取締官〜第二章〜冬風 狐作
「失礼します。」
 国家情報委員会(National intelligence commission、通称NIC)へ異動した真田は指定された時刻に、東京都心部にある委員会本部ビルへと駆け付けた。10年前に既存の情報機関とは別の完全に独立した国家の情報収集組織として、設立されたNICには当初こそ国民を初め、野党や公安警察等からは冷たい視線を浴びせられていた。だが設立から3年と間もない時期に手掛けた国内に敷かれていた某国のスパイ組織の殲滅等、国家の大事に関わる事柄を数多く解決してきた実績が認められて今では、公安警察からは微妙な視線を浴びせられるがそれでも広く社会的に認められた組織となって治安維持の一翼を担っている。
 そのNICに真田がどうして異動したのか、それは前にも述べた様に彼女の優秀な成績とそれを導く能力がNIC幹部の目に止まったからである。ちょうど大規模スパイ網殲滅等の数々の功績によりNICに対する評価が急上昇していたが、相変わらずの新組織には付き物の人材不足に悩んでいた。無論、要請はしているが効果が出るのはまだ先である、とても待てないという事で警察や自衛隊、内閣府に頼んで優秀な人材を推薦してもらって陣容を整えているのである。この決定を聞かされた時、彼女自身は突然の事であったので大いに驚き、そして少々不満を抱いたがNICの仕事の内容を効いて悪くは無いと思い度合いして来たのである。
"本当なら水谷も一緒だったのに・・・どこにいったんだろう、残念だわ。"
と本来ならば共にいる筈であった懸命の捜索にも関わらず、一向に行方のつかめない水谷の事を思ってこれからの上司である大村第四情報課課長の執務室へと入った。
「初めまして、今日より・・・。」
「お、真田秋子君だね・・・君の評判は聞いておるよ、中々の活躍ぶりじゃないか。」
「いえ、とんでもありません大村課長。お褒め頂きありがとうございます。」
「そうかそうか・・・まぁ、そこへかけ給え・・・そろそろ連れも来るはずだからな・・・。」
「連れですか・・・一体どう言う事でしょうか?」
「ああ・・・まだ説明は受けていないのか。ならいい、君は本来なら水谷君と共にここに移動してくる計画であったのは知っているな。」
「はい、承知しています。」
「ふむ、しかし彼は移動の数日前に突然自宅近くの路上で失踪した・・・コンビニへビールを買いに行った帰りのようだが・・・それで現在、NICと警察が合同で捜索に当たっているのだが一向に見つかっていないので当分の間、彼が帰ってくるまでの一時的な経過措置として君にはある人と臨時でチームを組んでもらうという訳だ。」
「なるほど・・・では、その相手とは誰なのでしょうか。」
「それは・・・あ、来たようだな、扉を見ていたまえ面白い光景が見られるぞ。」
「はぁ・・・。」
と促された真田が執務室の扉に目を向けた正にその時、勢い良く扉が開き1人の人間が駆け込んできたのは。
「失礼しますっ遅れてしまい申し訳ありません!」
乱暴にドアが開けて、ずっこける様な格好をして部屋の中に入ってきたのは1人の女であった。課長は苦笑して、真田は呆気に取られた顔をしてそれを迎える。
「今日も元気だね、広田君・・・まぁ座りたまえ。」
「あっはい・・・では失礼します・・・。」
笑う課長の言葉に促されて広田と呼ばれたその女は大村の隣に腰掛けた。
「さてと・・・お騒がせしたが彼女が君と当分の間暫定的なチームを組んでもらう相手、広田秋子君だ。広田君挨拶を。」
「はい、只今課長よりご紹介に預かりました広田秋子と申します、以後よろしくお願いしますね。真田秋子さん、キャッあたしと同じ名前ですね〜。」
 広田は真田とは大分タイプの違う人間であった、男勝りの強さを誇る真田と不思議系キャラの広田、一見あわなそうに見える二人ではあったが何とか上手くやっていけそうな予感を、戸惑いと共に真田は感じていた。

