生贄冬風 狐作
 グロンタール王国首都マカトニ、地球と隣り合った次元に存在する瓜二つの姿をした惑星上にあるこの王国には、100年に1度だけ国を挙げての一大祭事が存在していた。そして、今日も首都の中心部にそびえる王宮の片隅では、その行事の準備が進められていた。
 準備を進めるのは国王によって選任された10名の聖祭官と呼ばれる人々で、学者と聖職者から5名ずつ選ばれ、行事の1年前からその準備に取り掛かられるので、当日まであと三ヶ月を残す余りとなった今日においては大概の下拵えは済んでおり、今はそれを元にして最終的な準備が進められている。
 だが、1つだけ肝心な事が決まっていなかった。それはこの祭事の中心にして根幹となる聖者の選定であった、聖者となる基準は18歳以上29歳以下の青年男女であり、特に身分は問われない。それ故に過去の記録の中には王族より選ばれたと言う記述もあり、その出身に関しては特に規則性や法則は見られない。では、何を基準に選出するのか?それはこの世界に生きる全ての人々が持つ魔力であった、地球のある次元では空想上の産物に過ぎない魔法は、全ての人が魔力を持つこの世界では至極ありふれた物であり、心付いた子供でも程度はあるが扱うことの出来る存在である。その上、生まれてから後付される知識と違って生来の天賦の物であるから、後から人がどうしようともその質や量には干渉出来ないので封建的階級社会のこの世界では、最も公平かつ信頼できる基準として多方面で活用されていた。
 魔力の量や質を測るのは非常に簡単な事で"マリニム"と呼ばれる球体、これは地球で言う水晶玉であろう。一般的な魔法具を一括管理するのに有効なマリニムは大抵の家に存在し、特定の短い呪文を唱えてその最後に計測対象である人物の名前を言うと、瞬時に量と質が表示される仕組みだ。ただし、これには制約があり計測対象である人物の顔を知っている必要があるが、中央魔術院を卒業出来る様な極めて魔力の高い者に限っては知らなくても測る事が出来る。

「駄目ですなぁ・・・どうにも上手く行きませんぞ。」
 マリニムを前に数時間粘っていた白髪長身の男が疲れ果てた顔をして呟いた。それを聞いた周りの人々も落胆したかのように肩を下げて、意気消沈していた。祭事当日まであと98日、聖者となった者は俗界の穢れをその身から祓う為に50日前より専用の神殿に入る必要がある。また、それ以外にも様々な儀式等が控えており、それらを万事支障無く行い余裕を持たせて神殿入りをさせるにはせめて90日が必要であった。記録の中には70日足らずで速成したという事例もあるにはあったが、この祭事は次の祭事までの100年間の安寧と繁栄を祈願する重要な節目であるので、なるたけ粗相の無いようにしなくてはならなかった。
「どうなっておるのだ、今回の祭事は・・・。」
 聖職者より選ばれた一人の白髪白髭の老人――メスパノ正教では白は神聖至高の色とされる――が絶望したか様な表情を浮かべて天を仰ぎ見る。基本的にここ10回の祭事の際には遅くも100日以内に聖者が選定されていたのに今回に限ってはそれが成らない・・・焦ってもどうにも成る物ではないのは承知していたが、焦らずにはいられないと言うのが彼らの心境だ。
「そうだ、1つ提案があるのだが・・・言ってもよろしいでしょうか?」
 突然、1人のこれは若い学者が発言の機会を求めた。一斉に視線がその男へと注がれる。
「何でしょう、モトラ博士。」
聖祭官の長である老齢の女性聖職者が発言を認めると、モトラ博士と呼ばれた男は口を開いた。
「ここまで探しても聖者を見出せないのはここ最近では、非常に稀な危機的状況と言う見解で我々は一致しております。そこで私から提案でありますが、ここは1つこの世界ではなく別の世界、異次元にも範囲を広げて見るのはいかがでしょう?」
そう言った時、部屋の中にざわめきが広がった。異次元・・・それは誰もが予想外の言葉であり、新鮮であった。すぐに論は2つに分かれてそれまでの静けさが嘘であったかのように、一転して室内には活発な論議の声が満ち始めた。
「モトラ博士・・・異次元から呼び寄せると言うあなたの提案に私は非常な感銘を受けた・・・とても優れた着眼であると思う。しかし・・・。」
反対派の聖職者が口がモトラに問い質す。
「しかしだ・・・それで確実に見つかると言う担保はあるのかね?仮に見つかったとしても、異次元からの召喚は次元の壁を、神の摂理を乗り越えなくては成らないが故に困難かつ危険すぎる・・・その所はいかがか。」
「はい、召喚に関しましては問題ありません・・・これまでに二回、その様な事例が確認されています。」
「事例だと?初めて聞いたがそれは事実か?」
今度は賛成派の聖職者が驚きの声を上げた。モトラは皆を一巡して言う、誰も知らなかった様であった。
「はい、事実です。これは祭事歴と聖典、双方より確認されます・・・安全な召喚法と共にです。」
再び部屋の中にざわめきが走った。だが、今回はすぐに静まり、誰もがその言葉の続きを今か今かと待構えた。
「安全な召喚法・・・それは次の様な物です・・・御覧下さい。」
 そう言うと彼は何時の間にか用意した黒板にチョークを走らせ始めた。

