humanimal冬風 狐作
「へぇ〜このサイトも始めたんだ・・・。」  その日僕はお気に入りのとあるサイトを見て思わずそう口にした、どうしてその様な事を言ったのかと言えばそれは次の様に書かれていたからである。
【コミッション始めました、希望される方はメールにて。】
 とただ一行、先日見た時にはなかった文言が小さく隅の方に書かれていたのだ。それを見て僕はある意味の驚きと喜びとをそっと抱いていた、どうしてその様な事を抱いたのかと言う前に"コミッション"なる物について書いておこう。恐らく、このサイトを見ている人の大抵はその意味を知っているかとは思うが、一言で言えば金を払ってリクエストした絵や小説を書いてもらうという事であり、海外の絵や小説サイトを中心に良く見られる物であるが、日本国内ではそう一般的とは言えない。
 そして、このサイトもその例外ではなく、特にこのサイトはリクエストすらも本当に親しい関係以外の人以外からは、決して受けないという姿勢を頑固に貫き通してきた。そして何か変更を加える時は事前に掲示板なりで告知してから・・・と言うのが常道であったのに今回に関しては何の音沙汰も無く、突然のこの変更、少々怪しさを感じないでもなかったが、自分の経験からして案外貫き通そうとする考えほど、何らかの些細な事によって急に捨て去られると言う事を知っていたので、恐らく管理人に何か閃いたのだろうと何時しか考えに整理を付けていた。
"では早速頼んでみようかな・・・。"
 そして僕はメールフォームを開くと、管理人のアドレスを打ち込んで以前から思い焦がれていた夢を達成すべく依頼のメールを書くと、そっと静かに送信した。あとは返事を待つだけだ・・・そして僕はパソコンの電源を切った。

 数日後、メールを確認しているとその中に一通の返信メールが含まれていた。差出人の欄にはあのサイトの管理人の名前、僕ははやる気持ちを抑えてそれを開封する。メールの中に書かれていたのはまずコミッションを希望してた事への謝意、そして僕が始めての依頼者であって快く引き受ける旨が書かれていた。肝心の値段の方は初めての注文なので無料とも書かれており、中々サービス精神旺盛なのだなと僕は1人で感心すると、コミッションに関して必要となる自分の全身写真と顔写真を添付したメールを送り返した。ちなみにこのサイトは写真を基にしたリアルさを売りにした獣サイトである。
 次にメールが来たのはそれから一週間後の深夜の事であった、大きな欠伸を噛み締めて寝ようかとした所に届けられたメール、題名の『完成しました』の一言に僕は心を躍らせて、何の躊躇いも無く開くと、中に記されていたアドレスをクリックして今か今かと待構えた。そんな僕の期待を知ってか知らずか、年季の行った何時寿命が来てもおかしくはないパソコンは、珍しくサッとブラウザを立ち上げて画像を表示して見せた。そして僕はその瞬間、ごく僅かな間を置いて喜びの声を人知れず上げていた。
"凄いや・・・これが僕か・・・相変わらず良い腕だなぁ・・・。"
 そこに画像として現されているのは、見慣れた自室の本棚を背景に少し足を開き得意げな顔をして微笑む、1人の人ではなく1人の獣人、僕の写真をベースにし、僕好みの明るいそれでいて深みのある山吹色に白の獣毛、焦げ茶に覆われた腕と足の先と髪の毛の間から飛び出た2つの三角耳を持ち、何とも触り心地の良さそうなふっくらとした長い尻尾を持つ狐獣人の姿があった。影も上手く付けられているそれは、まるで本当に狐獣人が実在しているかのような印象を与え、そこ彼処にあの管理人独自の妙技と工夫が凝らされた一品中の一品ともいえよう。長い事それを見詰め続け、感動に浸り切った僕はすぐにお礼と感謝を記したメールを管理人宛に送った。