 それから半年の間、試用期間と称されたその間に幾つかの比較的軽度な問題を解決した2人のチームは正式に認められて、早速ある指令が下された。指令の中身は近年、若者層を中心に大流行しているとある自己啓発サークルの内偵であった。それを受けた2人は早速作戦を立てて、互いに課せられた役目を果たしつつ情報を集めてNICに逐次報告していた。

「さて、次の議題は第4-0120056号指令についてです。調査員は真田明子と広田秋子の2名です。」
「早速だが大村課長、この報告書は事実かね。」
「はい、事実であると我々は分析しております。」
NIC本部ビル某所にある会議室で複数の男達が何事かを声をひそめる様に話し合っていた。彼らの議題は現在進行中の作戦の検証、そして対策と指示についてである。真田と広田の内定についての議論が始まった。」
「本当か?」
「はい。」
「・・・なるほど・・・しかし、これ脅威ですぞ皆さん。麻薬に宗教が裏についているとは・・・伊藤第二課長。この事実を把握していましたか?」
「いえ、その流れについては把握しておりませんでした。」
「そうか・・・では、大村課長。もっと深く入るよう指令して下さい。期限は問いません、もっと深く確かな情報をお願いします。」
「了解しました。」

 報告書の内容を認められ、より一層の内偵を命じられた2人は共にサークルの合宿を通じてその裏にある宗教団体、万夜教に入信した。もちろん偽の名前と住所、経歴を用いての入信でありそれを信じていた一般の信者達は2人の入信を歓迎していた。ばれていない・・・これは2人に共通した思いであった、しかし2人の正体はこの時いやサークルに入った時にばれていたのである。その事を報告された教団上層部はしばらく適当な情報を掴ませて泳がせて置くように指示して、動静を見守っていたのである。そして、機は熟したと判断した教団上層部は工作員達に指示した。彼女らを分断し捕らえろと、ある役に立つエサと共に・・・。
 入信して一ヶ月が経過した頃、初期入信者向けの修行を終えた真田は広田よりも一足早く当分の間の宿舎となるコテージへと戻って来た。この教団は余程金があるらしく、広大な敷地の中にかかる無数のコテージと多数の施設が余裕を持って設計されており、大学時代に少し建築関係の知識をかじった彼女の目にはそのしっかりとした設計が美しく感じられた。
"全く・・・今日も疲れたわ・・・あんな出鱈目な教義でよくこんなにも信者がいるわね・・・まぁ、信じる者は救われるとは言うけど、呆れちゃうわ。"
 疲れた顔をして真田が帰宅すると、玄関の前に不審な襤褸切れの様な物が転がっていた。何かと思ってそっと近付くとゴミの様であったがどうも様子がおかしい、更に接近しその襤褸切れを軽く捲るとなんとその中に1人の人間が入っていたのだ。そして、驚くべきことにその顔には見覚えがあった。
「み、水谷じゃないの・・・って、ひとまず家の中へ・・・。」
と真田は驚くと共に他の信者に見られたら面倒になると判断して、急いで家の中へとそのまま水谷を引き入れた。玄関に鍵をかけて襤褸切れの中から水谷を引きずり出すと、彼は酷く衰弱しており、服と言う物を一切見に纏っていなかった。そればかりか首には鉄か何か金属の冷たい首輪がはめられていると言う異様な格好をしていたのである。
「ちょっと、ちょっと水谷・・・目を覚まして。」
 脈と息があるのを確認した真田は軽くその衰弱した体を揺すった、すると彼はすぐに意識を取り戻し薄らと目を開けた。
"水谷の目だ・・・。"
開いた目蓋の裏にはあの水谷の見慣れた瞳がやや精彩に欠けた調子で存在していた。
「あ・・・真田さん・・・僕・・・生きてましたか・・・。」
意識を取り戻した水谷はどこか放心した様な何かが弾け飛んでしまったかのような表情をして、真田にか細い声で話しかけてきた。
「僕生きてたかって・・・どこにこれまでいて何をしてたのよ?」
