同人ゲーム・後編冬風 狐作
 頬が風を切り、懸命に前へと走らせる足、大きく振る腕に荒い呼吸。点々と街灯が等間隔に灯る夜の路地を私は走っていた。耳を傾ければ背後から聞こえる足音、私を追う何者かは幾ら走っても見失う事無く追ってくる・・・一体何者なんだろうか。
 とにかく逃げないと私は・・・私・・・は・・・あれっ?どうして私なんていうんだろう、でもおかしくない筈なのに何かおかしい・・・私・・・わ・・・ぼ・・・僕はどうして私なんて・・・でも僕は私で私は僕で、それに何時の間にこんな夜の街中に出たんだろうか。それもノースリーブにロングスカート、冬の筈なのになんでこんな格好をしているのだろうか。胸の谷間が上から見えるほどの・・・胸?こんな豊満な胸がどうして・・・体が女になって・・・る・・・。
 僕は純粋に驚愕した、視線干したに下げた先にて揺れる双球を見て素直に。ただ状況の理解と言う点においては驚きほど上手くは行かなかった、余りの急転直下な展開に理解が追い付かずとても見た物をそのまま飲み込む事が出来なかったからだ。動揺は大きく何者かからの逃走と言う唯一の関心をぼかさせて心は複数の関心によって平衡を失ってしまう、だから止まりこそはしなかったが足の速度は低下し前へ前へと伸びていた足の着地点も左右へと大きくぶれて、力がそのまま前へ進む事に完全に生かされない。
 それは結果として何とか保たれていた追う者との速度の均衡をも狂わし、更なる焦りを心へと付け加えると言う悪循環を呼び起こした。正しく悪夢と言うほか無い、気が付いたら訳も分からぬ所を走っていておまけに体は女で何者かに追われていると言うただそれだけでも訳が分からないと言うのに、追い付かれてしまったどうなってしまうのかと言う不安は強まり、心に収拾をつけるのはもはや不可能な情勢であった。
 そしてまるでその時へのカウントダウンであるかの様に迫り来る足音、自らの心臓の拍動と相まって最悪の相乗効果となっていた。それでも何とか希望を見失う事無く走り続けようとしたその矢先、体は宙に浮び足は路面と言う蹴るべき物を失くして空しく空気を掻き混ぜる。首筋に感じる力と骨に毛の感触がくすぐったくもあり別の物も混じった妙な感覚を与えてくる、そして背中に強い衝撃を感じると共に僕は意識を混濁させてしまった。

 混濁した意識はまるで霧がかかった様で何も考えられないが、ただ体に加えられた刺激だけは感じ取る事が出来た。体の自由を封じられた僕はまだ昼間の暖かさを保ったアスファルトの上に横に寝かされると、脇へ抱え込むようにして抱き抱えられて何処かへと運ばれていく。
 幸いにして視覚は触覚と共に健在であった事からその道すがらの様子は見取る事が出来た。脇へ抱え込まれた僕はその場で元来た方向へと連れて行かれる、露出の多い服装をした僕の皮膚に当たる感触は矢張り無数の剛毛で痛痒くもあった。そしてこれまで懸命に逃げてきた路地を今度は静かに眺めて進む、つい先程まで必死に駆けていたのだから見覚えがあるのは当然であるが、それにしては何だか記憶の底で強く共鳴する所があると言った感じである。
 走っていると気が付かないものだが僕はかなりの距離を逃げていたようだ、もう10以上の角を曲がり延々と僕を抱え込んだ何者かは進み続けている。その間一言も言葉を発しないのがまた不気味でもあり怖くもあったがその反面、この様な意識下ではまともな返答などとても無理であろうから安心していたのもまた事実だ。だが段々とのうのうとしては居られなくなりつつあった、どうにも景色に見覚えがあるのである。どうしてその様な覚えがあるのかはその時点では皆目見当が付かなかったが、これから何かが起きるであろう事と関連は有り得そうな気配だった。

"ってこれは・・・やっぱり・・・。"
 数分後に見えてきた光景、それはつい先程していた予感をそのまま裏付けるものだった。目の前に広がる光景それは見間違える事の無いあの公園の入口、ゲームの中で自分の持ちキャラを操って色事の極みを尽くさせたあの忘れ様にも記憶に妄想にと、しっかり焼き付けられて消えることは無いであろう中心的な舞台であるあの公園だった。
"今の僕は・・・女だから犯されるのか!?僕のゲームの中での分身とも言える持ちキャラに・・・でも、僕はここにいるんだから・・・どうなってるんだよ!"
 皮肉にも意識はこの公園に接近すると共に本調子に戻って来た。それとともに無数の疑問が湧き出てくる、どうしてゲームの中にいるのか、持ちキャラを操作しているのは一体誰なのか、と言う事が。ちなみに僕はこれまで持ちキャラ、雄の狐獣人を一体誰が操っているのかと言う事だ。もし自分が操っているのだとすれば僕は僕に犯され視姦されおかずにされてしまうのだ。
 しかし僕はこれまでに持ちキャラに人を犯させた事はない、だから仮に可能性として考えていた過去に自分が既におかずにしたと言う事は有り得ない。そうなると考えられるのは未来の僕がしているのか、若しくは第三者が僕の代わりに持ちキャラを操作しているのではないかの2つとなる。

