人間・龍人・獣人の種族大戦が終結し、4年の年月が過ぎた。
終結して4年たった今現在でも、野党化兵等のテロ・破戒行動・戦災に
人々は悩まされていた。
そんな中、一人の龍人が大戦で戦死した英雄達の眠る墓地の真ん中で
一人佇んでいた。
龍人の左目は、縦一門に切り傷がありその傷を覆うかのように眼帯が着けられていた。
右の眼は、目の前にある墓石を見ず。何処か遠くを見ているような目をしていた。
墓石には、戦争で死んだ英雄、ラルフここに眠る。
と書かれていた。
「軍曹・・・。戦争が終結してから、もう4年の年月が過ぎましたよ。
ですが、戦災と言う名の戦いがまだ続いています。戦争下、共に戦った兵士達も
野党化兵となったり・・・悪夢はまだ続いています」
龍人の声が、誰も居ない墓場に響く。墓石の前には、龍人が置いたのだろう
花束と所々錆びたリボルバー拳銃が置かれていた。
彼の名前は、ネス。大戦下、人間軍に所属し人間と共に戦った龍人。
そして、今目の前にある墓石の下に眠るのは嘗てネスの上官だったラルフ軍曹。
「動くな!!」
突然、周辺一帯を武装した人間兵士が包囲し一人の兵士が拳銃片手に近づいてくる。
黒龍人は、それに抗う事無く両腕を頭の上に上げ兵士を睨みつける。
「ネス。元陸軍特殊部隊軍曹。貴様を戦争犯罪で逮捕する」
「その前に・・・恨みを晴らしたい。あの大戦下、俺はお前のせいで・・・仲間を失った・・・」
再び別な兵士が、腰に下げた鞘から個人で購入したのであろう市販のサバイバルナイフを引き抜き、
俺の顔面目掛け振り下ろす。その斬撃を左腕の硬鱗で受け流し、顔面目掛け右ストレートを叩き込み。
怯んだ隙に脳天に踵落とし、そのままの流れで体を反転させ左方向から攻めてきた兵士の
腕を掴み右肘を叩き込む。手応えで外した事を確信すると、そのまま腕を引っ張り
激痛に悲鳴を上げる兵士を他方から攻めてきた兵士に投げつける。
そして、踵落としを喰らいふらついている兵士の脇腹に蹴りを叩き込み蹴り飛ばす。
投げ飛ばされた仲間を避け、大きな隙を作った兵士達に蹴り飛ばした兵士の体が命中し
その場にドミノ倒しのように倒れる。
「くそ・・・なんだあのしなやかな動きと・・・この打撃の重さは・・・」
「これが・・・龍人の力・・・?」
地面に倒れた仲間を助け起こしながら、一人の兵士が黒龍人を睨みつけ口を開く。
そして、倒れている兵士の一人に歩み寄り首を左手で掴み持ち上げる。
ベストの左腹部の部位には、ホルスターが固定されており。
突入用装備だと言う事が見て取れる。ホルスターから、拳銃を抜き取りそのまま
兵士を後方へと投げ飛ばす。耳に、地面に叩きつけられる肉質な音と共に
兵士の呻き声が聞こえてくる。
奪った拳銃に眼を向けると、スライドにはM92Fと打刻されグリップのガードには
ベレッタ社のエンブレムではなく正規軍のエンブレムが記されていた。
「ベレッタM92F・・・通称M9.9mm口径自動拳銃・・・。正規軍の兵士か」
スライドを後退させ、初弾を装填し倒れている兵士に銃口を向ける。
ダァーン!!
後方から、銃声が聞こえ背中に激痛が走る。後方に眼を向けると、
震える手で銃口から煙が出ているM92 Fを構えている兵士が立っていた。
「…貴様ぁ!!!」
突然、黒龍人が口を開き咆哮をあげると同時に一瞬にして兵士との間を縮め左手で首筋を掴み
右手の爪で兵士の腹を切り裂き下半身が地面へと落ちる。
「あ・・・ぁぁ・・・」
目の前の仲間の死に様に、他の兵士は言葉を失った。
対立する者からすれば、この龍人は化物の何者でもないであろう。
「命だけは・・・助けるつもりだったが・・・死んでもらう」
ドチャッ!
生理的に受け付けない肉質な音と共に、黒龍人が振り向く。左目を蔽う眼帯は取り外され
黒く塗り潰された様な左目が露となり残された右目の瞳は、猫のような縦に引き裂かれたような
瞳へと形を変えていた。
「か・・・構わん!撃ち殺せ!!」
一人の兵士が叫ぶと同時に、拳銃から自動小銃へと切り替え一斉に構える。
その後、墓場には兵士の断末魔と幾多の銃声が鳴り響いた・・・。
そして、10人の屍の上で血だらけの右手に血塗られた拳銃を握った黒龍人が一人佇んでいた。
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