 それから3日ほど経った満月の晩、聖祭官の面々はそれぞれの従者と共に首都郊外にある古代遺跡にいた。その遺跡は古くから存在が知られ、一体何時誰が何の目的で作り使用したのかとその時々の王や学者、聖職者は事ある毎に調査を繰り返してきたが皆目見当も付かずに、近年は全く回顧見られることの無かった存在である。だが、先日まで草が生い茂り鍋底の様な形をしたそこには、清らかな聖水が湛えられ、満月がそこへと姿を映している。そしてその四方には赤々と燃える篝火があり、一方の側に聖祭官たちは横一列に並んでそれを見ていた。
「時間ですね・・・コルッツェニ大司教殿、お願い致します。」
 恭しくモトラ博士が澄んだ声で言うと、列の中央にいた大司教が正教の象徴である聖棒を手に歩み出た。大司教は手前の火と火の間のやや手前に立つと、静かに頭を下げて手と手を前へ突き出し聖棒を斜めに立てに掲げると、静かに詠唱を始めた。
 大司教の詠唱している詞は、正教語である古グロール語よりも更に以前の今ではわずかな文献の中でしか見る事の出来ないニルポンと呼ばれる言語であった。正教始まって以来の知祭と言われて誉れ高い、コルッツェニ自身もこれを示された時一瞬目の前が暗くなり、我が目を疑ったほどであった。幸いな事に知祭と言われるほどの訳はあり、多少の知識は持ち合わせていたので数度の練習により読む事は出来る様になったが一部を除いて意味は全く分からないままであった。
「これをどうやって解読したのかね。」
「これを偶然見つけたからです、この解読表を。」
 知識が無いはずのモトラが、どうしてこれがその召喚術であるのか分かったのかと問い質すと彼は一枚の紙を取り出した。紙と言っても羊皮紙のそれは黄ばんだ年代物であり、そこにはニルポンと古グロール語の対照表一覧が書かれていた。何処で見つけたのかと問えば、教会の地下の資料を委託されて調べていた時に偶然発見したと述べ、それを聞いたコルッツェニの頭はこの祭事が終わり次第、この男つまりモトラ博士を長とした古文書調査委員会を作り、専門的に調べさせるべきであるなと思い描いていた。
さて、場面を戻すと儀式では相変わらずコルッツェニが詠唱を続けていた。とにかく長い詞なのである、とにかく今の彼は祭事を成功させなくては・・・という圧力と大司教であると言う自尊心り狭間で懸命に続けていたのであった。

 さて、その頃、別次元にある地球の一角にある細長い劣等の片隅で1人の女が身を投げた。男、借金、病気・・・何もかもに見放されて絶望の果ての身投げであった。そして、わずかに上がった水面の波紋も、すぐに消えて今では何があったのか何も留めてはいない。

 全てを唱え終えた大司教は、一歩下がってその聖棒を池の上へと振った。先端に取り付けられた玉が月に輝き、水面へと反射する。すると、それまで風が吹いても微動だにしなかった聖水の水面は、中心から波紋を広げると突如として逆巻いて上へと登った。
 誰もがその光景を唖然として注視していると徐々にその水柱は小さくなり、しばらくすると元の形へと収まった。ただ1つ、その水面の中に見知らぬ格好をした女性が立っている以外は・・・。