「分からない・・・わからない・・・ただ、これだけは憶えている・・・。」
「憶えているって何をっ!?」
 真田が更に追求しようと力を入れかけた瞬間だった。不意にそれまで何の力も感じられなかった水谷に力がこもったかと思うと、顔を近づけて真田の唇を奪ったのである。これには滅多な事では動じない、「鉄の女」と陰ながら言われている真田の心は激しく動揺した。そもそも、これまで男友達というものはいても彼氏という関係にある男とは付き合った事が無かったので、キスなんて物は自分とは無縁のものだとばかり信じていた。そこに突然の、それももてない男ナンバーワンと揶揄されていた水谷からのディープキスである。これが動揺しなくていられようか。
「はぁ・・・はぁ・・・み、水谷あんた一体・・・。」
 長い長いキスから解放された真田が息を切らしながら、水谷を問い詰めようとした。しかし、水谷は理性の感じられない死んだ目つきのまま、何か機械的に立ち上がる。そして、真田は水谷の股間に信じられ無いものを見た。
「水谷・・・それは・・・。」
 驚愕した表情で真田が震える手で指差す先にある物、それは凡そ人の物とは到底思えない太さと長さを持ち、激しく勃起して血管は浮き出た赤黒いペニスであった
「真田・・・さん・・・僕、人間じゃなくなった・・・んだ・・・。」
「人間じゃなくなったって・・・そんな馬鹿なこと・・・ある訳ない・・・よ。」
「本当なんだよ・・・ほら・・・見てて・・・ネェッ!」
 細かく震えながら呟いていた水谷は、途端に口元を引き付かせながら語尾を大きくし、強く息を吐いた。その瞬間、彼の体はこれまでにない程大きく震え、それと共に体が何か融けて行く様に真田には見えた。余りにも恐ろしい光景であったが、真田は目を離すことが出来ず、ただその全てを注視した。融けたかのように見えた部位は次第にそれまでとは違う形へと固定されて行き、その薄汚れた肌は漆黒の、細い体は筋肉質の逞しさを魅せたかと思えば、尾てい骨から尻尾が飛び生え体も倍近くにまで全体に拡大し、最後まで人のままであった顔も緩々と伸び動いていく・・・。
"何・・・な、なんなのこれ・・・た、助けて・・・広田さん・・・!"
 しばらく呆然としていた真田は、その余りにもおぞましい光景に慄き、逃げようとしたが腰が砕けてしまいままならなかった。その上、水谷からとても彼とは思えない強い眼力を宿らせた瞳に睨みつけられてしまい、正しく蛇に睨まれた蛙の様に壁際までじりじりと下がり事の一部始終を見る他無かった。そして、彼女の必死な思いは広田に届きはしなかった。

 永遠にも感じられた恐怖の時間が過ぎ去った時、水谷は完全に変貌を遂げていた。そこにはあの見慣れたもやしっ子の水谷はおらず、全身を漆黒の獣毛と逞しい筋肉で余す所無く覆いつくし、目を鋭く爛々と輝かせその耳を立たせた身長は2メートルはあろうかという犬、いや人狼がその股間を滾らせて存在していた。
「ぐ・・・ふぅふ・・・どう?真田さん・・・僕の新しい・・・姿は・・・。」
「ひっ・・・や、止めて来ないで!お願い来ないで・・・。」
 重々しく呟き、そして笑いながら近付いてくる水谷変じた狼人に彼女は言葉で必死の抵抗を試みた、しかし彼は何ら気にもせずに近付いてくる。そして、その股間からはあのペニスがその不気味な姿を見せていた。
「やめて・・・お願い・・・。」
「だめだ・・・。」
 最早、狼人との差はほとんど無くなり、壁に手をかけた狼人の影に完全に彼女の体は覆われていた。それでも、何とか言葉だけではなく手足を使って必死の抵抗を続けたが、その様な華奢な攻撃が頑丈な体を持つ狼人に効く訳が無く、とうとう真田の頭を掴む事に成功した狼人は、無理矢理腰を下ろさせて頭から押さえ付けると僅かに開いていた彼女の唇へ極太のペニスを捻じ込んで行く。
 そして、間も無くその口の中には、すっかり熱で熟れたペニスが深く挿し込まれていた。口の中へ入れられた異物に対して、涙目を浮かべて尚嫌がっている真田を見下ろして、狼人は不適に微笑むと頭皮を握り、前後へと動かせ始めた。強制フェラである。