「何度見ても良い物だなぁ・・・本当、惚れ惚れしてくるよ。」
 数日後、僕は再びパソコンを前にその画像を見て呟くと、何の考えもなしにマウスを操ってさっとポインタを画像の上に走らせて見た。すると一瞬だけ、一瞬だけポインタが画像のとある所を通過した際に反応したのである、僕は慎重にその反応した所を思い浮かべて、ポインタを合わせるとやはりその場所にはリンクが隠されていた。ブラウザの隅にはアドレスが表示されており、そのアドレスはあのサイトのサーバと一致したもののその後の羅列は見た事の無い物であった。
カチッ・・・
 僕がそっとクリックすると画像が消えて、別の画面が浮かび上がってきた。そこには特に何も記されてはいなかったが、唯一あったのが無数のリンク、一つ一つに数字が振られた無数のリンクだけがあるその光景はなんとも不気味なものであった。
"うわっ・・・何だよこれ、気味が悪いな・・・やばいサイトへのリンク集か?でも、表示されるアドレスは全てあのサイトのサーバの物だし・・・一体何を仕込んでるんだ、あの管理人は・・・。"
 そう思いながらしばらく観察していると僕は、それらのリンクが全て動画ファイルである事に気が付いた。生の、サイズも重い様に感じられる動画へのリンク・・・まるで多くの目に見詰められている様だとも思えてきた。そして、その内に最初は気味が悪くて仕方が無かったそれらに対する興味が、そっと心の内で芽生え始めたのを密かに覚え、慌てて抵抗はしたものの一度火の着けられた『好奇心』と言う名の炎はどうしようとも鎮められはしなかった。そしてふと我に戻った時、彼の目には青から紫へと変色したとあるリンクが映し出されて、彼が自らに敗北した事を物語っていた。
「押しちゃったよ・・・何が出てくるんだよ・・・。」
 押してしまったからには、と僕は不安を抱きながら画面を注視した。新たなブラウザが表示され、まだ白一色の画面の隅では青いバーが静かに着実に伸びている。
"ADSLでこれほどの時間が掛かるとは・・・一体どんな動画なんだ、グロだけは勘弁してもらいたいものだ。"
とその様に思った矢先、半ばまで伸びた所で急にバーは動きを速めて一気に伸びきり姿を消した。そして、それと前後する形で漆黒の画面の両脇に僅かな隙間を残して白い画面が浮かび上がり、やがてそこには見慣れた映像が映し出された。
「これってあの絵と同じじゃないか・・・。」
 そこには先日コミッションで依頼し、受け取った絵と全く同じ寸分の狂いの無い光景が映し出されていた。もちろん、あの狐獣人も全く変わらない表情と姿勢をしてこちらを向いており、彼は一体どんな動画なのかと画面脇のスタートボタンを押した。
 ボタンを押された事で生命を得た動画は、自然にぎこちなくなく動き始める。その中心となったのは矢張りその狐獣人であった、狐人は徐に本棚の支えを背に座り込むとその場で何気無しに股間に手をやって、やや萎びた自身のペニスを手に取った。そして、掴んで揉み始める事しばらく、刺激を受ける事でペニスが反応し出し徐々に硬さを取り戻しその本来の形へと成って行く。人のものとは違って赤黒く露出したそれが次第に顕わになるにつれて、手の動きは早くなり息もまた荒くなる。目を瞑る回数も増えていて、更なる刺激を求めるかのように肛門の周囲と睾丸を残った片手で軽く弄り始めた。
"何何だこの画像・・・凄い・・・。"
 彼は何時しか自分が興奮している事に気が付いた。彼にはこれまで女の自慰を見て興奮した事はあっても、男に関しては自慰に限らず興奮した事は無く正に異例の事であった。当然の事ながら、普段の彼であるならばすぐに事のおかしさに気が付いて、動画を見るのを止めたであろう。しかし、今の彼は数日前から続き、ようやく収まりかけていた興奮の波に再びすっかり飲み込まれていた。それ故に彼は画像から得られる興奮のままに見続け、何時の間にやらその手は椅子に座っているという違いはあるにしろ、ズボンの上からペニスを押さえ回していた。
 その間にも動画は流れ、とうとう動画の中では狐獣人が軽く一発射精をしていた、一発の射精とは言えかなりの量でフローリングの床の上には水溜りならぬ精液溜りが姿を見せて、濃い白ではなく黄味がかった精液が広がっている。そしてやや遅れる事数十秒、一息吐いていた狐獣人が再開したと同時に彼はズボンの中で果てた。手で押さえられていた事で精液は僅かに開いていた隙間から噴き出し、彼のトランクスの前面はすっかり塗れて、一部はじんわりと穿いているコッパンにまで染みを浮ばせている。彼は急いでティッシュでそれらを大まかに拭き取ると、まだ精液の感触と残滓、冷たさがじっとりと残るペニスを再び揉み下し始めた。
 ペニス本体の熱と既に冷えた精液とが奇妙な熱のコントラストを楽しみながら、彼は一層力を強めた。それは正に次第に激しさを増していく動画と連動していた。

