"神"・・・確かに女はそう自らの事を口にした。最早お分かりであるとは思うが、その女はかつてその土地にあった社に神として祀られていた者その者なのである。実際の所は神と言うよりも"魔女"と言った方が相応しいので、今後はその様に表したい。
山上俊三の五代前の先祖の申し出た社の放棄と祭祀の廃絶を許す条件として、彼女はその先祖自身が申し出た末代までの土地所有が自らの許し無く破られた場合、その売り払った当代と理由はともかくそれを買い取った者に対して厳罰を加える事を認めさせて、その土地と一族にその様な呪いを掛けていた。
そして呪いは百数十年の時を経て発動した。山上家代々の引継ぎの不手際の結果として発動した呪いは、売り払った当代の山上俊三に死をもたらし、買い取った開発会社の社長と担当部長である美根子と中島をこちらの彼女自身がいる世界へと連れ去った。こちらの世界に連れ込まれ、彼女の前に引きずり出された2人に対して彼女は自らの感じた不快感をその身を以って償う様に命じ、抗議する2人を馬と兎の獣人へと姿を変えさせたのだった。
どうして不快感を他人である美根子と中島の身を以って償えるのか?と疑問に思われたかもしれない。金と言うものの存在しないこの世界において、取引等に用いられるのは個々人が持ち得る精神力、いわゆる"気"がその仲立ちとして利用される。"気"とは生来の物であるが、後の行いにより増減させるのが可能な物なのでその量は常に不変ではない。最も簡単な増減の要因として強い充実感や満足感を感じた時には増え、逆に不快感や失望感等を受けた時には減少してしまうと言うものがある。
彼女の場合、前述したとおり自らの許し無くかつての社の声域を売られた為に、強い不快感を感じた。それ故にその財産でもあり力の源でもある精神力は過半とまでは行かなくとも、その実に3分の1強が見事に失われてしまったのである。
これが力の弱い者であったらそう大きな問題ではない、力が弱いと言う事は普段からのその総量も少なく行使可能な能力も限られてくる。しかし、彼女の如く"神"として人から崇められるほどの力を持つ者にとっては尋常な話ではない、下手をするとその生存すらも危うくしてしまう恐れが出てきてしまうのだ。だから彼女は自らもその回復に努める反面、姿を変えさせた美根子と中島を娼婦として働き蜂が蜜を集めるが如く、性交渉によって交わった相手から可能な限り精を集めさせる事にした。そして精即ち気であるのでそれを定期的に彼女が直接吸収する手筈になっており、彼女はそれを非常な楽しみの一つとしていた。
「さて、今日はこれにしようかねぇ・・・ちょっとお待ち。」
しばらく立ったまま早季子を弄んだ魔女は今は別室に移って、早季子をベッドに横にさせるとその前で何やら作業を始めていた。手にしているのは小さなグラス、そこに机の上に置かれた幾つかの小瓶の中から少しずつ液体を流し込んで混ぜ、壷の中から取り出した粉の様な物を数種類更に掻き混ぜている。それを早季子は特に何も思わず、いやむしろ期待に心を浮遊させていた。
今日は何になれるのかと、どの様な楽しみが味わえるのかと、すっかり彼女から施される"お世話"の虜になっていたからであった。その事を思うと今では始めの頃からは想像出来ない程、彼女は自分を抑えるのが時間と共に困難になっていくのを実感している。そして今も、魔女が目の前で秘薬を調合している姿を見て体の疼きは刻々と高まり、割れ目は熱を帯びて濡れに濡れてベッドのシーツと指先を汚していた。
「そんな先走るんじゃないよ・・・楽しい事は後に取って置くものさ。我慢おし。」
息が荒くなり明らかに上気していると見るや魔女は手を止めずに、若干視線をこちらに向けて静かな笑いを込めた言葉を吐いた。だが言葉程度で止まる物ではない事は彼女自身重々承知している、そこで次にこの様な事を続けた。
「言う事を聞けないのかい・・・そうかいそうかい、なら思いっ切り可愛がって上げようねぇ・・・おや、丁度いいねぇ・・・出来たよ。さぁお飲み、始めるとしよう。」
折りしも出来上がった液体、琥珀色をした液体の詰まったグラスからガラス棒を抜き取りそれを丁寧に拭いた彼女は、グラスを片手にベッドへと腰を下ろした。そして自然と伸ばされる早季子の手に慎重に手渡し、口に運ばれてその喉を潤しつつ流れ落ちていくのを凝視する。
「どうだい?味の方は?」
「はい、何だか・・・今日は・・・苦かったです・・・。」
グラスを回収しながら問い掛けると、早季子はボーっとした様な表情で顎を上げ気味にして言葉を選びつつ応えて来た。
「そうかい・・・久し振りだろ?この味は・・・何になるか楽しみだねぇ・・・じゅあ私は何時も通り見させてもらうよ・・・ヘヘヘヘッ・・・。」
「仰せのままに・・・ご主人様。」
そうして魔女は再び先程まで調合をしていた机の隣にある椅子に腰掛けると、机に肩肘を付いてさも楽しげに何かを期待する表情を満面に浮かべて早季子を見詰めてきた。ベッドの上に取り残された彼女は彼女に向けて膝を突き出し、体をそのまま斜めにして足を若干開くと割れ目が良く見える様にしてこう熱にうなされた様な声で言った。