"む・・・ぐぅ・・・苦しい・・・。"
 その激しい単調な動作に真田は強い息苦しさと圧迫感を感じていた。しかし、自らが楽しみ貪る事で頭が一杯の狼人は全くその様な事には気を払わず、ただ自分のためだけにそれを尚も激しく続けた。そして、彼女の意識も朦朧とし気絶しかけていた時、突如として何の予告もなしにペニスの中より莫大な量の精液が咥内へと注ぎ込まれた。
「ほら・・・ほらっ・・・ほらっ・・・。」
 快感に溺れ行く狼人とは対照的に、真田はその勢いに首が外れてしまうのでは、とも思える苦痛を味わった。だが、そんな事を狼人が気にする筈が無くそのまま注ぎ続けられた結果、行き場を失った一部の精液は口の端から外へと漏れていった。数分間続いた射精後、ようやく解放された真田は茫然自失とした表情をし、口元からだらしなく白い筋をその体へと垂らしながら、壁に寄りかかっていた。
「気持ちよかったでしょ・・・。次は・・・これだよ・・・。」
"もう・・・止めて・・・。"
 狼人と化した水谷は、嫌がっている彼女の体を持ち上げると、乱暴にその精液にまみれた服を剥ぎ捨てて、その長いざらついた舌で一糸纏わぬ彼女の体を舐め回した。舐められた箇所は窓から漏れてくる月明かりに妖しく輝きを放ち、舌先が離れる毎に架かる一瞬の涎の橋が何とも言えない情景を演出している。狼人の下は人とは違い、微細なゴツゴツとした独特な盛り上がりが多数存在し、それらが動く度に彼女の肌に隠されたつぼや神経を刺激して行き、やがて真田の体はほんのりと欲情の度合いを増していった。
「あっ・・・。」
 真田の口から小さな喘ぎ声が漏れたのもそんな時であった。幸いにして舐める事に夢中になっている狼人には気が付かれなかったが、彼女はそれに強く嫌悪感を感じていた。獣と化した水谷に犯されている・・・それだけでも酷く鬱であるのに、イかされるとなるともうその嫌悪感にはたまらないものがあった。
 しかし、体は正直だ。心が幾ら強がった所でそれは表面的な動きに過ぎない、結局彼女は次から次へと襲いくる人外の快楽の波に飲まれ気が付けば自ら嬌声を上げ、腰を振り獣のペニスを求め貪っていたのだった。

「アッアッアッアッ・・・ア〜ッ!」
パンパンパンパン・・・パチパパン・・・。
 コテージの中にはムワッとした淫気と規則正しい喘ぎ、そして肉体と肉体とがぶつかりあう音に満ちていた。その中で1人の女と全身を漆黒の獣毛で覆った人外の者とが、狂ったの様に互いに激しく交じり合っていた。もう何が何なのか、理解は出来ない情景がそこには広がり、当事者である彼女ですらもう何度イッたことか、それすらも分からなくなった頃、ようやく久方ぶりにペニスが女のワギナより抜き出された。
 幾ら出しても勢いの止まない、人の物よりも2周りほど太く逞しいペニスによって真田のワギナはすっかり拡張され、そこからはトロトロと腹を膨らませていた大量の精液が垂れ落ちていた。すっかり憔悴しきった顔をした真田ではあったが、精液の催淫成分のせいであろうか、どこかまだ物足りないらしく、少し落ち着くと狼人が近付くまでもなく自ら行き、激しく勃起しているペニスに触れ、舐めては自ら腰を下ろそうとしていた。
「だめだよ・・・真田さん、これ以上やったら真田さんが壊れちゃうよ・・・。」
 まるでエサをねだる犬をなだめるかのような手付きで、狼人は真田の頭を撫でると。
「でも、1つだけ方法があるんだ・・・何時までも楽しめる方法が・・・聞きたいでしょ。」
その言葉に小さく真田が頷くのを見ると狼人は続けた。
「じゃあ教えてあげる・・・僕と同じになればいいんだよ・・・。」
と・・・。


 取締官〜第二章〜終 取締官〜第三章〜へ続く
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