 だが僕は前者の可能性は薄い様に思われた、そもそも僕は人には全く興味がない。それはそれで問題なのかもしれないが正直な所、皆が興奮するというポルノ雑誌を読んでも全く僕のペニスは反応を示さないし、それで欲情を書き立てられるということも無い。だからゲーム内では人を見つけても決して追いかける事はせず、ただ純粋に獣人のみを求めて絡ませていたのだ。だから考えるのは唯1つ、何らかの理由でゲームの中に意識が飛ばされた僕の代わりに現実世界で何者かが。
 それは人かも知れないし、プログラムなのかも知れない。しかし自分以外の存在がゲームを操っていると言うのは真であり、今の僕はそのコントロール下から逃げる事は出来ないのだ。だから僕はもう抵抗するのは諦めようと思った、勿論自分が女として犯されるなんて真っ平御免である。
 しかし今の自分に課せられている事はその女として犯される事なのであり、それを果たさなければ何もその後の展開は起きないだろう。一度犯されて元の世界に戻れるのだとしたら甘んじて受けよう・・・そう覚悟すると僕は後は気持ちを整える事に専念する様に努めた。

 その後の流れは何時も自分が好む場所から始まった。その場所は公園の端の木々が鬱蒼と生い茂った一角に出来たちいさな草原、ここに来る時は決まって持ちキャラの狐人が攻めである時だけだ。僕は今からここで自分の分身とも言える狐人に犯される、女なのだから当然だが先程と違って何処か楽しんでやれという気持ちが強くなり始めていた。
 草の上に僕を下ろした狐人は無言のまま服を全てむしり剥ぎ取った。白いノースリーブと青のジーパンが襤褸切れとなって辺りに乱舞する、そして露わになったワギナに舌を這わせる狐人。ざらざらとした感触が刺激となって脳天へ直撃、とても普段の自慰とは比べ物にならない強い快感に僕は更に胸をときめかせる。
「はっ・・・はふっううっ・・・。」
 思わず漏れる喘ぎ声、正直こうもあっさりと出るとは思っていなかった。この程度で感じてしまうのだから本当に言った時にはどうなってしまうのだろう・・・ふとそんな事を思いながら、口からは喘ぎ声が漏れて体は熱を持ち始める。しばらく舐められて刺激された事で大分体は解れてきた、第一に刺激に慣れてきて先程はそれだけで行きそうだったのにもうその様な感覚は無い。むしろもっと強く激しいものを求めるまでに順応した体が別の意味で不安に思えもした。
 水音が聞こえてきた、下と上の双方からほぼ同時に。僕は狐人と舌を絡める一方で乳首を揉まれてワギナにはそのホンの入口の辺りだけで指の愛撫を受けている、乳首を弄られるのがここまで感じるとは・・・男ではとても分からない女体の奥深さには驚かされるばかり。そして一頻りそれをした後にはいよいよ本番が待っていた、狐人が何事かと言っているが良く聞き取れない。
 ただ何と無くは分かるので四つん這いになって腰を付き上げた、すると先程フェラをしてより硬くさせたペニスが構えられストレートに挿し込まれた。入り口付近の膣肉が徐々に押し開かれていく、体温とは違った熱が気持ちよい。これはとても癖になりそうな感覚だった、しかし次の瞬間その動きが一瞬止まり一気に力が込められたその瞬間、体の芯に響かんばかりの激痛に襲われた。処女消失の痛み・・・漫画などではアッサリと描かれるのみのこの痛みは尋常ではない・・・。
 余りの激痛に麻痺した僕を他所に狐人はペニスを更に深く咥え込ませ、腰を動かし始める。痛みが次第に快感に置き換わり再び僕はそれに打ち震え熱い吐息と喘ぎ声をもらし始めた、一つ打ち込まれるごとに奇妙な高揚感が快感とは別に感じられて来た。
 何だか僕の気配が、存在が大きくなると言う感じで・・・気持ちが良いと言うのとは違うこう何だか、本能的な快感に思わず酔い痴れる。その快感の前には性感は玩具に過ぎない。しかし欠かせない、そんな複雑な中にて僕は激しく攻められ自らも動き快感を搾り取っていく・・・。