 白いゆったりとした服を着た聖職者達に見送られて、そのわずかな行列は険しい山道へと分け入っていった。行列の面々にはあの10人の聖祭官と護衛の衛兵と従者の姿があり、従者達に担がれた輿の上にはこれも純白の服に身を包んだ女性、そう召喚された異世界人の姿があった。
"いまいち、良くわかんないわね・・・。"
彼女は相変わらず、自分の境遇を理解していなかった。いや、正確に言えば理解していなかったのである一部理解出来ないと言う事だ。彼女が正しく理解出来ていない物、それは"生贄"と言う事である。召喚されてしばらくたってから落ち着いた頃から、幾度と無く聞かされた話によってここは地球とは別の異世界であり、重大なお祭りの為に止む無く召喚され、偶然身投げを自分が彼らの求める能力と一致した為に召喚されたのだと言う事を。
 しかし、彼女は生贄になると言う言葉を別の意味で理解していた。説明した聖祭官や聖職者達がぼかして説明したのも一因ではあろうが、彼女は生贄とは神社や寺で奉納される舞の様に一時的な役目に過ぎず、それが終われば元いた世界へ帰れるものと考えていた。それに対して説明した者達はその本質の意味を理解している物とした為、両者とも齟齬に気が付かずに事だけは進み、儀式作法を覚え身を清めた彼女を連れて彼らは「クランプラス」と呼んでいる最終目的地へ向っていたのである。
 早朝に出発した行列は半日かけて日が沈む直前にその場所へと到着した。早速、最後の儀式が執り行われ彼女を残して彼らは足早にその場から立ち去った。1人残された彼女は言われたままに、そこにある洞窟の暗闇の中へ向けて目を閉じ、何もしないで座っていた。

 どれ位たった頃だろう、いい加減飽きかけて来た時静かな音が背後から聞こえた。それは何かが地面に着地したような音、そして小石交じりの地面を踏んで何者かが近付いてくる。その足音は規則正しいもので、獣の様な忙しないものではなかった、この事が逆に彼女を緊張させた。彼女は考えた、誰かが自分を襲いに来た・・・一体誰が、あの自分を"召喚"したという連中だろうか、いやそうに違いない、彼女は恐怖で肝を冷やしその動揺を隠そうと必死に努めた。どうして彼女がそこまで恐怖したのか、それは彼女自身の体験による。幼い頃から恵まれない境遇であった彼女のあちらでの人生は、修羅場と言って過言では無い。それ故に人を信用出来なくなっていた彼女も、こちらに着て以来親身になって親切丁寧に接してくる人々にようやく心を許し始めていた、しかしこの事態では・・・彼女の心の中には一気に闇が広がり始めていた。
 そんな彼女を知らずに足音はますます大きくなって、彼女の背後で静かに止まった。恐怖に震える彼女を前にしばらく沈黙したそれは唐突な形でその存在を誇示した、舐めたのである。
ツルッ・・・
 冷ややかでわずかに温かさを感じるその舐めは完全に予想外であった。最早恐慌状態に陥りかけている彼女を、その者は舌で1回2回3回とその体を舐め再び沈黙する。そして
「ほう・・・今回は女・・・それも異世界人とは、また珍しい・・・私は初めてだよ、まぁいいか。」
 女の声だった。彼女よりもずっとハリと元気のある声で素直に驚きを表現したその者が、再び黙ると今度は不意に強い風と何かが羽ばたく様な音、そして何かが彼女を掴むと体が中へと飛び上がった。
「きゃあっ!なっ何なのよぉ・・・。」
「おや、今回のは生きがいいねぇ、楽しみだわ・・・まぁ、ここは少し黙ってなさい。じきに済むからね。」
驚く彼女をその声は愉快気にそして、気遣いながら空の旅を続けていった。

「今、目隠しを外すからちょっと待っててね。」
 ようやく地面に降り立ち、柔らかい布団の様な物の上へ彼女を座らすとその者は熱いお茶を持ってきた。紅茶に近い感じの味であったが、そのソフトな甘さにやっと心を静めることが出来た。
「あれがとうございます・・・。」
「いいのよ、気にしないで・・・さぁ、目隠しとって上げる。驚かないでよ。」
長い緊張から解放されたばかりで訛っている彼女の言葉を気にせずに、爽やかにそう言うとその女は彼女の目隠しを外しにかかった。厳重に封のされた目隠しを糸も簡単に外して行く、髪間に当たる女の手にはほんのりとした温かさと冷たさが同居していた。
「はい、取れたわ・・・目をあけて見て。」
「はい。」
"こんなに優しくしてくれるなんて一体どんな人なんだろう・・・。"
とそっと目蓋を彼女は開けた。久し振りに目に入る光に目を細くして、懐かしみ前を見るとそこにはその声の主がいた。微笑みかけているその者を見て、彼女は目を丸くして驚愕した。
「あら・・・やっぱり驚いてしまったかしら・・・ごめんね。驚かせちゃって。」
 その者は照れくさそうに軽く彼女に詫びた。
「いゃ・・・あの、その・・・大丈夫です。はい、驚いたりなんて・・・してませんから・・・。」
「そうかしら・・・駄目よ、そんな事言っても私は騙せないわ。でも大丈夫、あなたは私の大切なお客さんだから・・・だから、あなたもゆっくりとでいいから慣れてね。」
「あっはい・・・どうもすみません・・・。」
「謝る事は無いのよ、異世界人の娘さん・・・あなたこそ大変だったでしょう・・・しばらく、ここで休みなさい。ところで名前の方はいいかしら?何時までも異世界人と呼ぶわけには行かないもの。」
「・・・大隅千里です。」
「千里さんね・・・私はラナ、よろしくね。」
「はい・・・こちらこそ。」
「もう、元気出してよ。シャイなんだから・・・まぁとにかく今日は休みなさい。詳しい事は明日にしましょう・・・お休みなさい。」
「はい、それでは・・・。」
 そう言って千里はもぐりこむ様に布団の中へと身をひそめた、そんな彼女をラナは幸せそうな顔をして見つめていた。

