質を異とした獣毛、いや、鳥毛がこちらは分厚く濃厚に生えており、その色はこげ茶色をして同じく拡大中であった。下腹部からの黄の獣毛はその下に潜り込む様にして潰えており、明らかに異質の鳥獣の結合した体である事が明白だった。
 そして脚の付け根に至るまで覆われた時、その尻尾に力がこもりピンと張り、肩甲骨の辺りから上手く生えていた大仰で、精巧にラバーであるとは言え羽の並びの構造が再現されていた羽が大きく1つ羽ばたかれる。
 それが全ての合図であったかのように急激に変化が加速した、生易しい引き攣られたとか浮き上がりとして形容出来る様な生易しい感覚ではないほどに激しく・・・猛烈な締め付けの感触が今だ変化のおきていない肩や腕、そして首顔脚を次から次へと弄んで行く。スウツの中で顔を辛さに歪ませるのも、次第に不自然なラバーと接する際の感触がなくなり、気が付いた時にはまるでスウツを纏っていない自然な感触と共に、外の空気の気配をはっきりとそれも羽毛越しにである事を感覚的に承知していたのだから。
 そして腕を握り締める、硬い特有の鱗の様な物で包まれた鳥脚と化した腕と手がそこには存在していたのだ。指の数が4本となっているのも見慣れない斬新なもので、嘴をそのまま掴むと顔全体が引っ張られ骨と一体化していることが良く分かった。
 またその際の握った具合から、4本指とは言えそう苦労はしないと咄嗟に感じられもしたのだった。そのまま改めて鏡を見ると、そこには先程と変わらずグリフィン人の姿をした姿があったが、そこから光沢感は消滅し代わりに自然な丸いと感じられる影と厚みが備わっており思うが侭に思うと翼は再び大きく羽ばたいた。
 狭い部屋の中での翼は中々の大きさであり、香織がその度に、狐人であるとは言え迷惑そうに顔を顰めるのが、これまでよりも手に取る様に分かる所が尚更面白くて、尚もしばし続けて止めると視線を写っている下半身へと移す。そこは尻尾、そして色から百獣の王として名高いライオンの下半身となっており、その股間には割れ目とその上に大きな膨らみが存在していた、香織の股間にあるようなペニスの姿は何処にも見当たらない代わりに、鎮座しているその謎の巨大な膨らみ・・・巾着袋の様な形をした膨らみにはとても興味を抱かずには居られずに、片手にて掴んだ途端、大きく瑞穂は絶叫せずにはいられなかった。

 これまでに感じた事がないほどの快感を感じたのだから、こう書くと、先程のスウツ内でペニスの元となる物が芽生え始めた際の感覚と変わり無いのではないかとも思われるかもしれないが、あれと例え類似しているとしても全くその威力が異なるのである。
 先程のは未経験とは言え、断続的に長いスパンの間で彼女に襲い掛かってきたが、今度のこれは一度に一気に襲い掛かってきたのである。その威力と来たら半端ではなく、先程のが高波としたらこれは津波、それも5メートルや10メートル程度ではない50メートル級の大津波だろう。そしてそれはまだ残っていた人としての恥ずかしさ等の意識の残党を木っ端微塵に打ち砕き、その残骸を新たな意識の一部に組み立てなおして再び打ち上げたのだ。
 それは一度でなく、興奮した彼女が殆ど反射的に揉む事で二度三度と打ち寄せて文字通り完膚無きに叩きのめした挙句、その記念碑としようとした訳ではないだろうが、そう取らずにはいられない痕跡を残して立ち去っていた。
 それは大きな花・・・股間に咲いた大きな花だった、瑞穂の股間にも太く逞しいペニスが白い物を先端から放ち残滓を垂らして勃起していたのだから。そしてその直線上にある鏡の鏡面はすっかり白に塗れて不透明と成り代わっていた。


 終
良薬はほろ甘く・第四章
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