 同じ姿勢のままで何度行ったのだろう、一体どれ程腰が振られそれを受け止めたのだろうか。そんな下らない事などは微塵にも思わずに僕は、男である筈の僕は女としての快感を堪能してすっかり虜になっていた。今はアナルを犯されているがまだワギナを攻められていた時、僕は途中である事に気が付いていた。僕の体が、既に女体となって意識とは違う性別の体となっていたそれがまた新たなる変化を遂げている事に・・・そう僕もまた狐人になりかけていたのだ。当然雌の・・・。
 気が付いた時には既に僕は全身を獣毛に包み込まれていた、狐色と淡い白にこげ茶色の美しい毛並みに。ただ体は人のままであったらしく、その後の僕は快感を貪れば貪る度に変化して行った。何と言っても顔の変化ほど面白く感じた事は無い、あの平面な人の顔が伸びてマズルを持った狐の顔に変わるのは奇妙な感覚ではあったがそれ以上に僕を興奮させた。溶ける様に崩れて伸びゆく鼻面・・・その流れは何者かが見えない手にと僕を弄り回しているとのようにも見える。
 乳首はすっかり毛の中に立ち全身の感覚が鋭敏になった様に感じられる、毛の一つ一つがこの淫妖な気配に反応し痺れているかのような錯覚まで受ける。もう全てが感覚であり同時に刺激であった、凄まじい静電気に襲われたような・・・そうとでも言わないと他に形容しようが無いのほどの凄まじい快感。本能と性感、変化が煮詰められたそれは恐ろしく濃厚で甘美であった。その濃厚さに自我をも融かされてしまうかのような錯覚・・・そして抗す事もまた別の意味での快感。そうその甘味の元では全ての動作が刺激を飛躍して快感に置き換えられてしまう。
 もし人のまま感じていたら狂ってしまったことだろう、だが僕はもう人ではなくてなりかけの狐人であるしそもそもここは現実世界ではない。あくまでも人の手に作られた仮想世界の筈だから狂う事も無いのではないか・・・そう考えるとより深くはまって行く。もう抜け出せないほどの淵の底へと自ら望んで身を投じていくのであった・・・。
 だが楽しい事ほど早く過ぎ去ってしまう物、顔の変化が終わってしまえば後は早いもので残るは尻尾と肉球程度・・・尻尾が生える時は喪失とはまた逆の快感に悶え痺れた。よく尻尾は性感帯などと言われるがそれは正しくその通りで何と痺れた事か、生えた後に注ぐ度に雄の狐人も心得ている様で尻尾を掴む。それは胎内に熱い物が注がれる快感との相乗効果となって僕を焦すのだ。
 そしてそれが燃え上がったその時、僕はイッた。雌狐としての鋭く辺りを切り裂く様な叫び声と共にイき、急激に暗転していく意識の中でペニスが引き抜かれ腹が膨らむほど注ぎこまれた精液がダラッと、ワギナから漏れ流れてくる感触を感じつつ瞳を閉じた。多くの快感の余韻に浸りつつ。

 目を覚ますと顔が暖かかった、大体額かその辺りでうっすらと目蓋を開ければ眩い光。カーテンのわずかな切れ目から太陽の光が挿し込み。時計を見ればもう昼を回って午後1時、部屋は冷えて肌寒い。足元に置かれた暖房器具は皆時間切れで止まっていた、デジタルの時計に付属した温度計の数値は10℃。道理で寒い訳である、僕は立ち上がりそれらの電源を入れなおすと目を覚ます為に水を飲みに行く。
 行った先の洗面所にてうがいをし水をたらふく飲む、カルキの匂いがするが別に僕は気にはしない。そして顔を洗おうと手に水をつけ掛けた時、僕はようやく自分の顔をまじまじと見つめる機会を得た。鏡に映るのは何時もと変わらぬ眼鏡をかけた僕以外の何者でもない顔、もう飽きるほど見ていると言うのに我ながら憎めずむしろ新鮮さを覚えてしまう顔があった。恐る恐る触れてみるがその表面に毛の痕跡など無い、ただ人の肌があるだけで表面を滑るだけだった。
「夢だったんだろうかなぁ・・・あんなリアルとは言え・・・。」
 眉間にシワを寄せて僕は呟いた、思わず頭をかくがフケ以外には何も落ちてはこないボサボサ頭。耳はしっかりと人の形をしてその定位置に納まっている。結局の所、あれは壮大な夢の宴に過ぎなかったらしい、そう思うと不思議と体が軽く感じられて気楽に部屋へと戻る。まだ驚くべき事が一つ残されているとは終ぞ思わぬままに。


 完
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