「おはようございます・・・。」
「おはよう、千里さん。ご飯出来ているわよ・・・人用なんて400年ぶりに作ったから、お口に会うかはしらないけれど、嫌だったら残していいからね。」
  翌朝、目を覚ますと寝惚け眼の千里の前でラナは楽しそうに朝食を用意していた。スラリとした背の高い体に長い尻尾と大きな翼、美しい水色の鱗で全身を覆って顔は竜、ラナの姿は本の中などに書かれていた伝説上の生物、竜そのものであった。
 東洋竜と比べて西洋竜は気が荒く乱暴、という印象を受けていたがその格好をしているラナは気が優しく、ノンビリとしいてそれでしっかりしている面白い少女の様な竜人であった。食事を食べながら恐る恐る年齢を聞いてみると、その年齢はゆうに1000年は超えていて、一体何歳なのか皆目見当が付かないと笑って教えてくれた。食後も後片付けをした後はその様な話で持ちきりとなり、日長一日いや数日間、その様な話を続けて何時しか2人の生活リズムが定まっていた。当初は人間用として特別にラナの用意した料理をしていた千里も、今ではすっかりラナより幾分量は少なくも同じ物を食べる様になった頃、ラナが千里の体に変化を見つけたのも同じであった。
「あら、千里の首筋に鱗が生えているわ!」
 ラナが驚きの声を上げたのは夕食後の事だった。 「えっ!?鱗が・・・?」
「そうよ、ほら触って御覧・・・ね、分かるでしょ。」
なるほど、確かにてで触ると首筋にはラナのと同じ様に鱗が幾つか生えて、鏡で見るとその鱗は淡い朱色をしていた。
「本当だ・・・なんで私に・・・?」
双方が別の方向の驚きを上げると、どうしてかと考える千里にラナは嬉しそうな声で答えた。
「決まっているじゃない、あなたもいよいよその時が来たのよ。竜になる時が・・・あーもう感激!早く見たいわ、千里の晴れ姿をね。おめでとう千里、これであなたと一緒に旅が出来るわ。」
「そっそうね・・・ありがとう、ラナ喜んでくれて私嬉しいよ・・・。」
どう言う訳か、喜ぶラナの姿を見て感極まったのか彼女は自然と涙を流した。その涙をしばらく流して拭き取ると、これまでにない満面の笑みを浮かべたラナはある物を差し出した。
「これは何?」
「竜化に備えての大事な薬よ、必ず毎晩飲んでね・・・極稀に変化に耐えられなくて、死んでしまう人間がいるから・・・そうなったら、私悲しんじゃうから飲んでね。」
「わかった、そうするよ・・・ありがとうラナ、心配してくれて。」
「大丈夫、気にする事は無いわよ。お互い様じゃない、元気だして行こう。」
「うん。」
そう言う彼女の頬には再び一筋の涙が走っていた。

