手抜きの効用冬風 狐作
 夢劉茶、東南アジア北部の高原地帯で僅かに生産されるこのお茶は、正に知る人ぞ知る絶品である。だが、そんな一部の愛好者のみが知り密かに楽しむと言う事は今は無い。何故なら、テレビのとある情報番組において紹介されてしまったからだ。健康と美容に効く美味なお茶、この様に世間一般に知られた夢劉茶を是非とも手に入れたい人々により品薄となり、一時はそれまで楽しんでいた愛好者ですらも手に入らないほどになっていた。
 もちろん、生産者側も生産を増やす等して対応したが、余りの需要には到底追いつくのは困難であり、また急激なそれまでに無い増産を行った事による品質や管理意識の低下も散見される様になった。事実、古くから飲んでいる愛好者に言わせると、最盛期の頃の味はかつてのそれと比べると著しく低下しており最大の売り物である香りが弱く濁ったと言うのが感想であった。しかし、そんな事を知らない人々は競ってそれを買い求め、美味い美味いと絶賛していた。

「よし、今日はこれまで。」
 東南アジアの山岳地帯にある無劉茶の製造工場、工場とは言え掘っ立て小屋のその中に掛けられた声に従って、民族衣装をその身に纏った少数民族の女達が疲れた顔をして家路に着く。彼女らは今日も一日の大半をお茶の製造に費やしてきた、夢劉茶の製造は全て人力で賄われている。全く機械は使われていないので、少しでも人件費を下げたい雇い主は意図的に少な目の採用しかしないので、増産がなされた今、彼女らの体にかかる負担は予想以上の物になっていた。その為、注意力は散漫となりがちで今日も幾つかの小さなミスを彼女らは犯していた。しかし、それを一々報告してしまうと後々で問題になってしまう為、密かに処理してあとは何食わぬ顔をして作業を続けていた。
"こんな事は以前なら考えられなかったわ・・・。"
 ある1人の工員は仲間のするその行為を見て、増産以前の丁寧な作業を思い出していた。彼女らが帰った後、今度は数名の男達の手によってオンボロトラックに積み込まれた夢劉茶の詰められた麻袋は、山を下った所にある港へと運ばれる。そこから川を伝って海に面した港へと運ばれ、そこから日本へ向う貨物船に載せられ数日後には日本へ陸揚げされて、検疫を通過すれば販売業者の手を経て消費者へと供給される。
 そして、今、1人の男が店頭に並べられたばかりの夢劉茶の箱を手にし、買い求めて家路に着いた。そして袋ごと妻に手渡された夢劉茶はその晩の食卓に並べられて、家族全員がそれを飲んでいた。

"今日のはまた一段と味が冴えていて美味しかったわ・・・。"
 その家の妻である三郷さやかは、バスローブを着て風呂上りの自分の顔を鏡に映していた。心なしかあのお茶を飲み始めてから、肌にかつてのハリが戻ってきた様な気がしてならなかったからだ。
"本当、素晴らしいお茶だわ・・・よく言えばもっと飲みたいけど、品薄だからしょうがないわね・・・ちょっと残念だけど仕方ないか・・・。"
「おーい、上がって来たぞ。」
 そんな事を思っている内に夫が風呂から上がってきた。これから楽しい時間が始まる。
「わかったわ、早くしてね。」
さやかは気持ちを弾ませて言った。

クチュ、クチャクチャ・・・
 赤い豆電球1つ灯された部屋の中に聞こえる淫靡な水音、見ればベッドの上で2人の男女が交わっていた。もう四十路に入ったさやかと夫の圭一の肉体に衰えた所は見当たらず、引き締まった筋肉とハリのある肌が美しい。ディープキスから始まった2人の営みは次第に熱を上げて、今はさやかが床に膝を突いてベッドに腰掛ける圭一のペニスを口に咥えていた。淫靡な音はそこから響いていた、動かされるさやかの舌によって掻き混ぜられる圭一の先走りとさやかの唾液、やがて耐えられず勃起しきった圭一はさやかの口腔へと濃厚な二発目の精液を放ち、それを全て飲み干した。
 フェラをして楽しんだ2人は今度はベッドに上がり、座って開かれたさやかの股へ圭一が入り、その熱を帯びた溢れる愛液で煮詰まったワギナを舌で舐めて、指で弄り刺激を与える。ベッドの上には漏れた愛液と唾液によるシミが広がるが二人は全く気にはしない、ただ続けて達するといよいよメインへと達した。
 ペニスを一舐めしたさやかは寝転ぶ圭一のペニスへと腰を下ろし、腰を振った。先程のフェラとは比べ物にならないほどの音が響き渡る、調子に乗ったさやかがますます速くすると、その豊満な乳房が縦に揺れて何とも淫ら、それを見る圭一の欲情がより一層刺激された。それを数回やるとまだ尚熱醒めず、勢い衰えない2人は正常位にて何度も何度も幾度と無く交わり続けた。不思議な事にこの時点でもう既に圭一の射精数は二桁前半に達していた。これは異例の事で、もともと精力は強い彼であっても、ここ最近は行ったことの無い未知の領域にすっかり入り込んでいた。この時点で止めていれば何の問題は無かった、しかしすっかり熱に別の意味で犯し尽くされていた2人が気が付く筈が無い、より一層の深みへともぐりこんで行ったのであった。
 どうしてこの様に続いているのか、それは夢劉茶のお陰であった。夢劉茶は美容に効くと共に強壮剤としての作用も僅かに持ちあわせている。しかしながら、ごく僅かなそれは精製の過程で殆ど失われており、まず見る事は出来なかったのだが、増産による手抜きや質の低下はその作用を逆に強めてしまっていた。ところがそうはなっても、他の正常な茶葉の成分と共に飲まれる事で抑えられていたのだが、運悪く異常化した茶葉が高濃度で詰められた物を彼らは飲んでしまったのである。結果として彼らの精力は互いに絶倫に近いものとなり、こうして激しく交わっていても尽きる事が無かったのだ。その内に気がつけば、その回数は20回以上に達していた。もう生物としても限界に近いレベルであろう。