「ご主人様・・・本日もこのあなた様の奴隷たる私めのお世話を下さいましてありがとうございます・・・御礼としまして、私の、あなたのはしたない奴隷の姿、とくと御覧下さいませ・・・。」
言い切ると同時に早季子はその割れ目をそっと左右に広げて、最早愛液が開いた瞬間にタラッと糸を引くまでに熟れたワギナを曝け出した。そして指先を入れて始まったのは彼女の自慰、いや人に見せているのだから一種のショーとでも言うべきか、とにかく彼女は盛んに指を入れては出し中にて巧みに操って自らに刺激を与え、その度に喘ぎ、言葉を漏らし、紅潮し、潮を吹き、時には失禁までもした。だが決してその体型だけは変えることが無く、不動の体勢のまま彼女はひたすらに自らの、とても人間として真っ当に生活していた頃には全く予想だに出来ない痴態を披露し続けたのである。
「あっ・・・あぁあぁんっ!?」
何度目かに達した頃、突然彼女の喘ぎの語尾が乱れた。その途端、表情は何かを悟ったかのようなものとなり見ている魔女もまた目の色を変えた。そして盛んに唇を噛み早季子の変化を見詰めた。
「つ・・・冷たい・・・、ご主人様・・・こ、これは・・・はぁっ!?」
「今日は暑かったからねぇ、少しは体を冷やそうかと思ってね・・・特別調合だよ・・・どうだい?いつもと違って気持ち良いだろう?」
「あぁぁ・・・はっ・・・はい・・・冷たくて・・・ひんやりとして・・・あふぅぅぁっ・・・。」
早季子はこれまでとは全く違う刺激、つまり熱ではなく冷に体が侵されているのに違和感を抱きつつも、温度の違いこそはあれ普段と同じに与えられる刺激の波に体を悶えさせていた。何時もならものの数分で体は堪らないほど上気し、熱を持って彼女は全身から滝の様に汗を流している。しかし今日は逆に体は冷え切ってそれこそ氷の様であり、汗腺と言う汗腺は全てが硬く閉じられていた。
「正に氷だねぇ・・・白い気が立っているじゃないか・・・。」
外気との余りの温度差に体から白い気を沸き立たせているのを見て魔女はそう呟いた、それに対して早季子はとても答えられはしなかった。思うことは出来ても体を動かせなかったからだ、相変わらずこの冷たさは正常に寒さとしてではなく、快感として彼女の脳髄へ直接響き渡ってくる。
そうしている間に、彼女のすっかり白く染まっていた肌はどこか水色を帯び始めていた。あの良く凍り切った氷の見せるあの淡い水色である。その色は胸元の辺りから全身へと静かに時間を掛けて広がってく。そして、その水色に染まった箇所から順々に、すっかり冷却された空気中の水分が霜となって次から次へと皮膚の上へと層を成す。何時の間にやら全身が水色に染まったと見えたのも束の間、数十秒後には全身を白い霜にて覆われベッドの上にある奇怪な樹氷となっていた。
「パンッ。」
霜が定着した頃合を見て魔女は軽く手を叩いた。すると彼女を覆う凍て付くほどに冷え切った空気は一時的に温度を上げて、その樹氷の表面は融け始めた。それを見た魔女は若干下げると指揮棒の様な物を持ち出してそれをオーケストラの指揮者の様に振り回す、そして早季子の体へと目をやるとその体を覆う氷は振られる度に形を変え、ただ厚く積もっていただけの氷は適度に溶けて全体としては筋骨隆々とした形となり、中にはただ溶け去るのではなく不要とされた氷が集まって表面から外へ向けて伸びていく物まである。
腰から伸び出した物は太く長い尻尾となり、顔の全面を覆っていた物は元の外観を残さなずに流線型の顔面と眉間からの二本角、そして尖り傾く耳、伸びる首・・・手足の指は太くなり爪の様な形に先端は鋭く伸びる。新たに形作られた所から再びあの水色に染まって定着して行き、瞬く間にあの華奢であった少女の体は今や隆々として水色に染まった逞しい女体へと変貌を遂げていた。
「完了したね・・・どうだい、よくその体をお見せ・・・。」
「はい、ご主人様・・・。」
そして周りの冷気もすっかり無くなり、姿を現した水色の肌をした竜人はすぐにベッドから立ち上がると魔女の前に直立し、その姿を惜しげもなく全て露わとする。その股間には隆々とした太く長いペニス、そして豊満な乳房と睾丸の裏の割目・・・全てがその魔女好みに造られた体を。
「くくく・・・これはいい冷え心地、そして良い体だねぇ・・・早速この忌々しい暑さを冷やしてもらおうか・・・。」
魔女はさっと一瞬で自らの纏っていた衣を脱ぎ去り、そのまま接吻すると押し倒すように布団へと倒れこんだ。自分の望んだ涼にまずは満足して抱きついた魔女はそのペニスを口に含み・・・口で扱いて精液を、竜人の豊富な魂の底から凍えるほどの冷気を放つ精液を飲み干したのだった。まるで水道の蛇口から水を飲むが如く。
「うん・・・美味しい、よく冷えているよ・・・だがね、まだ足りない・・・もっともらうよ・・・へへへ、へへへへへ・・・。」
魔女は口元の残滓を舌で舐め取りつつ呟いた。