 それから数日後、彼女はラナに言われた様に真面目にその薬を飲んだ。青汁の様に苦い水薬だったが、命のためならと我慢して飲み干すのが一日の終わりの日課となっていた。鱗の方は穏やかにその範囲を広げており、今や背中の多くは鱗に覆われ、ひんやりとして汗をかいた時等は真に気持ちよい作用を彼女にもたらすのであった。
 だが、その一方で彼女は毎晩激しい衝動に駆られ、日々強くなるその衝動は次第にその性格を顕わにし今では深夜頃、熟睡していても手がワギナへと回って自慰をする始末になっていた。頭では駄目とわかっていてもやってしまう背徳間と気恥ずかしさ、一度味わってしまうともう止められなく始末が付かなくなっていた。
 ある夜の事、衝動に駆られて目を覚まして自慰に耽っていると、突然ラナが姿を現し布団を剥ぎ取った。剥ぎ取られた布団の中からはワギナに手を伸ばして、布団と薄い服を濡らした恥ずかしい千里の姿があった。
「あ・・・あの、これは・・・。」
「言い訳は良いわよ、千里・・・すごい美しいわよ、その姿・・・。」
「え・・・。」
 当然の事ながらラナも恥ずかしがるだろうと思い込んでいた千里は、その予想外の展開に絶句するとラナは顔を近づけて更に続けた。
「実を言うとね・・・私もなの・・・。」
と見れば彼女も片手を股へと当て、漏れ差し込む月の光がそこから漏れている液体を銀色に静かに輝かせていた。相当濡れている、吐く息もどこか熱い。
「それでね・・・千里に静めてもらおうと思ったのよ・・・だから、お願い・・・。」
「えっ・・・いいです・・・私に出来るなら・・・。」
頭に血が上っていた千里は、後先考えずに素早くそう答える。
「そう・・・じゃあお願い・・・頼んだわよ・・・。」 そう言ってラナはベッドの上に乗ると股を開いて、その熱を盛んに発するワギナを目の前に晒した。その猛烈な淫気に誘われて、犬の様に近付くとペロッと舌で一舐めをした。軽くラナは反応し、愛液が漏れる・・・竜の愛液は人と比べると仄かに甘さを持っていた。その甘さと匂いはますます千里の神経を犯して、取り込んでいく。
 地球にいた頃、この様な事は何度もあったが大抵が男相手でレズは余り無かった。だが、それでも幾度かはあった訳であり、ある程度の技は知っていたのでその知識を生かして舌を動かした。竜人のワギナは人と形は似ているが、やや硬くそれでいて濃厚な熱と匂いを噴出させる。奥の膣は無数の襞があり、それが舌を刺激して未知の快感を千里に与えていた。また、幾つか特定の襞を弄ると愛液が噴出する事も分かり、時折そこを刺激して顔に愛液をかけて楽しんでいた。
「ふふ・・・私をいかせるとは流石ね・・・千里、もう大分火照って来たでしょう・・・今度は私がしてあげる・・・こっちを向いて。」
 愛液塗れになった千里が服を脱ぎ捨てて、今度はそのワギナをラナが舐め始めた。ラナの舐め方は伊達に1000年以上生きているというだけあって、絶妙な絶品でありわずか数分で果ててしまった。それでも続けて行く内に、ラナは舌をワギナからへそを通って顔まで舐め上げると、舌と舌とを絡めては濃厚な時間を演出して行った。乱れきった2人の熱は満ち、そしてそれが刺激するしまた・・・そのトライアングルの中で彼女らはとにかく快感を求めてひた走った。共に出し合った熱の中で酔いながら・・・。
 酔って行く内に千里の体には鱗が最初はじわりじわしと、やがて素早く広がっていく。互いの乳首を揉み下し、出るはずが無く出た母乳を飲む胸は豊満になり、そして蛇腹に覆われる。鼻先が硬く尖って、顎が伸び口が横に割れる、長い舌が姿を現し先端は二股、耳は鋭く伸びて顔は彫が深く、脂肪は消えて筋肉が隆々とし、アナルを弄る間に太く長い尻尾が背中と尾てい骨の辺りから伸び、やがて三角に収束した。前3つ後1つの足の指は人のままの手と同じく鋭く黒い爪を生やし、髪は伸びて逆立ち瞳は緑を輝かせていた。
「オハッ、ハッハッハッハァーッアアァァァッ!」
「フゥ、ハゥハッハァハァ・・・・アハッヒュウッハァ・・・。」
2人は盛大な喘ぎ声で同時にイった。緑に赤瞳の竜と朱に緑瞳の竜・・・艶かしく美しい光景がそこに広がっていた。やがて、正気を取り戻した二人は少しの間を置いて喜び合い、尽き果てる事の無い時間と性を楽しみ続けたという。
「ねぇ・・・千里もっとぉ・・・。」
「ラナばかりずるいよ・・・私にも・・・アァッ・・・駄目・・・。」

「今年は豊作だな・・・竜神様のお陰だよ・・・。」
 その頃、里では多くの人々が別の意味での喜びを迎えていた。伝え聞く所ではその100年というものは、黄金の時代と呼ばれたそうである。


 完
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