 2人が盛んに交わっていたその頃、脳の中である物が覚醒を迎えていた。それは本来ならば一生眠ったまま終わるはずの箇所、そこに秘められていた未知の神経細胞が目覚めそして機能し始めたのだ。そして、ある指令を間脳視床下部へと飛ばし、視床下部からは体の各器官へ本来ならば発せられない指令を流し、受け取った各器官はそれぞれ機能し始めた。
 変化が始まった・・・肥大化した睾丸は体内へとめり込んで精液をペニスへと供給し続け、ペニスもまた太く、そして伸びていくと同時にペニスの根元の上の陰毛の中から小さな突起が現れ、射精の度に成長してやがて瓜二つの立派なペニスへと分化した。さやかのワギナもそれをより深く包み込む様に大きくなり、太く長いペニスが挿し込まれ、もう一本がアナルをかすめて空に向ってピストンしている光景は居ようとの一言に尽きるものであろう。
ボシュッ、バズュッ、ブジュッ・・・
 二十数回目の射精が、ペニスが二つになってからの射精が行われた。これまでよりも更に密度が濃く莫大な精液が一方のペニスからは胎内へ、もう一方のペニスからは空中へ放射線を描いて発射され、その多くがさやかの全身へと降りかかり、熱持つそれらは湯気を上げてその肌の上に広がっていた。射精が終わると間髪無く次が始まった、同じ体勢のまま先程と変わらない調子で続けていくと再び変化が彼らの体に現れた。
 まず、変化を見る事が出来たのはそれまで何の変化もなかったさやかである。何時の間にか彼女の背中や髪の毛にかかっていた先程の精液が姿を、まるで土の中へと吸い込まれていく水の様に、皮膚の中へと浸透して消えてから間も無く、彼女の皮膚が硬質化し始めた。それまで温かみのある柔らかな物であった皮膚は、次第に冷たく硬くなりその場その場に会わせて細かく割れて行き、変化していくその形は正しく鱗であった。それと同時に彼女のワギナもアナルと生来のワギナとの間に新たに姿を現し、何時の間にか圭一の二本目のペニスはそこをついていた。
 全体が鱗と顎の下から股関節の辺りまでの内側が蛇腹上に硬化し終えると、人のままであった顔に変化が及んだ。一方、わずかに遅れて圭一もまたその全身へとさやかと同じ様に鱗を生やし、同調する様にさやかの顔も顎と鼻腔とが前へ突き出し、舌が伸びてその歯は鋭利な形へと数を増減させて行った。先端が少し尖ったその上に新たな鼻腔が形成されると、目や耳の形状も鋭くなり、耳は魚の鰭を尖らせたように斜めに顔の横へと姿を現す、髪の毛は抜け、後に残るのは電灯の明かりを鈍く反射させる灰色の鱗、圭一は濃青の鱗を全身に湛え、そしてその顔は鱗と同様にさやかにわずかに遅れて人からそれへと、竜の顔へと形を変えていた。
 次なる射精によって2人には同時に尻尾が生え出した、尾てい骨の付近から背骨が伸び始め、その辺りの筋肉を共に新たに筋肉を作りつつ、一度は圭一に当たってそしてその後はその体に沿って上へと伸びて、太さと長さを共にしたその巨大な尻尾が圭一の右肩より半ば垂れている光景と言うのは圧巻と言う他無く、圭一の尻尾もまた腰の振りに合わせて激しく揺れ動いていねのが見える。
 そして、頭頂から背骨に沿って肩甲骨の付近まで鬣の様に鰭が生え、肩甲骨がそれに刺激されたかのように盛り上がって破れ、巨大な羽が開かれた。その大きさは折り畳まれた今の状態でも相当な物であり、恐らく全て開かれたならば彼らの身長の数倍の長さに達する事だろう、そして最後に爪が黒く厚く鋭利になり、こめかみから後ろへと黒い1対の角が伸びることで全ては終わりを告げたのであった

「グフーッ、フーッ、フーッ。」
「フゥグーッ、ハフーッ、ヒィフゥーッ。」
 だが変化が終わったとしても彼らの営みが終わる訳ではない、むしろ無限とも言える絶大な精力と体力、そして肉体を手に入れたさやかと圭一はただ交わり、互いの肉と快楽を求め、追求し続けた。変化の途中、何時出来たのかはわからないがさやかであったメスの竜人の股間には一本の細かな鱗に覆われたペニスがあり、圭一であったオスの竜人にもまた1つのワギナがアナルとペニスの間に姿を見せていた。
 最早人からかけ離れた姿、精神となり果てたさやかと圭一であった竜人達は、覚醒し甦った遥かなる記憶と本能に忠実に従ってその後も昼夜を問わず、時には互いの立場を変え、互いに注ぎ合う精力を糧として交わり続けて行くのだ。人としての意識を逆に眠らせ、絶大なる力の下に延々とただ延々と・・・。


 終
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