 彼が精液を拭き取っている間に早いもので、もう狐獣人は2度目の射精をしていた。先程と変わらぬ濃さの精液がほぼ同量放たれると、ペニスを弄ると共に何処からか取り出したディルドーをそっと肛門に宛がい、そのまま奥へと突き刺した。その瞬間狐獣人は満ち足りた顔をして息を吐き、思わずペニスから手を離して右胸を揉み砕きまたペニスを扱きディルドーを前後させる、その姿は堂々とした見事なそして手慣れている様に窺えた。そして、いかにも気持ち良さそうなその顔を見ていると、彼もまた心が何か見知らぬ物に満たされるのであった。
"なんだろう・・・この気持ちは・・・やめなくては・・・あぁだめだ、やめられない・・・気持ち良い・・・あふ・・・。"
 彼もまた2度目の射精へと達した、その量は前回に比してかなり多い、動画の中の狐ほどではないが確実に増えていた。そして、精液が増えた事への代償か彼の自制心は次第に欲の中へと解けて行き、今度は拭き取る事もせずにコッパン諸共トランクスを下げ下ろすと、白く塗れても尚勢いを失わない黒い陰毛の間より直立するペニスを扱き始めた。手からの汗と精液とが混じって、一扱きされるたびに卑猥な音が部屋の中へそして彼の脳裏へとこだましては、更なる渇きをその欲望にもたらしていた。
 そして彼の欲望は僅かな快感をすぐさま飲み込むと貪欲にもっと欲して、まるで木が地中へ根を張り巡らすかのように彼と言う土壌に根を深く張っていき、そこには忠実なる欲望の使徒、欲望に快感と言う名のエネルギーを供給するだけの彼の姿があった。そしてそれはその後の恐るべき変化の前触れに過ぎなかった。

 何時の頃からか動画の狐獣人の体に異変が起きていた、まずは放つ度に濃く増強される精液と比例する様に薄くなっていくその獣毛、気が付いた時にはあの豊富な獣毛はすっかり薄く精彩を欠き始めてしまい、尻尾すらもすっかり縮小していた。だが狐人がそれに気が付いている様子はない。
 一方、彼はと言うと彼にもまた変化が起きていた。それは画面の中で展開されている事とは逆の事で、すっかり下ろされて露出したその白い足や半袖の腕、首筋や顔にはあの山吹色と白の獣毛がこんもりと生え揃っていたのである。そして、シャツの下からは尻尾が姿を見せており、それもまた徐々に太さと長さを増しながら椅子の背凭れの下の空間から垂れていた。ペニスの形状も人のものから比較的長くスラッとした感のある狐と人の間の形へと移り変わり、扱く手先は焦げ茶の獣毛に白がかぶり、その平には肉球が姿を見せて微妙な柔らかさによる刺激をペニスに伝えている。
 最初は毛に覆われた以外変化の無かった顔も、鼻先と顎が伸び始めてマズルとなり不自然であった気の配置も、ようやく本来の狐そのものになり違和感は無くなった。耳は御馴染の見慣れた焦げ茶のかかった山吹をした三角耳、ふさっとした先端の白い尻尾に上に着ているシャツのボタンの間から垣間見られる全身を覆った獣毛・・・。
「ふぅあっ・・・アッアゥゥあっハァァ・・・。」
ビルシュッ、ブシュッ、バシュッ、ビュシュッ・・・。
 数分後、そこには多量の精液を部屋中に放ちながら瞳を閉じ中途半端に服を着た1人の狐獣人の姿があった。そして画面の中では完全なる人が、本棚にもたれ掛かって精液を下敷きに瞳を閉じており、その姿は少し前までの互いの姿そのまま生き写しであるのだ。


 完
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